六百六十二話 <荒鷹ノ空具>とドラゴ・リリックの戦場

 ∴の塊は桃色の魔力を纏った猛禽類の小鳥に変化。

 桃色の魔力を小鳥は吸収。

 小鳥は瞬く間に全長1メートルを超えた大鷹に成長を果たした。


 ※<荒鷹ノ空具>※スキル獲得※


 よし、スキルをゲット。

 浮いた大鷹の額には、小さい∴のマークがあった。

 塊にもあったマーク。

 

 ヒューイ・ゾルディックが額の卍と∴のマークから繰り出した、口を拡げた翼を持つ大怪物とそれに絡む人族たちとは、少し造形が異なるが……。

 この大鷹が、荒神ヒューイの一部?

 嘴の形は渋い。

 その大鷹は両翼を拡げた――。

 風を体に受けた――。


「風の力があるのですね!」

「ぬぉ! センティアの手と関わる人族に続いて、大鷹を使役したのか!」


 大鷹は両翼を羽ばたかせる。

 そのバッサバッサと翼を動かす所作には猛禽類の王者としての風格があった。

 相棒ロロディーヌほどとは言わないが迫力もある。


 すると、尖端の風切り羽から桃色の魔力粒子が迸った。

 おぉぉ……。

 <シュレゴス・ロードの魔印>を元にした魔力だと思うが、この大鷹には火の鳥的な力が備わる? 大気に溶け込むように魔力粒子が消える様子は純粋に美しい。


 一瞬、クレイン先生との激闘を想起。

 あのクレイン・フェンロンが用いた必殺技、<朱華帝鳥エメンタル>――。

 あの銀色と金色のトンファーから出た、三角錐十字の燃えた鳥。


 必殺技が強烈なクレインはエヴァたちと塔烈中立都市セナアプアに移動した。

 聞く限り、魔窟のセナアプアにあるのはエセル界を巡る争いだけではない。

 評議員が持つ勢力と闇ギルドの争いに、エセル界に通じた権力争い、国々の諸勢力も混じる。更に、キサラが気にしていた大魔術師アキエ・エニグマもいる。不安要素は多い。


 が、天使の微笑を持つ<筆頭従者長選ばれし眷属>は強い。

 【魔塔アッセルバインド】のリズもいるし、カリィとレンショウもいる。


 と、自らに言い聞かせてから、大鷹を凝視。

 すると、大鷹の背後の岩に、リザードマンの死体が衝突。

 上から落ちてきた死体だ。


 血文字での連絡はないが、相棒&ヴィーネたちの撤退戦が終盤に差し掛かったか?

 地震のような震動はあっただろうし……。

 滝壺の崩落具合が気になったのかな。


 外側で待ち合わせの予定だったが。

 戦場が気になるビアは上を向く。


 とりあえず、手前の大鷹をクローズアップ。

 大鷹の両脚には魔法の袋がぶら下がっていた。

 桃色の魔力と灰銀色の魔力が、その袋を包んで光沢を生んでいる。

 

 魔法の袋……中身はなんだろう?

 伝書鳩とは違うし……。


 刹那、大鷹は俺の肩に飛来――。

 その魔法の袋を投げてきた。

 袋を受け取って、その手の内から、袋の中身の感触を得た。

 硬い、長細い棒的な、蛇的な人形か?


「ピュゥゥ――」


 と、声を発して俺の周囲を格好良く旋回しつつ飛翔する大鷹。


 魔法の袋を弄ると、「質の高いエレニウムストーンです! さきほどよりも高いです」


 アクセルマギナが反応。「おぉ、なら早速――」魔法の袋から、その長方形の魔石を出す。


「ヒューイ・ゾルディックの形をしている。もしかして」

「魔石としてならフォド・ワン・ユニオンAFVを解放できるような気がしますが、『ドラゴ・リリック』ですか?」

「そう、試す」

「ングゥゥィィ!」

「ハルホンクに食べさせる選択肢もありか。ヒューイ・ゾルディック風の新しい防護服&魔力&精神の高まりが期待できる」


 その間にアクセルマギナは『ドラゴ・リリック』を起動。


 今度の世界は要塞戦――。

 フォド・ワン・マインド・フィフィスエレメント・クリスタルから出た魔線と繋がるゼン・ゼアゼロさんが、青緑色のブレードを振るって、この間、頭を下げていた銀河騎士ガトランス、いや、銀河戦士カリームの超戦士かな。

 

 その女性と一緒に帝国の兵士と戦っていた。

 アオロ・トルーマーさんはいない。


 帝国のボウキャスターを装備した兵士は強そうだ。

 右腕に腕章的な魔機械とその縁に備わるスラスターを装着している。

 そのスラスターから魔力粒子が放たれると、急激に動きが加速。

 エネルギーグレネードの<投擲>はゼン・ゼアゼロさんが<超能力精神サイキックマインド>で防いでいる。

 

 長細い三つの器官が一つの頭部の種族の銀河戦士カリームも青緑色のブレードを持つ。


 袈裟斬りで、正面のブラスター持ちを倒す。

 と、回転回し蹴りの機動から、片手で地面を突いて、ビームを避ける。

 そのまま宙空の位置で両手で頭部を覆う。ブレードで顔面を防御? いや、違った、頭部の器官から魔力の波動を出して、左右のビームライフルとハンドガンの二丁持ちの帝国の兵士の動きを封じている。


 刹那、その青緑色のブレードを<投擲>。

 ブレードで左右の帝国の兵士の武器ごと胴体を両断しては、ブーメラン軌道で戻るブレードを掴みつつ、地面に着地する女性の銀河戦士カリーム

 

 あの女性も銀河騎士に見えるほど、強い。

 頭部はぬらりひょん的な側面もあるが、顔は美人。


 刹那――。

 アイコン化しているフォド・ワン・マインド・フィフィスエレメント・クリスタルが俄に点滅。

 そのフォド・ワン・マインド・フィフィスエレメント・クリスタルから魔線が出ると、その頭部が珍しい女性銀河戦士カリームと繋がった。

 更に、魔線は、『ドラゴ・リリック』のホログラム映像ゲームから出た。

 実際の右腕の戦闘型デバイスから出ては、俺を突き抜けて、西の方角を一瞬示す。

 

 しかし、その魔線は一瞬で消失。

 頭部が珍しい銀河戦士カリームは一瞬、頭部をキョロキョロと動かした。

 が、近寄ってくる帝国の兵士が撃ったビームを青緑色のブレードの角度を変えて、反射させる。

 

 左からきた拳にビーム刃を持つ素早い帝国の兵士には、右回し蹴りを衝突させた。

 激戦だ。

 しかし、俺を突き抜けて、西のほうに出た魔線の意味は……。

 この戦っている女性銀河戦士カリームは、この惑星セラにいるのか?

 それか……銀河騎士のマインドを持つ存在がこの惑星にいる? 


 帝国の兵士と戦う怪物の姿もちらほらとある。

 が、前の二つのシチュエーションとは違う。

 その『ドラゴ・リリック』の中に長細い魔石フィギュアのヒューイ・ゾルディックを入れた。

 魔石もフィギュアとして認識したようだ。

 帝国の兵士たちが、立体化したヒューイ・ゾルディックに倒されていく――巨大なナマズとドラゴンが融合したようなクリーチャーのヒューイ・ゾルディックが『ドラゴ・リリック』内で大暴れだ。


 その戦闘型デバイスの風防の上で繰り広げられている『ドラゴ・リリック』のリアルなゲームに――。

 周囲を舞う大鷹も『ドラゴ・リリック』が気になるのか飛来――。


 が、その大鷹の脚は映像を素通り。

 大鷹は「ピュゥー」と鳴いて右腕の真上のスレスレを飛翔。


 このヒューイ・ゾルディックの魔石というかフィギュアを『ドラゴ・リリック』に入れたままにはしない。


 取り出す。


「それ、クウ、ゾォイ!」


 取り出した長細いヒューイ・ゾルディックの魔石が美味そうに見えるようだ。

 龍とドラゴンとウナギの形だしな、ハルちゃん的には、ガリガリ君のような美味しいアイス的なものなのかもしれない。


「んー、フォド・ワン・ユニオンAFVが解放できるかもだし、迷う……よーし、ハルホンクには悪いが、このヒューイ・ゾルディックのミニチュア魔石は、戦闘型デバイスに納めるとする」

「ングゥゥィィ」


 と、アクセルマギナは素早く、

 ―――――――――――――――――――――――


 ◆ここにエレニウムストーンを入れてください。


 ―――――――――――――――――――――――


 を拡大する。

 ヒューイ・ゾルディックの形の魔石を◆に入れた。


 ――――――――――――――――――――

 必要なエレニウムストーン:完了。

 報酬:格納庫+500:フォド・ワン・ユニオンAFV:解放

 ――――――――――――――――――――


 おおお、必要なエレニウムストーン大の130000が完了!


 戦闘型デバイスから灰銀色の魔力が噴き出す。


「――ングゥゥィィ! マリョク、イッパイ! ゾォイ!」


 前と同じく竜頭金属甲ハルホンクが大反応。

 噴き上がった粒子は、巨大な装甲車となった。


 これが、フォド・ワン・ユニオンAFV!

 白い装甲車というか中央にキャノン砲がある。


『器よ……これは、馬車なのか?』

『みたいなもんだ、戦車っぽさもあるが』


 調べるか。

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