七百二十五話 元狂眼タルナタムの使役

 元狂眼タルナタムは掌から煌びやかな白銀の八支剣を出した。

 グラディウスソードと似た幅広い剣に、八本の枝の刺は目立つ。

 神獣ロロディーヌの触手骨剣を彷彿とする厚さ。相棒が魔力を注いだ結果か? 血も帯びている。八本の枝の先端から輝く血が垂れていた。相棒の触手骨剣とルシヴァルの紋章樹を模倣した感がある。輝く血の八支剣を生やした掌の前腕から青白い金属と血色の金属が滲み出ると、それらの金属が一瞬で煌びやかな腕の甲とナックルダスター系の防具を形成した。カッコいい腕の剣だ。八支剣は掌から伸びているからシークレットウェポン系でもある?


『器は面白いことをやる。造魔生成師や錬金術師のスキルがなくとも、工夫次第でこうも変化があるとはな』


 サラテンの沙の念話だ。すると、ゴドローン・シャックルズの枷が振動すると、また、獄星の枷ゴドローン・シャックルズから青白い鎖と血色の鎖が迸った。

 それらの青白い鎖と血色の鎖の群れが、元狂眼タルナタムの首と四本の腕に巻き付き、皮膚と鎧にも鎖が絡み付くと、一瞬で、数珠的な襟を擁した血色の鎖が連なる鎧と成る。小さな鎖のほうはゴドローン・シャックルズへと収斂された。

 一瞬、足から噴射中の魔力の色合いに青白い光が混じった。 

 ゴドローン・シャックルズこと獄星の枷は収縮し、元狂眼タルナタムの胸元にぶら下がりゴドローン・シャックルズはネックレスと化した。

 すると、そのぶら下げた獄星の枷ゴドローン・シャックルズのネックレスに誘われるように血色の鎧から黒色と白色が混ざる炎玉の炎が噴出し、ネックレスの周囲で揺れていく。

 ネックレスの獄星の枷ゴドローン・シャックルズから出た魔線が、元狂眼タルナタムとも繋がるが、魔察眼では、どんな意味があるのか、その判別は難しい。

 先ほど回収するか迷った炎玉の幻影だとは思うが。

 六つの複眼を擁した元狂眼タルナタムは、自身の胸にぶら下がる小さい獄星の枷ゴドローン・シャックルズを見てから意味があるように頷く。

 と、のっそりと頭部を上げた。俺を凝視してくる。

 六つの複眼の虹彩には光が溢れていた。光属性と分かる温かい光だ。

 その顔貌の右顎の端に肉球の印が浮かぶ。左顎の端には蝌蚪文字の小さい印が浮かぶ。肉球の印と蝌蚪文字は宙空で回転しながら消えた。

 面白い生物だ。生物、モンスターか。狂剣タークマリアの元眷属という種族か?

 キメラ的だから新種か。胴体は鎖が連結している血色の鎧で、鎖が鱗にも見えてくる。その元狂眼タルナタムが、


「……我ノ主様……」

 と頭部を下げていた。

 足下から血色の魔力を噴出させて浮いている。

「主か。ちゃんとゴドローン・シャックルズが効いたようだな」

 すると、<破邪霊樹ノ尾>の樹木で囲むカットマギーが、

「――狂眼タルナタムが!」

「主ノ、敵――コロス!」

 元狂眼タルナタムがカットマギーの声に反応。

 八支剣が<破邪霊樹ノ尾>の樹木で囲むカットマギーに向かう――。

「待て」

「ワカッタ――」

 元狂眼タルナタムは俺の言葉に反応し、八支剣は、カットマギーの顔を突き刺す直前で止まった。その切っ先をまじまじと凝視したカットマギーは、

「マガツノフルの長刀ではない? 造形が変化? 槍使いには、造魔生成のスキルもある? 膨大な魔力と精神力に魔界に通じる称号もあるのか。いや、そもそも狂眼タルナタムとの繋がりの〝魔狂源言ノ勾玉〟と狂怒ノ霊魔炎は……あ、わたしは繋がりを失ったのか……」


 戦闘型デバイスアイテムボックスに浮かぶ勾玉らしき物を調べる。

 と、〝魔狂源言ノ勾玉〟と表記されていた。

 その魔狂源言ノ勾玉をカットマギーに見せるように腕を動かした。

 戦闘型デバイスに浮かぶ魔狂源言ノ勾玉を見たカットマギーは驚愕した。

 そのカットマギーは<破邪霊樹ノ尾>で覆われているから達磨に見える。

 達磨カットマギーが、


「……魔狂源言ノ勾玉を奪取したのか。狂怒ノ霊魔炎らしき魔素も、微かに狂眼タルナタムから感じられるのみ……しかし、それならば、なぜ、わたしは生きている?」

「なぜ、と聞かれてもな。魔狂源言ノ勾玉と狂怒ノ霊魔炎から魔線が繋がっていないと、お前は死ぬとでも言いたいのか?」

「そうだ……」

「狂眼タルナタムとの契約か? 廃れた魔神、嘗て魔界の神だった神格落ちの狂剣タークマリアと、一種の命の誓約か?」

「……」

 カットマギーは頷いたか? 狂剣タークマリアと通じたモノか。

「俺が強引に狂眼タルナタムの権利をカットマギーから奪ったことで、魔界の神の一柱だった狂剣タークマリア様とカットマギーの特殊そうな契約がなくなった?」

「……ケケケ、そうかも知れない……」

 嗤うカットマギーだが、嘲笑とはかけ離れた嗤いだ。

 すると、アドゥムブラリが、

「主、魔界の知らぬ神云々の前に、こいつは無数の人々を殺した暗殺者だ。そして、敵だろう。普通に倒してもいいのではないか?」

「まぁ、それを言ったらな。気まぐれだ。カットマギーが異常に強かったってのもある」

「変わった主だ。獅子獣人ラハカーンの猛者はあっさりとぶち殺したくせに」

「アドゥムブラリの気持ちも分かりますが、シュウヤ様の行動は、先を見据えてのことでしょう」

「ほぅ、セナアプアとやらの戦力拡充を狙う気か」

 アドゥムブラリはそう語りつつカットマギーを睨む。

 そのカットマギーは、双眸をパチパチとさせた。

 <破邪霊樹ノ尾>越しだが、その表情に活力が宿ったことが分かる。

 そのカットマギーが、


「……わたしをスカウトかい?」

「まだ戦い途中だってのに、気が早い」

「ケケケ、世話人や軍曹もいるんだ。もう戦いは決まったようなもんだろう」

「メリチェグはやはり強いんだな」

「……強いよ。だが槍使い、アンタは桁が違う。神王位って武人なんだろう?」

「またそれか、知り合いにいるだけだ」

「……だいたい、わたしを殺さず捕らえられる男なんて、この世に槍使い以外いるとは思えないがねぇ」

「そうですね。それほどに凄い戦いでした。しかし、シュウヤ様の発想は凄い。魔界の神の眷属を使役してしまうとは、本当に驚嘆の一言! そして、格好良かったです」

 キサラの胸を躍らせつつ語る仕種が可愛い。

 そして蒼い瞳は真剣だ。照れる。


「うむ! 俺様のお陰でもある! <ザイムの闇炎>が宿った特別な貫手技!」

『閣下は<白炎仙手しろひげあたっく>を用いた魔手術の名人でもあります!』

『亜神ゴルゴンチュラの毒を抜いた時か』

『はい! 水神アクレシス様のお力もありますが、閣下に命を救われました』


 あの時は必死だった。


「見ていました。闇炎で燃えた貫手技。狂眼タルナタムの心臓辺りを貫いて、勾玉を取り出していた。素敵でした!」

「おう、素敵なキサラちゃん。俺を、その巨乳でダイナミックに挟んで揉むのだ!」

「エロピコ、黙れ――」


 親指で単眼球のアドゥムブラリを押し込む。


「――ブラァアァァ」

「ふふ」


 キサラが白い歯を見せて笑った。可愛いが、珍しい。

 幻影の妖精のような常闇の水精霊ヘルメは真剣な表情のまま指先から幻影の水をぴゅっと飛ばしている。エロピコ大魔王アドゥムブラリに幻影の水をかけていた。

 アドゥムブラリは単眼球を幻影ヘルメの動きと水に合わせて、ぐるぐる回しているから、何かの魔力を感知しているようだ。

 と親指をアドゥムブラリから離した。

「ふぅ……ぐりぐりは勘弁してくれ。が、もう一つのゴドローン・シャックルズのお陰でもあるな」


 と真面目なアドゥムブラリが語る。

 キサラは頷くと、ダモアヌンの魔槍の柄の孔から出ているフィラメントが動く。

 相棒が捕まえていた隻眼の空戦魔導師が動いたからだ。

 その空戦魔導師はキサラのダモアヌンの魔槍から出たフィラメントで縛られ中だが意識はある。すると、カットマギーが、


「……ゴドローン・シャックルズか。秘宝クラスの代物があるからこそ、わたしの宿命を取り除くことに成功したと分かる。しかし、そのような因果律をねじ曲げる行為が可能な槍使いの存在を狂言教が知れば……排除に動くことは、確実」

「そんな組織は知らねぇよ。敵ならば倒すのみ。こないなら放っておくが」

「……」

「で、ゴドローン・シャックルズを知っているのか?」

「いや、獄界ゴドローンと関係すると推測しただけだ。槍使いは獄界ゴドローンの関係者なのだろう? 狂眼タルナタムやわたしが生きていることが、狂戦士の器を持つ証しでもある。もしや、地底神キールーの眷属なのか?」

 そう言えばヴェクサードさんも狂戦士の力を受け継ぐ者と俺を評していたな。

「狂戦士の言葉なら知っている――」


 と魔槍杖バルドークと王牌十字槍ヴェクサードを交換。

 怪人ヴェクサードさんの幻影が穂先の杭の真上に浮かぶ。


『……イギル・フォルトナーの遺志を引き継ぐ聖戦士であり、狂戦士の力を受け継ぐ者がシュウヤだ』


 そう語ると、怪人ヴェクサードさんは王牌十字槍ヴェクサードの中に消えていく。


「光と闇の属性を持つ黄昏の吸血鬼。それでいて狂戦士の器か……」

「光魔ルシヴァルだ。で、まだ戦いは続く。暫くは大人しくしていてもらおうか」

「……ふ、元よりこの状況、完敗だよ。それにわたしの手足の傷を止血するように樹木を食い込ませているだろう? 変な優しさを持つ槍使い……あ、わたしに興味があるのかい? ケケケ」


 背筋がゾワッとした。

 気にせず、美人さんのキサラを凝視。


「シュウヤ様、お気になさらず。のちほど、わたしが癒やして差し上げます。今は魔塔エセルハードに戻りましょう」

「そうだな。皆の戦いが気になる」

「あ、この捕らえた空戦魔導師は、先ほど降伏すると申し出てきました」


 キサラが紹介してきた。

 隻眼の空戦魔導師は恐縮するように俺を見る。


「……名はビロユアン・ラソルダッカと申します。評議会副議長ラモンド・ルシュパッドの空戦魔導師でした」

「副議長か。ドイガルガ上院評議員と知り合いか?」

「直接の会話はありません」

「ドイガルガの情報を教えてくれ」

「虚空のラスアピッドなどの少数の戦力を引き連れて魔塔ハ・デスなどの各施設を爆破。上界と下界の各街で多数の被害者が出た騒ぎに乗じてセナアプアを離脱したと聞きました」


 テロを起こして離脱か。

 イラッとする奴だ。

 ユイがドイガルガを標的にマークしてくれていたら追跡が楽なんだが……血文字にそんな報告はない。


 その護衛の虚空のラスアピッドは空戦魔導師の空極。

 ルマルディ並みの強さを持つ。戦うとなったら厄介な相手だ。


 カットマギーも異常な強さだったし……。 

 アキエ・エニグマも強いし、シオンって俺を睨んでいた方も強いだろう。

 【幽魔の門】は盗賊ギルドだが、キサラの知り合いの方も強そう。

 局長とかも確実に強い。


 他にも多数の強者ばかり。

 セナアプアは確実にヤヴァい。

 

 そして、その虚空のラスアピッドだが……。

 俺たちの反対側の空域から魔塔エセルハードを攻めた連中に混ざっていると予想したが……上院評議員たちが話をしていたように逃げたか。


 好戦的でもなく狡猾な部類の性格か、単に忠誠心が高いのか。

 どちらにせよ、セナアプアの権力を失ったドイガルガに付き従う理由があるということだ。


 ドイガルガはピサード大商会などを持つ。

 【闇の枢軸会議】の中核の【八巨星】グループなど、味方が多い。

 【テーバロンテの償い】などとも通じている関係のことが理由かな?

 虚空のラスアピッドが、そのグループ側ってこともありえる。それらの連中もテロに協力したかな。

 三つの浮遊岩の乱に乗じたってこともあるか、が、逃げた野郎たちを気にしても仕方ない。


「相棒、キサラ、皆が戦う魔塔エセルハードに戻ろうか」

「はい」

「ンン、にゃ~」


 神獣ロロディーヌは<破邪霊樹ノ尾>の樹木が覆うカットマギーに触手を絡める。

 とカットマギーを自身の背中に運ぶ。隻眼が渋いビロユアン・ラソルダッカにも触手を絡める。

 すると、ビロユアンの頭部を撫でつつ胸のポケットに触手を突っ込む。そのポケットから魔力を内包した草を取った。

 草? 相棒はその小さい草を口に運ぶと、小さい草を奥歯で何回も噛み始めた。歯磨き?

 黒豹を大きくしたような頭部を激しく揺らす。鼻息が荒い。

 ガムのように草を噛んでいると分かるが、何かいつもの神獣ロロではない。相棒は興奮している。


「あ、また」


 キサラがそう指摘した。戦っている時にも何かしていたのか。


神獣ロロ。もぐもぐが激しいが、その草の汁が美味しいのか?」


 耳をピクピクと動かした神獣ロロは俺を見る。 

 真ん丸い瞳は可愛い、口髭が動いて、


「ンン、にゃお、にゃお~ん、にゃ? にゃぁ~」


 何か話してきた。少し酩酊しているのか、あまり意味が分からない。

『いっしょにはみがきしようにゃ』かな? あ、まさか……。


「……あの草は……わたしが飼っている魔猫用の……魔風木天蓼という魔草です」


 ビロユアンが遠慮気味に語る。ビンゴだった。


「相棒が気に入った魔のマタタビかよ。匂いが強烈そうに見える」

「まぁ!」

「にゃおおぉ~」


 と元気よく鳴いた相棒は頭部を真上に突き出した。

 鼻の動きといい、口元もオカシイ。髭の角度が……。

 戦いの最中だが、一気にメルヘンチックになった。


『ふふ、お鼻がムズムズと動いて可愛いです』

『あぁ』


「……相棒よ。戦いに影響は出ないよな?」

「にゃお、にゃ?」

「大丈夫ならいい」

「にゃ~」


 牙をキラーンと出す。大丈夫だな。


「よし、先に戻るぞ。相棒は無理をしない範囲で攻撃してくれ。カットマギーとビロユアンが反抗したら処置は任せる。で、元狂眼タルナタム。まだ名前をちゃんと決めていないが、俺の指示はちゃんと聞くんだろうな」

「――我、主ノ駒ダ、戦ウ」


 空も飛べるなら、護衛をやらせるか。


「なら、そこの白絹の髪を持つ美人さん、名はキサラ。そして、相棒の神獣ロロディーヌと一緒に敵と戦え」

「ワカッタ」

「キサラの指示は俺の指示と思え」


 と、元狂眼タルナタムは頭部を振るう。


「……我ノ主ハ! 主ノミ!」


 六つの複眼に力が入って怖いが何か愛がある。


「言うことを聞かないなら置いていく」


 元狂眼タルナタムは六つの眼球をぐるぐると回す。

 混乱した面を作る。アジュールっぽい。その元狂眼タルナタムは、


「……ワカッタ」


 と発言。元狂眼タルナタムは六つの眼球でキサラを見た。

 俺もキサラを見て、


「キサラ、頼む」

「はい、シュウヤ様。魔塔エセルハードを攻撃してきた敵戦力を削ぎましょう」

「にゃ」


 頼もしい相棒とキサラを見てから、信頼しているという意味を込めて頷いた。

 元狂眼タルナタムも頷く。

 と、四つの腕で構えるような仕草からキサラと相棒に向けて頭部を下げる。


 その間にアドゥムブラリを紅玉環に仕舞う。

 次の瞬間――。

 <血液加速ブラッディアクセル>を強めた。

 同時に<導想魔手>を蹴った。

 背面飛びから腰を捻って反転――。


 再び足下に出した<導想魔手>を強く蹴った。

 

 宙空で<脳脊魔速>を発動。

 ――迅速に宙を駆けた。


 二十秒後――。

 <脳脊魔速>が切れたところで激戦模様の魔塔エセルハードが見えてきた。

 

 ガーデンで戦う血長耳の兵士たち。

 相手は黒装束を着た暗殺者たち。

 派手な衣装は空戦魔導師か――。

 空魔法士隊の制服を着た死体が多い。


 ヴィーネの光線の矢を視認。

 光線の矢は、飛行中の魔導鎧を着た人物に向かう。


 光線の矢が魔導鎧を着た人物と衝突。

 魔導鎧を着た人物は小型の盾で難なく光線の矢を弾くや反撃のアサルトライフルが火を噴いた。

 ベニーが持っていた〝セヴェレルス〟と同系統の魔金属が使われていると分かる。

 雷撃の弾が射出された。

 鋼鉄の甲冑で、ここからだとゴツい印象だが、素早い。

 背中に噴射口でも備えているのか、爆発的な速度を出していた。

 魔法陣的なモノが出ている。


 暗殺一家の【チフホープ家】のだれかか?


 聖櫃アークらしきアサルトライフルは火力が高い。

 

 ヴィーネは縁に隠れた。

 縁が魔弾で削れていく。

 反対側に出たヴィーネは速やかに黒装束の敵に近付きガドリセスを横から振るう――。

 その黒装束の敵を一人、二人と斬り伏せた。

 ヴィーネは前進しつつ次の標的に向けてガドリセスを振るった。

 が、標的はヴィーネの剣術に反応。

 標的は魔剣師か、血濡れたガドリセスの刃を大太刀の刃で防ぎつつ鞘でヴィーネの頭部を攻撃。

 ヴィーネは、頭部を傾けて鞘の払いを避けると後退。

 一剣一弓の姿勢のまま俄に魔力を高めた魔剣師を見つめた。

 ゼロコンマ数秒の剣呑な間合いのあと、魔剣師は嗤う、と、鞘を<投擲>するや前進――。

 ヴィーネとの間合いを詰めると、大太刀の<刺突>系の突き技を繰り出すモーションのまま輝く右手で魔弾を至近距離から放った。

 ヴィーネは瞬時に<血魔力>を自身の体とガドリセスに通し、全身を紅色が縁取ると――<投擲>の鞘を翡翠の蛇弓バジュラで弾きつつ魔弾も避けた。


 ヴィーネが反撃せず避けることに専念した魔弾と突き技に<投擲>か。

 あの大太刀を器用に扱う魔剣師は、確実に強者。


 魔剣を扱う空戦魔導師か。得物は長い太刀だからカットマギーとはまた違うがカットマギー級か。

 空戦魔導師は弾け飛んでいた鞘に向け<超能力精神サイキックマインド>的な<導魔術>を使い、鞘を手元に引き寄せてた。その宙空から飛来してきた鞘の中へと迅速に大太刀の刃を差し込み納刀するや否や、その大太刀を納刀した鞘を背に乗せながら横回転を行ってからヴィーネを見るように両手をクロスさせる構えを見せる。ヴィーネを凝視していた。


 一挙手一投足が渋い、洋風のTHE・SAMURAIを彷彿とさせる。

 異常な格好良さの空戦魔導師で強者と分かるがヴィーネなら大丈夫だろう。

 

 反対側のガーデンの空に出たアクセルマギナを確認。

 アクセルマギナは跳んで宙から魔弾を射出した、魔銃で狙っているのは空戦魔導師か。銃弾から逃げていく空戦魔導師は土の魔法を目の前に展開し、風の魔法も同時に放っていた。同時に二属性の魔法か――右側の縁で戦う集魔シャカさんとソリアードの姿も見えた。

 中央のペントハウスの窓際にいたエヴァとレベッカの姿を確認――。

 ペントハウスの周囲には血溜まりがあるが、ペントハウス内への侵入はある程度防ぎ続けているようだ。


 エヴァが展開した紫色の魔力が包む緑皇鋼エメラルファイバーの壁と白皇鋼ホワイトタングーンの壁があちこちにある。

 

 まずは魔導鎧を着た奴と、空魔法士隊の連中を倒すか――。

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