七百八十四話 七魔将リフルと激闘に闇神リヴォグラフとの邂逅
般若顔の七魔将リフルは大剣を振るってきた。
大剣から黄金色が滲むように現れたのは魔刃。
その魔刃が飛来。
更に、大きな柄から銀色の魔刃も遅れて飛来した。
七魔将リフルは背中を拡げるように骨の翼を造ると飛翔しては、ホバリングしつつ魔槍の角度を変える。
距離は詰めて来ない。
まずは、この飛来してきた黄金色の魔刃と銀色の魔刃を――。
霊槍ハヴィスの<豪閃>でぶった切るかと思ったが――。
沸騎士たちが方盾を掲げて前進。
「閣下――」
「ここは我らが――」
骨の方盾と黄金色の魔刃と銀色の魔刃が衝突。
魔刃を受けた方盾から鈍い音が響くと同時に火花が散った。
「「フン!」」
沸騎士たちは方盾を――。
下げて、上げつつ、横へと方盾を払った。
――魔刃を引っ掛けるように斜め後方へと弾くことに成功。
その弾いた魔刃の端が星屑のマントに触れて煌めいた。
更に、沸騎士たちが弾いた黄金色の魔刃と銀色の魔刃が新手のガーゴイル系のモンスターと衝突。
ガーゴイルの体は魔刃によりバッサリと切断された。
その倒れたガーゴイルを踏み潰して出現してくる他の大きなガーゴイルをゼメタスの骨の剣が両断。
横からアドモスが骨の盾を振るい、大きなガーゴイルの胴体を殴り潰して倒す。
「見事だ、沸騎士たち!」
「「ハイ!」」
「――七魔将、覚悟!」
ヴィーネの声と同時に翡翠の
が、魔槍の穂先が突き出されて光線の矢は破壊された。
ヴィーネの放った光線の矢に内包された黄緑色と緑色の蛇が散る際に、どこからともなく轟音が響く。
今までにない現象だ。
【幻瞑暗黒回廊】と関係が?
更に、ガーゴイル系モンスターと角と毛が目立つ丸いモンスターが飛来。
続いて、屋上の左の端に巨人のもののような手が掛かる。
その巨人の手の持ち主が「ウボぉぉぉ、リフルざまぁぁ、敵でづがぁぁ」と変な声を発しつつ屋上に這い上がってきた。
その巨人は頭部が左右に裂かれていて、胸元にオークとゴブリンの顔が集積している。
ゴドー系の魔族か?
更に、半透明な魔剣を持つ半身が半透明な強者らしき魔族も飛来してきた。
ガーゴイル系ではない。
「シュウヤ様、右のモンスターと半身が半透明の魔族はお任せください!」
「キサラ、そのモンスターは強そうだ。わたしも出る――」
「シュウヤ、わたしは左の大柄魔族を――」
キサラとヴィーネが右に――。
ビーサが左に出る――。
ヴィーネは中衛でどっちにもフォローが可能な位置か。
「閣下、わたしは上から――」
「ん、わたしも精霊様と上から周囲を見る」
ヘルメは飛翔。
エヴァも金属の刃とサージロンの球を周囲に展開しつつ真上に飛翔。
「わたしはミスティと組む。この元魔法学院の屋上で遊撃を担当するから」
「マスターと沸騎士たち、遊撃はわたしたちに任せて、正面の新手と七魔将を頼むわよ」
「おう」
レベッカとゼクスに乗ったミスティは機動力が高い。
飛翔するガーゴイルを蒼炎弾が捕らえて破壊し、倒す。
ミスティはゼクスを運用。
パイルバンカーをガーゴイルに衝突させて破壊。
二人は、センティアの部屋の背後に回るようだ。
相棒たちと合流か。
「にゃごぉぉ」
「きゃ」
「ディア、頭を下げてなさい!」
「はいぃ」
「ちょっ、
「――ん、ミスティ、凄い! ゼクスが成長して操縦?」
「――うん。ま、どっちでもいいけど、基本は盾代わりよ。<血魔力>で攻撃&防御に活かせるから」
ディアを乗せた相棒と皆の声が、背後のセンティアの部屋の上から響く。
しかし、合体と操縦?
一瞬、操縦席を想像した。
ミスティのゼクスがversionアップしているようだ。
ミスティとゼクスを見たくなった。
が、七魔将リフルは魔刃を連発してくる――。
頼もしい沸騎士たちが、その魔刃を次々に弾き飛ばす――。
俺の斜め前で仁王立ち。
俺を守ってくれている沸騎士たちに、
「沸騎士たち、連係しようか」
「――承知!! 閣下の盾となりまする!」
「――閣下と共に戦えるのならば我の命なぞ、ここで果てようとも構わぬ!!」
「いい気概だが、まだ魔界に帰るのは早い。七魔将リフルの背後から出現するモンスターにも備えろ。そして、タイミングは任せるが、魔刃を弾いたら横に移動しろ」
「「承知」」
沸騎士たちは脇腹と背中から黒色の蒸気的な煙と赤色の蒸気的な煙をリズミカルに放つ。
――煙の出力にリズムがあった。
なるほど、横に移動するタイミングを煙で示してくれているのか。
「そこの槍使いといい、我の魔大剣フゴンの<魔烈斬弾>をことごとく弾くとは、ただの上等戦士ではないようだな――」
七魔将リフルはそう語りつつ魔大剣フゴンを振るう。
魔刃を連続して放ってきた。
右の上腕が持つ魔槍は温存しているようだ。
茜色の穂先に魔力が集結中。
「――魔刃は威力があるが、七魔将と呼ぶには、些か……」
「――ふむ。我らを上等戦士と見間違えるとは!」
「――しかし、小癪なジャックハルも勘違いしていた。仕方がないのかも知れん――」
沸騎士たちは魔刃を弾き飛ばしつつリズミカルに煙を出し続ける。
その煙の意味とタイミングは理解した。
――血魔力<血道第三・開門>。
<
<血道第四・開門>――。
<霊血装・ルシヴァル>を発動。
<霊血の泉>も発動。
「「閣下ァァ」」
刹那――。
黄金色の魔刃と銀色の魔刃を斜めに弾き飛ばした沸騎士たちが左右に移動した。
「おう――」
<血魔力>の加速を活かすとしようか――。
――般若顔の七魔将リフルと目が合う。
「闘気霊装か!」
驚く七魔将リフルを睨む。
同時に《
氷の魔法の鎧がハルホンクの防護服に展開されるや――。
地面を蹴って前傾姿勢で前進。
が、七魔将リフルは嗤い、
「<黒極魔動>――」
魔大剣フゴンの角度を変えた七魔将リフルは体から黒色の魔力を放つ。
骨の右の上腕が持つ魔槍からも魔力を放出させた。
速度を増した七魔将リフルは、魔大剣フゴンを振るってきた。
加速した金色と銀色が混じる魔刃を飛ばす。
『<神剣・三叉法具サラテン>、羅、力を貸せ』
『はい、器様――』
三叉魔神経網が活性化。
一瞬で<血魔力>と氷の魔法の鎧と和風防具<瞑道・瞑水>が融合。
そして、下半身に体重を掛けて右足を引いた。
半身の姿勢で霊槍ハヴィスの柄を掌の中で滑らせる。
霊槍ハヴィスを短く持ち直しつつ爪先半回転――。
金色と銀色が混じる魔刃を避けた。
それらの魔刃は<霊血装・ルシヴァル>の面頬に擦れた。
火花が散って頬に熱を感じた。
振動も感じつつ七魔将リフルに近付くや――。
霊槍ハヴィスで<牙衝>を繰り出す。
《
骨の上腕が扱う魔槍を下げて霊槍ハヴィスの穂先を防ぐ。
が、霊槍ハヴィスの光の刃は振動――。
天道虫の幻影を発しつつ茶色が交じる魔槍の柄を削る。
このまま茜色の穂先を千切り取るように、七魔将リフルの足をも霊槍ハヴィスは削れるか?
と思ったが、禍々しい魔力を発した魔槍の柄はぎゅるっと蠢いて再生。
そして、七魔将リフルの般若顔の口が歪むと体を赤くする。
「甘いァァァ――」
体の一部が凍っていた七魔将リフルは赤く膨れた腹から無数の骨刃を繰り出してきた。
視界が埋まるほどの大量の骨の刃――。
<血鎖の饗宴>で反応する前に喰らった。
「痛ェェ――」
が、さすがはハルホンク――。
「シュウヤ!」
「ん、シュウヤ、逃げて!」
「あぁぁ――」
眷属たちがそう叫ぶ。
が、安心してほしい。
が、眷属たちが心配する気持ちも分かる。
太腿が貫かれて、左脇腹が派手に抉られた。
強まっているハルホンクの防護服を貫く七魔将リフルの攻撃は強い。
そして、痛すぎてどうにかなりそうだ。
毒でもあるのか?
更に、七魔将リフルは――。
折れた骨刃と俺の体を貫いた骨刃を自身の体内に引き戻しつつ、膨れた腹があるとは思えない速度で体を畳ませる機動の袈裟斬りを繰り出してきた。
俄に霊槍ハヴィスの光の刃を斜めに上げる――。
その魔大剣フゴンの袈裟斬りを穂先の光の刃で受けた。
魔大剣フゴンを外に弾くと同時に――。
左手に神槍ガンジスを召喚。
その左手の神槍ガンジスで速やかに<光穿>を放つ――。
方天画戟と似た光を纏う穂先が七魔将リフルの膨れた腹に向かう――。
「速いが――<闇ノ天陣>」
七魔将リフルは器用に退く。
右の上腕が扱う魔槍の柄と――。
三腕が扱う魔大剣フゴンの剣身で十字架ブロックを行った。
<光穿>は防がれた。
魔大剣フゴンから出ていた闇の魔力を<光穿>は打ち消すが、十字架ブロックは崩せない。
七魔将リフルの足下と背後から無気味な闇模様が浮かぶ。
構わず再度霊槍ハヴィスの<光穿>を繰り出す。
その<光穿>も十字架ブロックで防がれた。
闇の魔力はまた消えるが、<闇ノ天陣>の防御効果は高いようだ。
が、突き崩す――。
<水神の呼び声>を発動――。
<水雅・魔連穿>を繰り出した。
右手の霊槍ハヴィスの突き――。
左手の神槍ガンジスの突き――。
七魔将リフルの闇模様が漂う十字架ブロックを削るように連続技を繰り出したが、七魔将リフルの防御は硬い。
四腕が扱う二つの武器を小刻みに動かす。
後退のタイミングも絶妙だ。
太ましく、身軽でもあるし、硬く柔らかい。
七魔将リフルは強い――。
その七魔将リフルから殺気を受けた。
――キィィィィンと耳鳴り!?
――俺の動きが止まった。
刹那、武器越しに、七魔将リフルの双眸が煌めいた。
更に、左右の頭部の一文字に引き結んでいた唇が無気味に揺らぐや、
「ひゃぶあふぇひゃびゅあ――」
「うぼがげがえげ――」
奇妙な耳を劈く声が響いてきた。
――背筋を凍りつかせる迫力だ。
――精神が削られた気がする。
が、右腕の神槍ガンジスの穂先は俺の動揺の影響を受けない。
イモリザが元気よく動いた。
『第三の腕として使ってください』という意味だろう。
分かっているが、まだだ。
荒ぶる呂布を想起させる方天画戟と似た穂先が咆哮するように振動を続けた神槍ガンジス。その方天画戟と似た穂先が、七魔将リフルの魔槍の柄と魔大剣フゴンを削りに削った――。
凄まじい火花魔力――。
同時に魔力を神槍ガンジスに込めた。刹那、蒼い毛の槍纓が揺らぐ。
槍纓は、孔雀が羽根を広げたように拡がる――。
と、一瞬で、槍纓は蒼い刃に変化を遂げる。
その槍纓だった蒼い刃は、
ガンジスの穂先付近から降り注ぐ蒼い刃の群れを見ても守勢を崩さない七魔将リフルは般若顔がより険しくなった。が、意外に冷静だ。
魔槍の柄と魔大剣フゴンを使い体を防御。
しかし、槍纓の蒼い刃の一部は、次々に七魔将リフルの体に突き刺さった。
「グアァァァ!」
痛覚は普通にあるようだ。
その七魔将リフルの体から、どす黒い魔力が放出する。
その黒い魔力を活力に得ているのか、リフルは、自らの体が槍纓の蒼い刃に切断されつつも、前進してきた。
マジか――。
その七魔将リフルの切断された内臓がぐにょりと蠢いた。
骨の刃と腸が連なった肉腫に変化するや、その骨の刃と蠢く腸の肉腫は凍り付きながらも、強引に神槍ガンジスの穂先と柄に絡まってくる。
《
伊達に魔迷宮の管理者ではない。
「取り込んでやろう――」
「それは無理だな――」
神槍ガンジスと霊槍ハヴィスを消す。
いきなり無手となった俺を見た七魔将リフルは驚きつつ、
「――小癪な! <武器召喚師>でもあるのか!」
そう発言しながら、骨が構成する右上腕が握る魔槍を振り下ろし――。
更に三腕が持つ魔大剣フゴンを振るう。
薙ぎ軌道の魔大剣フゴンの剣身から、口を拡げたピラニアのような幻影が飛び出てきた。
牽制に無数の《
続けて《
七魔将リフルは、魔大剣フゴンから出たピラニアのような幻影と魔槍を振るう。
魔法の茜色の穂先が《
そして、ピラニアのような幻影が《
しかし、霧が発生――。
その霧を強めるようにユニーク級の
<水神の呼び声>の効果も相まって霧は拡大。
<仙魔術>を意識。
<白炎仙手>を発動――。
霧の中から――。
無数の白炎を纏う貫手が飛び出て七魔将リフルに向かう。
<白炎仙手>を見た七魔将リフルは、茜色の穂先から茜色の手を生み出した。
その茜色の手と茜色の穂先で<白炎仙手>の一部を防ぐ。
「ぬごぁぁ!? 白い――貫手なのか!?」
驚いているが対処してくる。
魔大剣フゴンのピラニアのような幻影も<白炎仙手>の貫手を相殺してきた。
その間に水の分身体を生成。
そして、七魔将リフルの横に移動させた水の分身体で<水穿>――。
七魔将リフルは守勢になる。
が、俺の水の分身体は幻。
霊槍ハヴィスを突き出したまま消える。
「な、消えただと?」
隙ができた。
血鎖の群れを想起。
体から大量に血を出した。
そう――<血鎖の饗宴>だ。
血鎖の群れは腹を空かせた蛇のように七魔将リフルに向かう。
七魔将リフルは正面を向きつつ素直に退くが、左右の頭部が、
「「我、我、どがんががが、ひぎゃぁぁぁ」」
異質な声を響かせて叫ぶや、その頭部が破裂。
破裂した頭部の代わりに、傷口から、どす黒い魔力を放出してきた。
その間に、七魔将リフルの魔槍の茜色の穂先を<血鎖の饗宴>が破壊した。
七魔将リフルは、その茜色の穂先が破壊された魔槍の柄を途中で手放す。
退きながら右の上腕を伸ばして、その右の上腕を犠牲にしつつ<血鎖の饗宴>から逃げた。
そして、全身を膨らませるや、膨大な魔力を三腕が握る魔大剣フゴンに込める。
盾代わりか?
すると、魔大剣フゴンからピラニアのような魚の怪物を出現させた。
次々に出現する魚の怪物――。
非常に質の高い魔力が構成する魚の怪物か。
そのピラニアのような魚の怪物は――俺の<血鎖の饗宴>と衝突を繰り返す。
血鎖と一緒に魚の怪物は消える。
驚いた。<血鎖の饗宴>が相殺された。
光魔ルシヴァルの光が入った血も完璧じゃないってことか。
が、魔大剣フゴンに亀裂が走る。
七魔将リフルは動揺したように般若顔が崩れた。
七魔将リフルは俺を睨む。
「――糞ガァ! 魔槍エキに盟友フゴンからもらった大切な魔大剣を!!! 異質な光を扱う吸血神ルグナドの眷属めが!」
怒った。
当然か、
が、隙だらけ――。
<血鎖の饗宴>を止めつつ――。
右手に魔槍杖バルドークを召喚。
左手に霊槍ハヴィスを召喚。
前傾姿勢のまま前進――。
<刺突>のモーションを取る。
右手の動きと体のモーションに気を取られた七魔将リフルは罅割れた魔大剣フゴンを盾代わりに逃げるように退いた。
「<神剣・三叉法具サラテン>――」
『よーし――』
「え?」
直進した<神剣・三叉法具サラテン>の神剣――。
見事に魔大剣フゴンごと、七魔将リフルの体を貫いた。
「げふぁがぁぁぁ――」
どす黒い血を般若顔の口から盛大に吐く。
胴体の風穴から大量のどす黒い血が放射状に散った。
その七魔将リフル。
体から、更にどす黒い魔力を発した。
上下左右から圧縮されているようなプレッシャーが、体を突き抜ける。
回復を狙うのか?
「ぐぇぇ、闇神リヴォグラフ様、我の魂――」
刹那――。
七魔将リフルは、見えない巨人の両手で体が引き裂かれたように、胴体が千切れて真っ二つ。
沙が斬った?
否、<神剣・三叉法具サラテン>の斬撃ではない。
『器、こやつ、神力を放ったぞ!!』
裂かれた七魔将リフルの半身と半身の間では、腸のような臓器が注連縄的に絡まって、まだ半身と半身が繋がっているようにも見えた。
その二つに分かれた七魔将リフルだった肉体は、更に蠢いて肉スライムと化した。
骨と魔法の鎧の残骸に汚らしい歯牙が混ざる肉スライム。
未知なるクリーチャーの肉スライムだ。その表面にある無数の裂けた口から、
「「イー」」
「「ガー」」
「「イー」」
「「ガー」」
異質な声が重なり合う攻撃を寄越してきた。
耳と喉が焼けるように痛い。
目の前でバチバチと音が響いた。
呪い系か。精神にダメージを与える声の攻撃。
<神剣・三叉法具サラテン>も動きを止めた。
――恐怖。
『ぬぬぬぬ、神力が纏わり付くァァ』
「「閣下ァァァ」」
俺以外にも散った七魔将リフルだった肉スライムが襲い掛かっているようだ。
皆を信頼しつつ冷静に肉スライムの群れを凝視。
穢れの濃い部分に――。
《
「「イガー!?」」
異質な声を響かせた『イガー』。
その七魔将リフルの
血飛沫となって消えた。
予想は的中。
そして、今の予想外の魔法攻撃を受けて、肉スライムたちの動きが鈍くなった。
しかし、まだまだ数が多い。
そのまま――。
キサラから習い途中の<魔闘術>系技術<魔手太陰肺経>を意識して呼吸を整えつつ<瞑想>。
続いて<生活魔法>で水を撒く。
<導魔術の心得>と<仙魔術・水黄綬の心得>を意識。
ゼロコンマ数秒もかけず――。
水を全身の肌とハルホンク衣装に纏わせる。
<水月血闘法>を実行。
周囲に血の鴉が複数出現するや否や<双豪閃>――。
魔槍杖バルドークと霊槍ハヴィスの矛で、肉スライムの一部を切り裂いた。
燃焼しつつ燃え広がった肉スライムたちは、分裂して小さくなる。そして、仲間のモンスターを喰らって回復を図ろうとした。
逃がすかよ――。
ディアと相棒に皆を守る――。
迅速に魔力を込めた魔槍杖バルドークを振るった――。
<魔狂吼閃>を発動――。
魔槍杖バルドークの穂先から無数の紋章魔法陣が出現。
その魔槍杖バルドークに右腕が喰われる感覚を得るや否や、右腕ごと巻き込むように魔槍杖バルドークから紅蓮の魔力嵐が吹き荒れた。
その魔力嵐は指向性を得たように肉スライムと屋上のモンスターに向かう。
魔力嵐に混じる紋章魔法陣群から――。
魔竜王。
邪獣。
虎邪神。
金色の骨手。
などの魑魅魍魎が出現。
――<魔狂吼閃>の魔力嵐が構成する魔竜王の頭部が咆哮しつつ肉スライムを喰らう。が、その魔竜王の頭部が内側から派手に爆発――。
魔竜王の口の中で肉スライムが爆発したようだ。
更に、肉スライムの残骸が散る爆発の内側から邪獣が飛び出るや、肉スライムを喰らいつつ屋上の一部のモンスターをも喰らって、眷属たちを避けつつ、周囲を制圧してから消えた。
<魔狂吼閃>を繰り出した魔槍杖バルドークが震えて怒号のような咆哮が轟く。
が、まだ肉スライムが左側にいる――。
刹那の間に、魔槍杖バルドークを握る手に力を込めた。
魔槍杖バルドークの怒号を鎮めると同時に左手が握る霊槍ハヴィスへと魔力を込める。
霊槍ハヴィスの光の刃が伸びた。
その伸びた光の穂先からブゥゥゥンと音が響くや、天道虫の幻影の群れも霊槍ハヴィスから出現。
この霊槍ハヴィスを活かす――。
<導想魔手>を蹴って跳躍。
肉スライムの群れの一部が、俺の機動と霊槍ハヴィスに誘因を受けたように集まってくる。
丁度良い――。
再び、<導想魔手>を蹴って宙空を移動するが、肉スライムから飛び出た歯牙が連なる刃となって、追跡してきた。
その歯牙が連なる刃の軌道を読む――。
歯牙が連なる刃を避けることができた。
が、肉スライムの本体の速度は速い。
歯牙が連なる刃を避けた俺に向けて、肉スライムの本体が、歯牙と歯牙が無数に生え揃った肉布団を出して、俺をその奇っ怪な肉布団で押し潰そうと寄せてくる。
即座に、左右の腕と肩を動かすフェイクを行う。
肉スライムの本体は俺の動きに反応して、フェイクに掛かった。
肉スライムの肉布団は動きが鈍る。
その肉布団の上部が左右に分かれると、その左右に分かれたビラビラのような肉布団から歯牙が縦に連なる刃を伸ばしてきた。
左右に分かれたビラビラの肉布団と一対の連なる刃は無視、狙いは肉スライムの本体――。
その肉スライムの本体に向けて――。
<光穿・雷不>を発動――。
一対の歯牙の連なる刃の根元ごと――。
ジャッ――と異質な音が走る。
霊槍ハヴィスの<光穿>が肉スライムの本体を穿った。
肉スライムの本体に、霊槍ハヴィスが穿った証拠の大きな風穴が震動しつつ拡大。
そんな風穴を真っ赤な炎が縁取った。
倒したかと思ったが、燃えた肉スライムは分裂。
上下左右に拡大しつつアメーバのように増えた。
逃げるつもりか?
すると、霊槍ハヴィスの周囲に雷鳴が轟いた。
その光神ルロディスの咆哮染みた雷鳴を浴びた肉スライムの群れは、痺れて宙空に縫い止められたように動けない。
そして、激しい雷鳴が八支刀のような閃光となりつつ霊槍ハヴィスの近くに集約するや、バッ――と異質な音を立てて
その刹那――巨大な<光穿・雷不>が霊槍ハヴィスに紫電の鎧を纏わせる勢いで宙空を直進――。
ドッと音を響かせると肉スライムの群れを突き抜けた。
肉スライムは一瞬で消える。
宙空に真空の孔を無数に作ったような<光穿・雷不>は魔迷宮の空間に穴を開けるように消えた。
――凱風のような風が吹く。
七魔将リフルを倒したか?
消え方が<闇穿・魔壊槍>と似ていた。
が、まずは――。
沸騎士たちとヘルメが戦う巨大な腕を持つ怪物に向けて降下――。
直ぐに第三の腕を意識。
イモリザの第三の腕に無名無礼の魔槍を握らせて<刺突>。
右腕の魔槍杖バルドークで<刺突>。
降下する勢いをダブル<刺突>に乗せた。無名無礼の魔槍と魔槍杖バルドークの穂先が大柄の怪物の背骨をひしゃげ潰す。
背骨に連なっていた黒い塊が割れると、地面に落下。
大柄の怪物は消えるように消失。
「閣下! ありがとうございます。細かなリフルの残骸モンスターといい、今の水を防御する怪物も強者でしたが、背後に弱点があったのですね」
「閣下ァァ、凄まじい連続<刺突>! 新技でしょうか!」
「イモリザの第三の腕を用いただけだ。さて、皆の戦いに加勢しようか」
「はい!」
「「承知!」」
気合い溢れる沸騎士たちとヘルメ。更に、レベッカが、
「こっちは倒したわ」
「はい、右側の半透明の魔族も倒しました!」
「クリスタルのような壺の戦利品があります!」
キサラとヴィーネがそう発言。
すると、頭上の黒い霧が濃くなった。
黒煙がもくもくと出現。
同時に紫色の閃光と雷鳴が轟いた。
その黒い霧と黒煙が漂う奥のほうに赤い双眸が出現。
その赤い双眸は……。
センティアの部屋の上にいる相棒を睨む。
「『騒がしい贄どもが……我の<暗黒瞑想>に干渉したのは……お前か? 神獣……』」
「にゃごおお」
赤い双眸は『儘よ……』と思念を寄越すと、ロロディーヌから視線を逸らして、俺を凝視。
『「……お前だな。闇と光の槍使い……」』
神々しさと禍々しい魔力を併せ持つ異質な思念と声が響いた。
元は魔法学院の屋上だった空間が静まり返る。
赤い双眸は俺を睨んだままだ。
俺たちを襲っていたモンスターたちは動かなくなった。
皆がそのモンスターたちを倒しまくると、屋上からモンスターが消える。
モンスターの出現は止まったが……。
「ん、怖い」
「シュウヤ、あの赤い眼……喋っている?」
「あぁ」
「『答えよ、身の毛もよだつ旧神アウロンゾ……などの異質な力を宿す朱の魔槍を扱う槍使い……』」
「俺……ですよね」
「『そうだ、お前だ、定命の槍使い。名を聞こうか……』」
怖い、目力が半端ない。とりあえず、
「シュウヤ。シュウヤ・カガリです」
「『ふむ、名は体を表すと言うが、質の高い霊魔力と<血魔力>を操る定命の存在か。そして、我のテリトリーで眷属を屠るとは、不愉快ではあるが、いつの世以来かの』」
予想はできているが……。
「あのぅ……貴方様は……」
「『闇神リヴォグラフである』」
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