六百六十一話 女子生徒と魔法学院ロンベルジュ
◇◆◇◆
女子生徒の腰に絡む籠手の魔道具に備わる単眼が光を出す。
ここは、魔法学院ロンベルジュと繋がる異空間の一つ、【幻瞑暗黒回廊】。
その、開かずの間を越えた先にある異空間の【幻瞑暗黒回廊】を、おどおどしながら歩く眼鏡が似合う女子生徒。
女子生徒は、小柄でひ弱そうに見える。
が、厳しい異空間【幻瞑暗黒回廊】を無事に進んでいるように……。
開かずの間を突破している女子生徒は一級の魔術師の実力を遙かに凌駕する実力を秘めていた。
装備もまた特殊だ。
黒髪の右耳に流れた房を結ぶ赤色の魔紐。
制服の左には兄の形見の正義の神シャファのワッペンもある。
腰にはセンティアの部屋で手に入れた籠手の魔道具と、その籠手にぶら下がる角灯が揺れる。更に、アス家としての証明でもある……魔靴ビートゥを履く。
特殊な魔法の杖も使う。
今も、その魔法の杖から出した無魔法で、異空間から飛び出た魔法の罠を解除した。その魔法の杖を使った、魔法の罠を解除する技術のそれは一級魔術師程度のモノで、学院の生徒が習う範疇の魔法技術ではある……。
が、幾ら、魔力量と魔法操作技術が高くとも、普通は、開かずの間を突破し、この【幻瞑暗黒回廊】に辿り着くことは不可能なことに近い。
その不可能なことを可能にする女子生徒は……。
本人が気付かないうちに、〝開かずの間〟の【魔素を遮断する秘密の部屋】と【逆次元の理】に侵入しては、無事にそれらの開かずの間の外に出ることに成功していた。
そもそもの、開かずの間に入った原因は……。
本人のドジな面が炸裂したからでもある。
しかし、そんなドジな面がありながらも不可能なことを可能にする装備と優秀な能力を持つ存在が、この女子生徒であった。
普段は理路整然と難問を解くような成績の良い間然する所が無い。と言うような生徒ではない。
しかし、彼女の片鱗を知る友人たちなら、どんな状況でも対応可能となるタフネスさに納得するだろう。
そんな天機に優れた女子生徒が進む【幻瞑暗黒回廊】は、開かずの間を越えた先の領域。
魔法ギルドの一級魔術師でも油断をすると、命取りとなる無数の魔法次元領域が重なり合う非常に危険な領域だ。
この【幻瞑暗黒回廊】に重なり合う無数の領域に囚われて、行方不明になる者は多い。
古代の【魔術総部会】の重鎮でもあり、学院の初代校長でもあった大魔術師ドット・フセネスでさえ、単純な魔法の罠に掛かったとされていて、現在も、この【幻瞑暗黒回廊】と重なる
そして、不気味な声が響く。
『おっぱいが、来ないかのぅ……うあぁぁ』
「……ひぃぃ。変な声と、鳴き声が聞こえたような気がしたけど……」
すると、また、悲鳴が轟いた。
「うぅぅぅぅ。もしかしたら、噂の……ロンベルジュ初代校長の泣き声伝説? ここは幻覚魔法がそこら中にあるし、異界も多いから……あぁ、魔力操作が乱れちゃう……いけない、集中を乱しちゃだめよ……気にしちゃだめ、所詮は幻聴。元気を出すの、ジュノとエルとミアの下に帰るんだから……」
そう自分を励ますように独り言を繰り返す女子生徒の表情は暗い。
しかし、彼女が履く魔靴の効果と籠手の魔道具から差す光の道標もあって【幻瞑暗黒回廊】に生成されていく魔法の道を器用に跳躍しながら進めていた。
しかし、時折、見事に転ける。
またも、すってんころりん――。
魔穴に吸い込まれそうになる女子生徒。
他の一級魔術師と同じ運命となるのか?
と思われたが、彼女の履く魔靴の効果と……。
彼女が手に入れたばかりの籠手の表面に備わる単眼が不気味に光って発した魔力が彼女を支える。
不思議な時空属性の加護を得た女子生徒は、ふわりふわりと宙を浮かびながら元の魔法の道に移動する。
女子生徒は、【幻瞑暗黒回廊】と自身の魔力が構成する魔法の小道に着地。
「また、助けられちゃった……」
そう呟く女子生徒は、腰の魔道具を見る。
その女子生徒が履く魔靴はシュウヤと関わりを持つ魔剣と同じ名だ。
魔界と関わる魔靴ビートゥを活かすことが可能な女子生徒は、不思議そうな表情を浮かべていたが、気を取り直して、魔法の道を進む。
この女子生徒が進む【幻瞑暗黒回廊】は、異空間なだけあって、織り成す景色は不可思議極まりない。
第一は、漆黒の雲が無を現す空間。
第二は、魔法の次元罠と魔法の罠を永遠に作り出す異空間。
第三は、生まれた星々と神々の魔法の息吹が作る美しい空間と、魔法の小道を作り出す異空間。
第四は、槍が刺さった怪物たちと魑魅魍魎たちが争う地獄の空間。
第五は、亜空間と亜空間が衝突しては、連鎖的に魔法の扉が生成されていく異空間。
第六は、異空間が急激に膨張して湾曲しつつ、魔界セブドラと通じる異空間。
第七は、異空間と異空間が重なり合って冥界が見え隠れしている異空間。
第八は、異空間の一部が収縮しつつ、時が止まって多次元が見える異空間。
第九は、次元の
第十は、大気という大気の膨大なエネルギーが大爆発しながらジェット噴流となって、他の次元の
壮絶な宇宙的光景を作り出していた。
それらの不可思議な光景が混ざった光景が【幻瞑暗黒回廊】を彩る。
そして、そのジュピターの大気のような圧倒的な光景を作る【幻瞑暗黒回廊】を夜空を眺めるように見つめる女子生徒。
「――綺麗だけど、恐怖もある……。あ、気にしちゃだめ――」
【幻瞑暗黒回廊】の魔法の罠を外す。
再び、魔法の道を造ると、その道を進み出した。
軽快に進む女子生徒。
優秀な生徒でもある彼女だが……。
この【幻瞑暗黒回廊】と大魔術に纏わるエルンスト魔法大学と各都市の魔法学院に於ける闇の理由は知る由もない。
そこに、難易度の高い魔法の罠が出現。
女子生徒は動きを止めて思考した。
この【幻瞑暗黒回廊】の仕組みは……。
うん、資料にあった通りのようね、勉強した通り――。
あ、待って、まだだめ。
まずは、パフィルの杖から『時空属性魔法・パフィル』を出す。
魔法は成功!
魔力を大きく消費したけれど……。
これで魔法威力とわたしの速度が高まった。
ふふ、冥界の小さいリョゴルが出現しても……。
火と水と時空属性の魔法の連発で対処が可能。
――パフィルの杖は使える。
あとは、周囲の各次元の違いも理解しないと。
異なる次元から噴き出す魔力粒子。
その魔力粒子は見えている範囲に限られるけれど……。
式識の息吹のタイミングには要注意。
次元が歪む……。
その歪みに合わせつつ、〝魔導の泡〟を装着した指で魔の印を素早く宙に描くっ。
その魔の印を素早く魔法の罠へと送った!
――同時にパフィルの杖を使う。
杖から出た魔法と魔導の泡を装着する指で造った魔の印が――。
【幻瞑暗黒回廊】の魔法の罠と衝突。
その衝突した直後――。
前方と斜めの魔法の罠が連続的に弾け飛ぶ。
――やった! 凄い!
解除に難しい次元魔法罠の解除に成功。
瞬時に、分岐した魔力の道が幾つも出現。
アス家の魔法のグローブ、魔導の泡の効果かな?
ううん、きっと、神界セウロスの偉大な神々のお陰!
わざわざ宗教街に行かなくても、魔法学院内には、神々を祀る礼拝堂がちゃんとある。
秘密の部屋でさえ不思議な鏡と神々の彫像はあった。
秘密の神様の彫像には、傷があったけれど……。
わたしの家の秘蔵の品の中にも、可愛い神様の人形があるし!
だから――。
愛の女神アリア様、知恵の神イリアス様、運命の神アシュラー様、炎神エンフリート様、時空の神クローセイヴィス様、ありがとうございます。
ふふ、よーし、魔法の道を進もう!
神様にお祈りしたし!
この魔力の道と謎の光を出してくれる魔道具を活かせば、迷うことはない♪
足を踏み外したら……この単眼を備えた籠手の魔道具が助けてくれる?
ううん。魔力を消費しているし、そんな好都合なことは何回も起きない。
踏み外したら……最後と考えよう。
精神と肉体が幻瞑世界と暗黒世界に囚われてしまう。
囚われたことなんてないから分からないけど。
……怖い。
あまりそういうことは考えないようにしよう……。
女子生徒はそう内心で怖がりつつも――。
しっかりと足下に魔法を展開しつつ入念に足場を確保する。
幾重にも分岐した魔法の道。
その不思議な魔法の道を慎重に進んでいった。
すると、その魔法の道の上に半透明の扉が出現。
籠手から出た光は、その扉を差している。
女子生徒の瞳が輝くと、
「うん。罠はないはず」
自らそう言い聞かせるように喋った女子生徒。
籠手の光は、わたしを導いてくれているし、信用する! 光神ルロディス様の力? 分からないけど――。
と、足早に半透明の扉に向かった。
女子生徒は、その半透明の扉に指を当てる。
半透明の扉は抵抗もなく開いた。
その半透明の扉の下に魔法の道が出現。
その魔法の道は【幻瞑暗黒回廊】の世界に、虹の橋でも造るように前方へと伸びていく。
同時に伸びゆく道を照らすように女子生徒の籠手の魔道具が光を出した。
――光を受けた魔法の道は強く輝く。
――よかった。魔法の罠は暫く無さそう。
この先に続く異空間も魔法の資料にあった厳しい【幻瞑暗黒回廊】の一種だと思うけど、魔法の罠があっても……大丈夫。
魔法の罠はアス家の装備で対処が可能だし。
――うん。
魔法学院の図書館で学んだことは、無駄ではなかった。
〝モンスター部屋と呪いの回避方法〟
〝自動改築魔術〟
〝次元の
〝暁の帝国の大賢者貴族の書〟
〝
〝
まだまだ本は他にもあって……。
内容もわたしには理解できないことが多い。
……でも、わたしには幼い時から魔法を学んできた自信と……。
眼鏡が似合う少女はそう考えながら……。
自身の腰を見る。
女子生徒の腰ベルトには、アス家の血筋の証拠の貴重な魔造書が二つぶら下がっていた。
〝異端者ガルモデウス〟。
〝稀人の血〟。
わたしの家に伝わる異端者ガルモデウスの魔造書。
レプリカだけど、使えるし、便利。
稀人の血の魔造書は、本物。
その二つの魔造書を自信有り気に見る女子生徒。
確かに、彼女が見る魔造書のお陰で、魔法学院七不思議の、開かずの間の【魔素を遮断する秘密の部屋】と【センティアの部屋】に入り、そこで籠手の形をした角灯の魔道具を入手。
その籠手の魔道具が出す光に導かれるように【幻瞑暗黒回廊】を進めていた。
でも、この〝魔道具の籠手〟の効果はよく分からない。
危機的な状況でわたしを救うような魔力を出してくれたけど……魔力を込めても上手く作動しない時がある。
壊れてしまったの?
このまま無事に学院に帰れたら……。
わたしを導いてくれた、この籠手と骨の角灯を、ジュノとエルとミアに見せてみよう。
誰かが欲しがったらプレゼントしようかな。
現在も、わたしを救ってくれているように、友達に危険が迫っても、この光が導いてくれるかもしれない。
あ、プレゼントする前に、三人と遊ぶついでに、鑑定屋に行こう。
あの渋い店主の鑑定屋は怖いから違う店にして……。
女子生徒は第一の円卓通りの様子を思い出していると――。
魔法の罠の解除に失敗。
その影響で【幻瞑暗黒回廊】から出現した異界の怪物を――。
魔法を使いなんとか倒す。
「ふぅ、やっと倒せた……次は」
そして、罠の解除と魔法の小道を作ることに成功。
無難に【幻瞑暗黒回廊】を突破していく。
◇◇◇◇
……長い。
でも、この【幻瞑暗黒回廊】はどこまで続くの……。
あ、見たことのない魔法の罠が浮かんだ……。
不思議な魔紋が見え隠れ。
音で分かるリョゴルと違って、あの魔法の罠には明らかに攻撃がくる気配がある。
見えている分……。
分かりやすいけど……。
あの魔法の罠の近くの道は避けよう。
――右のほうは……あぅぅ……。
漆黒の闇から赤い瞳の目玉が見えた。
……怖い、魔界セブドラの魔界王子、魔王級、魔公爵級の干渉を受けているのかな。
怖いと言えば……。
センティアの部屋の奥にいた存在を思い出す。
多重結界が敷かれた先に魔法の書物を見ていた人族っぽい方がいた……。
優秀な魔法使いや魔術師でも入れなさそうな場所なのに。
その人族っぽい方のマントは赤色と黒色。
学院の印と組み合わさった〝天秤と杖と腕〟の絵柄。
絵柄の上には学院の上級顧問と先生の立場を意味する〝偉大な魔杖のマクマホン〟もあった。
あの色合いのマントは……。
上級顧問のサケルナート先生?
わたしが、その奥に向かうと、その先生のような方は、消えるようにいなくなった。
時空転移の秘術?
紋章陣も無しに瞬時に構築?
ありえない。
一級クラスの先生でもたぶん無理なはず……。
数十人が一斉に唱えれば可能となる連携魔法なら可能?
でも、それでも……。
強力な魔道具が必要なはずだし。
可能性が高いのは、時空転移の秘術が込められたスクロールかな……。
或いは、お化け?
――いけない。
恐怖で魔力制御が崩れる。
ここで、怖いことを考えちゃだめ……。
はぁ……。
光に導かれて魔力の道を進んでいるけど……。
ここって本当に【幻瞑暗黒回廊】なの?
複数の道が枝分かれして……。
一瞬、迷う時がある。
左右に分かれた道に正解ってあるの?
魔道具の籠手が光った先に進んではいるけど、これが正解なのよね?
正解だと思いたい。
うん、正解……よ、ね?
もし、無限に続く罠の道だったら?
と、急に元気を無くした女子生徒。
彼女は兄の件で、辛酸を嘗めたことがある。
今のわたしを見たら……。
死んだお兄様はなんて言う?
『ディア。そんな暗い顔をするな……媚態を期待するクズ男や、尻馬に乗ったような奴らの言葉なんて無視しろ。分からない魔法の文なら俺が教えてやる。課題に必要な触媒なら俺が一緒に取りに行ってやる。魔力操作も俺が見てやるから、安心しろ』
わたしがイジメに遭った時も、課題に失敗した時も、魔法に失敗した時も……。
お兄様は励ましてくれた。
うう、元気を出さなきゃ……。
そして、お兄様がどうして魔法学院で死ななきゃいけなかったのか……。
その謎を突き止めてやる。
図書館でよく会った臨時講師のミスティ先生に、そのことをさり気なく相談したら、
『アス家のお嬢様が必死になるわけか。魔法学院の秘密とお兄さんの情報を探っていたのね……でもね、闇を覗くと、良い子なだけではいられなくなるものよ? それでもいいの?』
と、忠告してくれた。
わたしに対して、親身になってくれた。
そう、過去を思い出した女子生徒。
瞳に活力を得た彼女は……。
【幻瞑暗黒回廊】を進む。
すると――。
ミスランの法衣を着た古代ドワーフの大魔術師と弟子たちと遭遇。
【九紫院】の離脱者を追う者たち、【ダークトラッカー】の一隊だ。
女子生徒は、それらの集団と闇神リヴォグラフの眷属集団との戦いに巻き込まれた。
……更に、魔法の罠の発動に巻き込まれ、
が……なんとかパフィルの杖と魔靴ビートゥを活かし、魔法の小道を構築しては脱出。
続いて、魔人グウとアイラ、いや、ミアという女性魔法使いと遭遇。
魔人グウとミアと女子生徒は途端に仲良くなった。
今は訳あってアイラと名乗っているミアだが、過去、魔法学院ロンベルジュに通っていたことを知ったからだ。
女子生徒は楽し気だ。
友にミアという同じ名前の友がいたこともある。
そして、魔人グウとアイラこと、そのホルカーバム出身のミアと仲良くなったアス家の女子生徒だったが……。
それも長くは続かない。
突如、魔法の道と【幻瞑暗黒回廊】の空間を侵食しつつ出現した冥界の【苦悶宮】を支配する〝死を閉じる者〟と戦うことになった。
その戦いで魔人グウが大活躍。
それらの未知の次元を超える敵に勝利した彼女たちは喜びを爆発させると、勢い余った魔人グウが、気まぐれを発動。
グウは、おにぎり魔法を繰り出す。
その衝撃で、魔法の罠が発動。
罠を制御していた魔法の道が湾曲を繰り返す。
その影響を受けて、空間転移を繰り返してしまった女子生徒。
魔人グウとミアと別れてしまった。
が、そういった冒険を繰り返したのち、女子生徒は……。
センティアの部屋で入手した籠手と繋がる角灯から出た光の誘導を受け続けて、無事に【幻瞑暗黒回廊】を渡りきる。
目の前の光景が反転して次元が切り替わった。
見知った廊下に戻った。
魔法学院ロンベルジュの廊下を歩く生徒と先生たち。
上級顧問の女性教師。
臨時の講師に武術師範の雇われ講師。
女子トイレもある。
その廊下の一部が変化したことに気付く優秀な生徒もいたが、廊下の一部の壁が元通りになったことを見て、
「また? 下級生の学院探索の遊びかしら」
「新しい魔道具だろう。魔法ギルドの干渉が五月蠅いというのに」
「この学院は秘密が多いから、気持ちは分かる」
「分かるけど、その秘密で死にたくはないわよ」
「うん、迷宮ならペルネーテの迷宮があるし、そこで十分学べる」
「そうそう、障壁と魔法の罠といい、
「うん」
「それよりも、新しい武術の講師、最近見かけないが……」
「あ、辞めたわよ」
「聞いた聞いた」
「辞めたのかよ、臨時講師は今年で何人目だ?」
「三人目? このままでは、四人目も同じことになりそう」
「わたしたちのクラスの担当は大丈夫だけど、そのうち、わたしたちの武術の授業が減るかもしれないし」
「……はは、それはいやだな。しかし、戦場を経験した傭兵&冒険者より、生徒のほうが強いってのも問題があるか?」
「どうせ、貴族の御曹司とお嬢様だろうと、舐めた中年教師が多いんでしょう?」
「ふん……貴族とも魔法ギルドとも関係ない、下賎な連中を採用しすぎなのよ」
と、何事もなかったように語らう生徒たちは、各自の教室に戻る。
魔法学院ロンベルジュの日常だ。
眼鏡を直しつつ生徒たちの言葉を聞いていた女子生徒は、スカートの端を叩いて、壁の端で「すーはーすーはー」と深呼吸。
お兄様と神々と、この籠手と繋がる角灯のお陰かな。
「……よかったぁ」
……いつもの学院!
二年のクラスに戻ろ。あぅ……。
と、尿意を感じた女子生徒。
体を少し震わせる。
恥ずかしそうな表情を浮かべつつ、魔道具の籠手を持ったまま、女子トイレに駆け込んだ。
◇◆◇◆
センティアの手は俺の魔力を吸収。
籠手の眼球が時計回りから逆回転。
眼球の周りには三十時間の意味を表す魔印がある。
星々と砂時計のマークもあった。
その星々のマークの機構から茨のようなトゲトゲの骨の部位が出て、俺の腕を巻く。
「ハルホンク、防がなくていい。服を半袖バージョンに」
「ングゥゥィィ――」
半袖のヒトデバージョン防護服に変化。
さっそくトゲトゲの骨が腕に絡む。
――痛い、骨に血を吸われた。
すると、チェーン的に伸びた骨のトゲトゲは俺の腕を巻いたままだが――。
血を纏ったセンティアの手は分解。
星々と砂時計のマークが外れつつ宙に浮かぶ。
宙空で……。
その細かく分裂した籠手の部品同士が連結して腕用の小さい籠手が完成する。
小さい籠手の表面は足軽の兵士の装備っぽい。
鋼的な甲。
甲に嵌まる単眼の眼球は、ぐるぐると秒針を意味するかのように回り続ける。
アドゥムブラリ的な可愛さがないから怖い。
その籠手と骨の鎖と繋がってぶら下がる小さい角灯はそのまま。
元々籠手の内部にあった細い女性的な手は、半透明になった。
魔力の手だったということか?
その半透明な魔力の手は――。
センティアの手の単眼に吸い込まれた。
続いて角灯の内部から光が出る。
猿と雉も光を帯びた。
アクセルマギナから宇宙音楽が響く。
盛大なオペラ調で、イイ感じだ。
風防の上では、ガードナーマリオルスが宇宙空間を進む小型戦闘機を追い掛けていく映像が投影されていた。いちいち面白い。
その戦闘型デバイスの風防に浮かぶアクセルマギナは、ガードナーマリオルスとは違って、不思議そうにセンティアの手を見ていた。
すると、ヘルメが、
「……閣下の血を吸う? 一種の角灯のアイテムでしょうか?」
「血と魔力を栄養源とする角灯か? 照らすだけなら、期待と違ったかもな」
俺はビアに〝センティアの手〟について――。
意見を求めるように視線を向ける。
ビアはセンティアの手を見ていない。
このアイテムより、仲間と戦場のことを気にしている面だ。崩壊した滝壺を見上げている。
ビアは、∴のマークを表に刻む小さい塊をチラッと見て、
「主、そんな装備よりも、その三つの点が怪しい塊をさっさと回収するのだ! 上に戻り、リザードマンたちとの戦いに我も参加したい!」
「待て。先も話をしたが、センティアの手と、その
ビアは頷く。
「ふむ。魚人のゾルディックは、東邦の魔龍鬼とも名乗っていたな。その魔龍鬼のゾルディックは、我とガスノンドロロクンの剣に対して、東邦の異邦人が用いた特殊な力はない、とも喋っていた。我は、東邦魔龍鬼なぞ知らぬ、と叫んだ」
ビアがそう発言。
俺は頷きつつ、
「そのセンティアの手が、このアイテム。東邦のセンティア見聞録に登場した本人の手。更に、〝見聞録〟って言葉は気になるんだ」
「見聞録?」
俺の知る日本の歴史だから意味がないかもだが……。
「そうだ。俺の勘違いかも知れないが……俺の知る日本という国がある異世界では、マルコ=ポーロという偉人が残した東方見聞録って紀行がある。そこにジパングって国が出てくるんだが、ジパングは日本を意味するんだ。俺の出身国は日本。そして、東の
数回、頷いたヘルメさん。
巨乳さんの上で
「複数の意味が重なったんですね。しかし、桃から桃太郎……?」
と、質問。
ビアが答えた。
「桃太郎は知らぬが、桃なら我も知っている」
「では、果物から人族が生まれたのですか? 閣下の異世界は不思議な国です」
「ふむぅ……面妖なお伽噺なのだな」
ビアとヘルメは頷き合う。
「ングゥゥィィ! モモ、ウマイ?」
そのハルホンクにヘルメが水をぴゅっとかけていた。
「不思議な昔話。犬・猿・雉を連れて鬼ヶ島の鬼を退治する桃太郎」
「あ、鬼退治! 魔龍鬼ゾルディックと繋がります」
「そうだ。色々繋がるヒューイ・ゾルディック。だから、<霊呪網鎖>で卍の塊と分裂した、∴が目立つ小さい塊に東邦繋がりで、センティアの手を使ったらどうなるか? ってな」
すると、左の<シュレゴス・ロードの魔印>が疼く。
『――主。その点が三つの塊には、我の魔力も混じっている』
シュレゴス・ロードがそう思念を寄越す。
『魔力を吸い取られていたからな。そうだろうという予感はあった。だが、俺と親和性の高い、そのシュレの魔力が要因で、<霊呪網鎖>が成功したのかもしれない。ありがとうな』
『主……嬉しき言葉だ……我をたくさんつこうてくれ!!』
少しなまった感じで念話を伝えてくる。
この反応は沙と似た印象。
「そういうことですか! 鬼退治を実行した桃と桃太郎のようなスーパーな眷属を誕生させようとしているのですね!」
「桃か桃太郎ってことは考えなかったが、まぁ、そうだな。センティアの手は、まったく関係がないかもしれないが……試すだけ試す」
「ふむぅ、主らしい」
「ングゥゥィィ……」
「――はい」
ハルホンクに水をぴゅっと飛ばしたヘルメは、センティアの手にぶら下がる角灯を凝視。
「閣下の血は止まったようです」
「そのようだ」
すると、水を得て喜んでいた
すぐにヘルメが<珠瑠の紐>で赤ちゃんを押さえた。
それに、すこぶるいい匂いが漂った。
<珠瑠の紐>の匂い効果か。
ヘルメの指先の球根。
今回は、癒やしバージョンを使っている?
小さい腕防具となったセンティアの手を見る。
光を出す骨製の角灯が揺れた。
魔力も段々と強まる。
硝子の中身の小さい猿と雉は……ん?
二匹は、西の方角を指す?
しかも、動きが徐々にスローモーションになって遅くなった。
ビアも凝視する。
彼女の長い舌が骨と硝子が組み合わさった角灯に触れそうだ。
「……主、そのセンティアの手は、ただの角灯ではないようだぞ……魔道具としての能力が作動している?」
「魔力も強まった……」
「はい」
このセンティアの手を、ヒューイ・ゾルディックだった∴のある小さい塊に当ててみるか。
すると、甲の眼球から魔線が出た。
その魔線は西を指す――。
そのセンティアの新しい籠手は半透明に変化。
甲からぶら下がる角灯も半透明。
その半透明のセンティアの手から出る魔線と猿と雉が放つ輝きが重なって光が強まった。
綺麗だ。
※ピコーン※<覚式ノ理>※恒久スキル獲得※
スキルをゲット。
刹那、俺の周囲の空間だけが歪む。
――世界が変わった?
目の前に、女性……。
え? 制服を着た女の子?
洋式の便器に座った女子生徒?
ミアと同じ魔法学院の制服?
ミスティが先生の魔法学院だろうか?
名は魔法学院ロンベルジュ。
断定は早いか。
魔法学院は各都市に存在する。
目の前の眼鏡をかけた女子生徒は……。
腕に絡みついた血濡れた籠手と、骨の角灯を外そうとしていた。
女子生徒の細い手に絡む籠手は……。
センティアの手だ。
もう一つあるのか。
ま、当然か。
もう片方の手があるよな。
女子生徒のセンティアの手の籠手は……。
変化する前のセンティアの手の籠手と同じ。
俺の新しいセンティアの手は小さい籠手で形が変化している。
その籠手を弄っていた女子生徒は……。
俺に気付く。
口を震わせて、ぽかーん。
眼鏡を落としそう。
その眼鏡を直した女子生徒。
「……え? え? え? <覚式ノ従者>を獲得? この籠手って、あれ……お、兄、お兄様?」
「お兄様って、俺が?」
「は、はい。声も似ています! 本当にお兄様なの? ううん、お兄様は……まさか、わたし、オカシクなった?」
女子生徒は混乱中。
自分がどんな格好か、気にしていない。
おろおろと取り乱している。
……眼鏡から覗かせる黒い瞳は可愛い。
顔も美形だ。
そんな女子生徒に向けて、
「オカシクはないが、俺は君の兄ではない」
「……そう、なのですか? 幻? でも、わたしと同じ黒髪。目も、お兄様と似て、格好いい……制服ではないですが、冒険者としてのお姿も、お兄様とそっくり」
「残念ながら、お兄様ではない。が、褒めてくれるのは嬉しい」
「え……」
女子生徒は眼鏡に指を当てて、目を擦る。
彼女は「ふふ」と微笑んでから、
「……まさか、無事に学院に戻ってこられたという安心が作り出した幻想? ここは、まだ【幻瞑暗黒回廊】の中で、わたしは罠に掛かっている?」
「……【幻瞑暗黒回廊】が分からない。しかし、それはない。俺は俺で、今喋っている俺は、ここにいる。我思う、故に我あり」
「……そうですか。お兄様の幻影……ワレオモウ、ユエニワレアリとは、新しい呪文ですね。この籠手の幻術ってことですか? この籠手は、わたしを助けてくれたけど、実は精神を病む……呪いの品? 幻術の呪いを受けてしまった? あぁ、わたしが望む心を投影している呪いかも知れないですね……お兄様……会いたかった」
彼女が望む幻術か。
センティアの手に魔力と血を吸われたが……。
「これは幻術か?」
「お兄様。幻術が幻術と聞くのですか?」
「だから、幻術ではないと思うぞ」
と、俺が言うと、女子生徒は頭部を振るって、
「……これ、外れない」
センティアの手の籠手を外そうとする。
「うぅ……わたしには魔造書があるのに……どうして」
自身の腰の二つの魔造書をチラッと見た女子生徒。悩ましくスカートが捲れた上にある腰の本は、魔界四九三書?
フィナプルスの夜会?
キサラの〝百鬼道〟?
それ相応の魔造書なら……。
「……この籠手を装着したまま教室に……でも、どのくらいの期間、開かずの間にいたんだろう。時間がずれているのかもしれない……」
「開かずの間?」
ミスティが話をしていた生徒って、もしかして……。
「はい、魔法学院七不思議は本当の話なんです」
「そっか。で、そのセンティアの手が腕に絡んだ具合はファッション的にいいかもだ」
「……」
俺をじっと見る女子生徒。
ハッとした表情を浮かべてから、
「……お兄様とお話ができるのは嬉しいけど、幻……現実を見ないと、試験もあるし……あぁ、あと、エルたちに協力してもらえるかな……今は……」
溜め息を吐く。
と、ほうけた。
俺を兄だと思って幻だと思い込んでいるようだ。
「……ふぅ……」
オシッコをする音が響く。
オナラさんの音も。
……俺はどうしたら……。
センティアの手を離すか?
と、
「閣下? 閣下の姿が消えていますが、閣下の声と、女性の声と魔力も感じますし……水の音に空気が混ざる音が! これは……」
「面妖すぎる! オナラの音か!?」
ヘルメとビアの声が女子トイレ内で響く。
オシッコを終えた眼鏡が似合う女子生徒は驚愕したような顔つきで、
「……閣下? 面妖? おならって、えぇぇ?」
と、発言。
ヘルメとビアの声は聞こえているようだ。
「まさか、幻術ではない? 本当ってこと?」
「本当だ」
俺はそう発言。
女子生徒は便器に座ったまま、俺を凝視。
焦ったのか、女子生徒は半笑いの表情となる。
小顔で、眼鏡がピタリと合う。
素直に可愛い。
が、急に、怪訝な顔となった。
また俺を凝視してから、自身の体勢を確認。
そう、オシッコ中だし、太股も捲れたスカートから覗いている。
「……これは幻よ。幻なの! でも、違ったら……お兄様でもなかったら……アス家最大の危機。わたしはお嫁にいけない……」
俺は無難に「……」と笑顔を繰り出す。
女子生徒もにっこりと笑顔を返す。
が、少し怖い。
そして、眼鏡をハズした。
眉は少し太い。
虹彩には茶色が混ざるが、黒色の瞳。
鼻筋はユイと似て、日本人っぽい。
頬は少しリンゴっぽい赤さ。
ま、小顔の美人さんだ。
魔力が含む特殊そうな眼鏡を、布でふきふき。
拭いた眼鏡を装着。
キリッとした表情となった女子生徒。
再び、俺を凝視。
「……本物だとして、わたしのオシッコしているところを見た?」
「見たというか見てしまった。済まない」
俺は混乱しつつも正直に話をしてから……。
――敬礼。
女子生徒は怯えて、
「――ひぃ」
と、発言しつつ体を反らす。
怯えさせるつもりはないんだが……。
右手のアクセルマギナも敬礼。
ガードナーマリオルスも敬礼。
と、彼女は俺の右手首を凝視。
俺の右腕のアクセルマギナも見えているようだ。
唾を飲み込む音が響いた。
「……不思議なアイテムですね……」
と、発言しては、人差し指を出してきた女子生徒。
これはあれか?
『ET』をするタイミングか。
俺も人差し指を出した。
眼鏡が似合う彼女の指にタッチング――。
指の腹の感触は普通だ。
「あ……指を合わせてくれた……やっぱりお兄様なの?」
「……」
すると、女子生徒は片方の目から涙を流す。
切なそうな表情で俺を見つめてきた。
気まずい。
が、俺は『兄じゃない』という意思を示す。
頭部を左右に振った。
「……違うの? ううん、お兄様よ。わたしが幼い時にも同じことをしてくれた! それに、わたしが獲得したばかりの<覚式ノ従者>と、お兄様が関係している! <覚式>のこの魔道具に関わるお師匠様が、お兄様なの!」
お兄様、と連呼するし、この際だ、妹様と呼ぶか?
いや、ふざけている場合ではない。
「……俺は<覚式ノ理>を獲得した。それよりも、格好を整えてくれると……」
「あ、え? あぁぁ、きゃぁぁぁ」
と、今更の羞恥心か?
「閣下、お兄様とは? 女性の悲鳴が聞こえましたが……」
「主がいるのに主が消えている?」
「お兄様の、ばかぁぁっぁぁぁあぁ――」
と、混乱が続く女子生徒は泣きながら叫ぶと、俺を突き飛ばす。
トイレの個室の扉を乱暴に開けては、女子トイレから出ていった。
おい、パンツが、オシッコが……。
大丈夫か、あの女子生徒。
センティアの手を振るように出ていったが……。
すぐに俺はセンティアの手を離そうと意識。
瞬間――。
滝壺が崩壊した世界に戻った。
ヘルメたちだ。
「あっ、閣下」
「主の姿だ!」
無事に戻ってこられた。
よかった、女子トイレとか。
あのまま変態として捕まりたくはない。
……ふぅ、強い安堵感を得た。
腕に絡まった骨も外れて、センティアの手の腕防具は宙に浮かぶ。
∴のマークがある小さい塊もある。
「……よう、ただいまか」
「閣下、顔色が優れませんが、どういう……」
「あぁ、大丈夫。それより、このセンティアの手は、<覚式ノ理>を用いた魔法学院のトイレと通じた転移アイテム? または、女子生徒が持つもう一つのセンティアの手と繋がることが可能な転移アイテムだ」
と、説明。
元滝壺を把握しながら語る。
坂道はもう上れない。
ヒューイ・ゾルディックと激闘を繰り広げたからな。
鯉のような魚が岩の上で踊っている。
「……転移が可能なアイテム……しかし、空間ごと繋がる転移ということでしょうか。音が聞こえていましたし……」
ヘルメの言葉に頷く。
「クナの転移魔法陣を使った転移とは、また違うか」
「ゼレナードの施設から
「もう一つのセンティアの手を女子生徒が装備していた。そのセンティアの手に転移が可能ってことだろう。それか、魔法学院と繋がっているって可能性もある」
どちらも関係がある?
「なんという……
「転移ってことだけはな」
「ゴウール・ソウル・デルメンデスの鏡もあります」
二人に頷いてから、チラッと∴のマークが宿る小さい塊を見て、
「……センティアの手は、対となったもう一つのセンティアの手に、転移が可能っぽいと推測。俺は<覚式ノ理>を獲得した。そして、もう一つのセンティアの手の籠手を装備している女子生徒のほうも<覚式ノ従者>を獲得したようだ。その女子生徒と、俺は繋がりを得たと判断できる」
「素晴らしい! ∴の小さい塊とは違って、もう一つ、予期せぬところで眷属を獲得とは!」
ヘルメが興奮。
「うむぅ。我も驚いたぞ」
そうビアが発言すると、彼女が持つ剣を巻く黒い龍も、龍としての動きで上部をのそっと動かして、
「ヒューイ・ゾルディックを倒した光魔ルシヴァルの大主。転移も可能かつ、予期せぬ眷属の獲得とは驚きぞ……因果の巡りが速すぎる」
ガスノンドロロクン様がそう発言。
「時空属性と高い魔法能力を有した、閣下だからこそ運用可能なアイテムが、センティアの手なのですね」
「東方見聞録と関係したセンティアの手とは……凄いアイテムだったのだな。そして、主が語っていたキズユル爺の言葉にも、時空属性があった!」
「そうだ」
「しかし、主。三つの点が目立つ、小さい塊は蠢いたままだぞ。どうするのだ。あのマークが意味するのは、ヒューイか、ゾルディックか……」
と、ビアが指摘する。
∴のマークがある小さい塊。
「∴のマークがある小さい塊に、センティアの手を用いる予定だったが……」
そう発言しながら、小さい塊に向かう。
「直に触れて魔力を込めるとしよう――」
とりあえず、センティアの手はそのままで――。
∴のマークが表面に浮かぶ小さい塊に魔力を込めた。
すると――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます