六百五十四話 新装備&アクセルマギナのミニスカート

 空の雲は、切れたり、続いたりして、棚引く雲もある。陽の加減で雲の梯のコントラストが変わって綺麗だった。そんな空をゆっくりと飛翔する神獣ロロディーヌ。

 青空と雲を反射する陽のコントラストが非常に美しい。色とりどりの雲が、海か、空か、星かと……。

 それぞれの意思を宿すかのように色々な表情を作り出す。何か心が洗われる。

 ここが美しい惑星だと分かる。

 たびたび思い出すが、『トーマス・カーライル』で有名な『自然は神の生きた服装である』って名言をまた想起する。

 精神と理念を象徴するような多種多様な神々も、この惑星セラの自然に強く作用しているんだろう。


 ……俺とヘルメは、しばし、その景色を堪能した……ゆっくりと飛翔してくれている相棒も気を利かせる。

 相棒の用意してくれた黒毛のソファの感触は、たまらない。相棒の背中は最高だな。

 温かさも感じつつ、天然のリラクゼーション付き――。

 そんな黒毛ソファに背中を預けつつ巨大な大空を満喫できる……。

 ――最高なアトラクションだ。戦闘機を操縦するパイロットもこんな気分なんだろうか。

 俺たちは神獣の力でGを感じない分、戦闘機のパイロットより気分がいいかも。

 

 にしても、まったりだ。琥珀は寝ている。

 相棒の背中に生えた黒毛ソファの一部が包む形で寝ていた。

 丸いアンモニャイト気味だ。カワイスギル。俺は可愛い琥珀を見ながら――。

 ハルホンクの魔竜王装備から半袖にチェンジ。暗緑色を基調とした半袖。

 スリムを意識したラメ革風のズボンを意識した。

 そして、同じ黒毛ソファで休むヘルメに、


「ヘルメ、魔石を回収したと思ったが、火の魔宝石でもなかったようだ。名はペルマドンの卵。魔石ではなく卵だった」

「見た目は妖精ちゃんを内包した小さい魔石に見えますが、卵ですか……」


 アイコンの見た目は、デボンチッチ風の魔石だからな。

 そのペルマドンの卵を凝視するヘルメ。


 そんな興味を抱くヘルメから、いい匂いが……。


「見た目は卵ってより、デボンチッチっぽい」

「はい。触れば、何か分かるかも知れないです」

「火山湖から爆発して出てきたペルマドンの卵だ。怒っているかも知れない。今、外に出した途端にドカンッてことも」

「……それは怖いですね」


 ヘルメは綺麗な指先から水をぴゅっと出した。

 その細い指先でアイコン化しているペルマドンの卵にぴゅっと水飛沫を当て、指で小突く。

 水飛沫と指は、アイテムボックスのアイコンとして浮かぶペルマドンの卵をすり抜けた。


 すると、ガードナーマリオルスの立体映像が反応。


 ヘルメを見上げたガードナーマリオルス。

 球体胴体からチューブを出して、そのチューブの先端をヘルメの指の先端に当てている。

 指を突いたり、チューブをヘルメの悩ましい体に伸ばしてみたりと、遊んでいた。

 勿論、ヘルメの指先と体を熱収縮チューブはすり抜けている。


 ヘルメはそのガードナーマリオルスを見て、


「マリオちゃん!」


 と、名を略して微笑む。

 ガードナーマリオルスこと、マリオちゃんも、レンズのカメラをズームアップしてはズームアウトをくり返すようにレンズをパチパチさせていた。


 瞼を閉じて開くの猫の親愛を意味するコミュニケーションって感じだ。


 さて、あのペルマドンの卵だが、今出すのは止めておくか。

 火山湖の中に棲んでいた卵……先に倒した巨大な赤いドラゴン。

 あのドラゴンの内部には蠢いていた極大魔石があった。

 意識があったように動いていた極大魔石。

 実は極大魔石ではなく、特殊なドラゴンの卵だった?


 もしかしたらペルマドンの卵の母親か父親に兄弟を倒してしまった?

 火山湖を巣にしていた兜頭巾の魔法生命体メガロンが、このペルマドンの卵とどういった関係性だったのか分からないが……想像するに……卵か産卵場所としての火山湖をメガロンに奪われて、必死に暴れていた母親が、あの巨大な赤いドラゴンだった?

 だとしたら、俺が倒したドラゴンはペルマドンって名前なのかな。

 これは、鑑定後か。


「閣下?」

「なんだ?」

「――うふ♪」


 と、股間をタッチするヘルメさん――。


 ビクッとしたがな!

 が、ユルス。盛大に許そう!

 俺の如意棒的な息子さんも、『許すも何も喜び炸裂だ』と、強く猛り立つ。


 んだが……今はだめだ。

 このまま、空の上での水を使った盛大なウォーターエッチな一戦もいいが……。

 ママニたちのところが近い。


 そして、確認はまだある。


「ヘルメ、それは、あとでな」

「はい、ふふ――」


 と、ヘルメは、人差し指で、竿の裏をなぞりながら離れた。

 如意棒が、しゃれではないが、不如意になりそうになった。


 同時に、ぐぬぬ。という沙の言葉が脳裏に浮かぶ。

 が、不撓不屈の精神という<超能力精神サイキックマインド>を駆使。


 欲望を抑えた。


『ぬぬ? 器が喜ぶなら妾も隣で……』

『おぉ? それは期待したい、いや……収拾がつかなくなるから、今はいい』

『股間をもっこり大魔王させて、我慢するのか。妾の褥の妙技を体感したら、ときめきトゥナイトな運命メモリアルになることは必至なのだぞ?』

『今度な』

『ふん、もっこり、エロ紳士めが!』


 無難にシャットアウト。

 右手の戦闘型デバイスアイテムボックスの風防の上に浮かぶアクセルマギナに――。


「アクセルマギナ、『ドラゴ・リリック』を出してくれ』

「はい」


 あれ、今度は舞台が変わって熱帯雨林?

 沼地とジャングルに樹海のような場所の遭遇戦。

 ヒトデモンスターが大量だ。

 リザードマンの軍隊が沼地を前進。

 帝国兵士のマスクがない方とゼン・ゼアゼロさんが共闘しながらヒトデモンスターと戦っていた。

 ガードナーマリオルスもゼン・ゼアゼロさんの傍だ。

 ガードナーマリオルスは損傷を負いながらも丸いビーンを球体胴体から射出。

 丸いビーンから胞子のような小さいエネルギー波を出して、ゼン・ゼアゼロさんを守る。

 戦闘BGMが、いい感じだが、古代遺跡の戦いといい『ドラゴ・リリック』のシチュエーションは豊富にあるようだな。


 この『ドラゴ・リリック』を眺めているだけで、凄く面白いんだが……。


「なぁ、アクセルマギナ。この戦ってるシーンだが……どういう、あ、分からないんだったな」

「はい。仕組みは理解できず、すみません」

「いや、気にするな。それで、あのホラーなエイリアンの卵を産み付けてくるようなヒトデだが、先のミホザの古代遺跡の時に戦ったヒトデモンスターでいいんだよな?」

「そうだと思います。ギュノスモロン型と似たようなDNA&RNAを持つモンスターのデータが内蔵メモリに蓄積されていたのかもしれません」

「そっか。ま、フィギュアとして掴めるか、もう一度試す」

「はい」


 『ドラゴ・リリック』に指を突っ込む。

 ヒトデとかジャングルとかビーム兵器とかは勿論すり抜ける。

 そして、<超能力精神サイキックマインド>を強く意識しつつ、ヒトデを掴む。

 スパッと『ドラゴ・リリック』から引っ張った。


 フィギュア化したヒトデモンスター。

 随分と見た目が可愛らしく変化していた。

 これが、ギュノスモロンって名前のモンスターか。

 

 俺が倒したヒトデの大軍とは、まったく違う。


「ングゥゥィィ! オイシソゥ、ゾォイ」

「ハルホンクが、食べたとして、俺に呪いはない、よな?」

「閣下、ヒトデを生やせるようになるかもしれません?」

「それはそれで、シュレの立場を奪いかねない? だが、基本はハルホンクの能力となるはずだ。<蜘蛛王の微因子>のような蜘蛛娘アキと俺との関係性ではないだろう」

「はい」


 『……』と、左手の<シュレゴス・ロードの魔印>が少し動いたような気がした。


「んじゃ、ハルホンク。喰っちゃえ――」


 フィギュアのギュノスモロンを竜頭金属甲ハルホンクの口に当てた。

 途端、魔竜王の蒼眼がピカッと光ってからギュノスモロンは竜頭金属甲ハルホンクに吸い込まれた。


「ングゥゥィィ! ウマ、カッチャン!」


 確かに『うまかっちゃん』のとんこつ味は美味しかった覚えがある。

 が、カッチャンってなんだ。


「ハルホンク、ギュノスモロンの効果を見せてくれ」

「ングゥゥィィ!」


 瞬く間に素っ裸、刹那、股間にぴゅっと水飛沫を浴びた。

 象さんはパオーンと鳴らないがヘルメしかできない芸当だな。

 俺は瞬く間にギュノスモロンをモチーフとした装備に変身を遂げる。

 アクセルマギナは、俺に敬礼。股間に敬礼していた。

 ガードナーマリオルスは独鈷魔槍とチューブを股間に差し向けている。

 お前は俺の股間を警戒しなくていいんだが。と笑いながら自らの服を見ていく。

 薄紫色と紅色を基調とした革のジャケットっぽい。

 片方が半袖で、ハルホンクがある右肩の一部は肩を色違いの布のような厚い材質の皮が覆う。

 竜頭金属甲ハルホンクに合うように縁取られてある。

 銀色のヒトデの紋様が随所に散らばって魔竜王とハルホンクの絵が背景を飾っていた。

 質感としては、師匠からもらったジャケットに近いか。


 あの服は魔竜王の胃袋で溶けたが。胸には、左にルシヴァルの紋章樹と俺と相棒の絵だ。

 銀色の釦が縦に並ぶ。釦の表面には盛り上がった加工でヒトデが絡む槍のマークがある。

 脇腹は漆黒色でゴム系のカーボンナノチューブの素材っぽい。

 全体的にシックでお洒落な装備だ。気色悪いイメージはどこにいった。

 頗る格好いい防護服になった。ハルホンクは芸術家か?


「ヒトデの紋様が綺麗な防具服です!」

「あぁ、いい感じだ。魔力も上がったか――《氷矢フリーズアロー》」


 宙空へと腕の大きさの《氷矢フリーズアロー》が飛翔していく。

 詠唱は水神アクレシス様の加護があるから元々ないが、生成速度と魔法の推進力が微かに上がったか?

 俺が《氷矢フリーズアロー》を飛ばした方向に相棒の黒触手が向かう。


 この衣服のバージョンは、ギュノスモロン型バージョン?

 甲の部位に気になるヒトデマークがある。

 これは、ヒトデバージョンでいいか。他にも……。

 

 牛白熊バージョン、魔竜王バージョン、暗緑色を基調としたコートバージョン、ミスランの法衣バージョン、半袖バージョン、股間がスースーバージョン、ぬけ感が強い七分袖バージョン、手にリパルサーがあるガトランスフォーム。

 最後の銀河騎士のフォームは、ハルホンクではなく戦闘型デバイスからの展開だから正確に言えば違うが、ハルホンクと感覚は共有しているから同じように変身は可能。

 

 俺のイメージを汲んで衣服を展開してくれる竜頭金属甲ハルホンクは多彩だ。

 

 魔界王子デルカウザーの一部を喰ったからな。

 ルシホンクのアミュレットを造ったハルホンクは凄すぎる。

 

 やはり神話ミソロジー級か。

 神話ミソロジー級と言えば、神槍ガンジスも大刀打に……秘密がある。

 オークションで買った神魔石はアイコン化して浮かんでいるから、ヒュプリノパスの尾といい、否が応でも気になるが……これは、まだあとだ。

 

 さて、<分泌吸の匂手フェロモンズタッチ>のママニたちのところはそろそろか。

 狼煙のような煙が上がっている。


 リザードマンの砦でもあったのか。

 フォルニウム火山の周囲に整った道は……道なき道か。

 岩が散乱し尖った岩が多い。蛇人族ラミアの象徴らしき小さい石像がちらほらとあり、リザードマンの死骸が転がっている。

 触手ミサイルで蝶族モンスターを蹴散らしていた相棒は下降を始めた。

 ママニたちが戦うところは狭い場所のようだ。ひとまず広い場所に着地かな。その間にアクセルマギナに大魔石を納めちゃうか。

 転移する可能性があるフォド・ワン・プリズムバッチは今度だな。

 アクセルマギナを見ると、彼女は敬礼。

 『ドラゴリリック』は薄まって背景の星系と重なって流星が増えては、衛星とリンクしたような魔線が飛び交う宇宙戦艦と小型宇宙戦闘機の映像が加わった。漂流している大惑星もある。細かな演出が加わって面白い。

 そして、俺が倒したモンスター類の羅列とアスキーアートの表記。

 何かの指数関数的な数字とグラフも。

 凄すぎて理解はできないが、高度なマトリックス計算があるようなOSの仕組みかな。続いて俺とハートミットが映る。小型オービタルとハートミットの桜花型ラメラルに乗ったバイク剣術の映像だ。

 俺の行動もリンクしているのか。塔の円筒的な縦長の洞穴をバイクで駆け下りていく映像。その映像は、ドラゴ・リリックと違い荒すぎて分かり難い。白黒と青緑のフレームも混ざり手ぶれ映像って感じだ。

 ぶつ切れで綺麗ではない。戦闘型デバイスに格納中のガードナーマリオルスが録画したようだな。

 ガードナーマリオルスは、壁から這い出たヒトデの蟲をズームアップ。

 なら、偵察用ドローンを出しておけば連携が可能? もっと詳細な映像記録を作れるかもしれない。ガードナーマリオルスの球体の体とロボット掃除機のような頭部の中には様々な機能が内臓されているようだな。

 さて、ホログラムのアクセルマギナとガードナーマリオルスの映像は面白いが……戦闘型デバイスの風防の奥から投影された映像ばかりを見ていられない。大きい極大魔石の数は現在、十五個。まず五個入れるとして……アクセルマギナの周囲に浮かぶ極めて小さく表記された前の画面を指でタッチする必要もなく――意識した途端、拡大――。


 エレニウム総蓄量:11346→21346

 ―――――――――――――――――――――

 必要なエレニウムストーン大:50000:未完了

 報酬:格納庫+400:マスドレッドコア:解放

 必要なエレニウムストーン大:130000:未完了

 報酬:格納庫+500:フォド・ワン・ユニオンAFV:解放

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 ―――――――――――――――――――――


 さて、極大魔石を入れるとして、マスドレッドコアが大きかったら相棒が大変なことになる。


「ロロ! 魔石を入れて出現したアイテムによっては重いのもあるかもしれないから、変身して猫か豹に戻っていいからな」

「ンン、にゃおおお~」


 と、相棒は頭部を揺らして旋回しながら鳴く。

 黒触手で、俺の頭をわしゃわしゃとしてきた。

 違う黒触手では、骨剣を出して、少し盛り上がったヒトデの部分の新装備をツンツクしている。


「相棒、一応はハルホンクだからな?」

「ンンン――」


 巨大な姿のロロディーヌだから、返事の喉声も巨大な音だ。

 さて、ヘルメにアイコンタクト。


「はい」


 ―――――――――――――――――――――――


 ◆ここにエレニウムストーンを入れてください。


 ―――――――――――――――――――――――


 大きい極大魔石を◆に五個入れた。


 ――――――――――――――――――――

 必要なエレニウムストーン:完了。

 報酬:格納庫+400:マスドレッドコア:解放

 ――――――――――――――――――――


 よーし、成功! 五万をちゃんと認識!


 アクセルマギナと彼女の足下の風防から魔力粒子が噴き上がる。

 んお!? アクセルマギナのミニスカートが、これでもかという勢いで捲れたァァ。


「きゃぁ」


 股間を押さえるアクセルマギナが可愛い!

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