七百五話 冒険者ギルドと光神の封印扉

「キサラとあとは?」

「ん! 勿論、わたし」


 エヴァは魔導車椅子に乗ったまま傍に来た。


「了解、ヴィーネとクレインは?」

「わたしとヴィーネはペレランドラの護衛さ」

「ご主人様とご一緒したいところですが、今後に備えます」

「分かった。二日後にはセナアプアだからな」

「はい。【白鯨の血長耳】の緊急幹部会には、血長耳と同盟関係にある闇ギルドも集まります」

「セナアプアも忙しくなるだろう」

「ん、ペレランドラ親子の意見を聞いて、レベッカとユイだけじゃなくて、他の都市の皆とも血文字で様々な意見交換をした」

「ナミさんとリツさんからの新しい情報に、ペルネーテにいる副長メル、セナアプアの拠点にいるユイとレベッカ、ホルカーバムのカルードたちの地下街アンダーシティーに巣くう【血印の使徒】との戦いの情報精査も必要です。そして、クナとルシェルから【名もなき町】の闇のリストに関する報告がもうじきある頃かと」


 そう語るヴィーネはエヴァと頷き合う。

 俺は相棒とアイコンタクト。


「ンン」


 魔封層の地下に相棒は来るとして、ヒューイはどうするかな?

 そのヒューイは屋根だ。軒の菖蒲を嘴で突いている。

 隣には金属鳥のイザーローンも一緒だ。

 

 そんなヒューイを見ながら、


「ヒューイはどうする? 俺は神殿の地下に向かう予定なんだが、一緒に来るか?」

「キュッ?」


 嘴を拡げて鳴いたヒューイは頭部を傾げた。

 俺の言葉は理解しているか不明だ。


 ∴の麻呂った眉が可愛い。

 直ぐにまた、嘴で軒の菖蒲を突く。

 ヒューイは水鴉から得た新しい武器を両足の爪に装着している。

 新装備を付けたり消したりしては、嘴で軒の菖蒲を突く。

 爪の新しい武器の刃には黄金色と銀色が混ざる。

 レベッカが持つジャハールのような拳に嵌めるタイプの武器か、爪だけだから小さい熊手?

 

 小さい撓鉤にも見えた。


 ヒューイは隣のイザーローンをチラッチラッと見るように何回も頭部を傾ける。

 『チキチキ』と鳴いていないから機嫌が悪いわけではない。

 頭部の毛が、冠鷲のように上がる。

 金属鳥にアピール? 可愛いが、お洒落なつもりか。

 更に、麻呂った∴の形の眉毛ちゃんが、頭部を動かす度にピカピカと輝いた。


 ヒューイはイザーローンと遊びたい?


「ピカピカ、ヒカル! ヒューイ、ゾォイ!」

 

 竜頭金属甲ハルホンクが反応。

 珍しい、ングゥゥィィ! と言わないハルホンクだ。


 すると、ヒューイは竜頭金属甲ハルホンクを凝視。

 嘴を拡げて、

 

「チキチキチキ」

 

 と不機嫌そうな鳴き声を発した。


 ヒューイはヴィーネの翼に付着することもできる。

 ヴィーネも空中戦の練習をしたいだろう。


「イザーローンと仲良くな」

「キュイ!」

「よし、キサラとエヴァ、ギルドに向かおう。地下の封魔層にいるモンスター討伐の依頼にどれ位時間が掛かるのかはまだ不明だが……二日で無理ならネーブ村に戻ることを優先する。と言うことで、留守は頼む、ヴィーネとクレイン」

「はい。ヒューイはイザーローンを気に入ったようです」

「了解さ。そのゲッセリンクって獣人の話を聞くと、封魔層ってのは案外すぐかも知れない」

「ん、封印の力が効く範囲も広くないってこと?」

「そうさね、たぶんだが」

「ん、分かった。シュウヤとロロちゃん、行こう。ギルドは下」

「おう」

「にゃお」

「ん、【魔金細工組合ペグワース】のメンバーたちも下の像が並ぶ場所で、お絵かき大会中。キサラもギルドに行こう。ヴィーネと先生は、皆の護衛がんばって。皆さんも、また後ほど」

「了解さ、護衛は任せな」

「はい」


 先に行くエヴァとキサラ。

 黒猫ロロもエヴァの傍だ。

 魔導車椅子の車輪の回転を時折見上げながら、渡り廊下的な幅の岩壁に沿うスロープ状の板をトコトコと歩く。

 廊下風のスロープは岩壁に沿って崖造りの木製階段になっている。

 

 冒険者ギルドは崖の下のほう。


 一方、ゲッセリンクの神殿は俺たちの背後。

 崖造りの『水鴉の宿』が建つ板の廊下から岩に沿う板の道を進んで、右に曲がった先。

 切り立った崖の上に細い道として続き、途中に小さい橋もある。

 

 俺は、笛を吹くお爺さんにお辞儀をしてから『水鴉の宿』を離れた。

 烏占のゼンアルファ婆は宿の中だろう。

 守護老猫長ミャロ造との話がどんな感じか聞きたかったが、ま、いいか。


 岩壁の表面に刻まれた不思議な紋様を見ながら下りた。

 板のスロープを下るエヴァたちは集団となっていた。

 

 集団の原因とは他の猫たち。

 ロロディーヌは早速、この村の猫たちに慕われているようだ。

 その猫たちを含めて皆を見ながら「ロロ!」と発言。

 

 俺はスロープと階段を駆け下りた。

 

「にゃぁ~」

「にゃお」

「ニャアァ」

「ニャゴ?」

「にゃんお」

「ンンン」


 相棒は他の猫たちと一緒に俺を見上げる。

 紅色の虹彩と、つぶらな黒い瞳が可愛い。


「相棒、猫軍団は、この『水鴉の宿』のメンバーだろう。連れてきちゃだめだ」

「ンン、にゃ」


 黒猫ロロは納得したようなニュアンスで鳴く。

 と、瞬時に黒豹に変身。

 猫たちに向けて「にゃごあぁ」と鳴いた。

 

 猫たちは驚いた様子を見せては、一目散に逃げていく。

 後脚が滑って倒れそうになる猫と端の石像を蹴っては階段を上がり下がりする猫もいた。

 

 動きが速い。


「ん、残念。イノセントアームズと猫たちのパーティーは解散」

「にゃ」


 とエヴァの声に応える相棒。

 黒豹のまま崖に沿う階段を下りていく。

 黒豹ロロは尻尾で傘の尾を作りつつ、ピンと立てていた。

 階段を下りながら、時折振り返る。

 

 『下に行かにゃいの?』と声が聞こえたような気がした。

 

 黒豹ロロは可愛い。

 

「ロロちゃん、速い!」

「ふふ――」


 キサラとエヴァも、下に向かう。

 エヴァは金属足ではなく魔導車椅子に座ったままだ。

 紫魔力を体から放出して魔導車椅子を少しだけ浮かせたまま下りていた。

 キサラは無手のまま。


 黒豹ロロは「ンン」と鳴いてからネコ科動物らしく四肢に力を入れた。

 が、爪が板を削ったことに気付いて、すぐに足の力を緩めてから、ゆっくりと身を翻すと先に下った。

 相棒は階段とスロープが交互に続く坂道を下りながら、端に並ぶ石像を優しく触手の肉球で叩いている。

 

 その皆の様子を見ながら坂道を下った。


 冒険者ギルドの建物が見えた。

 屋根は瓦で壁は木製。

 梁と梁が重なったカンチレバー方式で作られた建物のようだ。

 趣向が水鴉の宿とは違う。

 床は板の間で、崖側の板スロープと地続きの板と煉瓦が積まれた高床式のテラスの上に建つ。


 テラスの端には小さい階段が近くの砂浜へと伸びていた。

 俺たちが来た砂浜は、左のほうか。


 高波が来たらここが港代わりになりそうだ。


 造った年代の違いもあるのかな。

 職人たちの個性だろうか。


 造った人たちはどんな思いで、このギルドの建物を造ったのだろう。

 水鴉の宿もそうだが……。

 建物から歴史と職人たちに思いをはせた。

 

 ゴルディーバの里にもあった木製の樽が並ぶ板の間の近くに酒場を発見。

 幅の大きい柱と壁にはイズニック製のような模様が刻まれていた。


 柱と壁は少なく布で仕切られている。

 酒場の様子はフレーム構造だから、分かりやすい。

 

 酒場には、地下で友となったモルセルはいない。

 まだ戻っていないようだ。

 なじみの客がちらほら。


 冒険者らしい人物が酒を飲んでいる。

 魔法使いの女性と軽戦士の女性。

 

 装備はどれもこれも魔力がある代物ばかりで、結構強そうだ。

 もしかして、モルセルのパーティーメンバーかな。

 友となったモルセルのパーティーメンバーなら挨拶しておきたいが……その酒場には入らない。

 

 冒険者ギルドのアーチ状の出入り口を潜った。


 ギルドの内部は……。

 他の冒険者ギルドとそう変わらない。

 

 冒険者の数は少ない。

 人族とエルフに虎獣人ラゼール


 小柄獣人ノイルランナーにドワーフはいないようだ。

 床の色合いは臙脂色の板が敷き詰められている。天井に芥子が纏まった束がぶら下がって窓には風鈴的な音を奏でる飾りがあった。

 

 風鈴の音と、扇風機的な魔道具の音が響く。

 涼しい風を受けたボードに貼られた依頼の紙が揺れていた。

 

 その依頼の紙をエヴァとキサラが見ている。

 

 俺も見ようか。

 依頼書を確認していった――。

 まずは、Sランクの依頼をチェック。

 

 紙の質が悪い。

 ずっと貼りっぱなしなのか薄茶色だ。 

 

 依頼主:ネーブ村

 依頼内容:Sランク:荒魔獣モボフッド亜種の討伐

 応募期間:無期限

 討伐対象:荒魔獣モボフッド

 生息地域:地下の封魔層近辺

 報酬:白金貨二十枚

 討伐証拠:モボフッドの右の瞳、太い腕のいずれか。

 注意事項:Sランクのモボフッド亜種は右の瞳の魔眼の効果により速度を加速させる。亜種はAランクとBランクのモボフッドより体格が一回り大きい。しかしながら小回りが利く。毛の硬質化で防御が硬い。四肢の爪を用いた戦闘能力は非常に高い。


 これと、


 依頼主:ネーブ村

 依頼内容:Sランク:骨剣魔人ブブルー亜種の討伐。

 応募期間:無期限

 討伐対象:骨剣魔人ブブルー

 生息地域:地下の封魔層近辺

 報酬:白金貨三十五枚

 討伐証拠:骨の剣腕か、亜種が装備していた品物。

 注意事項:ブブルー亜種は他のブブルーと違い長い骨の剣腕を四本持つようだ。見た者は少ない。


 この二つか。

 木札を取った。

 他にも、Aランク依頼の亜種ではないブブルーとモボフッド討伐依頼を受ける。


 エヴァとキサラも俺と同じくSとAの依頼を二つ選ぶ。

 合計四つ。


「複数依頼は受けられるけど、木札は四つでいい?」

「いいよ。金稼ぎが目的ではないからな」

「はい、木札を四つ取りました」


 そうして、受付でカードと木札を提出。

 

 受付係は獣人の男性。

 ギルドマスターも兼ねているようだ。


 依頼はすぐに受理。

 俺たちはヘカトレイルで……。


 依頼主:六面六足のエレファント・ゴオダ商会。

 依頼内容:Sランク:マハハイム山脈地下【古エルフの大回廊】の探索。

 応募期間:無期限。

 討伐対象:問わず。

 生息地域:問わず。

 報酬:地下地図と討伐モンスター素材に発見したアイテム類。実力者を求む:前金で白金貨二十枚。

 討伐証拠:なし。

 注意事項:地下故、命知らずのかたを求む。

 備考:危険。地図作りのメンバー募集中。


 の依頼を受けている状態だが、今回のネーブ村の依頼は受理できた。

 

 返ってきた銀色に輝くカードを受け取る。

 皆も自分のギルドカードを受け取った。


「さて、ゲッセリンクの神殿に行こうか。相棒、外に出たら皆を頼む」

「にゃ」


 ロロディーヌはギルドの外に出るや俺たちを触手で掴む。

 胴体から翼を伸ばしては、駆け出して、砂浜目掛けて跳躍。

 一気にゲッセリンクの神殿に向かう。


 旭日を全身に感じながら神殿を眺めては、崖上の神殿の出入り口に到着。

 相棒は、「ンン」と鳴いて皆の体から触手を離すとゲッセリンクの神殿に走っていく。

 走る黒豹の体内に触手が吸い込まれるように収斂していく様が面白い。


「この中にヘルメとゲッセリンク・ハードマンがいる」

「はい」

「ん」


 俺はキサラとエヴァを連れて神殿に入った。

 子供のウネアルと爺さんのゴレウルはいない。

 

 ゲッセリンクはチェロを弾いている。

 低音で静かな曲調。

 リラックス効果がありそう。

 音叉でいうなら、432Hzか、528Hzか。

 

 癒やし効果が高い400番台は体の振動に近い。

 目を瞑っていたヘルメはその震動波を受けるように微かに揺れながらぷかぷかと浮いている。

 

 下半身はマイナスイオンを放つような水の雲?

 霜と霧にも見える。

 更に、闇の稲妻的な蒼白い光条を、水の雲の中に走らせていた。


 <瞑想>中か。

 

 相棒のロロディーヌはヘルメを見てから、演奏しているゲッセリンクの近くに向かった。

 壇の下でエジプト座り。


 ゲッセリンクのチェロを弾く姿を見上げている。


 すると、近付く俺にヘルメが気付く。

 瞬く間に、修業スタイルを解除したヘルメ。

 長いスラリとした足で駆け寄ってきた。

 

 ゲッセリンクから離れた相棒も寄ってきた。


「閣下!」

「よう、お待たせ」


 ヘルメの足下にロロディーヌが頭部を寄せた。

 ふふっと笑ったヘルメは黒豹ロロの頭部を濡らしてから、俺に向けて、

 

「お帰りです! 閣下の魔力が増えましたね。指に微かな魔力が、しかも水と光に熱? 古精霊の一種だとは思いますが、不思議です」


 不思議さなら負けていないヘルメさん。

 彼女は真剣な表情で語る。

 

 俺はヘルメと皆に向けて――。

 その親指を見せた。


「さすがは常闇の水精霊、分かるか。水鴉の古精霊の力を得た。バルミントの契約の証しでもある竜紋にプラスされる形で新しいマークも得た。スキルの名は<旭日鴉の導き>」

「おぉ! 水神アクレシス様と光神ルロディス様の恩寵でしょうか!」

「さっき見て聞いた。修業で獲得!」

「はい、竜紋とルシヴァルの紋章樹にある枝と葉に、新しい鴉の絵があります」


 エヴァとキサラが指摘。

 ヘルメは指先から、水をぴゅっと出す。

 植物に水をあげるように、俺の親指に水を当てている。水を当てるたびに体をビクッと振動させるヘルメ。そのヘルメに猫パンチをするロロディーヌが面白い。

 

「おう。バルの鼓動が聞こえて嬉しかったんだ」

「ふふ、バルミントも元気にしているようですね。そして、閣下の指ですが、極めて小さい光と水と熱を感じます。水鴉の古精霊ちゃんは光神様と水神様の眷属ということでしょうか」


 ヘルメはそう分析していた。


「そうなるな。もしくは太陽神ルメルカンド様という古い神様らしいが」

「まぁ! 驚きです」

 

 ヘルメは体を液体に変化させては女性の姿に戻すのを繰り返す。

 瞬間的にヘルメ立ちのポージングを変える。

 相棒が興奮して猫パンチを連打。


 その度にヘルメから輝く水飛沫が飛ぶ。

 俺はカメラマンの気分になった。


 エヴァは拍手。

 見ているゲッセリンクもヘルメの魅惑敵なポージングに魅了されたようだ。


 呆然と見ていた。

 俺は皆に向けて、


「これも驚くだろう。体幹の魔力を強めてキサラから習い途中の魔手太陰肺経も意識しては<水神の呼び声>から《水流操作ウォーターコントロール》で水を纏い、続いて<仙魔術>とヘルメと羅の能力も想起しながら<血液加速ブラッディアクセル>と<超脳・朧水月>を組み合わせた。その直後、<魔闘術>系の<水月血闘法>を獲得すると……光神ルロディス様か水神アクレシス様かの加護の力が加わったのか不明だが、水鴉も合わさった……避けスキル系の<水月血闘法・鴉読>を獲得したんだ――」


 <水月血闘法>を発動。

 足下に水飛沫が出た。


 ――血色の十字架。

 ――朧げな月。

 ――水鴉。


 それが立体的に浮かぶ。


「わ! 綺麗」

「はい……」

「<血魔力>と<魔闘術>、<導魔術>、<仙魔術>の三種の魔技があるからこそ可能な新しい<魔闘術>ですね!」

「わたしもシュウヤ様の役に立てた、嬉しい……」


 そのキサラに頷いてから、

 

「更に、<銀河騎士の絆>を胸に感じながら<超翼剣・間燕>と<水月血闘法>を実行。そして<脳魔脊髄革命>、<ルシヴァルの紋章樹>、<神剣・三叉法具サラテン>、アドゥムブラリとの訓練、エヴァの<念動力>、アキレス師匠の<導魔術>、<闇の千手掌>を想起。更に<血魔力>の<血道第一・開門>を意識。その略して第一関門の血と無数の想念を活かすように色々な武器をアイテムボックスから出した。その多数の武器を光魔ルシヴァルの血の想念で、一度に扱うことを意識した直後――<血想剣>と<血想剣・魔想明翔剣>の新剣技を獲得。だからエヴァのお陰でもある」

「ん、わたしの能力をシュウヤが活かせたのなら嬉しいけど、シュウヤの発想力と判断力の高さが傑出しているからこそ可能なこと」

「はい。何事にも修業の心掛けが宿るシュウヤ様。その高尚な精神性が齎した結果です。素直に凄い」

「閣下は<真祖の力>を吸収した<光魔の王笏>を持ち、覇槍神魔ノ奇想の称号を持つ偉大な・・・神聖ルシヴァル帝国を率いる魔帝王です。当然・・でしょう!」


 ヘルメらしい力が隠った言葉だ。

 キリッとした表情。

 キューティクルが保たれた長い睫毛が似合う。

 

 シャキーンと腕を伸ばしながら語っていた。

 あのポージングは、久しぶりに見たかもしれない。

 

「ん、それだけ敵が強かった?」

「強かった。が、三人ともありがとう」

「ふふ、シュウヤ様が強くなるのは嬉しい」

「うん、この話を聞いたら、レベッカもびっくりする」

「はは、だろうなぁ」


 興奮したキサラとヘルメはハイタッチ。

 エヴァは相棒と肉球と人差し指でタッチ。

 

 キサラとヘルメは腕を組み合う。

 踊った。

 二人の足下から水飛沫が発生。

 ダブルレインボー。


 いや、ダブルおっぱいを揺らしながら踊る。

 踊りを止めたキサラが俺に振り向いて、

 

「――シュウヤ様。その<血想剣>とは、<魔闘術>と光魔ルシヴァルの血でもある<光魔の王笏>に、<導魔術>を活かした新技ということでしょうか」


 そうキサラが聞いてくる。

 俺は頷いた。


「俺の師匠、アキレス師匠が<導魔術>で使っていたスキルがあるんだが……その影響もあると思う。ま、俺の<ルシヴァルの紋章樹>が大本かも知れない。幹から伸びた無数の枝が、多数の武器を持ち、それらの枝が、武器を巧みに操作しては攻撃を加える。<血想剣>は<導魔術>と似たスキルってことでいいだろう」

「にゃ、にゃ、にゃお~」

「ん、やはり凄い! 一夜で急成長――!」


 興奮しているエヴァと黒豹ロロだ。

 トンファーを出して<刺突>風の突きを繰り出す。


「ん、わたしも修業!」 

「にゃ!」

 

 黒豹ロロも鳴いた。

 エヴァのトンファーが前後する動きに呼応。

 相棒は四肢に力を入れながら、体勢を低くすると、首下から一対の触手を伸ばす。


 その長い触手の先端から骨剣の出し入れを行った。


 二人の様子を見て微笑むキサラ。

 キサラは胸元に手を当てると俺に視線を向けた。

 

「ふふ、シュウヤ様は本当に劇的なお方。何度も言いますが、やはり光と闇の運び手ダモアヌンブリンガーです」


 そう語る。

 姫魔鬼武装のマスク越しの蒼い双眸は揺れていた。


 劇的か。

 

「確かに劇的。ネーブ村の上空に美しい虹も架かった。しかし、地下に古い水精霊が関わる噴水祭壇があるとは思わなかったよ。一緒にヒューイと修業した形となった水のモルセルも槍と体術が巧みで強かったんだ。初見のリサナとも違和感がなくてな。二人は連携しながらモンスターと戦い、スムーズにモンスターを倒していた」

「水のモルセル。砂浜で対応していた槍使いですね。シュウヤ様と同じく水鴉に選ばれた者で強者の一人。そのモルセルが所属するパーティーも強そうです」


 キサラの言葉に頷く。

 

「ん、地下の神殿は、このハードマン神殿と連結しているの?」

「それは分からない」


 すると、黙って聞いていたゲッセリンクが、

 

「セウロスの神々を祭ったハードマン神殿であるから多少の繋がりはあると思うのじゃ。まさに、〝セウロスへ至る道〟」


 と、発言した。

 エヴァは頷いた。

 

「ん、ネーブ村は、ハイム川と近いし神界セウロスの石像も多いから神々の加護が強い。だから古い水精霊の水鴉に選ばれた?」

「だろうな」

「シュウヤ様は光神ルロディス様と水神アクレシス様の加護がありますから納得です」

「ん、シュウヤは、ホルカーの大樹を再生させて、大地の神ガイア様と植物の女神サデュラ様に認められた。そして、神獣のロロちゃんは、その神々が用意した神酒の……玄樹の光酒珠げんじゅのこうしゅたまを飲んだ」

 

 相棒はエヴァの言葉に頷くように片足を上げ、


「にゃ」


 と、鳴いてから肉球を見せる。

 

「偶然、この村を見つけたんですよね、わたしたち」

「ん、偶然も必然。ルシヴァルの紋章樹と同じように無数に枝分かれしても結局は、大本の一つの大きな幹。そして、みき、おなじ発音の神酒を飲んだロロちゃん。そんなロロちゃんはシュウヤの半身でもある。だから神々に導かれたシュウヤ? 常闇の水精霊ヘルメ様を従えているし、エクストラスキルの<光の授印>もある。<光神の導き>も獲得している」

「……神々の導き。だから古い連綿と続く儀式の〝水鴉の祝福の儀式〟に、神界セウロスの神々が用意した修行場所にシュウヤ様が呼ばれたのですね」

「神狼ハーレイア様にも呼ばれた閣下は、神々が欲している存在なのです。本当に本契約ができてよかった」

「うん。遠い東でビアが獲得した八大龍王ガスノンドロロクン様の剣も、神界セウロスに纏わる物語だった」

「……不思議で面白く興味深い。すべてが繋がります。まさに光と闇の運び手ダモアヌンブリンガー!」

「にゃおぉぉぉ」

「ん、本当にそう。光と闇を運ぶ担い手でもある」


 三人と一匹の言葉を聞いていると実感できる。

 親指を見ながら、

 

「三人と相棒、熱い言葉をありがとう。それで、水鴉なんだが、モルセルから太陽神ルメルカンド様の名を聞いたんだ。ゼンアルファ婆って名の宿の主人も不思議な能力者らしい」

「あのパイをくれたお婆さんが? 分からなかった」

「はい、気付きませんでした。言葉が不思議でしたが……」


 とエヴァとキサラが語る。

 ヘルメはキョトンとして、

 

「お婆さん?」


 ヘルメは神殿にいたから宿はまだだった。

 

「宿の主人、お爺さんとお婆さん。そのお婆さんは烏占のゼンアルファ婆と呼ばれている。俺が帰った時、そのお婆さんは見かけなかったが」

「お婆さんなら『中庸を貫く騎士様の眷属だねぇ、がんばりな』と、語ってからパイまんじゅうをくれたの。そして、外に出ていった」

「そっか。モルセルが言うには……『お前の知るレフテンの【機密局】が誇る【黄昏の騎士】ではなく……本当の黄昏を地で征き歩く騎士。そう、中庸を貫く騎士様……連木で腹を切るような偉大な騎士様が……このネーブ村に現れるかも知れない。神々の争いに左右されず、悪を知り正義を為す騎士様がねぇ。ふふ』と、俺たちが、このネーブ村に来る前に、そのゼンアルファ婆が語っていたらしい。だから予言者のような能力者だろう」

「……驚きです。お爺さんの笛も不思議でした」

「ん、わたし、手を触ってもまったく分からなかった」

「占いの魔道具も豊富に持つようだから、心を読ませない魔道具を装着していたんだろう」

「うん」

「ってことで……」

 

 俺はそう発言しつつ、奥にある扉に指を向けた。

 

「あの光神の封印扉に変わりはないようだな。神殿は大丈夫だった?」


 と、ヘルメに聞いた。

 

「はい。何も変化はなかったです」

「了解。ヘルメも見守りをありがとう。目に戻ってきていいぞ」


 ヘルメは嬉しそうに微笑む。

 半身を液体にしてから、

 

「はい!」


 と声を発すると完全に液体となる。

 その液体ヘルメは螺旋回転しつつ俺の左目に戻った。


 幻影の小型ヘルメが視界の端で華麗に泳ぐ。

 その泳ぐヘルメが微笑ましい。


 そうしてからゲッセリンクに近寄って、

 

「ゲッセリンク。ギルドの依頼は受けてきた」

「にゃお~」


 足下の相棒も俺に続いて挨拶。

 

「この黒猫様が、神獣様であると!」

「おうよ。愛称はロロ、ロロディーヌだ」

「ロロ様! よろしくなのじゃ!! わしが、このセウロスの神々を祭ったハードマン神殿を音守の司として守り続けてきたゲッセリンク・ハードマンなのじゃ! ヌハッ!」


 股間から金玉を膨らませて、跳躍しては、その金玉の上に乗ったゲッセリンク・ハードマンは、片手を伸ばし、モガのような歌舞伎的なポーズを取る。


「ンン――」


 相棒も呼応。

 くるっと一回転を行う。

 

「にゃ、にゃぁあ、にゃ?」

「ふむ。ゼンアルファ婆と違い、猫語は分かりませなんだ! が、可愛いのぅ!」

「にゃぁ」

「髭が動いて、触手が出た! しかも触手に肉球がついておる! 肉球が二つもぉぉ!! ガハハ、面白い猫だぁ!」


 と豪快に笑うゲッセリンク・ハードマン。

 あんたも面白いがな!

 と逆水平チョップのツッコミは入れない。


「しかし、今の精霊様がシュウヤの左目に吸い込まれる動きは不思議じゃ」

「ゲッセリンクも不思議だろう。蝙蝠傘から半透明な女性とチェロは出しては分身。二つのチェロの演奏も非常に巧みで、金玉も伸縮自在で太鼓の楽器にもなるし」


 と指摘すると、ゲッセリンクは何回も頷く。

 法衣越しに腹を叩いて、

 

「――ガハハ! たしかに、そうじゃな」


 豪快に笑うゲッセリンク。

 狸っぽいドワーフで可愛らしい。

 が、法衣は立派だ。

 

「ゲッセリンク。ひょっとして寝ていないのか?」

「そこの端に寝台がある。そこで眠ったから大丈夫だ。そして、精霊様に感謝だ。わしが眠っている間に水を撒いては《水幕ウォータースクリーン》をあちこちに張ってくださった」


 すると、左目のヘルメが――。

 幻想的な水飛沫を発しながら視界に現れた。


 ヘルメ立ちの小型のヘルメは、

 

『はい。<音守・ハードマン大楽譜封>の封印力を疑うわけではないですが、魔法陣の亀裂的な紋様と床の動きは……激しかったですからね。<瞑想>しながら見守っていました』


 そう思念を寄越す。

 

『そっか、何もなくてよかった』

『はい』


 そう思念会話を行うとゲッセリンクはキサラを見て、エヴァを見る。

 

「キサラ殿もおはよう。見知らぬ黒髪の美女殿もおはよう。黒髪の美女殿はパーティーメンバーじゃな? イノセントアームズという冒険者パーティー。わしはゲッセリンク・ハードマン。この神殿を守る音守の司である」

「ん、おはよう。音守の司のゲッセリンク様。わたしの名はエヴァ」

「ふむ。貴女がエヴァ殿か。精霊様から聞いているのじゃ」

「ん、精霊様が、わたしのことを?」

「そうじゃ。エヴァ殿が座っている魔導車椅子は特別無比。今まで獲得してきた貴重な魔金属と融合する〝どっきりんこ〟デカルチャーな足になると! だから興味を持っていたのじゃ」

「ん、その通り――」


 微笑んだエヴァはそう発言。

 エヴァなりに、どっきりんこを表現しているのか、天使の微笑ではないが、可愛い笑顔だ。

 ワンピースの裾を両手で上げた瞬間――。

 魔導車椅子を溶かすように分解した。

 

 骨足を床につける刹那の間に分解し溶かした魔導車椅子の金属を自身の骨足に付着させる。


 エヴァはその金属の足で立った。

 

 ヘルメ立ちのようなポージングはしない。

 お淑やかな雰囲気のままだ。


 ワンピースの裾を下げていた。


 金属足の甲の色合いは緑が多い。

 緑皇鋼エメラルファイバーだろう。


 エヴァは俺をチラッと見てから、ゲッセリンクに視線を向けて、


「ん、わたしもゲッセリンク様の演奏のことをシュウヤから聞いていました。今の演奏も静かな湖を表現しているような曲で、聴き入っていました」

「ふぉふぉふぉ。嬉しいのじゃ!!! 美女に褒められると、心が沸き立つ!」


 元気溢れるゲッセリンク。

 狸っぽい体毛が少し伸びた。

 

 股のローブが膨らむ。

 と、金玉が少し出る。


「きゃ」


 エヴァは恥ずかしそうに視線を逸らした。

 面白い種族のゲッセリンク・ハードマン。

 

 見た目はドワーフと狸の獣人のハーフ。

 正式名は知らない。


 ソンゾル族とテルポット族の樹海獣人、鼬獣人グリリ猫獣人アンムル、ぷゆゆの樹海獣人ボルチッド獅子獣人ラハカーン虎獣人ラゼール豹獣人セバーカ小柄獣人ノイルランナーのような種族の名があるんだろうか。


 多種多様な種族たちのことを思いながら、


「で、ゲッセリンク。早速だが、そこの光神の封印扉を開けてくれ」

「分かった。わしは少し離れた位置に陣取るが、いいかの?」

「おう、任せろ。モンスターが直ぐに出る可能性がある以上は、当然だ」

「承知した。では、扉の前に移動するのじゃ。扉が開く時、わしが知らせる」

「分かった」


 金玉を大きくしたゲッセリンク。

 蝙蝠傘をもう一つ出現させる。


 蝙蝠傘を頭上に浮かせたゲッセリンクはチェロを演奏。

 蝙蝠傘は弓に変化。その弓を掴むと、広がった金玉絨毯に着地したゲッセリンク。

 

 その絨毯的な金玉から太鼓の音が響く。

 

 和太鼓に近いが、非常に面白い音だ。

 ゲッセリンクはチェロで演奏を開始した。


「俺たちは光神の封印扉の前に移動しとこうか」

「はい」

「ん」

 

 俺たちは光神の封印扉の前に移動。

 その光神の封印扉はゲッセリンクが奏でる音に反応して点滅。


 その目の前の光神の封印扉も気になったが……。

 やはり演奏実行中のゲッセリンクが気になるし見たかった。


 エヴァもキサラも、俺と同じ気持ちらしい。

 キサラはダモアヌンの魔槍を一回転。

 そして、柄の孔からフィラメント的な魔力の線を四方に出している。

 楽器に変化させていないが、いつでもギタースタイルに移行ができる状態と判断。

 

 ゲッセリンクの頭上に浮く蝙蝠傘の内側から半透明な女性たちの腕が真下に向けて出現。

 それらの半透明な女性たちの腕は、コミカルに動き合って互いの手に持つ骨の楽器をリズミカルに打ち鳴らす。

 

 下の金玉に乗ったゲッセリンクも呼応。

 小さい腕に持つ弓が軽やかに動いて、弦を巧みに弾き鳴らす。

 弓と足が小刻みに揺れる度に、いい音楽が俺たちの体を突き抜ける。

 ゲッセリンクのチェロの指板と表板を小さい指で叩く音とリズムもいい。

 足下の金玉が響かせる太鼓の重低音が心臓を打つ。


 エヴァが、その度に体をビクッと揺らしている。

 が、チェロを弾くゲッセリンクを凝視。

 横顔のエヴァ。

 鼻の孔が少し膨らんでいた。

 

 胸元に手を当てて興奮したエヴァ。

 可愛い。

 

 チェロの楽器と和太鼓とカスタネットの打楽器が繰り出す音楽は一つの壮大な宇宙を感じさせるからな。本当に素晴らしい音楽だ。


 音程は徐々に大きくなった。

 俺も自然と楽器のリズムに乗ってしまう。

 

 ゲッセリンクの音楽魔法を暫し鑑賞。


 音楽魔法が神殿内部に炸裂していく。

 

 すると、ゲッセリンクは音程を変えた。


「――<音鍵の傘>」

 

 スキルを発動?

 チェロから出た光条が光神の封印扉と衝突。

 

 ゲッセリンクは、蝙蝠傘に半透明な女性の腕を格納。金玉も股間に仕舞って、華麗に弓を回しながら床に着地するや反対側に走った。


 そして、俺たちに向けて、


「今じゃ! 光神の封印扉が今開かれる! 神殿一階の音魔印の結界を解くとモンスターが現れることは確実だ――頼むぞ、シュウヤ!」

「分かった」


 そう言いながら右手に鋼の柄巻を召喚。


 光神の封印扉を凝視。

 扉向こうの魔素の動きは把握できない。


 光神の封印扉の周囲に亀裂が入った。

 扉の周囲の壁からドッ、ドッ、ドッ、ドッと不気味な振動音が響いた。

 音が激しくなる。

 と、光神の封印扉に魔力が集結。


 ――光が満ちた。


 直ぐにムラサメブレード・改を起動。

 青緑色のブレードが鋼の柄巻から迸る。

 

 そのブレードがブゥゥゥンと音を響かせた。


 直後、目の前の光神の封印扉が消える。

 封印された部屋の向こう側が見えた直後――。


 モンスターがぬっと現れる。

 鷲の頭部と獅子の体だ。

 腕が四本。

 手には剣のような鉤爪が生えている。

 その鉤爪で俺を突き刺そうと切っ先を差し向けながら――。


「ゴアァァァァッ」


 と咆哮するモンスター。

 

「そのモンスターがモボフッドじゃ」

 

 荒魔獣モボフッドか。

 モボフッドは開いた封印扉から外に出る。

 相棒が「ガルルゥ」と唸って前に出たが、

 

「待った相棒! 皆も、俺が対処する」

「はい」

「にゃご!」

「ん!」

 

 ――<神剣・三叉法具サラテン>を意識。


『――でかした!』

 

 と左の掌から出た沙。

 神剣に乗った沙が瞬く間に突貫。

 鷲的な頭部を持つモンスターは、四本の腕から伸びた爪で、沙の神剣を弾こうと反応する。


 が、沙の神剣は爪剣を弾く――。

 そのまま鷲の頭部を貫いた。

 バッとした破裂音が響く。

 頭部を失った獅子の胴体の首から血飛沫が迸った。

 

 その血を吸収。

 床に倒れた獅子の胴体のモンスター。

 胴体は獅子のような毛並み。

 獅子獣人ラハカーンとは違う毛質。


 そして、沙は珍しく突貫せず宙空で静止。

 その<神剣・三叉法具サラテン>の柄巻を掴む。

 

『――あん! 器、いきなり掴むな』

『すまん。だが出入り口で止まっていると通り難いだろ』

 

 といいながら入った封印されていた部屋は狭い。

 床の魔法陣は亀裂が入って魔力を失っている。

 四方にセウロスの神々の石像と、ゲッセリンク・ハードマンの像がある。

 

 いや、同じ種族の石像か。

 像の隣の台座には楽器を収める窪みがあった。


 ゲッセリンクが使うチェロの楽器は神話ミソロジー級のアイテムかな。

 

 そして、部屋の中央には、幅の狭い階段があった。

 階段の下は急勾配か、暗闇で見えない。

 <夜目>を一瞬発動するが、効果はない。

 あの階段の下は特異な空間か。


「キサラとエヴァ、黒豹ロロも入っていいぞ」

「はい」

「ロロちゃん、行こう!」

「ンン、にゃ」 


 すると、開いた光神の封印扉の側に来たゲッセリンクが、


「その中央の階段が、音階段だ。音階段を下りたら光神ルロディス様の石像を起点とした<音守・ハードマン大楽譜封>の効力が発揮されているだろう魔封層となる。依頼を果たすか戻りたくなったら音階段を上がって一階に戻って来い。直ぐに、光神の封印扉を開けよう。シュウヤたちが階段を下りたら、一時的にこの光神の封印扉は閉じるからな」

「分かった」

「イノセントアームズよ、期待しているぞ! 骨剣魔人ブブルーと荒魔獣モボフッドを倒してくれ! では、健闘を祈る」


 と、背後の光神の封印扉が閉店……いや、扉は閉まった。


「にゃおぉぉ」


 相棒がゲッセリンクに『ばいばいにゃ~』と言った感じに鳴く。

 しかし、扉が閉まる下から上に向かう間の、ニヤリとした狸爺の顔が面白い。


 そして、キサラとエヴァと視線が合う。

 キサラは部屋の中央にある階段をチラッと見てから、


「シュウヤ様。一見は普通の階段ですが」


 と発言。

 エヴァも、

 

「ん、階段の両端には神界セウロスの神々の像がある」


 二人に対して頷く。


「特別そうな階段だ。先は暗い。相棒と俺が先に下りるとしよう」

「はい」

「シュウヤとロロちゃん。フォローは任せて」

「頼む。一応、<無影歩>を行うが、すぐに解除する」

「ンン」

「分かった。モンスターの魔素は感じないけど、この部屋に来たから潜んでいるかも知れない」

「あぁ……」


 さて、依頼を受けての迷宮か。

 相棒とアイコンタクト。

 黒色の瞳が、赤色の多い虹彩のタペタム層が動く。

 黒豹の獣らしく細まった。


 その黒豹ロロと一緒に階段に足を踏み入れた。


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