八百四十九話 パッテラの肉とゴゴナルの葉のマキ貝の調理品

 次の日。

 皆にクレインが<血道第一・開門>を獲得したと報告。


 何食わぬ顔で尻が光るクレインを連れて皆と合流。

 相棒とドロシーとディアにキスマリはいない。

 

 シルバーフィタンアスたちもいないから、ペントハウスの外、庭園かな。

 イモリザもたぶんそうだ。

 

 すると、エヴァが、


「ん、先生とシュウヤ、えっち!」

「健やかなる模擬戦ってやつだ」

「そうさねぇ、宗主は素敵だったさ、わたしを労り続けてくれた。同時に浮遊岩の乱を片付けてギルドマスターを眷属にした凄い男でもある……わたしはもう完全に宗主の物……この命のすべてを捧げるつもりさ……」


 クレインは俺をじっと見て体を寄せてくる。

 目がトロンとしていた。


「外の通称、漆黒の悪魔、小型飛空戦船ラングバドルの説明も色々としてくれたさ。ふふ、そして、盟主の大事な物が、まだ、ここに入ってるように感じる……」


 同時に女の匂いが漂う。

 まだ濡れたままのようだ。


「「……」」


 が、皆、ヤヴァい。

 ムラムラとした嫉妬光線が……。

 ドッと蒼炎魔力を噴き上がらせるレベッカが、


「へぇ、へぇぇぇぇぇ! 血文字も送らず我慢してたのに、健やかなる模擬戦~? しかもお尻を光らせて! 楽しんだ顔しちゃってるんだ!!」


 と直進。

 俺とクレインは華麗にターン。

 レベッカの必殺肩タックルを避けた。

 

「あぁぁ、避けた! お尻テカりマン! ぱおーん大王め!」

「あはは、面白いなレベッカ!」

「ふふ」

「皆と同じ思いです! けど、面白い、ふふ」

「あはは、はい、見事にシュウヤ様もお尻が輝いていますから」


 皆、お尻のヘルメ効果で嫉妬が消えたように笑う。


『クレインは素敵でしたから、特別なお水をぴゅっとしてあげました』


 視界に現れた常闇の水精霊ヘルメも満足そう。

 微笑むヴィーネとキサラが俺に寄る。


「ご主人様、クレインと健やかなる模擬戦を行ったのならば……第二ラウンドを希望します」

「シュウヤ様、わたしも、その第二ラウンドに参加します。行きましょう」


 二人のダイナミックボディに挟まれた。

 彼女たちの腰に両手を回しつつ、頷いて、


「ご希望とあらば、楽しもうか」

「「ふふ」」


 二人にペントハウスの階段に誘導される。


「ちょ! わたしも参加~」

「ん、わたしもエッチング大魔王になる!」

「ふふ、はい~」

「健やかなる模擬戦第二ラウンド……選ばれしフォド・ワン銀河騎士・ガトランスの習わしならば……わたしも!」

「宗主、がんばるねぇ……」

「クレインもこい」

「え、嬉しいけど、宗主のスタミナは……」

「リトル宗主は、元気もりもり。無尽蔵だ」

「ふふ、分かった」

「おう。宗主のなんたるかを見せてやろう」

「――わたしもシュウヤに気持ち良くしてもらう」


 ユイが背中に抱きついてきた。


「そうね、頼もしいマスターは、速度加速スキルがいっぱいあるし、本当に巧みだし、愛を知る。あと、わたしたちにもできることはある」

「ん、シュウヤ、先生のためにがんばったから、わたしも血をあげる!」

「新参者ですが、私も……」


 背後から皆が付いてくる。

 まずは両隣の二人に、


「リツとナミの組織はまだ来てないんだな? 他に報告は?」

「まだです。目の前の通りで屋台が増えたぐらいでしょうか」


 背後から付いてくるレベッカが、


「そう! キサラ、ぐらいではなく、屋台が増えたことは重要よ?」

「はい。トトリーナ花鳥は人気が出たようで、常時人集りができているようですからね」

「うん。トトリーナ花鳥は本に載っていた店である程度有名店だから。味もシュウヤ的にヤヴァいからね。もう気軽に買い占めもできなくなりそう。だからこそ、マジュンマロンを売る店はもっと増えるべきだと思っていたし、ちょうど良かった」

「ん、ペソトの実とキュトンの実が混じるパンとチーズパンはなかなか美味しかった」

「アゴーニュの秘境の黄金チーズよりかは、多少落ちるけどね」


 エヴァもお気に入りか。

 そして、お菓子女王レベッカさんが料理評論家の如く語る。


 ヴィーネが耳元で、


「ご主人様、皆が言うとおり、新しい屋台【ピヨマル】で売る料理は確かな物。そこで売るお菓子とパンは買い揃えました。リビングキッチンルームでいつでも食べることが可能。今も――」


 と、魔大竜ゲンジーダの胃袋から硬そうなパンを出す。

 さっぱりとした匂いがするライ麦系のパンか。

 クルミなどのナッツ類がどっさり入っているように見える。

 ヴィーネはそのパンを千切ると、俺の口元に運んでくれたから「もぐっ」と食べた。


 おぉ、ココア風の味にナッツがイイ感じ。


「美味い、ありがとうヴィーネ――」


 そのままヴィーネの人差し指をゲット。


「ぁ……ご主人様の舌が……わたしの指を……」

「はーい、押っ始める前に、階段に乗せている足を上げて進んでちょうだいな。ヴィーネも腰を震わせてないで、ほら――」

「ひゃぃ――」

「はは、了解」


 ヴィーネの変な声とレベッカのツッコミに皆が笑う。

 階段を上がりながら、


「魔塔ナイトレーンで幽閉中の大魔術師アキエ・エニグマの件はまだか」

「はい。大魔術師ケイ・マドールもまだです。あ、一階でペグワースたちが資材置き場を建て始めました」


 植物園の巨大温室は、相棒たちもいるから、早く中身をチェックしたいんだがなぁ。と思いながら、階段を上がる。


「ペグワースはこれからが本番か。そして、ケイとも仲良くしたいし、色々と温室の話が聞きたいんだが」

「そうですね。巨大な温室、植物園の中は秘境……」


 キサラの言葉に頷いた。

 銀灰猫メトが入り込んで危ない植物とか魔道具の被害があると怖い。


 まぁ、管理人たちがいるから大丈夫だとは思うが……。


 そのままペントハウスの左側、今の俺たちから見て反対側を凝視。巨大窓硝子越しに庭園の中に建つ植物園は緑に覆われている。


 階段を上りきった。

 ペントハウスの二階の踊り場付近で、


「……ペグワースの件だが、『すべての戦神たち』の準備は大変そうだな。いきなり造れるわけではないか」


 設計やらなにやらは、すべてお任せだが。

 すると、階段を上がり途中のペレランドラが踊り場にいる俺たちを見て、


「はい。わたしの魔塔で作ってもらう予定だった『戦神たち』の神像に必要な素材は貴重でした」


 と発言。

 頷いた。


 俺から離れて手摺に寄りかかったヴィーネとキサラが、


「ホルカーバムの聖碑石、タレルマゼル神石でしたね」

「サザーデルリ魔鋼、シャンドラ秘石、栄光の霊透樹も聞きました。単価は高価なはず」

「それを大量か」

「栄光の霊透樹は<神剣・三叉法具サラテン>たちにプレゼントしていました」


『妾たちの力になった〝栄光の霊透樹〟』


 ペグワースたちを救出した沙・羅・貂。

 お礼に頂いた品だな。


「それらの高級素材を再度集めようと思う。ペレランドラ、伝の利用は可能か?」

「――お任せを、【天凛の月】の力とわたしの【大商会】に他の商会のコネを使います」

「ふふ、さすが上院評議員!」

「資金を渡しとくか」

「あ、トロコンさんから各店の警備業で得た白金貨十枚と金貨百枚と、魔宝石などを一時的に得ています。そして、わたしの得た倉庫にあった資金も合わせますので、必要経費を引いても資金には余裕があります」

「ひゅぅ~」


 クレインの口笛が炸裂。

 俺も同じ気分だった。


「メルの移動もだけど、【天凛の月】の資金も人員も、パレデスの鏡と小型飛空戦船ラングバドルですぐに移動は可能」

「ん、便利。センティアの手と【幻瞑暗黒回廊】もあるし、クナの転移陣も魔塔ゲルハットにできれば凄い拠点になる」

「「はい」」


 皆、頷いた。

 魔塔ゲルハットのペントハウスの天井や壁を見ている。

 ミスティは魔塔ゲルハットの感想をメモ用紙に書き始めた。


 魔塔ゲルハットを得て一気に世界が拡がった感じがする。


 すると、ユイが、


「明日は、正式にペレランドラ生存公表を兼ねた上院評議員会議に出席するんでしょう?」

「はい」

「一応、護衛として一緒に行く」

「お願いします」

「うん。ついでに宿り月に戻って縄張りをチェック。余裕があったらカリィたちの様子も見に行こうと思う」


 ユイとペレランドラは頷き合った。

 さて、

 

「楽しむとして、皆で楽しむか? それとも個別に楽しむか? どうしたい?」


 と質問。


「どっちでも~。宗主様はシュウヤなんだから」

「じゃ、両方やるってことで、そこの広い部屋に入ろうか」

「「はい」」

「ん、シュウヤを温める!」

「うん!」

「ふふ、<血魔力>――」


 ペントハウスの広い部屋に突入。

 それから個人に移り――。

 

 各自、特別なむふふんサービスを行った。

 相棒ロロディーヌが呆れるほどの情事を繰り返す。



 ◇◇◇◇



「シュウヤ……タフすぎ……」


 レベッカの感じ入る言葉を後に部屋を出る。

 あらゆる意味で光魔ルシヴァルで本当によかった。


 悩ましい下着姿のミスティが廊下に出ると、俺の頬にキス。


「ふふ、マスター、優しくしてくれてありがとう」

「おう、いつものことだ」

「うん!」


 ミスティはそう元気に返事をしてから、横の部屋を覗く。

 寝台でだらしなく寝ているレベッカを見て、


「ふふ、もう、こっちまで濡れてくるほどの押っ広げ状態じゃない。でも、レベッカを特別に可愛がったのねぇ」

「まぁな」

「ふふ、強烈なほどタフなんだから。でも、ディアに悪い気が……」

「ディアにはもう、説明をしたんだろう?」

「うん、何重とね。血の世界は理解しているはず。ディアは『眷属になれば、わたしも』と……シュウヤにぞっこん」

「……眷属化か。大貴族のお嬢様だから……」

「本人は乗り気。抱いてもらっている立場で言うのもアレだけど、ディアのことは、わたしも応援はしているから。もしシュウヤがディアのことを少しでも気に入ってくれているなら、考えてあげて、お願い……」


 貴族のしがらみを考えての発言か。


「……分かった」

「ふふ、ありがとう。それで、センティアの部屋の使用はいつ?」

「リツとナミの組織が来て挨拶後、サイデイルに一旦戻ってからだ」

「了解、リツとナミの集団がきても対応は任せるから。わたしは下で研究♪」

「おう」

「マスター、大好き――」


 と、唇を強引に奪われた。

 ミスティは可憐に身を翻すと、一階に降りた。


 地下の試作型魔白滅皇高炉に直行か。


 エヴァ、ヴィーネ、ユイ、キサラ、ペレランドラ、ビーサもレベッカと同じく各自個別の部屋で休んでいる。


 ペントハウス二階の廊下に<血魔力>と濃厚な女の匂いが漂うから、自然と滾り始めてしまう。


 ビーサとの一戦では、宇宙に於ける性事情を聞いた。

 異星人とのエッチはビーサが初だから、まだまだ知らないことが多い。

 あの三つの器官は……。


 と、ここではあまり考えないようにしようか。


 ペントハウス二階の廊下を歩く。


 廊下の手摺越しに一階の様子が見えた。

 相棒たちがペントハウス内を駆けずり回る。


 シウ、ディア、ドロシー、ミナルザン、キスマリ、ペグワース、カットマギーがソファで寛ぎつつ、神獣ロロディーヌ率いる動物たちの戦模様を楽しんでいる?


 右端のクレインが処女刃を使った望遠鏡の魔道具がある部屋をちょいと覗いてから――。


 左にある階段を降りてペントハウス一階に戻った。

 リビングに向かう。


「あ、お兄ちゃんだ、おっちゃんがね、話があるって」

「お兄様!」

「シュウヤ、一階に設置予定の『すべての戦神たち』の中央の神像モデルは、シュウヤに決まったからな?」

「シュウヤ様! おはようございます!」

「シュウヤ、魔塔ゲルハットハ、広スギル! 我ハ、混乱シタゾ! ソシテ、コノ子供ハ、我ノ髭ヲ引ッ張ッテクル!」

「もぎゅもぎゅ~、面白い~」

「盟主! <分泌吸の匂手フェロモンズタッチ>は凄いねぇ。魔塔ゲルハット内での移動が楽になったよ!」

「シュウヤ、血の匂いと女の匂いが上から漂ってくる。大丈夫か?」

「おう、皆、そこで談笑しててくれ。ペグワース、気になるから来てくれ」

「了解」


 ペグワースがソファから立ち上がる。

 壇から下がってくるのを見ながらリビングを通り――。

 

「ンン、にゃお~」

「ニャァ」

「ニャオ」

「にゃァ」

「えいえい、おぉぉ!」

「ワン!」

「グモゥ」


 相棒軍団が暴れまくっている。


「ペグワース、相棒たちが楽しんでいるから気を付けろ」

「お、おう」


 段差があるリビングの周囲にアイテムが散らかっていた。

 魔法の壺が落ちて、液体と花々が散乱。

 割れてないから良いが、あぁ、香具が落ちてるがな、液体がこぼれて、煙が……床を溶かしている?


 ペグワースも傍に寄ってきた。


「ペントハウスの床は頑丈に思えるが、わしも掃除を」

「あぁ、俺がやる」


 急ぎ<生活魔法>の水を出しつつ近寄った。

 片膝で床を突いて、皮布で液体を拭き取る。

 溶けてはなかった。


 よかった。


 トイレットペーパーのような紙もそこら中に散乱。

 キッチンペーパーか。


「にゃごぉぉぉ」

「にゃぉおおお」

「ニャゴァァ」

「ニャゴォォォ」


 大きくなった黒虎ロロディーヌ、白虎メト、黄黒虎アーレイの頭部に乗った白黒猫のヒュレミが天井にぶら下がっていた香具を取り合い……。


 アイスホッケーどころか、猛獣アメフト大会の模様だ……。

 ま、仕方ない。


 ペグワースは恍惚の表情のまま、相棒たちを凝視。

 手首の環から掌に向けて飛び出た魔道具の小型黒板を掌に展開させてメモっていた。


 折りたたみ式?

 へぇ、あの小さいPDA的な魔道具はミスティも持ってないぞ。

 GalaxyzFold3的なスマホとかやりおる。


 ペグワース独自の物か。

 それともペレランドラ関係の伝で入手したのかな。

 そのペグワースは簡易的な相棒たちの絵を描いていた。


「神獣様たちをモデルにするのもいい……」

「凄いな、さらさらっと描いて」

「あ、すまん。シュウヤ、食事を取りにきたのではないか?」

「あ、スタミナ補充って気分で、魔冷蔵庫からな。だから調理場、台所に行こう」

「おう。神獣様たちは、あのままでいいのか?」

「大丈夫。そのうち、管理人たちが掃除してくれるはず。すぐに現れると思ったが……ま、大丈夫だろう」

「分かった」

「ワン! ワンッワンッワン!」

「フフ、ファオォォン♪」

「グモゥゥゥゥ!」


 相棒たちにシルバーフィタンアスとハウレッツと銀髪を狼の形に変えている可笑しなイモリザも混じった。


 陣取り合戦に発展した相棒軍団を見ながら――。


「ふむ、ちゃんと皆のことを見ているのだな。リビングのほうはあまり散らかっていない」

「相棒も考えていないようで、ちゃんと考えているはずさ」

「さすがは神獣様である」


 賛嘆したペグワース。

 魔道具を閉じた。

 魔冷蔵庫とオープンキッチンの前に移動。

 オープンキッチンはコンクリート風。

 テーブルと椅子が前に付いている。 

 焜炉などの前でフライパンを持った管理人たちがいる。

 野菜を切っている管理人たちもいた。

 掃除している管理人たちもいる。


 片付けと調理でもしているようだ。


 騒がしいが、ペントハウスは大きいから、なんとなく、ぽつねんとした寂しさがある。


 そのキッチンの隣にある魔冷蔵庫に近寄った。

 すると、調理している管理人たちが反応。


 洗い物と野菜を種類ごとにチェストに納めていたアギトナリラ、ナリラフリラ、アギト、ナリラ、フリラたちが一斉に作業を止めて御辞儀してくる。

 

「あ、ご主人様♪ 今、調理中~」

「ご主人様〜♪ お片付け中です~」

「一緒にお掃除しますか~?」

「お肉♪ やきやき♪ やきやき♪ やきびーふん♪」

「お野菜♪ やきやき♪ やきやき♪ やきびーふん♪」

「一緒にやきやきしますか~?」

「神獣ロロディーヌ様、可愛い~」

「メト様も~」

「シルバーちゃんも~」

「ハウちゃんも~」

「シウちゃん可愛い♪」

「おっちゃん元気♪」

「ご主人様もパッテラの肉とゴゴナルの葉とマキ貝の調理品を食べますか~?」

「「ご主人様♪」」

「調理もできたのか。あまるなら頼む。ペグワースのも」

「ありがとう」

「「はい~♪」」


 魔冷蔵庫を開けた。

 この巨大冷蔵庫は、オープンキッチンのちょうどいい間切りって印象だ。

 冷えたフルーツミックスジュースが入った瓶を取って、尻と背中で魔冷蔵庫の扉を閉める。

 

 フルーツミックスジュースが入った瓶をキッチンに置いて、スケルトンの棚にぶら下がるゴブレットを二つ取る。


 巨大な白銀のシンクで蛇口から水を流す。

 蛇口は人感センサー付きだ。

 その水でゴブレットを洗った。

 

 シンクは魔力を備えた代物。

 蛇口も白銀でお洒落だ。

 

 洗ったゴブレットにフルーツミックスジュースを注ぐ。


 ゴブレットを、


「ペグワース、フルーツミックスジュースだ」

「お、悪いな」

「いいって、そこの机で、管理人たちが作った調理をちょいと食べるとしようか。腹が減ってないのならすまん」

「大丈夫だ。この通り、腹は幾つもあるからもらう」


 と、ドワーフらしい腹を叩くペグワース。

 一瞬、ザガを思い出す。

 ザガとボンも連れてきたいが、これは、俺のわがままか。

 ま、話をするだけしてみよう、今度ペルネーテだな。


「「できました~♪」」


 管理人たちが机にささっと配膳。


「「パッテラの肉とゴゴナルの葉とマキ貝のソテーです♪」」


「お、じゃあ早速、ペグワースも食べよう」

「分かった。美味そうだ!」


 頷いて、


「頂きます~! お、柔らかい!」

「ングゥゥィィ」


 香り豊かな味わい。

 ガーリック系。オリーブオイルかな。

 

 肩に出現した竜頭金属甲ハルホンクにも食べさせてあげた。


「ングゥゥィィ、ウマカッチャン! マリョク、オイシイ!」


 ハルホンクも嬉しそう。

 魔竜王の蒼眼がギュルギュルと回る。

 魔力の息を鼻の孔と口から吐いていた。

 

 面白いが、管理人たち、侮れないな。


「うむ! 美味しい! パッテラの肉とは魔塔に湧くモンスターの肉か!」


「「はい~♪」」

「うむうむ! 味わいはまったく違うが、シュウヤが作ってくれた『ネーブ村の魚介鍋』を思い出すぞ。そして、ありがとうな」

「おう、食え食え。俺も食う――と、このゴゴナルの葉ってのはホウレン草っぽい」


 とアギトナリラとナリラフリラの管理人たちに聞く。

 正直、アギトナリラ、アギト、ナリラ、ナリラフリラ、ナリラ、フリラの顔は覚えきれない。

 皆、微妙に異なる顔付きで、同じ名前の小人、デボンチッチ的で数が多すぎる。


「ケイちゃんの育てたゴゴナルの葉です。栄養素が高い♪」

「温室の植物か」

「「はい♪」」

「マキ貝ってのは?」

「ハイム川で採れる貝で食用で流通している品ですが、魔術総武会専属の海人ババーンバが採るマキ貝です♪」


 ……へぇ。

 ホタテを倍にしたような大きさ。

 歯ごたえもいいし、柔らかいし、滅茶苦茶美味しい貝の身。


 香りと一緒に貝の身を食べながら、


「ババーンバさんは、俺と契約しているわけじゃないが……」

「「そうなのですか?」」

「「この間から、ちゃんと納品されています♪」」

「「お金も払いました♪」」

「ご主人様、海人ババーンバとの契約を廃棄しますか?」

「「廃棄♪」」

「いや、そのまま、すべての他の契約もそのままで」

「「はい♪」」


 俺と管理人たちの会話中にもペグワースはパッテラの肉とゴゴナルの葉とマキ貝のソテーを食べまくり。


 俺も食べて、フルーツミックスジュースを飲んだ。

 そして、


「ペグワース。『すべての戦神たち』の中に、俺の像を作るとか聞いたが……」

「そうだ。前にも話をしたが、シュウヤは神界セウロスのクーリエだと思っておる。キサラ殿が救世主と呼ぶが、わしらも同じ想いなのだ。聖槍ラマドシュラーを手にした奇跡は……わしは生涯忘れない。シウも同じだろう。同時に、わしらの中で、シュウヤは戦神として心に刻まれたようだ」


 ペグワースの熱い想いは伝わった。


「分かった。ペグワースに一任しよう」

「ありがとう……よし!」


 ペグワースは椅子から降りて、床を片膝で突いた。


「遅れたがシュウヤ、このペグワース、戦神ヴァイスと戦神ラマドシュラー、そのすべての戦神と戦巫女の名にかけて、【天凛の月】と、槍の戦神シュウヤに忠誠を誓おう!」


 ペグワース……頷いた。

 鋼の柄巻を召喚。

 素早く魔力を、その鋼の柄巻のムラサメブレード・改に通した。


 鋼の柄巻の放射口からブゥゥゥンと伸びる光刃。

 その青緑色のブレードを、ペグワースの肩に近づけた。

 

「――いかなる時も居場所を与え、名誉を汚すような奉仕を求めることもせず、自由と笑いの精神を大事にすることを、水神アクレシス様と戦神ラマドシュラー様に誓おう――」

「承知!」


 素早くムラサメブレード・改の鋼の柄巻を仕舞う。


「ペグワース、頭をあげてくれ」

「うぉぉ~! 俺はシュウヤに付いていくからな!」

「はは、了解した。『すべての戦神たち』の像を頼む」

「おう!」


 気合い溢れるペグワースと握手。

 不思議と戦友を得た気分となった。


 流しのシンクに皿と瓶を運ぶ。


「掃除はお任せ♪」

「「お任せ♪」」

「大丈夫だ。これぐらいはやるさ」


 と、皿と瓶を水で注いで洗い物。

 そうしてから、ペグワースを連れてリビングに戻る。


「お兄ちゃん、おっちゃん! ミナルザンが面白い~」

「面白いか。が、ミナルザンは傭兵百兵長だった存在だぞ」

「シュウヤ、我ハ子供ニ、好カレタヨウダ」

「ようへい百へいちょうなんだね!」

「地下に送る約束をした。その件で、キッシュにバーレンティンたちと会話してもらった」


 ディアが頷いて、


「地下都市ゴレアですね」

「そうだ。それで、ディアの魔法学院に戻る件だが、もう少し掛かる」

「はい。エロ校長、ミスティ先生、他の先生方に許可を得た外出特別授業ですから気になさらず。魔法学院の卒業も保障されていますから」

「そうなのか」

「はい。わたしも貴族ですからね。このようなスペシャルな体験中ですし」

「そっか」


 頷いたディア。


「はい、シウとドロシーも」

「ありがとう、ディアお姉ちゃん」

「ありがとうディアさん」


 レベッカが用意したお菓子かな。

 そのお菓子をシウとドロシーは仲良く食べていた。


 エヴァがプレゼントしたフルーツミックスジュース入りの魔法瓶も机の前に置いてあった。


 子供たちから少し離れた。

 リビングの端に移動。

 外で遊ぶ神獣ロロディーヌと白銀虎メトを見ながら……。

 

 魔煙草を吹かせていると、キッシュから、


『皆から羨ましい報告が続いたんだが……』


「あ、シュウヤ兄ちゃん、キッシュお姉ちゃんの血文字が出た!」


 ソファにいるシウからの指摘だ。

 ソファから見ていたらしい。

 シウに続いて、ドロシーとディアとカットマギーとキスマリが俺を見てくる。


「盟主~、わたしもサービスがホシイ~」

「カットマギー。その腕と足が……先ほど言っていた」

「そうさ。錬金術師マコトに魔手術で移植してもらった、鬼婦ゲンタールの手足だ」


 カットマギーとキスマリが会話しながら頭部を引っ込めた。

 

 無難に笑顔を送った。

 そのシウたちには構わず、


『もう聞いたか』

『聞いた、たっぷりとな……エヴァは肌艶が良くなった。と、とても嬉しそうに、お土産もあるから、と報告してくれた』


 エヴァには全身マッサージを繰り返してあげたからなぁ。


『キッシュが嫉妬で血文字を寄越すのは珍しいな』

『あぁ、帰ると聞いてから、もんもんが正直止まらない。目を瞑ったら、シュウヤに抱かれる夢を見る自信がある』

『帰ったら、期待に沿えるようにがんばるとしよう。クナとルシェルが帰ったら連絡を頼む』

『ふふ、了解。【闇の妓楼町】で色々と仕入れているようだな。温泉の具と、魔法効果上昇のルーン造りとかなんとか、小難しいことをルシェルは血文字で報告してきたから、もう少し掛かると思う』

『了解』


 その日の午後、


『盟主、ナミとリツが、【髪結い床・幽銀門】と【夢取りタンモール】の人員を連れて一階に到着。ユイとわたしが対応している』


 魔塔の一階にいるカットマギーから連絡がきた。


『分かった。バルコニーに案内してくれ』


 カットマギーに血文字をそう送ってからリビングに上がる。


「シウたち、俺はバルコニーに行く」

「客か。魔族のわたしは……」

「キスマリ、ここは俺たちの拠点だ。キスマリの家だと思ってくれて構わない」

「あ、ありがとう」

「おう。気にせず、新しい部下たちが来たようだから、挨拶するなら来い」

「分かった」


 キスマリは頷く。

 すると、シウが、


「わかったー。見て、たこおやじはもぎゅもぎゅ五月蠅いから、うるさーいって言ったら黙った」


 シウ強し。

 たこ親父と化したミナルザン。

 シウのことは嫌いじゃないらしい。


 故郷にキュイズナーの子供か、親類がいるのか?

 そう考えると魔神帝国も完全な敵と思えなくなる。


 が、感傷は戦場につきもの。

 戦いとなったら、マジに戦う。


 それが俺だろう。

 と、真面目に考えているが、目の前では、ミナルザンの触腕? 的な髭をひっぱるシウの姿が面白すぎる。


「ふふ、口元のしょくしゅひげちゃんが可愛い~!」

「シウ。ミナルザンが困った顔をしているぞ」

「でも、喜んでる~。引っ込んで人族のような顔に変化したから、びっくりしてた顔が面白いの~」

「ミナルザン。その子はシウっていう名で、ミナルザンのことが気に入っているようだ。暫く見てやってくれ」

「ワ、ワカッタ……ガ、シウハ、我ノ髭ガ、食ベ物デハナイ。ト、理解シテイルノダナ?」

「シウ。そのミナルザンの触手、触手髭、触腕は、イカのように食べられる物ではない。食べられるかも知れないが、食べちゃだめだ」

「分かった~。シュウヤ兄ちゃん、真っ黒いカッコいい船が気になる!」

「あ、お兄様、わたしたちは近くに見に行きました」

「はい、シュウヤ様の漆黒の悪魔。小型飛空戦船ラングバドルは凄く素敵……」


 ディアとドロシーがそう発言。

 頷いて、


「もう聞いていると思うが、魔力豪商オプティマスさんとの交渉で手に入れた。んじゃ、バルコニーに向かう」

「「はい」」

「分かった~」


 ペントハウスの浮遊岩前で、ペレランドラと合流。

 化粧が整っている。

 スレンダーなドレスが似合う。

 

 一瞬、細い腰を持って激しく突いたことを……。

 いや、今は止そう。


 そのペレランドラは会釈。


「シュウヤ様、わたしも」

「了解」


 ペレランドラはキスマリとも会釈。

 秘書官的に見えるが、上院評議員様だ。


 そして、キスマリとも当然、挨拶はしている。

 初見は大変だったようだが。


 そのペレランドラが、


「漆黒の悪魔を見たら、【髪結い床・幽銀門】と【夢取りタンモール】のメンバーも驚くでしょうね」

「あぁ」

「そして、キスマリにも驚くかと」

「そりゃな」

「ここセナアプアには魔族は多いと聞いたが……」


 頷いた。


「二眼系の魔族は多い」

「鬼婦ゲンタールの手足といい、わたしも驚くことは多い」

「へぇ、鬼婦ゲンタールは魔界セブドラでは有名?」

「有名かは分からないが、わたしは知っていた」


 と浮遊岩の前の扉が開く。

 一緒に浮遊岩に乗り込んだ。


「魔界セブドラの魔界大戦はかなり頻繁にあると聞いている。その戦いの一環で?」

「その通り。故郷が破壊された前の魔界大戦の一つ。大まかな勢力は、魔界王子ハードソロウ、魔界王子ライラン、魔界王子テーバロンテ、十層地獄の王トトグディウスの大眷属ラ・ディウスマントル、大眷属アメメソルジンなどだ。それらの諸勢力がぶつかり合う穿山ウアンの戦場にいた」


 へぇ。

 

 そうして、中層の踊り場に到着。

 香具と光源に床の中に走る水を見てからバルコニーのほうを見る。

 まだ、リツとナミに【髪結い床・幽銀門】と【夢取りタンモール】のメンバーはいない。


「まだ一階から来てないらしい。先にバルコニーに行こう

「はい」


 拱門から先の外はまだ明るいが、もうそろそろ夕暮れ時かな。 

 ペレランドラとキスマリを連れてバルコニーに向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る