千六十八話 雷炎槍のシュリの過去

『『おおお』』

『三番弟子が倒されていたのか!?』

『三番弟子ギガンホーは、我の片腕と片足を穿った憎き相手……』

『嘗ての魔人武王ガンジスとの戦いの最中、あいつの腹は穿ったが、そこから記憶が飛んでいる……』

『グルドの<獄魔連穿>の後、オレの<妙神槍舞>でギガンホーは吹き飛んだが、その隙に背中をパーシヴァルに突かれたんだよなぁ……

 トースンとイルヴェーヌに背後を任せていたのによぉ』

『……悪かった。二番弟子パーシヴァルは強い』

『妾は五番弟子ベフェキラと戦っていたのだ』

『……あの時か。ギガンホーはソーに吹き飛ばされた後、わしも<飛怪槍刃>で追撃を加えたが、一気に回復した強者……』

『ふむ、魔人武王ガンジスの三番弟子、円魔槍の使い手ギガンホーが倒れるとは、俄には思えんが……』

『……うん、でも、闇神の宿将レンブリアか他の誰かに負けたから、わたしの頭部と両腕がここにあるってことでしょう?』

『『『あぁ』』』


 魔軍夜行ノ槍業にいる師匠たちの思念が響きまくる。

 

 俺もギガンホーは気になった。

 が、レンブリアさんは数珠を持つ右上腕を上げた。

 魔力を込めた左下腕と右下腕で数度手印を組む。


 普賢三昧耶、大金剛輪、外獅子、内獅子、外縛、内縛、智拳、日輪、隠形、摩利支天、降魔印などの九字印や密教の印と似た手印を組んでいた。

 そして、


「<闇神式・闘柱解>――」


 レンブリアさんはスキルを発動させた。

 その手印から複数の魔印が生まれ出る。


 数珠からも波動のような魔力が前方に迸った。

 その波動は、柱と柱の間にあったシュリ師匠の頭部と両腕が納まっている立方体の魔法陣と衝突。立方体の面にある魔法陣がそれぞれ波を打った。


 その波が止まると、立方体の魔法陣の中心に大きな鍵穴が出現。やや遅れて手印から発生していた複数の魔印が、魔法の鍵へと変化を遂げた。

 それらの魔法の鍵が直進し、大きな鍵穴へと挿入されて消えていく。


 大きな鍵穴を有した立方体の魔法陣は点滅を繰り返すとゴォォと音を響かせながら回り始めた。

 その表面に複数の魔印が出現し、魔印が規則正しく刻まれていく。

 その刻まれたばかりの魔印も独自に回転を始めた。

 回転するごとに魔印の模様が変化し、至る所から闇炎を纏った眼球のような幻影が無数に出現し弧を描きながら鍵穴の中へと突入していく。


 闇炎の眼球が大きな鍵穴に入る度、立方体の魔法陣が小さくなった。


 その小さくなった立方体の魔法陣はベルヌーイ螺旋を模ると、小さい魔力粒子に分解されながら上下の柱に吸い込まれるように儚く消える。


 雷炎槍のシュリ師匠の頭部と両腕から雷炎槍の幻影が見え隠れ。


 レンブリアさんは「ふぅ」と魔力を消費した感を醸し出して頷いた。

 そのレンブリアさんの足下には守りの魔法陣が縮小したまま出現し続けていたが、消える。


 <闇神式・闘柱解>のスキルか魔法は、結構な魔力を消費するようだ。


 魔魁三王ブカシュナとの対決間際に、レンブリアさんが周囲に出現させていた闇炎の甲冑を着た存在と複数の巨大な石弓は消えている。


 そのレンブリアさんは右上腕が持つ数珠を仕舞った。

 両下腕を胸元で組んで、俺を見ると、


「――御使い様、無事に闘柱大宝庫五番柱の防護陣の解除に成功しました。今も雷炎槍のシュリの頭部と両腕は浮いていますが、自由に取れますので、回収をお願いします」

「ありがとうございます。では早速、シュリ師匠の頭部と両腕を回収させていただきます」

「はい」


 前に出て、そのシュリ師匠の頭部と両腕をゲット。

 シュリ師匠の顔はもの凄い美人さんだ。

 髪の毛は朱色で毛先はソバージュ気味だが、ストレートが大半か。

 

「よし! では、レンブリアさん、この頭部と両腕を魔軍夜行ノ槍業に戻しますので」

「分かりました。某は、その間に闘柱大宝庫を一時【闇神寺院シャロアルの蓋】に近づけておきます」


 闇神アーディン様から所用を頼まれていたからな。


「はい」


 レンブリアさんに会釈してからグィヴァに、


「グィヴァ、この魔軍夜行ノ槍業にいるシュリ師匠に体を渡すから、少し待っててくれ」

「はい!」


 <導想魔手>と<鬼想魔手>にシュリ師匠の頭部と両腕を持たせる。

 魔軍夜行ノ槍業を意識。


『――弟子! わたしに、ううん、魔軍夜行ノ槍業に魔力を込めて<魔軍夜行ノ槍業>を意識するか使ってから、実際の魔軍夜行ノ槍業をわたしの頭部と両腕に当ててね!』

『はい』


 腰の魔軍夜行ノ槍業を右手で掴んで魔力を送る。

 そのまま<魔軍夜行ノ槍業>を意識して実行。

 魔軍夜行ノ槍業をシュリ師匠の頭部と両腕に当てた刹那――。


 シュリ師匠の頭部と両腕は魔軍夜行ノ槍業の中に吸い込まれた。

 その魔軍夜行ノ槍業が閃光を放つ。


 視界が一変。

 短槍を持ちつつ森を駆けている少女――。

 少女はシュリ師匠の幼い頃だと直ぐに理解した。


 雷炎を体に纏っているし、朱色の短い髪が可愛い。


 その少女シュリは体に纏っていた雷炎を消す。

 と、<隠身ハイド>を使ったように体勢を低くして大きな岩の前で動きを止めた。大きな岩の陰に足早に移動した少女シュリ。

 

 少女シュリの狙いは……頭部が蝙蝠で胴体に四肢を持つ魔獣か。

 魔獣の大きさからして少女が狙うような相手に見えないが……。

 少女シュリがいるここは魔界セブドラだろうから……。

 少女シュリにとっては格好の獲物なのかな。


 その少女シュリは雷炎の魔力を体に纏う。

 そのままゆっくりと前進していたが、急に加速――。

 瞬時に蝙蝠魔獣との間合いを詰めた少女シュリ。

 

 迅速な踏み込みから右手が持つ短槍を前方に突き出した。

 <刺突>を繰り出す。

 短槍の穂先で蝙蝠の頭部を見事に穿ち倒した。


 その蝙蝠魔獣の解体を始める少女シュリは手際がいい。

 獲物から肉と皮を回収していた。

 

 すると、視界が一変。

 

 少女シュリは家屋の中で母親だと思う女性に狩りの成果を見せていた。


 また視界が一変――。

 

 母親だと思う女性と槍武術の稽古をしている場面となる。

 母親だと思う女性も少女シュリと同じく体に雷炎を纏っていた。

 そして、雷炎槍エフィルマゾルを持つ。

 やはり母親かな、顔もシュリ師匠と似ている。


 そこで稽古から様々な地で戦う場面に移り変わる。

 魔界セブドラの街では、母親と共に賞金稼ぎの活動もしていたようだ。

 角持ち三腕の魔族と路地で戦うシュリ師匠の母親は十合打ち合って勝利。

 傷を受けていないからかなり強い。


 と、また視界が様変わり――。

 少女シュリは成長した女性になった。


 母親の方の見た目はあまり変わらない。

 シュリ師匠と共に戦場で戦っていた。


 親子はどこかの魔傭兵団に所属したようだ。

 親子が戦っている相手の魔族は頭部が鰐で上半身が人族。

 二本腕と三本足の魔族だった。

 三本目の足は尻尾かな。鰐魔族の殆どが槍使い。


 シュリ師匠と母親が所属している魔傭兵団は強い。 

 鰐魔族を倒しまくっていた。

 シュリ師匠と母親も、対峙した鰐魔族と五合も打ち合わず屠る。

 二人だけで数十人の鰐魔族を倒した。


 結果、シュリ師匠たちの魔傭兵団が鰐魔族の集団に勝利。


 また他の戦場の場面へと変わる。

 幾つかの戦場を渡り歩く二人は凄まじい強さだ。


 と、また視界が変化。


 どこかの港街?

 戦場とは打って変わって魚を仕入れているシュリ師匠の姿があった。

 潮の香りが漂うとか、この過去の幻影はリアル感が高すぎる。


 そのシュリ師匠は港街を歩きながら魔猫を触っていた。

 あぁ、俺も触りたい。

 魔猫の小鼻を人指し指でツンツクツンしている。

 逃げない魔猫は人慣れしている。可愛い。


 そのまま港街で働く魚人風魔族のおっさんたちと会話しながら通りを歩いていくシュリ師匠。


 坂を少し上がった先の民家に入った。

 その民家の中で椅子に座って休んでいた母親に仕入れた魚のことを報告している。

 

 母親とシュリ師匠は何か冗談を語り合ったのか笑顔となった。

 二人の声が聞きたい過去のシーンだ。


 無声映画も雰囲気が出ていいが……。

 と、また視界が移り変わる。


 今度は追われている?

 母親とシュリ師匠は複数人に追われていた。

 

「――母さん、わたしが囮になるから頭目に報告して」

「なに言ってるのさ、わたしが囮になるよ――」


 ここで声が!


 と、一斉に二人が俺に視線を寄越す。

 え? 一瞬、俺の思念が二人に聞こえたのかと思ったが――。

 勿論違う。俺の背後に数十人のやさぐれた魔族が集まっていた。

 

「……チッ、黒魔族の装束が多い、【戦霧ベラサス】の連中か」

「うん、魔魁三王に所属する魔傭兵たちね」

「背後にも人員を配置したのなら、頭目のグラドたちも狙われているかも知れない」


 グラドとは飛怪槍のグラド師匠のことだろうか。


 シュリ師匠の母親は、雷炎槍エフィルマゾルの穂先を、そのやさぐれた魔族たちに向けた。

 二人を追ってきた連中は黒い装束が多い。


 得物は片手斧が多い。


「なら答えは一つ、わたしも戦う」

「ふっ、仕方ないねぇ」

「うん。見て、ガエデ魔族もいる。蛾の魔族だから鱗粉を喰らうと……」

「ふふ、ちゃんと覚えたようね。ま、戦おうか。怨み辛みもすべてを飲み込むのが私たちさ――」

「うん――」

 

 シュリ師匠とシュリ師匠の母親は前進。

 あぁ、俺も共に戦いたい。が、見るだけか……。


 黒い装束を着た連中の先頭にいる禿魔族が、


「しめた! 雷炎槍リィンカとシュリだ! ここで仕留めるぞ」

「「「「おう!」」」」


 シュリ師匠の母親の名はリィンカさんと言うんだ。

 二人が先頭の頭部が禿げた魔族の頭部をあっさりと刎ねた。

 続けて、二人は<刺突>で一人ずつ屠ると、魔槍を捻り回して二人の攻撃を柄で往なし、半身の姿勢から体を開く機動の<豪閃>のような薙ぎ払いで、一人を斬り捨てると、同時に右回し足刀がもう一人の頭部に決まる。そのまま横回転しながら魔槍を振るう二人は旋風の如くの勢いで、やさぐれた魔族たちを倒していった。


 視界が変化――。

 先ほどの戦いは生き抜いたようだ。


 今度は古びた廃墟で二人が戦っている場面となった。

 強いシュリ師匠とリィンカさんが四本の魔槍を扱う二眼四腕の魔族と戦い続けていた。


 二十合、三十合と打ち合い続けている。


 リィンカさんが前に出ると素早くシュリ師匠も前に出て、左足の踏み込みから――炎の魔槍を突き出す。


「――<雷炎穿>」


『雷炎槍と雷炎魔活』

『雷瞬氣魄と闘魂と電光石火』


 と文字が浮かんで、


 ピコーン※<雷炎穿>※スキル獲得※

 

 シュリ師匠の<雷炎穿>は銀色の魔槍で防がれる。

 

 二眼四腕の大柄な魔族は、シュリ師匠とリィンカさんの猛攻を往なし続けてから前に出た。

 四本腕は太い、体幹もかなり強いと分かるし、その動きが速い。

 否、二眼に見えたが、四眼なのか。

 黒色と銀色の長い髪を後ろに纏めている。

 少しだけ侍風だ。カモシカのような二つの足を持つ。

 俊敏性はかなり高い。


 その四眼四腕の大柄な魔族と相対しているシュリ師匠とリィンカさんも巧みに動き、槍圏内を維持しながら魔槍の攻撃を繰り出し続けるが、そのすべての攻撃を往なす。


 シュリ師匠とリィンカさんも本気を出したか加速。

 体から炎のような<魔闘術>系統を爆発させる。

 魔槍の突きと払いが速くなった。

 シュリ師匠の魔槍を二つの魔槍で跳ね返し、リィンカさんの魔槍の突きを柄で引っ掛け右に誘う。 その影響でシュリ師匠とリィンカさんの動きが重なった刹那、四眼四腕の大柄の魔族は嗤いながら少し退いた。


 直ぐにシュリ師匠とリィンカさんは前に出ながら魔槍を突き出す。

 その連続的なシュリ師匠とリィンカさんの攻撃を三本の魔槍だけで凌ぎ続けていく。

 四眼四腕の魔族はかなり強い。


 その四眼四腕の魔族魔族の体がブレる。

 シュリ師匠の連続突きを、わざと左右に跳ね返しては何かを叫ぶ。

 リィンカさんが直ぐにフォローするように四眼四腕の魔族の足を狙う。


 片足を下げながら右下腕を振るい一つの魔槍で、そのリィンカさんの下段攻撃を弾く。

 と、横に出た四眼四腕の魔族は嗤う。

 続けざまにシュリ師匠が魔槍を突き出したが、四眼四腕の魔族は紅斧刃のような魔槍で斜め横上げて、その魔槍を弾くや否や、右下腕が持つ素槍の魔槍がリィンカさんに向かう。


 その魔槍が突如伸びる。と、リィンカさんの胸を貫いた。

 

「ぐあぁ」

「――母さん!」


 シュリ師匠が投げた回復ポーションを浴びたリィンカさんは一命をとりとめる。

 シュリ師匠は「――この四腕野郎が! 名を聞かせろ!!」と突撃を噛ます。


 が、四眼四腕の魔族は三つの魔槍の穂先でシュリ師匠の攻撃を往なす。

 シュリ師匠は加速し、次々に連続的な<刺突>を繰り出した。

 

 四眼四腕の魔族は<魔闘術>系統を強める。

 背中側に靡く銀と黒の髪が舞った。


 シュリ師匠の攻撃を四本の魔槍で受け止め始める。

 が、


「急に動きが加速したな、それが雷炎槍流の一端か――」

「ぐっ」


 力強い返し技でシュリ師匠を横に吹き飛ばす。

 大柄の魔族は追撃はせず、四本腕を左右に広げ、魔槍の穂先をそれぞれ斜め上に向けた。


 その行為を見たシュリ師匠は、


「……余裕を見せるんじゃねぇ――<雷炎槍・瞬衝霊刃>」


 <刺突>のモーションか?

 足下がブレて、雷炎が消えたようにも見える加速の突き技だが、炎の魔槍の周囲に幻想的な雷炎の槍が生まれている。


 これが、<雷炎槍・瞬衝霊刃>か――。

 が、一瞬の突き技を二つの魔槍で受け持った大柄の魔族は、地面を傷付けながら退いた。

 <雷炎槍・瞬衝霊刃>は<魔槍技>だろうから威力があるが、防ぎきった大柄の魔族は何者だ?

 

『雷炎槍と雷炎魔活』

『雷瞬氣魄と闘魂と電光石火』

『先天魔槍勢――雷炎槍・瞬衝霊刃』


『槍が来たりて、雷と炎が来たりて、善と悪の古き神々に関わることなく、魔界に雷炎が征くが如く『雷炎』と『雷瞬』と『闘魂』と『気魂』が雷炎槍エフィルマゾルに宿る。反躬自省のまま『八雷・炎霊天槍技』を獲得し、『極縮雷槍天把』を得るに至り、雷炎槍の絶招に繋がる』

 ピコーン※<雷炎槍・瞬衝霊刃>※スキル獲得※


「フハハ、雷炎槍流破れたり――」


 下段蹴りを足下に喰らったシュリ師匠は「ぐぁ」と転倒。

 その腹をまた蹴られ吹き飛んでいた。


「……フッ、雷炎槍流を扱う二人組がこの魔煌リトナイト地方で有名と聞いたが、この程度か」


 シュリ師匠とリィンカさんは、その大柄魔族を凝視し、


「……名を聞かせてくれないか」

「……」

「ガンジス。では、本気といこうか――<雷飛>――」


 両足に闇雷、黒い閃光が走ると、足下が爆ぜた。


 ――え?

 リィンカさんの上半身が消えていた。


 残った下半身から血が噴出して倒れる。


 ガンジスがいるところからまた爆発音。

 目にも留まらぬ速度で体に雷炎を纏っていたシュリ師匠の横に出ると、


「ぁ、えぁ――」


 と微かな声を発していたそのシュリ師匠の腹を薙ぐ――。

 血飛沫が散った。金属音も響くとシュリ師匠は吹き飛ぶ。


 シュリ師匠が持っていた魔槍は切断されていた。


「ほぉ~、我の<魔皇・無閃>に反応するとは。そして、先ほどの<魔槍技>といい、今も、炎の魔槍を盾にしても、普通は……首が飛んだはずだ。驚いたぞ……名を聞いておくべきだったか……」


 ガンジスはそう発言。

 ガンジスはシュリ師匠を追った。


 シュリ師匠は壁と衝突して動きを止めていた。


「……どうした、先ほどの動きは偶然ではないだろう。師の死を見ても動けたのだ。お前は魔人武王に挑めるほどの稟質がある……」

「……」


 シュリ師匠は血だらけの顔で片目を辛うじて開けながら、そのガンジスを見ていた。

 

「……先ほどの動きは偶然か?」

「……ぁ……」


 シュリ師匠は口が回らない。


「……然もありなん」


 と残念そうに呟くガンジスは三本の魔槍を消す。

 一本の十文字槍でシュリ師匠に止めを刺そうと<刺突>のモーションを見せた。


 が、そのガンジスは咄嗟に退いた。

 ガンジスが退いた地面には空から落ちてきた雷炎槍エフィルマゾルが突き刺さっていた。


 雷炎槍エフィルマゾルにリィンカさんの両手を広げている幻影が出現した。


 シュリ師匠は、その雷炎槍エフィルマゾルを見て双眸に力を取り戻す。

 片膝を床に突けながら立ち上がろうとした。


「……ぐぁ、お前を……倒す……」

「……」


 ガンジスは雷炎槍エフィルマゾルを見て、ふらつきながら立ち上がろうとしているシュリ師匠も見てから、「……雷炎槍流か……」とボソッと呟いてから身を翻して、その場を後にした。


 シュリ師匠の発狂した声が谺しつつ視界は様変わり――。


 雷炎槍エフィルマゾルを握るシュリ師匠が前進中。

 相対している相手は、四眼三腕の足が長い魔族。


 三合ほど打ち合ったところで――。

 シュリ師匠は薙ぎ払いから突き技のコンボで四眼三腕の魔族の槍使いを仕留めて倒した。

 振り返った先には、大きな城、複数の戦旗がはためく魔城ルグファントだった。


 と、普通の視界に戻った。


『弟子……わたしの記憶を……』

『あ、はい……すみません、プライベートを……』

『ふふ、本当に殊勝ね……弟子だからいいのよ♪ 強くなったようだし。後、わたしの使い方はトースンと変わらないからね』

『はい』


 闇雷精霊グィヴァは俺を不思議そうな表情で見ていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る