九百八十四話 悪・速・突の心意気とさすがの<神剣・三叉法具サラテン>
不気味な銅鑼の音があちこちから響く。
【魔の扉】には精神に影響がありそうな音を放つ部隊もいるのか。
そして、銅鑼に合わせたわけではないと思うが、宙空から飛翔してくる女魔術師は、
「うがぁぁ!!」
怒声と雷属性の魔力を全身から発して、金色の髪が持ち上がった。バチバチという音を金色の髪に集約させているように金色の髪が彩られる。その魔力と触れた頭巾と漆黒のローブは浮きながら燃焼し、代わりに素肌に密着した漆黒色の下着と魔法の上衣が展開された。
あの魔法の上衣は俺の<瞑道・霊闘法被>的な能力だろうか。そして、女魔術師の美しい嬌顔が露見――月の光源と篝火の明かりで女魔術師の顔がよく見えた。
しかし、美しい顔の眉間には皺があり、細い眉はつり上がっている。血走った蒼い双眸からは黒色が混じる雷属性の魔力が迸っていた。
憤怒の形相の女魔術師は俺を睨みつつ横へ旋回軌道を取ると、
「<導魔術>を扱う槍使い! パミネを返せ!」
そう叫び、凄まじい数の雷球を周囲に生み出す。
左腕に嵌まっていた腕輪を煌めかせながら胸を張るように両腕を左右に広げると、その両手に剣身が黄色い魔剣を召喚してきた。
その二つの魔剣の切っ先から稲妻のような魔力が迸って、周囲の雷球の一部と魔線で繋がった。
――雷属性の魔剣か。
――遠隔で雷球を操作できる?
女魔術師は、その左右の魔剣の切っ先を斜め下に向けた構えで俺を睨みながら飛翔してくる。
同時に複数の雷球を飛ばしてきた。
魔線で繋がっていない雷球も操作可能なのか。
それとも、他のスキルや魔法の下地で分岐する?
迫ってくる雷球の群れに向け――もう一度、<
十数個の雷球は三十メートル以上離れた先の宙空でブレながら止まった。
女魔術師は動きを止めて、
「魔線が見えない異質な<導魔術>……これでパミネを……おぇ……」
突然、吐いた。先ほど倒した炎を扱うパミネは女魔術師の親族か。その女魔術師は俺を睨みながら口元の汚れを袖で拭く。
そして、
「……が、強力な<導魔術>だろうと……<ラミトゥの業魔雷衣>を羽織ったわたしの<
そう発言すると、女魔術師は体から魔力を放出させつつ二振りの魔剣を前方に伸ばす。その切っ先から稲妻染みた魔力が異質な音を発しながら放出された。
二つの魔剣の剣身と雷球が繋がっていた魔線が太くなった。
続けて放出された稲妻が<
その複数の雷球と《
二剣を扱う女魔術師は喜んだ表情を浮かべて、
「――よし! <導魔術>を破った!」
――<
そして、何度も見たら警戒するのは当然だ。
負担も大きいから<
女魔術師はゆっくりと右斜めから前進してくる。
その女魔術師と共に飛来してくる無数の雷球を見ながら――。
<仙魔奇道の心得>を意識し発動。
額に魔力溜まりを得る。と同時に俺を狙う雷球をターゲティング。
その雷球目掛け――《
《
やや遅れて《
女魔術師は俺が放った水魔法を見て嗤う。
「ハッ、スキル――いや、無詠唱の魔法か? が、わたしの<
二つの魔法と雷球が衝突したが――。
複数の《
威力の高い紋章魔法の《
直に、あの雷球を貫くか――。
魔槍杖バルドークに<血魔力>を込めつつ右腕を背中側に運ぶ。
同時に体幹の筋肉を活かすように腰を捻り、<魔闘術>系統の<黒呪強瞑>を強めた。
そして、トルネード投法を意識。飛来してくる複数の雷球と女魔術師に向けて――。
魔槍杖バルドークをぶん投げる<投擲>を行った――。
宙を直進する血塗れの魔槍杖バルドークは、俺の<血魔力>を吸いながら無数の雷球を貫いた。その爆発して消えゆく雷球の魔力と稲妻のような爆風も喰らうように吸収していく魔槍杖バルドークは柄と竜魔石から紫色と蒼色の煌めきを発して、不気味な咆哮を轟かせながら女魔術師に向かう。が、まだまだ俺に飛翔してくる雷球の数は多い。
女魔術師は自身に迫る魔槍杖バルドークを見て、
「――な! わたしの<
そう叫びつつ剣身に稲妻が迸る二振りの魔剣を己の前でクロスさせる。
二つの魔剣と魔槍杖バルドークが衝突――。
「くっ、重い斧槍――」
女魔術師は全身から黒い魔力とバチバチと音を響かせている雷属性の魔力を発しながら魔槍杖バルドークの<投擲>を見事に防ぐ。女魔術師の体は細いが、防護服の能力と<魔闘術>系統の<黒呪強瞑>と雷属性の<魔闘術>系統を重ねた効果で身体能力が高まっているのかもしれない。しかし、俺の<投擲>の衝撃は殺せない。
女魔術師は魔槍杖バルドークに押されて中空を後退し続けた。
その後退していく女魔術師と、まだまだ俺に迫る無数の雷球を見ながら左手に神槍ガンジスを召喚。素早く、ハルホンクの防護服の肩をせり出させて斜に構えた。
目の前の雷球目掛け、神槍ガンジスの<光穿>を繰り出した――。
左腕ごと光槍と化すが如く輝きを放つ神槍ガンジスの矛がシュッと風切り音を響かせる。と、雷球を裂くように貫いた。裂けた雷球は爆発するように散ったが、その雷球には手応えがあった。
――雷球に物理属性もあるのかよ。ただの雷球ではないな。
――飛来してくる雷球の群れは、蒼い槍纓で対処しよう。
――神槍ガンジスに魔力を込めながら左手を引く。
螻蛄首と口金の間にある槍纓の蒼い毛が靡く。
と、その一つ一つの蒼い毛が瞬く間に蒼い刃と化した。
無数の蒼い刃が飛来してきた雷球を切断しまくる。
しかし、切断した雷球は細かく分裂するように爆発し続ける。
爆風には稲妻が混じっていた。そして、《
「――いけぇ、<
と叫ぶ。雷球の魔法か、スキルを連動させた遠距離攻撃の名か――。
直ぐに<火焔光背>を実行――続けて神槍ガンジスの柄を回転させた。
――<火焔光背>でフィラメント状の稲妻の群れと<
神槍ガンジスと槍纓で<
フィラメント状の稲妻を体のあちこちに浴びた。
痛いし、火傷を受けた感覚ッ、稲妻の衝撃が全身を走り抜ける度に体が痺れる。
その痺れは一瞬で回復するが――。
<
更に神槍ガンジスと槍纓の刃と刃の間をすり抜けた雷球が俺の右肩に衝突。すると、
「ングゥゥィィ!」
と衝突した雷球を吸い込んでくれた。
女魔術師は<投擲>した魔槍杖バルドークに押されながら後退しつつ驚愕顔を浮かべていた。
「な……」
<
爪先半回転を実行し、周囲の状況を把握しつつ――。
女魔術師に<投擲>した魔槍杖バルドークに向け<
<
魔槍杖バルドークの圧力から解放された女魔術師は二振りの魔剣を振るい、俺を睨むと、
「――異質な<導魔術>と魔槍を扱う槍使い! お前はわたしが殺してやる! その場から動くな!!」
「そりゃ無理な相談だろう。で、金髪の女魔術師さんに聞くが、そのラミトゥという名の複数の雷球は、スキルか魔法か、どっちなんだ?」
そう聞きながら、
左前方から駆けてくる槍使いと魔剣師をチラッと見る。
「あ? ラミトゥ様を知らない阿呆が!」
背後で<鎖>の盾が守る女性の位置を把握しつつ、少し後退。
そして、阿呆と発言してきた女魔術師に向け、
「阿呆で結構、で、ラミトゥとかいう存在は、下界の人肉が好みそうなクズたちが信仰する神々か諸侯の名なのか?」
「……はっ、そうだ。業魔雷平原の一角を所有している雷精魔王ラミトゥ様だ」
雷精魔王ラミトゥ。
聞いたことはないが、魔界にいそうな名だ。
「業魔雷平原か。その地名なら知っている」
「地名を知っていてラミトゥ様を知らないとは……」
「聞いたことがあるだけだ。【ブラックヘブン城】や【魔神血沼】に【血沼地下祭壇】がある辺りだろう」
魔界で配下となったトモンとジェンナの故郷が業魔雷平原。
大厖魔街異獣ボベルファが、グルガンヌ地方の南東へ向かい移動している正確なルートは知らないが、今、業魔雷平原を通っているのかもしれない。
女魔術師は瞳孔を散大させ、縮小させると、俺を見て、
「……魔界セブドラに行ったことがあるような口調だな……」
「あぁ、あるぞ」
「なんだと……」
女魔術師は雷球を生み出す行為を止めて距離を取る。
俺は左側にいるバルミュグらしき人物を見た。
広場中央の魔神具の回収に動いていないところを見ると、もう魔神具の役割は終えているのか、それとも俺の存在に警戒を強めた故の様子見か。
手前には槍使いと魔剣師がいる。
漆黒の鎧を着たバルミュグらしき人物は低空飛行を行いながら、頭上に魔杖を旋回させていた。
そのバルミュグらしき存在は宙空で止まった。
百メートル以上先だ。
そのバルミュグは、左手に持つ鉄扇に魔力を集結させた。
バルミュグは、
「戦闘奴隷たちは放っておく。ラミトゥ様の加護を持つオミアの<
「了解」
「あぁ、しかし、用心棒のミイベーは倒されたのか? 正門の上でも戦いは起きているようだぞ」
「屋上にも魔人サバエ兄弟などがいる。今は、あの魔槍使いに集中しろ」
「分かった」
槍使いと魔剣師とバルミュグはそう会話を行う。
が、女魔術師は返事をしていない。
【魔の扉】の最高幹部たちか。
そして、【魔の扉】が【テーバロンテの償い】内の支部の一つに過ぎないとなると、【テーバロンテの償い】のすべてを潰すのは中々苦労しそうだ……。
バルミュグは体から魔力と無数の銀の糸を放出。
その無数の銀の糸は、色を変えながら繭と魔法陣が融合したようなモノを複数生成。その銀色の濃い繭と魔法陣が融合したモノから体長十メートルは有に超えているだろう大きな甲虫が生まれ出た。
『驚きです』
『あぁ、
大きな甲虫も節々から銀の糸を放出している。
続いて、他の色違いの繭から、虫と魔宝石が融合している大きな百足も宙空に出現。
百足の皮膚は甲皮ばかりで肉厚、硬そうだ。
頭部もほぼ冑に見える。その造形から鎧将蟻を思い出す。
体の内、裏と呼べる腹から生えた多脚の節足には毛が生えている。
その鞭毛的な毛を有した多脚がワシャワシャと動いて気色悪い。
更に、体長十メートル前後の大きなマダニと蜘蛛の魔虫を幾つか周囲に生み出した。
うは、蜘蛛は分かるが大きなマダニとか勘弁だ。
先ほど倒した虫使いが使役していた大きな虫とは異なる。
大きな蜘蛛とマダニはどちらも強そうだ。
「バルミュグ、先に牽制に動くからな――」
「オミアも連携しろ!」
【魔の扉】の槍使いと魔剣師がそう発言して、前進してくる。
『ヘルメ、外に出ろ。背後の女性を頼む』
『はい――』
液体状の常闇の水精霊ヘルメは宙空に弧を描くように背後に向かう。
女性を守っていた<鎖>の盾は消去した。
「余所見してんじゃねえ――」
女魔術師は、無数の雷球を周囲に生み出し、それらの複数の雷球を俺に飛ばしてきた。
すると、俺に近付いていた槍使いと魔剣師が動きを止めた。
尋常ではない量の雷球を飛ばしてきた女魔術師に向け、
「オミア、俺たちもそいつに近付こうとしているのは見えているだろうが!」
「うるさい! お前らはそいつの体に抱きついて動きを封じろ!」
「あ? ふざけんな! お前の雷球を喰らうことになるだろうが!」
「オミア、とち狂ったか?」
「あぁぁウルサイ! そいつを倒すのはわたしだ! 倒すのに協力しないなら引っ込んでろ!」
「バルミュグ、どうするよ」
「……オミアに任せるしかないだろう」
一際低い黒暗の声だ。
周囲の広場の中を不思議と震わせたような気がした。
「……聞いただろ、ギュルガとゴツは下がりな! わたしが、<魔雷無極ラミトゥの加護>を活かして、妹の仇を取る!」
オミアと呼ばれている女魔術師と敵の仲間が言い合う。
オミアは、再び無数の雷球を周囲に生み出した。
雷球が反射した明かりが、不気味にオミアの顔を照らす。
オミアは、それらの雷球を俺に向けて放ってくる。
と、途中で雷球の幾つかが砕け散りフィラメント状の稲妻へと変化を遂げた。
そのフィラメント状の稲妻は周囲の雷球と繋がる。
やはり《
ヴィーネの上位魔法、烈級の《
【魔の扉】の幹部の槍使いと魔剣師は、
「妹がやられて、頭に血が上りすぎている」
「仕方ねぇ――」
二人は後退。バルミュグも少し後退。
二人は、バルミュグが生み出した甲虫と百足の近くに移動していた。
バルミュグは沈黙しながらも漆黒の鎧に小さい虫を融合させていく。
続いて、鉄扇にも虫を付着させて、節と天辺に骨刃のような物を生成していた。
見た目は騎士風のバルミュグだが、
そして、キルアスヒと同じように厖婦闇眼ドミエルのような魔界王子テーバロンテの虫を好む大眷属と契約を結んでいる可能性もある?
それとも魔界王子テーバロンテの直の眷族か?
とりあえず、
『沙・羅・貂、準備は良いか?』
『やっとか!』
『お任せを、器様』
『はい、【テーバロンテの償い】の邪教集団を斬り刻んでみせましょう』
『おう。【魔の扉】の幹部の槍使いと魔剣師に親玉のバルミュグへの牽制を頼む、<神剣・三叉法具サラテン>――』
左手の掌から神剣とその神剣に乗った沙・羅・貂が出現。
沙・羅・貂の三人は瞬く間に実体化すると、各自神剣に乗った状態でバルミュグたちに向かう。
「――なんだ」
「チッ」
「ほぅ――」
バルミュグたちの相手は<神剣・三叉法具サラテン>たちに任せよう。
すると、女魔術師オミアが、
「召喚師でもあるのか。が、お前の相手はわたしだろうが! <
複数の雷球が爆発しながら俺に迫る。
<
<
<血道第一・開門>を意識。
全身から大量の血の<血魔力>を放出させた。
同時に、血の海を創造し、<血鎖の饗宴>を発動――。
大量の血を活かした無数の<血鎖の饗宴>が電気の霧と呼べる<
血の大海を彷彿とさせる<血鎖の饗宴>は<
「――え!! わ、わたしの<
オミアは声を震わせる。
そのオミアに対して……。
血の壁と血のカーテンを創造しつつ血鎖の群れを操作。
血鎖の一つ一つは小さいが、融合させたりが可能な<血鎖の饗宴>は自由度が高い。その<血鎖の饗宴>を一つの生き物として動かした。
すると、後方から、
「――閣下、女性と槍使いを守りながら壁がある端のほうに後退しつつ、周囲の【魔の扉】の人員を魔法で叩きます」
ヘルメの言葉に右手をあげながら、背中越しに、
「了解、他にも【魔の扉】と戦っている方々がいるようだな。その方々も助けられたら頼む」
「はい、お任せを――」
「お前! 会話してんじゃねぇ――<
そう叫ぶオミアは複数の雷球を飛ばしてきた。
――<血鎖の饗宴>を槍状に変化させる。
その槍状の<血鎖の饗宴>の穂先が、槍衾となって雷球を下から迎撃――雷球を串刺しにしていく。
その串刺し公真っ青な<血鎖の饗宴>を――。
細かな十字架状に変化させつつ――。
オミアと俺の間の宙空に展開させていく。
<
その右にいるオミアとの距離は百メートルもない。
左斜め前方にいるバルミュグたちは徐々に後退して百メートル以上の間合いとなった。
<血鎖の饗宴>で、分裂しながら融合を繰り返す雷球のすべてを貫いていく。
「くそがぁぁ――」
オミアは再び<
<血鎖の饗宴>を操作――。
一つ一つの血鎖を蛇が動くように扱う。
雷球を宙空で迎撃し、稲妻をも貫きまくる。
オミアは血鎖の量に対抗しようと連続的に<
が、すべて無駄だ――。
<血鎖の饗宴>で雷球の<
破壊した雷球は細まって《
その稲妻も<血鎖の饗宴>が貫き蒸発させていく。
雷球の<
<血鎖の饗宴>をバックに雷球などが爆発し稲妻が蒸発していく度に、超高層紅色型雷放電のような発光現象が起きて消えていく。
スプライトが踊るようで非常に綺麗だ。
古代の壁画に描かれているようなスプライトにも見える。
しかし、<
魔力量も尋常ではない――。
半身の姿勢を維持しながら女性と槍使いを守るヘルメのほうを見る。
ヘルメは他の魔剣師と槍使いも助けていた。
大丈夫そうだ。
相棒とユイとレベッカに皆は、まだ正門からこない。
門長屋の落とし格子が落とされたか?
それとも<紅蓮嵐穿>の影響で通れなくなってしまった?
狼煙が上がっていた屋上に歩廊が騒がしい。
屋上にいた射手と魔術師たちを倒すことを優先している?
その直後、
「ンンン、にゃおおお~」
と、大きい黒猫ロロディーヌに乗ったユイ、レベッカ、カットマギー、レンショウ、カリィが地面に着地。
「巨大な黒猫に新手だぞ!」
「あの衣装! 【天凜の月】の連中だ!」
「潰せ! 倒せ!」
「押し出せ!」
門長屋の内部で爆発音が響く。
と、門の内側からレザライサたちが現れた。
大通りの戦いを制したかな。
ソリアードとエキュサルさんの姿が見えないから、隊を残したか。
「――【天凜の月】と【白鯨の血長耳】の連中だ」
漆黒色のローブを着た【魔の扉】の兵士が相棒を取り囲む。
レベッカ、ユイ、カットマギー、カリィ、レンショウが、相棒から飛び下りて、それぞれ四方八方に前進しながら、漆黒色のローブを着た連中に斬りかかる。
ユイとレベッカは俺と位置が近い。
「――シュウヤ、【魔の扉】の兵士と戦っている方々は味方なのよね」
「不透明だが、味方と思おうか。二人とも気を付けてくれ」
ユイとレベッカにそう伝えた。
「うん」
「了解――」
ユイは魔刀アゼロス&ヴァサージの二刀を振るう。
魔剣師の足を切断し、倒れかかる魔剣師の頭部を突き刺したユイは前進し、魔槍を持つ槍使いとの戦いに移行。
<刺突>のような攻撃がユイに向かう。
ユイは頭部を傾け<刺突>をあっさり避けると同時に二振りの魔刀で袈裟斬りと払いを行った。
肩と胸を両断された槍使いの体は四つに分割される。
蒼炎を体に纏うレベッカはユイの真似をしたわけではないと思うが、ジャハールと城隍神レムランを使う。
ジャハールで漆黒色のローブを着た魔法使いの火球を貫く。
と、ユイに掛け声を発して前進。
ユイの反対側にいた漆黒のローブを着た者に近付いて、城隍神レムランを振るう。城隍神レムランの先端が、漆黒色のローブを着た者の首に吸い込まれ、その首を刎ねる。
おぉ。
城隍神レムランの先端からはナイトオブソブリンの歯牙が伸びていた。
レベッカが可憐な魔剣師に見えてしまった。
二人は漆黒色のローブを着た者と戦っていた方々を助けつつヘルメの下に移動。
すると、
「チッ、次から次へと……海賊共に他の組織も突破されたのか……が、お前だけは絶対に倒す――」
オミアは複数の雷球を飛ばしてきた。
が、<血鎖の饗宴>で対応するのみ。あ、<血鎖の饗宴>を止めた。
相棒が、オミアに向け、
「にゃご――」
口から紅蓮の炎を吐いた。
俺に向けて放たれてきた複数の雷球を紅蓮の炎が飲み込むように消し飛ばすと、大きい
魔雅大剣を持つ触手と複数の触手をオミアに向ける。
大きい
巨大だから、あのまま甘えられると、俺は吹き飛んでしまう――。
と、
「チッ、黒猫め! 邪魔なんだよ!」
オミアはそう叫びつつ――。
凄まじい数の雷球を周囲に生みつつ宙を飛翔して距離を取る。
そのオミアの金色の髪が電気を帯びて見えた。
バルミュグより、このオミアのほうが強いのではないか?
「相棒、無理に追うな」
「ハッ、なにが相棒だ――」
反転したオミアは怒りの形相で、大きい黒猫のロロディーヌへ向け雷球を飛ばしてきた。
ロロディーヌは、
「ンン、にゃごァ」
再び、紅蓮の炎を吐いた。
その炎は指向性の高いビームのような炎で、雷球を数個貫いてオミアに向かう。オミアは「チッ、直にわたしを――」と言いながら後退。
――ビームのような相棒の炎を紙一重で避ける。
と、二振りの魔剣を振るいながら、相棒に向けて複数の雷球を飛ばしてきた。
大きい
同時に吐いている炎を扇状に変化させながら複数の雷球を消していった。更に、触手骨剣と魔雅大剣を振るいながら走り、自身に迫る雷球を次々に切断していく。
オミアは真上に退いた。
「ここまで<
「ンン、にゃお」
「ガルルゥ」
と唸る。
相棒に、
「屋上にいた敵は倒したのか?」
「にゃお~」
「そっか、左で沙・羅・貂が戦っている鉄扇持ちがバルミュグだ。しかし、オミアを先に倒すとしよう」
「にゃごぉ~」
相棒の『分かったにゃ』という意味の気合いが隠った返事を聞いたオミアは、
「倒すのはわたしだ……」
と言いながらも後退。
ならば、先に沙たちのフォローをするか――。
バルミュグに向け左手首の<鎖の因子>マークから<鎖>を突き出させる。
バルミュグは後退しながら<鎖>から逃げた。
が、<鎖>の速度が予想外だったのか鉄扇を振るって<鎖>を弾く。直ぐに<鎖の念導>を使い、弾かれた<鎖>の先端をバルミュグに向けた。が、膨大な魔力を発した蜘蛛が吐いた糸が<鎖>に絡まって止まってしまう。
<鎖>の表面には梵字が輝いていたが、その梵字が消える。
同時にバチバチと音が目の前から発生、鐘の音が脳内に響いた。
――嫌な予感がしたから<鎖>を消去。
あの蜘蛛、俺の精神に干渉しようとしたのか。
そんな蜘蛛を使うバルミュグはやはり要注意。
一方、沙・羅・貂は巨大な虫たちを往なし、次々と斬り伏せながら、槍使いと魔剣師を翻弄していた。
三位一体の攻撃は強力だ。沙が魅せるような側転から横移動。
ふんどしのような紐パンティを晒した沙は魅惑的だ。
と、神剣を消した沙は、倒立を行う姿勢から両手で地面を突く。
高々と舞い上がった沙は宙空で身を捻り、巨大な百足に近付きながら神剣を片手に召喚――その神剣を<投擲>?
百足の硬い甲皮に跳ね返された神剣を両足で捕らえた。
そのまま両足に神剣を乗せたまま巨大な百足に突貫し、百足の付属肢と多脚を斬り刻み、すべての足を斬り落とすことに成功。
おぉ、沙の<御剣導技>が決まった。
「――これが妾の<御剣導技>じゃ!」
そう発言すると、反転機動――。
両足から片手に神剣を移す。
と、巨大な百足の周囲を旋回しつつ魔宝石の一部を削るように袈裟斬りと逆袈裟の剣舞を繰り出す。
可憐な剣技だ。
甲高い金属音が周囲に響いた。
沙が目立つ。
バルミュグが鉄扇から骨刃をその沙に向けて飛翔させた。
沙は、そのバルミュグの遠距離攻撃を悠々とした機動で避けていたが、念の為、バルミュグに向け――牽制の<鎖>を飛ばす。
が、直ぐに巨大な蜘蛛とマダニが俺に反応。
「フシャァァ」
「ギュアッシュァ――」
と口から<鎖>と<鎖>を発している俺に向けて糸を飛ばしてきた。
逃げるように横移動。
すると、羅が神剣の切っ先を巨大な百足に向けながら、
「<瞑水・曲道>――」
スキルを使用して螺旋加速を行い宙空から突進――。
羅の持つ神剣から水が零れると、その水の効果か神剣が少し膨らんだ。その太くなった神剣を細い片手で持つ羅は直進を続ける。
神剣の切っ先が百足の硬そうな甲皮をぶち抜いた。
「ガァァァァァ」
と悲鳴を発した百足の上半分は腐ったように消える。
更に貂がその百足に直進。
「喰らいなさい――<水仙鐘剣狐>――」
神剣を振るい回し、百足の下半分を硬い甲皮ごと斬り刻む。
百足をバラバラにして倒し、小さい虫を尻尾から発した魔刃で斬り刻む。バルミュグの周囲に出現していた小さい虫たちは萎れるように消えていく。
剣技に魅了されて分からなかったが、貂は毒のようなスキルを放った?
一方、沙は蜘蛛とマダニの糸の攻撃を避けながら魔剣師に向かった。
突きに逆袈裟斬りからの真横に一閃と、速い剣術を繰り出す沙に圧倒された魔剣師。魔剣の反撃はできず防御一辺倒となる。
続けて沙は、
「<水神の氣>、<水神霊妙剣>――」
連続でスキルを発動させた。
沙の魔法衣が閃光を発して体がブレた。
神剣の袈裟斬りから、液体の注連縄? 神剣から剣線のようなモノが二つ生まれ出た刹那――。
いきなり魔剣師の片腕が切断された――。
速すぎて判別できなかったが、神剣から飛び出たモノは液体の注連縄?
それとも液体の白刃による唐竹割りか?
注連縄と言えば、まさかだが。
更に、羅の魔力の糸を使った剣術と貂の連続突きが、片腕を失った魔剣師の腹に決まる。
【魔の扉】の幹部の魔剣師は悲鳴を発することもなく倒れた。
――見事だ。
バルミュグは、鉄扇を振るい骨刃を<神剣・三叉法具サラテン>に飛ばすが、三人は仙女の如く空を舞い、神懸かった機動で骨刃の遠距離攻撃は掠りもしなかった。
槍使いも<黒呪強瞑>を使い加速して――。
三人を追う。が、沙と羅と貂は<御剣導技>で槍使いの魔槍をあしらうと、宙空ターンから一斉に反撃の突き技スキルを使う。
槍使いは面食らうと防御を意識。
槍使いは後退、追撃に出た<神剣・三叉法具サラテン>たち。しかし、そこにバルミュグと魔虫の攻撃が飛来。
俄に三人は散開し、各個別々に動きながらもバルミュグと魔虫の攻撃を避けまくる。
と、反転してバルミュグと魔虫と槍使いに突貫して剣撃を浴びせては反転し退く。
沙・羅・貂は宙空で位置を交換。
統率をもった剣舞を行うように、再び槍使いと魔虫に集中攻撃。
巨大な甲虫は後退――。
三人の見事な戦術で、バルミュグたちを翻弄している。
<御剣導技・沙剣桜花擢>はまだ使用していない。が、チャンスがあれば、大きな甲虫、大きな蜘蛛、大きなマダニかバルミュグに向けて繰り出すだろう。
同時に【ラゼルフェン革命派】のギュララがどれほどの相手だったか、よく分かる。
そして、残りの【魔の扉】の幹部は槍使いとバルミュグとオミアだけだ。
オミアは凄まじい数の雷球を、俺と
そのオミアは、俺を見て、
「……クソ……わたしが、お前を倒すんだ――」
オミアはぶつぶつと言いながら体から質の高い雷属性の魔力を放つ。
「<
オミアが生み出し続けている雷球のせいで、オミアの体が見えなくなった。
雷球の数が異常だ。
そして、質の高そうなフィラメント状の稲妻。
恐怖を感じながらも<血鎖の饗宴>で雷球の<
前進しては後退しつつ――。
<血鎖の饗宴>を使う。
そして、<魔軍夜行ノ槍業>スキルを意識して実行。続けて<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>のスキルも実行。
腰ベルトの金具から下がった魔軍夜行ノ槍業が自動的に持ち上がる。
厚い革状の紐ごと魔軍夜行ノ槍業が煌めいた。
『使い手、我を――』
八槍卿の師匠たちの言葉は途中で消える。
その魔軍夜行ノ槍業から将棋盤のような魔法陣が現れると、真上に大きな駒の<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>が出現した。
将棋盤の魔法陣は腰から下がった魔軍夜行ノ槍業の中に吸い込まれて消える。
大きな駒には複数の梵字が形成している輪っかが囲う『角』の魔法の文字も浮いていたが、
『八咫角』に変化した。
その『八咫角』の回りにも梵字のような魔印が複数出現していく。
――<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>の大きな駒を回す。
――表と裏に刻まれている『魔界九槍卿』と『風槍流』の文字は変わらない。
――お?
『魔界九槍卿』が見える度、八人の師匠たちらしき顔の幻影が見え隠れ。
その大きな駒の<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>と魔軍夜行ノ槍業は太い魔線で繋がっている。
そして、<
その直後、<闘気玄装>を強めた。
発動中の<
「相棒、前に出るぞ、背後を頼む」
「ンン」
将棋の駒と似た<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>の大きな駒を盾にしつつオミアに直進――大きい駒でオミアの姿は見えない。
が、掌握察でしっかりとオミアと背後の
「く、くるなァ――」
オミアは必死に雷球を生み出し放ってくる。
大きい駒にぶつけてきた。
<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>の大きな駒から衝撃音と振動が連続的に響いてきたが構わず前進――。
更に周囲に展開させている<血鎖の饗宴>で<
大きな駒の<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>とオミアが衝突――。
大きな駒の<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を消去。
「――ぐぇッ」
<戦神グンダルンの昂揚>を発動し前進。
吹き飛ぶオミアを追い、槍圏内から――。
右手の魔槍杖バルドークで<血穿・炎狼牙>を繰り出した。
紅矛を<血魔力>が覆う<血穿>がオミアの胸元に向かい、素直に<血穿>だけで終わるかと思われた。
が、オミアは雷魔力を体から発し二剣を振るいながら体勢を持ち直すと、
「まだだァァ――」
と、懐から出したネックレスと二振りの魔剣で魔槍杖バルドークの紅矛を防いできた。
刹那。
血の炎が魔槍杖バルドークから吹き荒れた。
血の炎は、尻尾の如く俺の左腕を回ると、紅蓮の炎を纏った狼が紅斧刃付近から出現し、オミアに直進。
オミアは二つの魔剣で防御の構えを取る。
その防御を崩すように血の炎狼は噛み付きを行った。オミアの魔剣を握る指が血の炎狼に触れて溶けると、「ひゃぁ」と悲鳴を発したオミア、魔剣を落とす。
防御が崩れた一弾指、オミアの胴体の約半分が抉られたように消えていた。
<ラミトゥの業魔雷衣>も当然、歪な形で破れていた。
オミアの半分の胴体を喰らった<血穿・炎狼牙>の血の炎狼は、直進し続けて、【魔の扉】の兵士数名を喰らいながら壁と激突――周囲に炎の衝撃波を発生させる。
<血穿・炎狼牙>の血の炎狼は消えたが、小屋を燃焼させていた。
「ンン」
そして、噛み付くと、オミアの死体を持ち上げて、俺の前に運んできた。
「――相棒、よくやった」
「にゃお」
当然、オミアの体は血塗れ、死んでいる。
露出している内臓と脊髄の部分は血の炎でまだ燃えていた。
……オミアか。
怒った表情は怖かった。
【テーバロンテの償い】の【魔の扉】は邪教の極みだと思うが、妹に対する愛は本物だったと思いたい。
俺が殺しといてなんだが……。
済まん、と祈っておこう――。
拝みながら南無阿弥陀仏、アーメン。
胸元が光った。
気にせず――片膝で地面をついて、その死体に残っていたベルトと袋と懐付近の……ネックレスを取る。
ネックレスから不思議な魔力を感じた。
「……ングゥゥィィ、マリョク、アル!」
「おう。ハルホンク、食べずにこれらの品の回収を頼む」
「――ングゥゥィィ」
すると、前方から漆黒色のローブを着た【魔の扉】の斧使いが寄ってきた。
幹部ではないと思うが、
「【魔の扉】の連中はまだ多いな」
そう言うと、
「ンン、にゃご――」
鳴き声を発した
触手から出した骨剣で、前方の漆黒色のローブを着た【魔の扉】の斧使いの斧を弾くと、他の触手骨剣が、斧使いの腹を貫いて倒していた。
斧使いの死体を遠くの【魔の扉】の兵士に放ったロロディーヌは、左側へ跳ぶ。
矢が、そのいた地面に刺さった。
その射手に向け
俺から少し離れた。射手の首を喰らうように飛びついて噛み付き倒すと、【魔の扉】と戦っていた見知らぬ方を守るように近付いた
凄く格好いい。
すると、右側の壁と壁の扉がない部分から【魔の扉】の者たちが現れた。
俺に寄ってくる。
オミアの死に方を見ても、逃げずに戦うつもりか。
「我らのシマを荒らしやがって」
「今月の上がりがぱぁだ」
「賭場の客に金はそのままだぞ……」
「あぁ、地下の魔薬も船渠の船に運んでねぇし、船から運び入れた魔薬をどこかに運ばねぇのか?」
「幹部のトーマスは儀式に参加していないから地下だと思うが、地下にも【天凜の月】と【白鯨の血長耳】の連中が侵入していたら……」
「……あぁ……ま、あの槍使いと黒い獣をぶっ殺せば済むだろ」
「お前は二階の守りと正門のミイベーの隊か。あの槍使いがオミアさんを倒したんだ」
「なんだと!」
「……そいつの血肉と魂は価値が高そうだ」
「あの血肉をテーバロンテ様に捧げよう――」
オミアの死体は調べきっていないが……。
俺に向かってきた複数の槍使いと斧使いと魔剣師か。数は十人前後。
あいつらは邪教に心底染まっているようだ。
俺も悪だが、悪なりに小さな
悪・速・突の心意気でな……。
が、冷静に――。
バルミュグたちと戦う<神剣・三叉法具サラテン>たちと、助けた方々を守りつつ戦うヘルメたちと、【魔の扉】の魔塔の内部に侵入しているレザライサたちの動きを確認。
レザライサも己に近付いてきた【魔の扉】の兵士たちを魔剣ルギヌンフで薙ぎ払って倒していた。
俺に寄ってきた槍使いは、
「――余裕こいてんじゃねぇ」
槍使いの一閃が横から迫る。
俄に両手握りの魔槍杖バルドークの竜魔石で地面を突き、<戦神グンダルンの昂揚>を再度実行。
「――余裕? お前らが――」
魔槍杖バルドークに体重を預けるように体勢を横に傾け、「俺の槍の間合いに入っていなかっただけだ――」という発言終わりに槍使いの胴体に<豪閃>のような右足の蹴りを喰らわせる。
ドッと重低音が響く。
衝撃波が槍使いの蹴りを喰らわせた反対側の脇腹から迸った。
「ぐぁぁぁ」
槍使いは異常な形に胴体が曲がりながら吹き飛ぶ。
それを見ながら、横斜めの視界を修正するように両足で地を突くと同時に、体勢を直すように両手で魔槍杖バルドークを振るう<豪閃>を発動――。
横から来た魔剣師が繰り出した魔剣の突きと槍使いの突きを、紅斧刃の<豪閃>で退けた。
再び、魔槍杖バルドークをぐわりと回す<豪閃>を放ちながら前進――。
突きを払った魔剣師の腹を紅斧刃で薙ぐ。
血飛沫を吸収しつつ、返す魔槍杖バルドークの紅斧刃で、右から迫った槍使いの槍の穂先を弾き、爪先半回転で右斜め前の魔剣師が繰り出した袈裟斬りを避ける。
と同時に後退しながら――。
肩から後頭部へ魔槍杖バルドークを通す風槍流『案山子通し』を実行――。
魔槍杖バルドークの柄に両手を乗せながら、文字通り案山子が回るように体を横回転させる。
と、足下に薙ぎ払いが迫るが、片足を上げて薙ぎ払いを避け、直ぐにその槍の穂先を踏み付け武器を封じた。
近距離で無数の<仙羅・絲刀>を繰り出した。
「げっ」
得物を離していない槍使いと背後の魔剣師に<仙羅・絲刀>の魔力の糸の刃が衝突。
魔槍と魔剣の柄と衝突した魔力の糸の刃は弾かれたが、頭部に魔力の糸の刃が突き刺さると、槍使いと魔剣師は口を拡げたまま体が弛緩、武器を落として、魔力の糸の刃に寄りかかるように前のめりの体勢となった。
<仙羅・絲刀>が消えると倒れる。
と、左右から魔剣師と斧使いが、
「<飛剣・弧斬剣>――」
「<厳斧・馬浮落>――」
白刃と斧のスキルを繰り出してきた。
半身の姿勢で、右腕のイモリザを意識。
第三の腕に聖槍アロステを握らせ、斜め下に穂先を傾ける――。
<飛剣・弧斬剣>の刃を聖槍アロステの柄で受けた。
左手に逆手に鉄の曲大剣を出現させて、曲大剣の刃を新たな肘の籠手として扱う。
その曲大剣の刃で、馬の頭部の幻影を発した斧の斬撃を受け流すように左腕を上げた。
そこから<双豪閃>を繰り出す。
魔槍杖バルドークの紅斧刃と聖槍アロステの十字矛と鉄の曲大剣の刃が魔剣師と斧使いの魔剣と魔斧の刃を弾き、その肩と胴体を抉るように斬る。
「「げぇぁ――」」
倒れゆく魔剣師と斧使いを見ず、前傾姿勢で前進――。
【魔の扉】の槍使いと魔剣師が間合いを詰めてきた。
「くぁぁ」
「仲間を! クソが!」
奇声を発した槍使いが先――。
その槍使いは魔力を発した魔槍で<刺突>を繰り出してきた。
その穂先を下から紅斧刃の上部で持ち上げるように弾く。
続けて、第三の手が持つ聖槍アロステの<刺突>の反撃を返す。
槍使いの胸を十字矛が穿った。
そこから魔剣師の動きを見ながら、左斜め前に出た直後――。
左手が握る鉄の曲大剣を斜め下から振るい、<飛剣・柊返し>を実行。
重い鉄の曲大剣が、魔剣師の下腹を潰すように切断して吹き飛ばす。
その魔剣師の死体は背後の漆黒色のローブを着た三人と衝突、三人は地面に転げた。
その転げた漆黒色のローブを着た者たちへ<
<
一人は足下に光の網が展開されて、片足が地面に捕らわれる。その一人の漆黒色のローブを着た者は地面を這っていたが、その頭部を《
壁と壁の間の抜け道か不明なところから現れた一つの小隊を潰したかな。
「ンン」
「ひゃぁ~」
「ロロ、ヘルメたちのところにその方を運んでくれ。そして、俺はバルミュグたちと戦っている沙たちのところに参加するから、ヘルメたちの傍で戦うかレザライサたちを守る戦いをするかは相棒の自由だ」
「にゃあ、にゃ、にゃお~ん」
鳴き声の意味は分からないが、
相棒の判断力は高い。だから仲間を守るにしてもレザライサたちの掃討戦に参加するにしても、たしかなものになるだろう。
そう考えながら<神剣・三叉法具サラテン>たちが戦っているところに向かった。
バルミュグと槍使いはまだ残っている。
――大きいマダニが沙・羅・貂の攻撃で倒れた。
さすがの<神剣・三叉法具サラテン>だ。
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