六百五十三話 三槍流奥義<無天・風雅槍>
そのメガロンは足下の火山湖からまた溶岩ミミズを造る。
<神剣・三叉法具サラテン>が掃除しまくったお陰で、作成速度は落ちた。
しかし、メガロンにとって火山湖自体が魔力の源だ、回復も早い。だから、本体を直に叩かないとだめだな。
魔力はもう回復したのか、瞬く間に溶岩ミミズを作るメガロン。
『よーし、またまた妾の出番かえ! 封じられた神の力を、ただの仙女なんぞではないことを、貂と羅に見せなければ!』
『俺が対処する。沙に頼ってばかりはな、何事も修行』
『フン、器らしい』
溶岩ミミズは俺に飛来。
避けず、逆に溶岩ミミズに正面から突貫――。
ムラサメブレード・改を真上から振るい落とす――。
溶岩ミミズを真っ二つ。
ブゥゥゥンと音を響かせながら――。
左手に血魔剣を召喚。
同時に光魔ルシヴァルの血を血魔剣に流す。
俺の濃厚な<血魔力>が血魔剣の刃と峰に切っ先を真っ赤に染め上げる。
髑髏の十字柄の両端からプラズマ的な血の炎が迸った。
その僅かな間に、二つに分断された溶岩ミミズだったモノは溶けつつ火山湖に落ちた。
メガロンは動きを止めた。
遠隔操作を主軸とするように警戒する知恵がある。
メガロンは、俺が二刀流、二剣流と呼ぶべきスタイルとなった姿を凝視していた。
そのメガロンは兜頭巾の額と繋がるクリスタルの角を光らせると、
「ヌガォァァァ!!」
精神波のような不気味な音を発した。
足下の火山湖から新たな紅蓮の溶岩を引き寄せる。
メガロンは兜頭巾のスカート状の下部に溶岩を付着させた。
吸着した部位は、バーミリオン色に燃焼したヒラヒラに変化。
ヒラヒラの先端からガスバーナー的な火炎を噴かせて推進力を高めた。
魔法生命体メガロン系列は溶岩で兜頭巾を強化できるようだ。
内部の半透明の肉体は表の兜頭巾機構を支えるエンジン?
兜頭巾の一部としての内臓なのか?
ま、生物の構造を理解しようとしても多種多様すぎて、俺では分からない。
そんな奇怪な生物でもあるメガロンは半透明の眼球で俺を睨むと、
「――ゴァアアア」
盛大に叫ぶと、俺とメガロンの間の火山湖の面が湾曲しつつ持ち上がる。
真っ赤な溶岩壁を生成。
その溶岩壁から溶岩ミミズを無数に生み出す。
それら大量の溶岩ミミズを、俺に向けて飛翔させてくる。
――すげぇ量だ。
――俺は右の後方に跳躍後退しつつ――。
<血獄道・序>を意識。
――<血獄魔道・獄空蝉>を繰り出した。
血魔剣の周囲に血の礫が発生。
大量の血の礫が、一匹の溶岩ミミズの頭部から胴体半ばまでを削り取る。
<血獄魔道・獄空蝉>で潰した溶岩ミミズは再生せず蒸発するように消えた。
溶岩ミミズの判別はできないが、物理的にコア的な弱点が内部にある?
俺は――火山湖に点在する岩と岩を蹴って移動をくり返す。
溶岩ミミズは他にもいる。
バタフライで泳ぐ火山湖から出たドリルタイプに、口からブレードを出すタイプと、歪な『シーマン』風の人面魚タイプとか、細かい違いがある。
それらの溶岩ミミズの特攻を避けつつ<血獄魔道・獄空蝉>で潰す。
時には、反復横跳びをしてフェイクを混ぜては、<
移動主体で臨機応変に動き続けた。
一瞬、百目血鬼を召喚するか迷ったが、まぁいいか。
閃光のミレイヴァルも沸騎士も足場がないとキツイ。
溶岩怪物メガロンは、移動する俺を追う。
火山湖から溶岩ミミズだけでなく、次々と、ヘビの形をした溶岩も生み出す。
俺は構わず飛来する溶岩ミミズと溶岩ヘビを避け続けた。
熱風が物語るように、ここは火山湖――。
幸い、足場となりえる岩は豊富にあるが――。
触れたら、火傷どころではない。肉と骨が溶けてしまいそうな熱い岩もある――。
剣山もあるし、と――案の定、アーゼンのブーツの底が焦げた――。
足下から蜘蛛の巣と竜が合体したような不可思議な紋様が弾け飛ぶ。
体を捻りつつ《
そんな俺を狙う溶岩ヘビの突進を<血鎖の饗宴>を盾にしながら背後に避けた直後――。
一際、速い溶岩ヘビが迫った。魔闘術を強めて――。
血魔力<血道第三・開門>――。
<
一度、視界に速い角あり溶岩ヘビを捉えてから<導想魔手>の足場を蹴る。
イメージは<ベイカラの瞳>で標的を捉えたユイの<舞斬>。
体を捻りつつ中空からムラサメブレード・改を横に振るう。
――ブゥゥンという音を抱く青緑色のブレードが溶岩ヘビを輪切りに処す。
二つに分かれた残骸を見ることなく慣性のエネルギーを利用――。
ホップ、ステップ、ハイジャンプ――。
岩場を蹴って蹴っての大飛翔――。
続けて、三回転宙返り中に――。
血魔剣の<水車剣>とムラサメブレード・改の<飛剣・柊返し>を連続的に発動。
――赤いブレードと青緑のブレードが連鎖するように上下を行き交う。
溶岩ミミズを斬り、溶岩ミミズを両断し、溶岩ミミズを斬り潰す――。
逆さまな視界のまま――構わずムラサメブレード・改で<飛剣・血霧渦>――。
――溶岩ミミズは渦状ではなく細切れとなった。
『――器よ、美しい旋律を奏でる戦いぞ! 羅も貂も舞うように戦う器の姿を見て、興奮しておる!』
沙の念話に笑顔で応える。
俺は状況を把握するように岩場を蹴った。
火山湖の上で戦う俺を追う兜頭巾メガロン。
「ガフェファ!」
と叫ぶ。
俺は<
――宙を前転。
<導想魔手>に飛び込む姿勢から、逆手突きを<導想魔手>に喰らわせて、反動を得た俺は、更に一回転――前方に<導想魔手>を、瞬時に作りつつ、その<導想魔手>に片膝を突けて着地――。
メガロンを見た。
兜頭巾メガロンは、半透明の皮膚を持つ腕を掲げる。
最初にも同じポーズを繰り出した。
またか?
すると、その斜め上を差す片腕の皮膚の表面に切れ目が発生。
その切れ目に沿って小さい火花が走る――。
と、火が包む切れ目が放射状に拡大。
孔雀が羽根でも広げるように派手に展開した。
そんな花が開いたような腕は燃えた雛罌粟の形に変化。
雛罌粟から、花糸――。
雄しべ――。
雌しべ――。
等の形をした、火の触手染みた攻撃を繰り出してくる――。
亜神キゼレグの<蝶銀散手・堕花網>を想起する。
俺が言うのもなんだが、多彩な溶岩モンスターだ。
俺は<生活魔法>の水を強めた。
同時に発動中の<水神の呼び声>を意識――。
召喚した左手が握る水蒸気を纏う雷式ラ・ドオラを強く振るった。
――<雷水豪閃>を繰り出す。
雷式ラ・ドオラの黄色い杭刃からチューブ状の水を挟む雷撃刃が迸った――。
同時に、水と雷が共鳴したような凄まじい音が駆け抜ける。
<雷水豪閃>は、すべての火の触手を断つ――。
更に――<水神の呼び声>効果か、俺が成長したお陰か――。
<雷水豪閃>は、メガロンの雛罌粟の腕と兜頭巾のクリスタルの角の一つを断つ――。
が、しまった――。
メガロンの背後の岩と火山湖の表面も切り裂いた。
刹那、メガロンの背後で大爆発が起きる。
一気に水蒸気と溶岩の破片と熱の礫がこの空間に満ちた。
が、俺のほうに熱風と溶岩の破片は来ない。
腕とクリスタルの角を失ったメガロンが、何かの力を発動したようだ。
メガロンの周囲で熱を孕んだ水蒸気のようなモノが、不自然に消えていた。
片腕とクリスタルの角の一つを失った溶岩怪物メガロンは、
「――ゲァァ」
叫ぶと、再び、もう片方の腕を雛罌粟(ひなげし)に変えた。
その片腕の雛罌粟から、また火の雄しべと花糸の触手の群れを寄越す。
更に火山湖から溶岩ミミズを生み出した。
火の触手と溶岩ミミズを飛来させてきた。
<導想魔手>を蹴り、右に横回転しては側転を行いつつ――。
牽制の《
――火の触手の群れが迫った。
ムラサメブレード・改を右手に再召喚――鋼の柄巻に魔力を通す。
鋼の柄巻の放射口からブレードがブゥゥゥンと音を発しながら伸びた。
その鋼の柄巻の表面にある〝血の水滴〟を押した瞬間――。
血と白銀の霜的な粒子がムラサメブレード・改から迸った。
そして、感覚で群がる火の触手を捉えようか。
<
その<
火の触手のすべてを<
即座にムラサメブレード・改を<投擲>――。
――俺から離れて飛翔するムラサメブレード・改。
青緑色のブレードが、吹き飛ぶ火の触手を追跡。
そんなムラサメブレード・改の柄巻から、霜的な灰銀色の魔力粒子が迸った。
粒子一つ一つの動きとブーメラン軌道を描く光刀がスローモーションに感じる。
<
吹き飛んだ火の触手をムラサメブレード・改の青緑色のブレードが捉えた。
青緑色のブレードはメガロンの腕から伸びた火の触手の群れを切断していく。
火の触手を切断しながらメガロンの片腕に向かったムラサメブレード・改は、そのメガロンの雛罌粟の片腕ごとクリスタルの角を切断すると、霜風の魔力粒子を発しながら急上昇――宙にブーメラン軌道を描きつつ俺の手元に返ってくる。
俺は爪先半回転中だったが、構わず――。
回転しながら飛来して戻るムラサメブレード・改の鋼の柄巻を――。
背中に回した右手で掴む――。
そして、真っ直ぐ出した左手に血魔剣を出しながら――。
不規則な二剣流の歩法で横回転しつつ――。
メガロンとの間合いを零とした。
剣圏内に入った直後――。
――<飛剣・柊返し>を繰り出す。
右手のムラサメブレード・改を袈裟斬りに――。
左手の血魔剣を逆袈裟斬りに――。
血のブレードと青緑のブレードが重なる。
ブゥゥゥン――ブゥゥンという音が俺の鼓動を早めるように体躯を加速させる。
二つのブレードが兜頭巾メガロンに×印を描く。
四つに分断されたメガロンは、
「「「「ギャァァァ」」」」
と、四つの兜頭巾だったモノから悲鳴染みた声を上げる。
半透明の内臓群と血管染みた器官が空気に触れて焦げ付く。
その四つに分かれた兜頭巾だったメガロンは火山湖の中に逃げた。
四つのメガロンと推測できる巨大な魔素は火山湖の中を不規則に蠢く。
俺から離れたメガロンの魔素。
遠い火山湖の面が盛り上がると、一つの兜頭巾メガロンとして再浮上。
四つに分かれた兜頭巾メガロンは再生して合体していた。
が、兜頭巾が溶解して歪に変化しては、吸収していた溶岩も垂れている。
手足の透明度も下がって黒色が増えた。
花糸染みた黒色に変色した触手が節々から出るメガロンだ。
魔力以外にも、あらゆる力を消耗したと分かる。
が、再生はしている。
タフだ。
「マスター、気を付けて! 魔法生命体メガロンはしぶとい」
「あぁ。あ、メガロンを倒したら、『ドラゴ・リリック』にフィギュアは追加されるのか?」
先に倒した巨大な赤いドラゴンは取り込めていなかったが……。
リザードマンらしきフィギュアは増えていたように見えた。
「ギュノスモロンRNA因子を取り込んでいたことに気付いていたのですね」
「アクセルマギナの周囲に『ドラゴ・リリック』が自動展開していた際の小さい映像でチラッと見えただけだったが、新しい怪物フィギュアが増えていたからな。その『ドラゴ・リリック』内では、銀河帝国の兵士が、そのヒトデモンスターに喰われているリアル映像があってグロかった。それで、その『ドラゴ・リリック』にフィギュアとして取り込める条件ってのは?」
「大量の魔力、或いは、強い因子が必要と推測できます。アイテムとしてのフィギュア自体を収めることも可能なはずです」
「推測か、魔石と同じようなシステムかな」
「はい、多分ですが。細かい%を出しますか?」
「いや、いい」
ガードナーマリオルスのほうは……。
頭部のパラボナアンテナから小さい旗を出して振る。
小さい旗にはネオンで光る黒猫のマークが記されていた。
妙に可愛い。胴体の球体から出たチューブには、ガードナーマリオルスお気に入りの独鈷魔槍が絡む。独鈷魔槍の銀色の刃は両端から伸びていないから、ただの独鈷でしかない。
が、その小さい独鈷は、小さいガードナーマリオルスに似合う。
しかし、そんな可愛いロボットを見続けていられる状況ではない。
アクセルマギナをチラッと、見ると、戦闘音楽の音程に合わせるように、半透明なキーボードを凄まじい速度で打ちこんでいる姿があった。
血魔剣を仕舞う。
右手に王牌十字槍ヴェクサードを召喚――。
左手にデュラートの秘剣を召喚。
一槍一剣の構えを取った。
イモリザの第三の腕はまだ使わない。
直後、様子を見ていた兜頭巾のメガロンは魔力を高める。
周囲の溶岩を吸い寄せつつ両腕を再生させた。
兜頭巾の歪な両方のクリスタルの角は再生しない。
源氏の兜っぽくて、結構格好良かったが。
クリスタルの角を失った兜頭巾のメガロンは半透明の双眸に魔力を集める。
『――器、気を付けろ。何か来る、羅が出ようとしているが』
警戒した沙だ。
刹那、メガロンの半透明な双眸に小さい銀河風のアメーバが出現。
その双眸からアメーバのような液体染みた波動が漏れてきた。
ゆらゆらとしたアメーバの波動が飛来してくる。
左手の運命線から、羅に出てもらおうかと思ったが――。
『あちきを出して――』
マルアの思念と同時に<光魔ノ秘剣・マルア>を意識――。
デュラートの秘剣から第二の剣を造るが如く、黒髪が大量に迸る。
マルアの黒髪は、俺の半身に黒髪を絡めて半分の鎧を生成。
そして、俺の前方に光沢した黒髪で生成された渋い黒盾を模る。
ゼロコンマ数秒後。
半透明のアメーバの波と、俺を守るためのマルアの黒髪盾が衝突――。
バチッバチッと、弾けたアメーバの波。
ドドドッとした衝撃波がマルアの黒髪から発生して、アメーバの波を逆に押し返す。
「ングゥゥィィ!」
『んふ、ハルちゃん様から魔力を頂きました!』
ハルホンク、ナイスアシスト。
デルカウザーいや、ルシホンクの
反発音が轟くと、アメーバは完全に消失。
アメーバの波動には恐怖を感じた。
かなりヤヴァい質の攻撃だったのか?
キズユル爺の鑑定にあった反発力とは、対魔法の反発力でもあるってことか。
しかも、ハルホンクから魔力を得たように、すべてに反発するわけではない。
<シュレゴス・ロードの魔印>と同じく応用力は無限大だろう。
ヘルメがいない場合の選択肢が増えたことになる。
俺はデュラートの秘剣の柄に棲むマルアに愛を込めながら、
『……異質な魔法を防いでくれたマルア。ありがとう感謝する』
『ふふ、嬉しい。デュラート・シュウヤ様』
すると、相対しているメガロンが、
「ゴァルファフェ!!!」
と、叫ぶ。怒ったか?
『ゴルファーか、おめぇは!』
いや『何者だ! 定命のコゾウが!』といった感じだろう。
双眸から怪光線は出してこなかったが……。
半透明な眼球の中は、小さいアメーバ宇宙でもあるような印象で恐怖感があった。
兜頭巾のメガロン自体は色合いを少し変化させつつ魔力を高めては、熱波を周囲に飛ばす。
攻撃は止まったが、魔力のプレッシャーには重さがあった。
そして、火山湖から生み出していた溶岩ミミズたちを、兜頭巾に吸着させる。
吸着する中で、異彩を放つ太い溶岩流があった。
それは溶解したアイテム群が密集した溶岩流。
「ングゥゥィィ……」
ハルホンクが残念そうなングゥゥィィを寄越す。
散乱していた、周囲のアイテムの一部がなくなった。
『ヌヌ……魔力が増したぞ』
沙が珍しくびびっている。
アイテム群を吸収したメガロン。
再生したばかりの細い両腕を、指揮者のように振るう。
アイテムを取り込んだメガロンは、周囲に、またミミズの溶岩流を作り出す。
ミミズの溶岩流で防御を固めるつもりか。
バリア的な火の領域を周囲に形成。
メガロン自身も左へ右へと滑るように移動していく。
『器、分かっていると思うが、この火山湖はあやつの聖域と同じ』
『おう、まぁ俺に任せろ』
『分かった!』
溶岩ミミズの大群と移動を速めたメガロンは厄介だが……。
あのポンチョ染みた兜頭巾のメガロン本体を貫けば、破壊は可能なはず。
半透明な種族だろうと突けるはずだ。
<霊血装・ルシヴァル>を装着。
血の槍使いらしく、この火山ごとメガロンを貫く気概で攻めようか。
気合いを込めて、丹田に魔力を集中。
キサラから習い途中の魔闘術系技術の魔手太陰肺経を意識――。
次に<瞑想>も実行。
続いて<導魔術の心得>と<仙魔術・水黄綬の心得>を意識する――。
その間にも、飛来する溶岩ミミズを避けつつ――。
血魔力<血道第三・開門>――。
<
岩場を左足で蹴るように着地しながら、溶岩ミミズが多い宙空を睨む。
まずはミミズを掃除だ――。
濃密な魔力を乗せた王牌十字槍ヴェクサードを<投擲>――。
俺は、その<投擲>した王牌十字槍ヴェクサードを追う。
<導想魔手>を蹴って宙を駆けた――。
先を行く王牌十字槍ヴェクサードから怪人のヴェクサードの幻影が浮かぶ。
胡坐の姿勢の怪人さん、こんにちは!
と、挨拶するように、その王牌十字槍ヴェクサードに跳び乗った。
――サーフィン機動だ。
王牌十字槍ヴェクサードの柄から枝触手が出る。
その枝触手が俺のアーゼンのブーツに絡まってくれた。
アーゼンのブーツを超えて膝頭にまで絡む。
刺が刺さって、痛いが、足を押さえる役割でもあるんだろう。
そして、俺の血を吸う王牌十字槍ヴェクサード。
激しい痛みを両脚から味わったが、一体感を得る。
輝く杭刃の穂先と王牌十字槍ヴェクサードの柄が膨れた。
続けて
白銀色に輝く魔印だ。
膨れた王牌十字槍ヴェクサードの柄から血塗れの剣刃が無数に生まれ出る――。
血塗れの剣刃の群れは、王牌十字槍ヴェクサードの魔槍に乗った俺を避けつつ四方八方へと宙に放射線を描きつつ群がる溶岩ミミズ共をぶち抜いた。
火山湖の上に血濡れたアスレチックを作るが如く剣刃が埋め尽くす。
しかし、火山湖に触れた剣刃の群れは溶けている。
ヴェクサードは胡坐の姿勢のまま念仏を唱えるようなポーズ。
そんなヴェクサードの幻影の足下は消え掛かるが、大丈夫だろうか。
『大丈夫ですか?』
『……イギル・フォルトナーの意思を引き継ぐ聖戦士よ、気にするなァ』
冷や汗を掻いている?
俺を乗せた王牌十字槍ヴェクサード。
その穂先の杭刃が溶岩ミミズを貫きまくる――。
ヴェクサードの幻影は消えたが、大丈夫だろう。
「ヌゴォァ……」
メガロンは重低音の声を響かせる。
驚いたようなニュアンスか?
ま、槍に乗ったサーフィンだ。
兜頭巾を纏う奇怪な魔法生物だろうと、驚くことは請け合いだろう。
『――<御槍導技>か!』
『真似ただけ。王牌十字槍ヴェクサードの能力を活かした形だ』
『器め! 妾を、またトキメかせるとは!』
沙の言葉を聞きながら宙空ターン。
視界が移り変わりつつ<無影歩>を発動。
<
闇が包むメガロンを狙うように<
「グァッ――」
イメージは<導想魔手>。
<
宙に持ち上げて火山湖から引き離す。
続けて<
加速する間に、
――右手に魔槍杖バルドーク。
――左手に神槍ガンジス。
――イモリザの第三の腕に、聖槍アロステを召喚。
左手の<シュレゴス・ロードの魔印>を意識。
ピンク色の蛸足魔力を、足下の王牌十字槍ヴェクサードに絡ませる。
その王牌十字槍ヴェクサードから離れて、少し先に進ませた直後、王牌十字槍ヴェクサードの後部を右足の甲で強く蹴った――。
蹴りの衝撃で王牌十字槍ヴェクサードは兜頭巾のメガロンに直進する。
その杭刃が兜頭巾メガロンの胴体を突き抜けた。
刹那、蛸足魔力が絡む王牌十字槍ヴェクサードはシュレゴス・ロードの能力によって、手元に戻ってくる――直ぐにアクセルマギナが王牌十字槍ヴェクサードを回収。
<脳脊魔速>が切れる前に仕留めるとしよう。
俺は宙空から<導想魔手>を蹴って兜頭巾メガロンに向けて飛翔。
メガロンは<
が、痛ッ、頭痛に――痛ッ、鼻血も出た。
左の視界が血に染まる。同時に白銀の霜のような魔力粒子が俺から噴き出た。
<
――だが、俺は光魔ルシヴァル。
ヴァンパイア系で回復は頗る速い。
そして――槍圏内に入ったところで――。
三槍流奥義――<無天・風雅槍>を繰り出した。
最初に、メガロンの兜頭巾の魔宝石を神槍ガンジスの方天戟が捉えた。
続いて、メガロンの脇腹を魔槍杖バルドークの嵐雲の矛が抉る。
最後に、メガロンの胴体を抉る聖槍アロステ――。
一旋風、二旋風、三旋風――。
神速の域で空間ごと切り刻む勢いで駆け抜けていた。
よっしゃ――奥義が決まった。
メガロンを倒した。
<導想魔手>を蹴る。
火山湖の表面スレスレを飛翔――。
すべての腕から武器を消去。
――ん?
メガロンの反応は消えた……が、魔素の反応が微かに火山湖にある。
<無影歩>を解除。
そして――試すか。
フォド・ワン・カリーム・ビームガンを右手に出した。
その微かに動く魔素目掛けて――。
銃口を傾けた。
アイソセレススタンスで構える。
射撃方向に体の正面を向けた基本姿勢。
――引き金部分を押し込む。
ビームを連射――火山湖に風穴が無数に空く。
と、その穴から爆発音が轟いた。
ハートミットのエレ銃のような威力はないと思うが、ビームの威力が上がった?
――刹那、穴から飛び出てきた小さい魔石があった。
炎を纏う魔石?
火の魔宝石かな。
「ングゥゥィィ! マリョク、アル!」
「とりあえず――」
<鎖>でその小さい魔石を回収。
それをアクセルマギナが回収。
アイコン化した魔石は、火の妖精かデボンチッチ風の姿だった。
魔石だと思ったが……。
とりあえず、確認は後回し――。
メガロンの魔素が消えたことは分かっているが、念のため、周囲を確認。
火山湖の溶岩の流れに変化はない――。
キラキラ光る物が多い岩場に向かう。
メガロンが吸収したアイテムに、溶岩に飲まれたアイテムも多い。
だが、最初に見た時と違うアイテムも多かった。
岩場に着地――目を付けていた宝箱を探す――。
あったあった!
その宝箱を魔槍杖バルドークの竜魔石で軽く小突く。
硬いし岩に嵌まり込んだ状態の宝箱。
直ぐに、<血鎖の饗宴>の血鎖のドリルで周囲の岩を削った。
魔槍杖バルドークの竜魔石から
宝箱を壊さないように<鎖>で箱を囲みつつ持ち上げた。
素早くアクセルマギナが回収。
巨人の骨の手も回収だ――。
巨人の骨の手は青白い炎を纏う。
メタンハイドレートでも、骨に付着しているのか?
レベッカの蒼炎神とかと関わりがあったら、重要度は増す。
ま、回収だ。
掌に怪しく浮かぶ淡い魔宝石も回収――。
魔槍も<シュレゴス・ロードの魔印>の蛸足魔力に回収させた。
――さて、姥蛇ジィルの数珠は見当たらない。
あの呪いの品は、溶岩に溶けて消えた!
と、判断しよう。
「ングゥゥィィ!」
同じハルホンクも唸り声だが。
『そうだ! 溶けた、ゾォイ』と認識。
その
「ハルホンク。アクセルマギナと紅玉環に
「ングゥゥィィ、ワカッタ! ガ、タマゴミミ、タベタカッタ、ゾォイ」
あの怪しいアイテムか。
鑑定している暇もないし、溶岩に飲まれたから、もう分からない。
<霊血装・ルシヴァル>を解除。
「――宝箱の中身に期待しとけ。それに、まだ白色の貴婦人の施設から手に入れたアイテム群はあるんだ。コツェンツアの魔槍とか髑髏の指環とかな? それを喰わせるかは、分からないが」
デュラートの秘剣のマルアのようなこともあるわけだし、
「ングゥゥィィ」
さて、火山湖から脱出だ――。
<導想魔手>を蹴った。
血の加速を活かして上昇。
すぐに相棒の神獣ロロディーヌの姿を見つけた。
腹から狼のような神獣マークの波紋が出ていた。
「ンン、にゃおおお~」
凜々しい漆黒の神獣ロロディーヌは近寄ってくる。
――相棒!
俺も駆けた。
「閣下~」
「ガォ~ン」
ヘルメと琥珀もいる。
相棒の巨大な片方の耳に手を当てているヘルメ。
巨乳を揺らして、手を振ってくれた。
その胸元に挟まっている琥珀ちゃんも一緒に揺れている。
ケシカランな!
ヘルメは、おっぱいに挟んでいた琥珀を離すと、水飛沫を発生させながら飛翔してくる。
必死な表情を浮かべるヘルメ。
俺は両手を広げた。
そんな俺に飛び込んでくるヘルメ。
――ドッとした衝撃を胸元に味わう。
常闇の水精霊ヘルメを抱きしめてあげた。
「さぁ、ヘルメ、ビアたちのところに向かおうか」
「はい! ホルテルマの蛇騎士長の封窯ですね」
「にゃお~」
「ガォ~」
「――きゃ」
相棒は黒触手を俺とヘルメの体に乱暴に絡めると、背中に運んだ。
すぐに、黒触手と黒毛で作ったソファに座らせてくる。
「はは、相棒、ありがとな」
「ンンン――」
神獣ロロディーヌは喉声を響かせながら飛翔。
フォロニウム火山の火口から離れてフォルニウム火山のほうに向かう。
ママニたちの<
そして、ヘルメは隣だ。
彼女の温もりと、おっぱいの感触が左腕に当たって心地よかった。
「ガォ」
すると、膝の上に乗ってきた琥珀。
「琥珀、相棒の乗り心地はよかっただろ?」
「ガォ?」
頭部を傾げる琥珀ちゃんは、俺の指をしゃぶる。
指先からミルクは出ない。
が、可愛いミニマムな虎だ。
琥珀の頭部を撫で撫でしたった。
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