九百五十八話 魔人武王ガンジスの弟子ハディマルスとの戦い
右から出ようとしたが、魔刃が飛来。
その魔刃はゼメタスから放たれている虹の魔力と衝突して弾かれた。
「ぬおぉ~髑髏騎士ではない! 閣下の盾の魔界沸騎士長ゼメタスである!」
「同じく閣下の盾、魔界沸騎士長アドモスであるぞ!」
――星屑のマントからも宇宙的な魔力が迸った。
魔界沸騎士長ゼメタスとアドモスの迫力は凄まじい。
「ホドカンズ、動きを止めるな!」
「動けない!! 髑髏騎士が放つ盾の魔力に気を付けろ、おまえたちの攻撃や魔力を利用するタイプかもしれん!」
【闇剣の明星ホアル・キルアスヒ】の幹部が叫ぶ。
ゼメタスとアドモスは虹色の魔力を放つ骨盾で【闇剣の明星ホアル・キルアスヒ】の幹部連中が繰り出している様々な攻撃を防ぎながらゆっくりと前進している。
髑髏騎士たちが玉座の王と貴族に挑むような構図。
そのゼメタスとアドモスは、斧使いと同様に歩みを止めた。
さすがに二十人はいる最高幹部連中の攻撃はキツイか?
虹色の魔力を放っている骨盾の輝きが強まった――。
魔界沸騎士長ゼメタスとアドモスの兜も煌めくと、槍烏賊のヒレのような左右の物が回転しながら魔力を放出し、魔力は魔線となって骨盾と星屑のマントと繋がった。
防御能力を高めたようだ。
更に、骨盾と槍烏賊の兜の縁が真っ赤に変色し、囂々と炎を放ち始める。
周囲に迸る虹色の魔力にも炎が混じった。
大気圏に突入するシャトルの翼に見えた。
炎の乱気流のような虹色の魔力は部屋の内装を引き剥がすように展開。
虹色の魔力に触れた箪笥、机、椅子、カーテンに壁の表面が爛れて燃えていく。
虹色の魔力に触れているオーク系の斧使いが『進めない』と叫んでいたように、魔界沸騎士長ゼメタスとアドモスは、【闇剣の明星ホアル・キルアスヒ】の幹部連中が放っている遠距離攻撃を活かしているようだ。
重要な橋頭堡を築いた魔界沸騎士長ゼメタス&アドモスの後ろ姿が渋すぎる。
夜王の傘セイヴァルトの傘は、ゼメタスとアドモスがぶち抜かれてしまった後のルシエンヌの防御用と考えていたが、魔界沸騎士長ゼメタス&アドモスは素直に凄い魔界騎士であり、優秀な輩だから大丈夫だった。
そんな頼もしい魔界沸騎士長ゼメタス&アドモスの背中に手を当てる気分で、
「魔界沸騎士長ゼメタスとアドモス、ありがとう――」
「にゃお~」
と言いながら相棒とアイコンタクト。
同時に<血道第三・開門>――。
<
――ゼメタスの骨盾から周囲を囲うように放出されている魔力層から俺と相棒は出た。
部屋の右側に出た直後――。
魔剣師は、「――<血魔力>の加速術か!!」と叫び俺の動きに反応、二つの魔剣を構え直す。
魔剣師の背後の射手も魔剣師の肩越しから魔矢を放ってきた。
「黒豹もいる! 速い、けど、捉えたわ――」
前進する速度を落とした。
左斜め前方にいる相棒も速度を落としながら触手から出た骨剣で魔矢を弾いてくれた。
「チッ、槍使いは魔獣使いでもある?」
「――右剣と左剣、骨騎士の背後から出た奴を注視しろ」
「「――了解」」
この声と返事は、目の前の魔剣師と射手ではない。
部屋の奥、玉座にいる他の【闇剣の明星ホアル・キルアスヒ】の幹部たちの声だ。
『ヘルメ、<精霊珠想>を頼む――』
『はい――』
再び――飛来してくる四つの魔矢を視界に捉えながら――。
液体ヘルメが左前方に拡がった。
その液体ヘルメの神秘世界と現実世界の重なりは不思議だ。
魔矢は速いが、もう慣れた――飛来してくる三つの魔矢を夜王の傘セイヴァルトで弾いた。
相棒が一つの魔矢を弾く。
「ガルルゥ」
吼えた
射手は素早く魔矢を番えた。
<速連射>などのスキルか。
再び魔矢を、三つ連続的に放ってきた。
<精霊珠想>の神秘世界越しに、その三つの魔矢と魔剣師の魔剣を凝視。
……ヴィーネの弓道の先生のような立ち居振る舞いを見ているだけに、三つの魔矢の速度が遅く見えた。
魔剣師も二つの魔剣を振るって魔刃を二つ繰り出してくる。
前進しつつ――夜王の傘セイヴァルトの傘を畳む。
槍状態に変化させた夜王の傘セイヴァルトは夜王の槍と呼べる。
「
「ンン」
夜王の槍を微かに上下に動かし、一つの魔矢と一つの魔刃を外に弾いた。
同時に、俺の左側の防御を行うヘルメの<精霊珠想>から上下左右へ蒼い水の手が無数に伸びて、二つの魔矢と一つの魔刃を捕まえる。
その魔刃と魔矢をへし折るように<精霊珠想>の中に引き込んで吸収していた。
前進を続けながら――。
「にゃ~」
相棒は俺の背後から付いてくる。
<夜王鴉旗槍ウィセス>は使わず――。
――<魔闘術の心得>――。
――<闘気玄装>。
――<経脈自在>。
――<仙魔・
――<仙魔術・水黄綬の心得>。
――<仙魔奇道の心得>。
――<滔天内丹術>。
スキルと恒久スキルを連続発動、意識。
<血道第一・開門>こと第一関門も意識。
<血魔力>を体の一部から放出させる。
その<血魔力>で手品を行うように夜王の傘セイヴァルトを消した。
無手状態で――。
《
霧の魔力がドッと拡がる。
斜め左後方にいる相棒を含めた背後の皆も霧魔力で隠れたはず――。
更に
「血の濃霧!?」
「おおいぃぃ、髑髏騎士が見えなくなった!」
「煙幕、否、濃霧で分身!?」
「――消えた、あ!?」
煙幕代わりは成功――。
「<速応眼>、<鳥魚籠魔眼>などに切り替えろ! 右と左に敵の新手か――ぐぁ」
「エイバークが!」
「え? 光線の矢?」
「一瞬見えた。左に出たのは槍使い、右からダークエルフだ。白髪の槍使いとルシエンヌも出たぞ、次々と!!」
「見えない先鋒の髑髏騎士は捨て置け、橋頭堡を――あ――」
敵の多数の警戒する声と倒される音が左前方から響く。
【闇剣の明星ホアル・キルアスヒ】の連中は全員が、<魔闘術の心得>と<闘気玄装>と<仙魔・
翡翠の
キサラがダモアヌンの魔槍で<刃翔鐘撃>を放つ姿を思い浮かべながら、<仙玄樹・紅霞月>を発動――。
<仙魔・
続けて――。
右手に魔槍杖バルドークを召喚。
引いた穂先の先端を銃口に見立てながら《
更に《
魔剣師と射手が放った魔弾と魔矢と三日月状の液体と樹の血濡れた三日月状の魔刃が衝突――。
一部が相殺された。
が、一部の樹の血濡れた三日月状の魔刃は魔弾と魔矢を突き抜け、射手と魔剣師に向かった。
魔剣師は二振りの魔剣を振るい回し、魔刃を前方に飛ばし、樹の血濡れた三日月状の魔刃を相殺する。
己の魔剣でも《
見事な魔剣術で、俺の遠距離攻撃を連続的に防ぐ。
が、氷魔法は無数に放っている。
魔剣師は、その物量の前に押されるように二振りの魔剣を振るいながら少し後退。
魔剣師を盾にしている射手は魔矢を放つ。
魔矢は<仙玄樹・紅霞月>の樹の血濡れた三日月状の魔刃や《
が、次の樹の血濡れた三日月状の<仙玄樹・紅霞月>が魔矢を切断。
その<仙玄樹・紅霞月>の樹の血濡れた三日月状の魔刃が魔剣師の頭上を飛び越え背後の射手へと向かう。
魔弓で防ごうと振り上げた片腕と衝突した<仙玄樹・紅霞月>は、射手の二の腕から肘を抉り抜け、背後の壁と衝突。
腕が千切れたように曲がった射手は「ひぃぁ」と悲鳴を発し、ざっくりと抉れた傷から血飛沫が舞った。
その傷付いた射手の口や体に《
射手の頭部は穴だらけ――。
革鎧ごと体も穴だらけになりながら壁に運ばれ――ドッとその壁と衝突し、項垂れるが、床には付かない――。
ドドドドドッと重低音を響かせながら<仙玄樹・紅霞月>と《
同時に防御重視の魔剣師との間合いを詰める。
腰を沈めながら左足を踏み込む。
「にゃごおお~」
背後から相棒の気合い声を感じつつ<獄魔破豪>を繰り出した。
体からドバッと<血魔力>が噴出。
俺は螺旋する魔槍杖バルドークと一体化するように血の渦を宙に作りながら突貫――。
一直線に敵に向かう周囲の<血魔力>が血炎のブレードと化す――。
魔剣師は魔剣をクロスさせた。
『――無駄だ』
グルド師匠の思念通り――。
血の渦に巻きこまれた魔剣は上下に弾かれながら破壊。
魔剣師の両腕は折り畳まれながら一気に炭化――。
刹那、魔槍杖バルドークは、その魔剣師の体ごと、壇をもくり抜いて射手が突き刺さっていた壁にまで到達していた。
そこで両足を床に付けて止まる。
魔軍夜行ノ槍業が嗤うように装丁が外れると、
『――終わり直後の隙もない。見事な<獄魔破豪>だ!! 俺の<魔槍技>を物にしたといえよう』
『ありがとうございます――』
『くぅ……使い手痺れちゃう! でもグルドに嫉妬しちゃう!』
グルド師匠に褒められて嬉しい。
シュリ師匠の可愛い思念も感じられて嬉しかった。
目の前の右隅の壁に仕込まれていただろう魔法防御か物理防御陣も破壊してしまったらしい、壁の一部をも炭化させていた。
「ンン」
その炭化した傷跡は魔竜王の爪痕に見えるが、あまり見ない――。
右手の魔槍杖バルドークを血魔剣に交換しながら、横から飛来した短剣と魔矢を察知。
<精霊珠想>のヘルメは左目に戻る。
『閣下、左』
「分かってる、相棒、次の相手だ」
「にゃ――」
――頭部を右に傾けつつ一歩下がる。
続けて、下がる動きの
体を退かせ半身の姿勢のまま短剣と魔矢を避けた。
短剣と魔矢を寄越した【闇剣の明星ホアル・キルアスヒ】の幹部を凝視しながら<黒呪強瞑>を発動――。
俺を睨む短剣使いは、
「カツを殺した<魔槍技>に、剣術と魔法に魔獣に……高祖
「ンン」
短剣使いに相棒が喉声で返事していた。
その短剣使いは、小麦色の魔力を体に纏いつつ、複数の勾玉を周囲に浮かばせていた。
帽子をかぶる射手のほうは、どす黒い魔力を発している。
短剣使いと射手は、再び短剣と魔矢を射出。
「――百鬼道ノ二なりや、百鬼血ノ八法、炯々なりや、ひゅうれいや――」
背後のキサラの魔謳が聞こえて、思わず武者震いしつつ、
「ロロ、俺が対処する――」
「ンン、にゃ」
左手でムラサメブレード・改を引き抜き、魔力を通す。
鋼の柄巻の放射口から青緑色のブレードが出た。
その放射口から迸るブレードのブゥゥゥンと谺する音を遠ざけるように――。
続けざまに飛来してきた魔矢と短剣目掛けて<超翼剣・間燕>を実行――。
青緑色のブレードで魔矢と短剣を溶かすように斬り捨てた。
足下の壇の壁際を走って部屋の奥へ向かうかと思考した直後――。
飛来してきた魔槍――。
その<投擲>された魔槍を凝視しながら素早く下から振り上げた血魔剣の<水車剣>で魔槍を切断――。
上下に分割された魔槍だったモノが壁と足下に突き刺さる。
が、再び飛来してきた魔槍――。
その魔槍は見ず、
「ロロ、前に出るぞ」
「にゃ」
一緒に走った――。
俺のいた背後の壁に、その魔槍が刺さったと理解しながら――。
横斜め上へ軽く相棒と共に跳躍し
「ンンン――」
その壁を片足の裏で突くように蹴って側転機動で宙空を移動――。
「なんだぁ、槍使いはオレンジの魔力を放つ黒豹と揃って空中機動!?」
「しかも速い――」
「あ、分かれた。クソッ、<ボシアドの魔弾>が当たらねぇ――」
「分裂しているように出現する霧の魔力がうぜぇ――」
側転中の俺と橙色の魔力を放つ
俺は
射手が魔矢を射出――。
少し機動をずらしつつ血魔剣を振るう――。
同時に
ハルホンクが呼応し二の腕を膨らませる。
魔矢を二の腕の
射手の頭部を上から下へと黒炎を纏う<黒呪仙炎剣>が両断せしめた。
着地しつつ
短剣使いの体を触手骨剣が貫いていた。
複数の勾玉も触手骨剣で穿ったようだ。
相棒の足下に無数の勾玉が転がっていた、その勾玉を前足で弾き始めている。
が、遊びながらも
魔槍を手元に生み出している槍使いに投げていた。
その<投擲>された死体は、槍使いが<刺突>のようなスキルで穿っていた。
ハディマルスではない槍使いも強そうだ。
その相棒に近付く槍使い。
と、俺に近付いてくる二人の魔剣師が魔剣を突き出してきた。
「――魔刃イシュハンの仇――」
「トウガの仇だ!」
二人の突きをムラサメブレード・改の青緑色のブレードで受けた。
体から<血魔力>を周囲に発しながら<黒呪鸞鳥剣>を繰り出す。
血魔剣を迅速に振るう袈裟斬りから逆袈裟斬り――。
上下、左右に血魔剣を振るい、血が包む二人を瞬殺――。
二人の魔剣師は叫び声も出せず、細切れとなった。
が、更に俺に近付いてくる三人の魔素を把握――。
槍使いをあしらった
その
「相棒、少し離れていろ」
「にゃ~」
再び槍使いに向かう
周囲の肉片と血飛沫が凍った。
両手の武器を魔槍杖バルドークと神槍ガンジスに交換する。
「チッ」
「今度は氷の衝撃波!?」
「離れろ――」
体の一部が凍り付いた三人は退いた。
そのまま間合いを取ると、槍使いを一瞬で倒した
三人は魔剣師か、触手骨剣をなんとか魔剣を振るって防ぎつつ部屋の中央奥に避難。
刹那、部屋の右側で凄まじい衝撃波が発生。
「――<エイルアル魔封防御>ごとハタアが!」
キサラの<
が、<エイルアル魔封防御>も優秀だったようだな。
余波の派手な衝撃波や振動がまったくない。
すると、中央の奥にいた、魔軍夜行ノ槍業の師匠たちが反応していた人物、ハディマルスが動く。
キサラたちではなく、俺を見て、
「……? 蒼い槍纓に双月刃……もしや旧神ギリメカラの蒼髪か? だとしたらあの神槍は……閣下、左の強者はわたしが倒します」
ハディマルスがそう宣言。
神槍ガンジスに反応したか。
四眼四腕の槍使いで、七魔七槍の怪魔人と呼ばれているとか……。
キルアスヒは「ふむ……ここまで押されるとは……まさか……」と発言しながら、右側で【闇剣の明星ホアル・キルアスヒ】の面々と戦う魔界沸騎士長ゼメタスとアドモスと<
「……分かった。ハディマルス、右側の戦力はわたしたちが――」
そう発言した刹那、豪快な音が響く。
見えなかったが、ヴィーネが新しい長剣を特大剣に変えて<黒呪仙剣突>を繰り出していた?
ヴィーネが持つ特大剣に串刺しにされているオーク系の斧使いと魔剣師の死体が床に落ちた。
その特大剣の切っ先は血濡れている。
「――ギュレイスとホドカンズが倒されるなんて! ダークエルフが!」
「メイザー、誘いに乗るな!」
メイザーと呼ばれた魔剣師が怒りを顕わにしながら突貫。
「――ふ」
ヴィーネは嗤うと特大剣を一瞬で長剣に戻す。
そのまま身を翻し、背後の紫色の魔力の<念導力>の中に消えた。
「逃げるか、クソが――」
「させません――天魔女流<血烈叭槍>」
横からキサラが飛び出て魔剣師の横っ腹をダモアヌンの魔槍の穂先が穿つ。
キサラは部屋の右側の壁付近にまで移動して止まると、天魔女流<血烈叭槍>の効果か、ダモアヌンの魔槍に突き刺さっていた魔剣師の体が爆発して散った。
その魔剣師の血飛沫をキサラが吸い取る。
ダモアヌンの魔槍の八角の髑髏刃から双曲のタイリングパターンのような波紋が宙に放たれていた。
追跡していた時にも見せていたが、<血鳴矛ノ型>を用いたようだ。
そのキサラもヴィーネも格好良いし、美人さんだし、ヤヴァすぎる。
「チッ、止めたのに……」
「閣下、白銀の髪の二人も強敵です、私が……」
「否、お前は黒髪の槍使いと黒豹を倒せ……先の機動からして手の内が無数に存在する強者。そして、〝輝けるサセルエル〟持ちだ」
「……あ、気付きませなんだ。分かりました。しかし、ここで神槍ガンジスを持つ存在と出会うとは……」
ハディマルスは笑顔満面。
ハディマルスは男と分かるが、四眼ルリゼゼを思い出す。
真っ赤な魔槍から膨大な魔力を放つ姿は威風堂々。
本当に魔人武王ガンジスの弟子だと思わせた。
ハディマルスはゆっくりと近付いてきた。
その四眼四腕のハディマルスに向け、
「ガルルルゥ」
「……黒豹、主を守るつもりか」
「にゃごぉ」
「ふ、退け、お前には興味がない」
「ンン、ガルルルゥ……」
体勢を低くした
両前足から爪が出ている。
いつでも飛び掻かれる体勢だ。
ハディマルスは、
「相棒、待て。ハディマルスとは俺が戦う」
「ン、にゃ」
俺の横に戻ってくると、背後に移動。
『……ハディマルス……まだ我らに気付かないとは、セラでの生活が長く鈍ったか』
『魔界を生きた男が、閣下とよぶキルアスヒとやらに忠誠を誓っているのだ。弱まっている?』
『ふむ、弱まった故か不明だが、我らを感知できないのも解る。八槍卿、魔城ルグファントの守り手と呼ばれたのも遠き過去』
『八鬼、八魔、八雄、魔界八槍卿の魔槍使いを忘れたのか……』
『あの魔人武王ガンジスの弟子が一人……小童だったが、憎々しいあの四眼……』
『あぁ』
『使い手……復讐の怨嗟に燃え滾る、異形の魔城の守り手の思いを分かっておくれ、彼奴を……倒すのだ』
『『『『『『『『われら、かつての異形の魔城の守り手……』』』』』』』』
思念の伝え方が怖い。
が、ルグファントの八怪卿とも呼ばれていた八槍卿だからな。
ハディマルスは、揺れる魔軍夜行ノ槍業と放たれている魔力を察した。
魔軍夜行ノ槍業を見て、歩みを止めた。
――その間に両手の魔槍杖バルドークと神槍ガンジスを地面に刺す。
片手に王牌十字槍ヴェクサードを召喚し、それを刺した。
<怪蟲槍武術の心得>を発動――。
同時に魔槍杖バルドークと神槍ガンジスを両手で引き抜いた。
「……その腰の奥義書は……あぁ、先ほどの<魔槍技>は、そういうことか。お前は魔界八槍卿の系譜を持つ魔人でもあるのか!」
「そうだ、ハディマルス。俺の名はシュウヤ、【天凛の月】の盟主」
ハディマルスはあまり動じず。
キルアスヒと【闇剣の明星ホアル・キルアスヒ】のまだ生きている最高幹部たちが驚き、俺を見てくる。
「「【天凛の月】!!」」
「やはり……あの槍使いと黒猫か。黒猫は黒豹に……」
「ンンン」
「そうだ。相棒、黒猫には戻らなくていい」
「にゃ」
「……閣下が知っている相手が【天凛の月】の盟主でしたか……が、だからどうだと言うのだ。魔城ルグファントを知る者よ!」
――嗤ったハディマルスは駆けてきた。
右腕と右脇の間に魔槍杖バルドークの柄を落とし、腕と脇腹で柄を押さえた。
神槍ガンジスを握る左手を前に出す。
風槍流『支え串』の構えを二槍流に改良した構えで待つ。
ハディマルスは前傾姿勢からの<刺突>系の突き技を繰り出してきた。
――紅蓮の燃える魔力を発している穂先を素直に神槍ガンジスの双月刃で受ける。
衝突した所から衝撃波が発生。
力強い攻撃の突きスキル。
「――ふっ、あっさりと<轟煉・極壱>を受けたか」
「それだけか?」
魔槍杖バルドークで踏み込みのモーションをカットするような迅速な<刺突>を放つ。
ハディマルスは右下腕の腕輪を光らせると、右下腕に短槍を召喚。
その短槍で魔槍杖バルドークの嵐雲と似た穂先の<刺突>を受けた。
短槍は雷式ラ・ドオラのような形。
魔槍だろう――構わず<双豪閃>――。
「――ふっ」
と嗤うハディマルスの四眼が蠢くと、右上腕の腕輪が輝く。
三つ叉の魔槍を右上腕に召喚。
左から右に振るった<双豪閃>の神槍ガンジスの双月刃は、赤い魔槍の螻蛄首に防がれた。
<双豪閃>の魔槍杖バルドークの紅矛も三つ叉の槍の柄に防がれた。
ハディマルスはバックステップで退く。
が、床を蹴って爆発的な加速で前進し――。
「<轟煉・刃極参>――」
赤い魔槍と短槍と三つ叉の槍で突いてきた。
<水月血闘法・鴉読>を実行し、風槍流『右風崩し』で対応。
<血魔力>を発しながら、左足の爪先を軸とした横回転を実行しつつ――。
両腕の筋肉と血管網を行き交う<血魔力>と<魔闘術>の配分を微妙に変化させながら魔槍杖バルドークと神槍ガンジスを振るう。
<轟煉・刃極参>の赤い穂先と三つ叉の穂先の突きを魔槍杖バルドークと神槍ガンジスの柄と螻蛄首で弾いた。
爪先半回転が終わった直後、腰を沈める――。
真上を抜けた短槍の突きが血の鴉を穿つ。
血の鴉は消えた。
俺は横に移動――。
その俺の機動を縁取るように俺の血の幻影が付いてくる。
そんな幻影を纏うが如く高速移動中の俺のことを追跡するハディマルスの腕がブレた。
赤い魔槍の穂先が俺の血の幻影を貫く。
俺の血の幻影が消える途中から反撃の<龍豪閃>を繰り出した――。
ハディマルスは「――チッ」と舌打ちしながら赤い魔槍を掲げ、短槍と三つ叉の魔槍を消す。
赤い魔槍の柄で魔槍杖バルドークの穂先で殴るような<龍豪閃>を防いできた。
刹那、<水雅・魔連穿>を発動。
神槍ガンジスと魔槍杖バルドークで連続的にハディマルスを突く。
ハディマルスは、赤い魔槍を上下させて巧みに<水雅・魔連穿>の突きを防ぐ。
強いハディマルスは、
「良く鍛えられている――」
と発言しながら、魔力を宿した赤い魔槍を振り上げた。
ドッと衝撃波を発した振り上げで、魔槍杖バルドークと神槍ガンジスの穂先が跳ね上がってしまう。
即座に両手の武器を消し、霊槍ハヴィスと仙王槍スーウィンを召喚。
一方、四腕の腕輪を輝かせたハディマルスは槍の構えに突入していた。
「<轟煉・極四牙>」
と連続した下段突きを繰り出してくる。
赤い魔槍、短槍、三つ叉の魔槍の連続した突き技を見ながら横回転移動――。
己の足を払うように霊槍ハヴィスと仙王槍スーウィンを下に半円を描くように振るい回して、<轟煉・極四牙>を弾きつつ、足を上げて避け――ハディマルスの横に移動。
<龍神・魔力纏>を発動しながら――。
霊槍ハヴィスで<攻燕赫穿>を発動。
霊槍ハヴィスの穂先から燕の形をした赫く火炎魔力が迸る。
半身の姿勢のハディマルスは火の鳥的な赫く燕を見て驚くが、三つの魔槍を脇腹の前でクロスさせると、口を開け、「<怒怒言>――」と叫ぶ。衝撃波と共にハディマルスの三つの魔槍から波動が放出された。
その衝撃波と波動のようなモノに<攻燕赫穿>の赫く燕の爆発が押さえ込まれた。
が、<怒怒言>は隙が大きい――。
霊槍ハヴィスと仙王槍スーウィンを離し、二つの柄に掌底を連続的に当て、その霊槍ハヴィスと仙王槍スーウィンをハディマルスに向かわせた。
「――!?」
霊槍ハヴィスと仙王槍スーウィンの柄と螻蛄首がハディマルスの体と三つの魔槍と衝突。
<導想魔手>を新たな左手としてパー状態で発動しながら前進――。
ハディマルスの二つの視線が<導想魔手>に向かった直後――。
<闇の千手掌>を発動――。
「なっ――」
巨大な<闇の千手掌>がハディマルスの頭部、胸の一部、脇腹を捉えた。
「ぐあぁ――」
横に吹き飛ぶハディマルスは全身から血飛沫を発した。
そのハディマルスを追う――。
ハディマルスが持っていた三つの魔槍が消えるが、一つの赤い魔槍を左下腕に再召喚しながら壁に激突。
体勢を整えさせない――。
――<
「ぐぉ――」
衝撃波ではなくハディマルスを壁に押し付けるように拘束。
前進しつつ、右手に神槍ガンジスを召喚――。
更に<導想魔手>に聖槍アロステを装備させてから<光穿>を繰り出した。
<光穿>の聖槍アロステの十字矛がハディマルスの胴体に刺さった直後――。
神槍ガンジスで<星槍・無天双極>を繰り出した。
<光穿>に近い突き技がハディマルスの胸を穿った直後、<星槍・無天双極>の銀色に輝く十文字槍が出現し直進――。
凄まじい勢いで螺旋回転する十文字槍はハディマルスの上半身を抉り穿った。
壁を削り穿ち直進する閃光を発した十文字槍から巨大な花曼荼羅が爆発したように拡がり、一部の壁ごとハディマルスだった肉体を斬り刻みながら壁を抉り室内の装飾品なども破壊――。
花々の魔力を集約する輝く十文字槍は突き進み分厚い壁を破壊し続けるから、急いで<星槍・無天双極>を消した。
すると、ハディマルスの肉片が一カ所に集結。
革の束と小さい肉塊だが、床が黒い炎で燃えながら幾重にも重なった魔法陣が発生している。
ぐつぐつと煮え立つ音が響く。
まだ何かあるのか?
『使い手、良くやった!!』
『うははは、我らの復讐の始まりだ!!!』
『カカカカッ、使い手、見事だ……あのハディマルスの魂魄とアイテムを回収するのだ……そして、直に、我らの部位となるかもしれぬ』
『ふふ……わたしの部位だったとしても悪戯はしちゃだめよ?』
『……見事』
『<獄魔破豪>を最後に使えば良いと思ったが、まぁ、相性を考えたのか……』
『あぁ、その辺りは<天賦の魔才>のセンスを感じる。だからこそ、俺の二槍流をさっさと学べ……』
『だれかの部位か、またはアイテムか』
『……気になる』
『妾は感動した……』
「……あのハディマルスが倒されるだと」
そう発言したキルアスヒは後退。
【闇剣の明星ホアル・キルアスヒ】の幹部のほとんどが倒されている状況だからな。動揺するのも頷ける。
が、キルアスヒは、右手の真上に闇属性の炎を発している魔剣を出現させていた。
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