六百五十五話 汎用戦闘型アクセルマギナの誕生
「――ングゥゥィィ! マリョク、マリョク、イッパイ、ゾォイ」
「にゃおお」
ハルホンクと飛翔中の相棒が呼応する。
気にせずアクセルマギナのミニスカートを捲った魔力粒子を注視。
魔力粒子は立体映像のアクセルマギナの周囲でダイヤモンドダスト的に散りつつアクセルマギナに降り掛かると軍人衣装に新たなコーティングでも施す勢いでアクセルマギナの体の表面を巡る。
頭から首に胸と腰と太股と足首と――。
魔力粒子はアクセルマギナの体を調べるように巡りに巡る。
アクセルマギナの悩ましい体のラインがより強調される形となった。
フィギュアの立体映像のアクセルマギナは小さいが……。
改めて、スタイルが良いと分かる。
そう納得した瞬間、アクセルマギナの足下の風防が窪んだ。
アクセルマギナが指輪だった時と同じか。アイテムボックスの中心が円の形に凹む。
アクセルマギナは足下の変化を見てから――。
自身の体の表面を行き交う魔力粒子を見て……。
不思議そうな表情を浮かべつつスカートを押さえていた両手を離した。
すると、アクセルマギナの体の表面を行き交っていた魔力粒子はアクセルマギナから離れるように上昇。
アクセルマギナは、左手を自分の胸元に当て……。
離れた魔力粒子に向けて右手を怖々と伸ばす。
魔力粒子にアクセルマギナの指が触れると、彼女はハッとした表情を浮かべた。
直後、アクセルマギナの軍人手袋の甲に紋様が浮かぶ。
その紋様は、小さいが精密に描かれてある。
血の樹と杖と血の水滴に陰陽太極図的なマーク。
<ルシヴァルの紋章樹>と<光闇の奔流>を内包した<光魔の王笏>の意味か。
粒子の色合いには白銀色と灰色が混じる。
俺の時空属性って意味もあるだろう。
アクセルマギナは、その手の甲を見て、
「これは――」
そう喋ると、自身から離れた魔力粒子を見上げた。
アクセルマギナの双眸に、五芒星の魔法陣と乱数表と幾重にも重なった黄金律の弧が走る。
右の瞳の下に記号の文字と1:1.6180339887と長い数字が羅列。
浮いた魔力粒子のほうは、俺の戦闘型デバイスが嵌まる右腕の周りを旋回しつつヘルメのほうに飛翔。
魔力粒子はヘルメの水飛沫に混ざるように飛翔してから反転し――。
俺の前に集結。
目の前で、魔力粒子はスクリーンとなったように、俺に対して鋼の柄巻の幻影を見せる。
ムラサメブレード?
鋼の柄巻から青緑色から黄緑色に移り変わるブレードが振るわれた。
映像が、そのブレードによって切断されたかのように切り替わる。
続いて、漆黒の鎧が似合う男性と深緑の法衣が似合う女性が戦うシーンとなった。
男性は、赤色のブレードを両手で振るい、機械の腕が握る赤いレイピアのようなブレードをマントに隠していた背中から出して、目の前の女性に突き出している。
それに対して、一対の青緑色のブレードを扱う二刀流の女性が、巧みに、二刀流の技術の才を見せるように青緑色のブレードをクロスさせるような払い受けで、機械の腕が突き出したレイピアのブレードを防ぎ、弾く。
そして、その男性と女性が放った<
と、映像は変わった。
――宇宙空間だ。
――無数の戦闘艦からビームが出ている戦争。
パイロットは
その敵味方分かれた銀河騎士同士のドッグファイト。
宇宙空間で戦闘艦の戦闘に次ぐ戦闘……。
銀河の戦いの歴史が映り、消える。
刹那、映像は途切れて、目の前で円筒形の金属が生成された。
――その円筒形の金属は意思があるように、俺の掌に収まる。
これがマスドレッドコアか。
名前はゴツかったが、時計的なアイテムなのか?
丸い中心は硝子の風防で、その外の縁と底は金属製。
縁のプロミネンス的な飾りは太陽を思わせる。
風防硝子は、小さい太陽光パネルか、未来的なコンピューターが硝子面に内蔵されているように見えるか、未来の時計風がしっくりくるかな。戦闘型デバイスと同じの高精細なホログラムを真上に展開させるための装置でもある? 外側の飾りには、血色の水滴と鎧のマークがある。
血色の水滴マークは、ムラサメブレード・改と同じ。
鎧の飾りのほうは見たことがない。
極めて小さい文字が刻まれてあるが、意味が分からない。
この鎧マークが、マスドレッドコアを意味する象徴だろうか。
このマスドレッドコアを魔察眼で凝視。
とりあえず風防の中を覗く。底は不思議だ。
時計に使われるような細かな部品の群ってわけではないと思うが……。
砕かれた水晶と底にゲル状の硝子神経線維的なモノがびっしりと詰まっていた。
それらの奇怪だが精巧な極小のモノが構成するバイオニューロンチップ的な魔基板が幾重にも重なる。
LED繊維か、幻影か。コイル的なモノにワカメの形の繊維が絡んでは揺れている幻影もある。
多次元を意味するような、幾何学のナノワイヤーの網膜的な模様が消えて出現。
ナノ粒子も使われている?
細胞を裁断し、DNAの印を思わせる神聖幾何学のフラワー・オブ・ライフにも見える。
波の揺らぎと陽子と反陽子を意味しているかのような電子殻的な魔力粒子もあった。
重力子が発生していたら、このマスドレットコアから他の次元に移動ができるということもありえるか?
刹那――。
その不可思議なマスドレッドコアの底面が反応。
バイオニューロンチップ的な魔機械基板が煌めいた。
底に刺のようなモノができたか、掌に、その刺が刺さると、血を吸い取られた。
そのマスドレッドコアの中身の底から、白色、黒色、青色、灰色の縞の光が真上に照射――。
それら四色の縞の光が、風防の硝子面の内側に衝突し、光の乱反射が生まれた。
マスドレッドコアの内部がその光の乱反射を受けて煌めく。
更に、丸い風防の縁から緑色の縞の光が発生。
縁色の縞の光は、縁の内側を時計回りに回る――。
血の吸い取りは治まったが、このマスドレッドコアは小さいエンジンだろうか。
右腕の戦闘型デバイスからのBGMが迫力的な音程となってリズムを奏でる。
マスドレッドコアの円筒の内部で乱反射中の縞の光は白銀色に統一。
縁の緑色の縞の光と、底の白銀色の縞の光が、マスドレッドコアの内部の狭い空間で、戯れつつ揺らめくと、互いに相反しつつも絡むような引き合う動きを示す。
それは、量子のもつれ的な……。
スピンし合いながらもウロボロスの共食いでも起こすような……。
最終的に歯車と歯車が噛み合いつつ合体?
一つの光に融合しようと蠢く。
この、一つになろうとする光の蠢きは、あたかも生命が誕生するって感じだ。
そして、振動すると、マスドレッドコアの内部が俺の血で溢れる。
が、俺の血は消失し、心臓的な鼓動音が鳴り響く。
「音が心臓? ナ・パーム製の魔機械の心臓でしょうか。あ、もしかしたら、アクセルマギナちゃんの」
ヘルメが指摘する。俺は頷きつつ、
「たぶんな」
と、発言すると、右手首の戦闘型デバイスに浮かぶアクセルマギナも頷いた。
その間にも、俺の手の中のマスドレッドコアは、鼓動しながら点滅をくり返す。
その円筒形のマスドレッドコアを凝視。
中は小宇宙って具合で芸術性の高いマークが出来上がっていた。
それは、組子細工の職人が作ったようなキラキラとした陰陽太極図とルシヴァルの紋章樹。
そのマークに<光闇の奔流>の印象を持つ。
「ヘルメが言うように、この光の芸術模様を内部に作るマスドレッドコアは心臓かな」
「はい、マスドレッドコア。わたしの新しい素体を構築する中心部」
マスドレッドコアを理解しているように語るアクセルマギナ。
もうアップデートは受け取ったようだ。
「新しい体か。起動はどうやるんだ?」
「まずは、そのマスドレッドコアを、一度、ここに納めてください」
アクセルマギナは足下の風防にできた窪みを見る。
前にアクセルマギナを起動させた時と同じ要領か。
「了解――」
円筒形金属部品のマスドレッドコアを窪みに差し込む。
「アァ――」
アクセルマギナから声が漏れる。
と、円筒がピッタリと風防の中心に嵌まった。
その瞬間、戦闘型デバイスから靄が発生し、映像として浮かぶアクセルマギナを包む。
アクセルマギナを包んだ靄は巨大化しつつ戦闘型デバイスの風防から離れた。
アクセルマギナを内包した靄は、目の前に来ると、人の大きさの女性を模った。
造形からアクセルマギナと分かるが……。
アクセルマギナを包む靄は、綿飴か雲にも見えた。
雲のままだが、変化に時間がかかる?
「ンン、にゃお~」
と、相棒が鳴いていた。
空を飛翔する相棒もアクセルマギナの変化を感じ取ったらしい。
ロロディーヌは飛翔速度を落として旋回をする。
その間に血文字で『近くにきたが、もう少しかかる』とママニたちとヴィーネに血文字を送った。
血文字の返事を見ながら……目の前のアクセルマギナを包む靄を見て、
「……アクセルマギナ、大丈夫か?」
「はい。マスドレッドコアを認識中……」
「触っても大丈夫かな」
「分かりません……」
「触ってみる」
「はい」
俺は光る靄に指を当てた。
すり抜けつつも、湿った感覚に、ぷにゅっと柔らかい感触が――。
「アァン――」
と、アクセルマギナの快感を得て、感じたような声が響いた。
すぐに指を靄から抜く。
「済まん、敏感なところだったか」
「い、いえ」
その直後――。
戦闘型デバイスのホログラムとして映るガードナーマリオルスが光る。
ガードナーマリオルスは、俄に球体の胴体を回転させた。
頭部も急回転。
胴体の球体の表面に沿う形にやや湾曲するルンバ的な頭部が回りに回る。
頭部と球体の間にある溝から魔力粒子が噴き出したガードナーマリオルスは宙に浮かぶ。
あの頭部と球体の間には小さい首のようなスラスターが付いていたのか。
更に、球体の溝から煙が上がる。
浮きながら、カメラとパラボラアンテナを出しては、俺にアピールを始めた。
チューブが絡む独鈷魔槍は、アクセルマギナを包む靄を差す。
ガードナーマリオルスは『戦闘型デバイスから外に出たい』ということか。
アクセルマギナと連携しているのかな。
「ガードナーマリオルス、出ろ――」
俺の声が響いた直後、戦闘型デバイスから魔力粒子が迸る。
魔力粒子はガードナーマリオルスを瞬く間に生成。
ガードナーマリオルスは、相棒の背中に着地。
ガードナーマリオルスの頭部から目を意味するカメラレンズが出る。
その頭部が横回転。周囲を観察してから、胴体の球体を回すと、キュルキュルと音を立てて、現実に現れた靄が包むアクセルマギナに向かう。
「――ピピピッ、ピー」
そう音を発しながら、回転しつつ移動する。
その球体の機構を見ていて……。
相棒の黒毛が絡みそう、と、心配したが、大丈夫だった。
球体機構は相棒の黒毛を器用に弾く。
アクセルマギナとの間合いを詰めた、そのガードナーマリオルスは、上向くと――。
アクセルマギナを包む靄にチューブを差し向けた。
靄の中にチューブを差し込む。
すると、チューブから出た魔力がアクセルマギナに伝達されたようだ。
「ピピッピピッー」
ガードナーマリオルスから音が鳴る。
刹那、アクセルマギナを包む靄か、雲の内部で、稲妻が発生――。
バチバチッとした音が轟く。
「アァァン」
アクセルマギナの感じたような声が響く。
稲妻と呼応するように、人の大きさのアクセルマギナが雲の内部でチラついた。
稲妻が迸るたびに、肉体と鋼鉄の体を生成しているようだ。
すると、靄か雲はアクセルマギナが吸い込むように消失。
「おお?」
「まぁ、アクセルマギナちゃんが!」
「凄いな、実体化した」
新しいコスチュームを着たアクセルマギナがリアルに姿を現した。
セミロングの金色の髪が靡き、血の粒子的なモノが散る。
その金色の髪が瞬く間に血を帯びた黒色に変化。
毛先が橙色の魔力を灯す。
髪の色を変化させられるのか。
この辺りは<従者>の髪の色を弄れるルシヴァルの血が関わるだけはある。
首の下、膨らんだ双丘の上に円筒形のマスドレッドコアが嵌まっている。
そのネックレスのような位置にあるマスドレッドコアの灯りも橙色。
「マスター! 汎用戦闘型アクセルマギナの誕生です」
「それで汎用戦闘型なのか」
強化外骨格的なアーマーの鋼鉄と、人としての肉体が半々。
美形な女性専用のパワードスーツを着た未来人といった印象。
胸元と左腕を鋼鉄かナノチューブ系の素材が覆う。
基本は漆黒だが、上腕三頭筋に合わせたような魔力が内包された橙色の光線が腕に沿う。
と、その橙色の魔線を発している腕で敬礼を寄越す。
「はい!」
声も元気だ。
アクセルマギナは微笑む。
顎のEラインもレザライサのように綺麗だ。
俺も敬礼をして応えた。
先に腕を降ろすと、アクセルマギナも鋼鉄の腕を降ろす。
すると、アクセルマギナの手の甲から――。
橙色の魔線が出て近未来的なルシヴァルの紋章樹を映す。
更に、掌と指の浅指屈筋の腱と深指屈筋の腱から、橙色の魔力を発した。
右腕はブルパップ方式のP-90と似たアサルトライフルを持つ。
エネルギー兵器のようだがベニー・ストレインの
「その銃と拳で攻撃か」
「はい、ブレードもあります」
アクセルマギナは装備と体を見せるように、ゆっくりと横回転。
半身の左側が魅力的。
細いくびれに沿うように肋と背骨を保護するプロテクターが装着されている。
特に左の尻と足が格好いい。
右足と右尻は黒繊維のスカートで覆われている。
スカートの材質は俺がヴィーネに上げた
が、やはり注目すべきは左足と左尻の強化外骨格的なアーマーか。
内側はほぼほぼ素足で、お尻と太股に絡むアーマー金属が人の指のように悩ましく素足に付着している。
腰と素足の外側広筋の太股と、膝と細い足首の外側にも悩ましく細い金属が絡んでいた。
金属の肌に吸着され具合が太股とお尻のラインを強調する感じとなっていた。金属の部品と筋肉の間から橙色の線が見え隠れする。
「アクセルマギナちゃん、お尻ちゃんがいい!」
と、ヘルメが水をぴゅっとかける。
そんなお尻に掛かる水が黒く光沢したスカートに弾かれる。
「ふふ、ありがとうございます――」
アクセルマギナがまた横回転。
右足の中華風のスカートドレスが舞って、大事なデルタゾーンが見え隠れする。
セクシーな肌に付着したような近未来パンティさんが見えた。
魅力度が爆発的に高い。全体的に見れば漆黒色が基調で橙色が混ざる未来的な軍用鎧か。人造人間って印象、トランスヒューマノイド極まれり。
「美人さんだな」
「ありがとうございます」
顔はフィギュアの状態だった時と、そう変わらない。
「それで、どの程度戦える?」
「銀河騎士マスターや銀河戦士のような機動は無理です。が、惑星によりけりですが、未開惑星の調査など、偵察用ドローンとガードナーマリオルスと連携しつつ威力偵察程度の戦闘は可能」
背中から赤いブレードを出すアクセルマギナ。
そして、そのブレードを握る橙色のオーラを発した片腕は鋼鉄製だ。
あの拳で殴られたくはない。
しかし、ミスティとエヴァが、この汎用戦闘型アクセルマギナを見たらなんて言うだろう。
「この右腕の戦闘型デバイスに戻ることは?」
「可能。わたしはマスドレッドコアを根幹とする、疑似の義体を得たに過ぎません」
「そっか」
「ピピピッ――」
「はい。ガードナーマリオルスも一緒に戦闘型デバイスに戻ることは可能です」
「んじゃ、一旦戻ってくれ」
「はい」
アクセルマギナの体の節々に孔が発生し、孔から蒸気のような魔力粒子が迸りアクセルマギナの体を包むと、アクセルマギナは一瞬で弾けるように魔力粒子と成った。
その魔力粒子が右腕の戦闘型デバイスに戻る。
ヘルメが左目に戻るような機動だ。
汎用戦闘型アクセルマギナは消える。
戦闘型デバイスの風防の上にパッと、軍人衣装のアクセルマギナが回転しながら出現。
敬礼を行うアクセルマギナ。
――さて、その横にある表示を拡大。
エレニウム総蓄量:21346→71326
――――――――――――――――――――
必要なエレニウムストーン大:130000:未完了
報酬:格納庫+500:フォド・ワン・ユニオンAFV:解放
必要なエレニウムストーン大:140000:未完了
報酬:格納庫+600:フォド・ワン・ガトランス・デスティニー:解放
必要なエレニウムストーン大:150000:未完了
報酬:格納庫+700:フォド・ワン・トータルセンスアーツ:解放
必要なエレニウムストーン大:160000:未完了
????????????????????
――――――――――――――――――――
さり気なく新しい欄が増えている。
求められるエレニウムストーン大の値が凄まじい。
今ある極大魔石の数は十個。
フォド・ワン・ユニオンAFVの解放は今度だな。
エレニウムストーンとしての値の……。
エレニウム総蓄量:21346→71326。
ビームガンで使ったからさらに20減った。
グラナード級軽魔宝石を試しに入れたら、認識するかな。
気にはなる。
が、グラナード級というネーミングは重要っぽい。
ミホザの
今後、重要になるかもしれない。
それに、ハーミットこと、ハートミット。
彼女から、この惑星にある他のミホザの遺跡の探索に呼ばれる可能性が高い。
今は、
そのミホザの遺跡から手に入る確率の高い
俺が塔雷岩場で手に入れたグラナード級軽魔宝石の
そして、新しい欄の……。
フォド・ワン・ガトランス・デスティニー。
フォド・ワン・トータルセンスアーツ。
この二つのアイテムはなんだろう。
デスティニーはdestiny?
だとしたら運命か。銀河騎士専用の運命?
単にデスティニーって名前が付いた鋼の柄巻とか鋼の槍柄だったら嬉しいな。
もう一つのトータルセンスアーツ。
言葉から連想すると、宇宙的なマーシャルアーツ?
格闘スキル的なニュアンスだろうか。
まだまだ、報酬は増えそうな勢いだ。
しかし、本当に凄いアイテムボックスだなぁ。
アクセルマギナとガードナーマリオルスもそうだ。
とくにガードナーマリオルスは、カレウド博士たちの映像などの受信を含めて、
フーク・カレウド博士と開発チームは……。
いったいどれほどの労力をかけて、これを造ったんだろうか。
そして、フーク・カレウド博士の研究チームが働いていた施設を破壊した銀河帝国も強大だと分かる。
戦闘型デバイスを開発した研究施設は、銀河騎士マスター評議会と、ナパーム統合軍惑星同盟の精鋭が守っていたはずだ。
秘密の施設の位置を特定し、破壊を遂行できる軍隊か騎士団をオーダーできる銀河帝国の勢力ってことだ。
あの映像に映った赤いブレードを扱っていた帝国の銀河騎士マスターは、現在も生きているのだろうか。
更に言えばフーク・カレウド博士の施設が破壊される映像。
あの映像は、どういった経由で、この戦闘型デバイスに、いや、ガードナーマリオルスが受信していたんだろうか。
光速を超えたワームホール?
亜空間を利用した光速を超える恒星間通信だろうか。
仮定だが、この異世界と重なる他次元、または時空連続体のような亜空間的な存在が、互いに素粒子世界で紐かレイヤーのように相互依存し合う関係とか?
神界セウロスor魔界セブドラor獄界ゴドローンなど、そういった多次元の亜空間を利用した技術を応用すれば、光速を超えたあらゆる通信かワープ航法は可能と推測。
前世でもアインシュタイン・ローゼン・ブリッジは有名だった。
予想では、ハートミットが語っていた、なんとかマスリレイとかプロジェクトルッキンググラスとかが要っぽいが、まぁ後々だ。
ま、ここは、俺の知る地球がある次元と似ているが……。
万有引力を含めて物理定数が微妙に異なるはずだからな。
そして、当時、映像にあった銀河戦士だったゼン・ゼアゼロさんの物語も気になる。
帝国の兵士と共闘していた『ドラゴ・リリック』のシーンと関連はあるだろう。
そのことを聞こうと<銀河騎士の絆>を意識するが、ゼン・ゼアゼロさんは応えない。
アオロ・トルーマーさんも応えなかった。
そう都合良くはいかないらしい。
戦闘の際にはアオロ・トルーマーさんは反応してくれたんだが……。
……ま、戦闘の時にだけ反応するのは、分かるような気がする。
エクストラスキルの<脳魔脊髄革命>。
恒久スキルの<天賦の魔才>。
称号:覇槍神魔ノ奇想。
が、あるからな……俺が戦闘か決意を固めるとかで能力値が異常に高まった結果故に、アオロ・トルーマーさんが反応したとか?
他には単に、アドレナリンの分泌量とか……。
そんなことを考えつつ、アウトバウンドプロジェクトについてアクセルマギナに、
「アクセルマギナ、過去のアーカイブを検索して、アウトバウンドプロジェクトに関する情報はないのか?」
そう聞くと、戦闘型デバイスに浮かぶアクセルマギナは目を瞑る。
「アウトバウンドプロジェクト、検索中、フーク・カレウド・アイランド・アクセルマギナ博士謹製の自動翻訳機能〝アルゴマジンガーゼット〟を用いて、暗号を解除中……」
暗号があるのか。
アクセルマギナはパッと目を開いて、
「『外宇宙を求めて……』」
から、次々に、
『大惑星ドーントレスの辺境隊本部に帝国のハウ騎士団が!』
『惑星アミダラに眠るマインドクリスタルの確保失敗……』
『【アズラ船団】のテクノ・ユニオンと関係を持ち違法ワープドライブ&違法薬物&禁制生物輸送を行う銀河戦士ハムレッド・ファーバーは銀河帝国の回し者。ナパーム統合軍惑星同盟からの裏切り者である。【八皇】及び宇宙海賊など、賞金稼ぎ共が狙う前に、我ら分遣隊が正式に追跡し、殺害、処分するべき者である。各自この秘匿通信をコムリンクに保管せよ』
『銀河帝国の大要塞ソードオブソードの沈黙の守護者サヴェト卿が自ら率いた【沈黙の騎士団】が辺境分遣隊のデルタ隊を追ったとの秘匿通信がある。デルタ分隊は気を付けろ』
『【ケンプレル統合旅団】は信用するな』
『惑星スゥプネルのコードネームデルタ・ツーからのコムリンク通信の暗号を追え』
『【アーズデスマイク魔高層都市群】の【分離主義評議会】の派閥ヨーグの裏切り』
『銀河騎士テンカ・テンの一隊を襲撃したカゴメ小惑星の帯に住まうゴミ攫いの連中を追え』
『亜空間通信網の構築を急げ』
『帝国に奪取された超高速通信アレイの確保が先だ』
『【時空の鷹】に干渉する亜空間の歪みに囚われるな』
『植民惑星ワッハマルトの解放及び、帝国の銀河騎士メメド・アルファが率いるアルファ騎士団の壊滅及び殺害』
『違法ETA端末ロッドによる同盟間通信のハックを行う銀河商人ターゲンを確保し、違法船団の航路の確保』
『液体ダイヤモンドで満ちる放射線嵐が激しい惑星ガル。第一世代のタージエントマハル古寺院への侵入方法の模索』
『敵性銀河帝国軍大衛星群フォーグに索敵を受けたらナパーム統合軍惑星同盟の星系に帰還は困難と心得よ。索敵範囲でコードネーム通信及び亜空間通信を用いた場合、銀河帝国から更なる追跡を受ける覚悟が必要だ。雄渾(ゆうこん)なる活動を期待する。ナ・パーム・ド・フォド・カリーム!』
『大型巨大衛星アミダラスと巨大戦艦アークエンジェルに気を付けろ……』
と、次々に機械的な音声で情報を語るアクセルマギナ。
この辺りは完全にAIだ。そのアクセルマギナは頭部をふらつかせると、
「『……銀河騎士マスターの一人だったアオロ・トルーマーが提唱し、当時の研究機関に開発させた』と、現状ではここまでが限界です。前回、申し上げましたが、大部分が変容し断片も消えている部分が多く書き換わってもいます。のちのちに復元が可能な所もあるとは思いますが」
何か気になる言葉がたくさんあったが、ハートミットに聞いたとしても理解はできそうもない話ばかりだ。 先ほど見た戦いの映像に今の言葉と符号するところがあったようにも感じた。
「分かった。現時点では分からないことが多い。それで、アクセルマギナ、戦闘に参加するか?」
「はい」
「なら、ガードナーマリオルスはそのままで、アクセルマギナは出てこい」
「分かりました」
瞬く間に、戦闘型デバイスから魔力粒子が迸る。
魔力粒子は隣に来て、汎用戦闘型アクセルマギナが再出現。
鋼鉄の指で、俺に敬礼を寄越すアクセルマギナは可憐だ。
双眸は黒色。
魔眼のような五芒星と数字的なモノは消えて虹彩は普通の人族っぽい。
目の側面に小さい金属素子があるから、カレウドスコープのような魔機械があるようだ。
「よし。んじゃ、相棒、ママニたちのところに降下してくれ」
「にゃお~」
俺は新衣裳の胸元にある心臓と髑髏のマークがあるバッジを一瞬見る。
が、滝壺へのダイブが先だ。
ダイブするか分からないが――。
「――ンンン」
相棒が山間の傾斜がやや激しい場所に着地。
緑と樹木が茂っているが、ここは火山地帯だ。
熱い。俺たちは跳躍――巨大な岩に着地。
ヘルメは熱い環境だから、表情が厳しい。
「ヘルメ、今は左目に戻ってこい」
「はい――」
左目に戻ってきたヘルメ。
――<
――匂いは左だ。
火山の煙と混ざっているが、匂いの方角に土煙が昇る。
手前の左右の岩は大きく削れている。
蔓のような植物が多いが、水気があるように霧も上空に発生していた。
右は崩落した崖ばかり、岩壁に沿う先に奥へと続く細道があるようだ。
リザードマンの死体も多数転がっている。
「にゃ」
「ガォ」
黒豹のロロディーヌ。
と、その頭部に琥珀がちょこんと乗っていた。
「相棒、琥珀は頼んだ」
「ンン、にゃ」
「もう、匂いで分かると思うが、左のほうだ」
「にゃお~」
と、左に煙が昇る空にはジョディの姿があった。
ジョディの体から白色の蛾が散る。
所作はいつも通りで変わらないが、水を浴びたように濡れて見えた。
サージュの柄を横に回転させて止めた。
鎌の刃を下に向けながら直滑降――
戦っているようだな。
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