六百十六話 遺跡を巡る諸勢力の暗闘
シュウヤたちが激戦を繰り広げている頃。
一階の内部でも依頼を受けた小隊同士が激戦を繰り広げていた。
そんな激戦の中で、一際異彩を放つ者がいた。
ルルセスとメメクが語っていた鉄扇使いだ。
その鉄扇使いは口元を覆う特殊な魔道防具から魔の息を吐きつつ冷静に動く。
一人また一人と対峙した者を確実に鉄扇で屠っていた。
そんな鉄扇使いの動きを追う二人の魔剣師もまた優秀。
絶剣流イゲッラと飛剣流ヒゴン。
ピサード大商会の下部組織バーナンソー商会が雇った彼ら二人組は闇の業界筋から〝絶飛の兄弟〟、またの名を〝絶飛の魔剣師コンビ〟と呼ばれていた。
「雷・二鳴」
「合・三巻」
その優秀な魔剣師のコンビは示し合わせた暗号を呟く。
二人は魔脚でステップワークを行うと、アイテムを握る腕を振るった。
放たれた細かなモノが、鉄扇使いの前方に無数に転がった。
撒菱だ。
鉄扇使いは、前転――鉄扇を地面に刺して宙に上がる。
側面に着地して動きを止めた刹那――。
右からイゲッラの<鳴剣>の剣突技が鉄扇使いの首を狙う。
左からヒゴンの<巻寂>の薙ぐ剣が鉄扇使いの脇腹を狙った。
――鉄扇使いは片方の剥けた魔眼を三百六十度ぐわらりと瞬時に回す。
鉄扇使いは頭部をずらし――<鳴剣>を避け半身の姿勢に移行しつつ<巻寂>をも紙一重で避けながら――螺旋した魔線を纏う片腕をスムーズに振るう。
その手が握る鉄扇の先端から幾筋もの鮮烈な魔刃が迸った――。
鮮烈な魔刃はイゲッラとヒゴンの首を捉えて切ると瞬時に鉄扇の中に収束。
「――げぇ」
「――ごぁ」
二人の首は半分切断。
その切断面から血が迸る。
「――あいつを仕留めろ!」
「絶飛兄弟を! つえぇぞ。あいつを避けて、迂回できねぇのか?」
「無理だ、狭い」
「だが、ジムたちはもう階段を降りたんだろ?」
「あぁ、あの鉄扇使いが来るまでは、順調だったんだが……」
「……邪魔ばかりだ。上はルルセスがいるから安心できるが……階段の下にも敵がいるんだ。もっと、もっと人員を送り込め」
「……しかたねぇ、数で押せ!」
「「おうよ!」」
「邪魔な鉄扇使いは俺が倒す! 遺跡は我らがもらう!」
鉄扇使いと敵対する集団たちは、鉄扇使いを追う。
優秀な剣士を倒した鉄扇使いだったが、魔槍使いと短剣使いに狙われた。
――が、鉄扇使いは素早い。
「ここで槍とはアホうか?」
と、嘲笑する鉄扇使い――。
「――槍組手をしらねぇのか?」
魔槍使いは怒りを滲ませながら、下段蹴りを繰り出す。
鉄扇使いは、すね当てで蹴りを受け、シラット風の蹴りの受け流しから、鉄扇の柄頭を手刀に織り交ぜて魔槍使いに送り返す。魔槍使いは柄でその手刀と鉄扇を受け、柄の反撃の打撃を返した。
続けて、膝の打撃を鉄扇使いの股間に出すが、鉄扇使いは、下方に出した左手の掌に装着した魔鉄当てで受けつつ後退し、短剣使いの<投擲>された短剣を自らの鉄扇であっさりと弾く。
刹那、体に纏う魔闘術の質を一段階引き上げた鉄扇使い。
口元のガスマスク状の魔道防具から魔の息を吐きつつ前傾姿勢となると――。
迅速な体がぶれる機動で、その短剣使いと間合いを零とした。
「<魔略三艘・速峰刃>」
と――鉄扇を突き出した腕がぶれる。
鉄扇の先端が短剣使いの頭部を貫き、やや遅れて首と胸元を貫いた。
短剣使いの正中線に風穴が三つ誕生する。
しかし、突技のスキルを繰り出した鉄扇使いは、鉄扇を持つ腕が前方に伸びて、体勢が隙だらけだ。
その体勢が整わない鉄扇使いを狙おうと魔槍使いが、
「もらった――」
と、突きを鉄扇使いの首に向けて繰り出す。
――鉄扇使いは、腕をだらりと下げつつ、膝から崩れるように屈んで、槍の穂先を避けた。弛緩した腕が持つ鉄扇から伸びた魔刃が地面に刺さり鉄扇使いの体を支えていた。その鉄扇使いは軽やかな立ち居振る舞いから横壁を蹴り上がり――くるっと宙空で一回転――魔槍使いの後方に着地するや否や、振り向きざまに鉄扇を振るう――。
魔槍使いは、その鉄扇から出た魔刃を魔槍の柄で弾く。
柄と魔刃の衝突面から火花が散った。
「なんて機動だ……」
その火花越しに、鉄扇使いの姿を追う魔槍使い。
壁を背中に預けていた鉄扇使いは、
「……魔略麗流を知らないのか」
そう呟くと、腕を軽やかに動かし鉄扇の一部を開いては……。
また、嗤ったような顔つきを浮かべている。
魔槍使いの表情が醜く歪む。
「チッ」
魔槍使いは舌打ちをしながら魔闘術を纏い直した。
右腕で握る魔槍を持ち直す。
豪槍流から風槍流の構えに、短槍の構えを取ると、前傾姿勢から突進。
右腕ごと槍と化す<刺突>を鉄扇使いに繰り出した。
鉄扇使いは、崩れた柱と折れた柱に身を寄せる。
柱を盾代わりに魔槍使いの<刺突>を防いだ。
連続した<風刺突>スキルも、柱を利用して――避けていく。
「素早いが、柱は有限だ――」
追う魔槍使いはそう喋ると、反対の手に移していた魔槍を回転させて――。
また、その魔槍を短く持ち直す。
そして、魔槍使いは<豪閃>の間を作る。
柱の背後に隠れた鉄扇使いを、その柱ごと薙ぎ倒すように『怪物殺し』と異名のある赤紫色の魔槍を振るった。力強い笹穂が柱を薙ぎ倒す。
その柱と柱の間に隠れていた鉄扇使いの胴体を、切断――。
否、それは残像。
鉄扇使いは後退していた。
その退いた鉄扇使いは、また、壁に背中を預けつつ、魔の息を吐く。
魔槍使いを嘲笑。
魔槍使いは動きを止めて鉄扇使いを目玉が飛び出る勢いで、睨みつけた。
そして、覚悟を決めたように、眥を決す。
腰の袋から取り出した丸薬を口に含む。
喉が真っ赤に腫れつつ皮膚の一部が硬質化する。
無理やり胃に押し込んでいた。
魔槍使いが飲んだ丸薬は、魔薬の一種〝ドメガメハメルの汁団子〟。
全身の筋肉と魔力が、半年間活性化し続けるが、皮膚の病気も含めて、後々、強烈な副作用に苦しむことになる。
更に、その魔薬をキメた魔槍使いは何気ない仕草から、左腕の傷から魔弾めいた針を飛ばした。
「な――」
驚いた鉄扇使いは、鉄扇を広げて、その不意打ちの魔針を弾くことに成功。
特別な鉄扇に数本の針が突き刺さっている。
その針が、ただの魔針ではないことを物語っていた。
「……シークレットウェポンを……」
「切り札か。今のはさすがに驚いた」
「チッ――そんな鉄扇なぞ――」
魔槍使いは前進――。
両手が握る魔槍で<愚馬刺し>というスキルを繰り出す。
鉄扇使いは魔槍使いの行動を予測しつつ魔闘術を体に纏う。
目の前に迫った魔力が篭もった笹穂を――。
鉄扇の先端で受け持った。
凄まじい不協和音が轟く。
魔槍の穂先と衝突した鉄扇の先端から火花が散った。
魔槍使いは、自慢の魔槍の<愚馬刺し>をあっさりと受けた鉄扇の武器を凝視。
「……俺の怪物殺しが通じないだと……」
そう呟く。鉄扇使いは、口元の魔道具マスクから魔の息を出しつつ、
「魔鉄扇ハブソールは、ただの鉄扇ではないからな――」
その魔鉄扇ハブソールを傾ける。
笹穂を斜め下に受け流す――。
鉄扇使いは片袴を揺らしながらの足裏で、床に穂先が衝突した魔槍〝怪物殺し〟を押さえつけた。
その直後、魔鉄扇から魔刃が飛び出る。
飛び出た魔刃は魔槍使いの頭部に向かった。
「えっ――」
魔槍使いは僅かに反応したが、間に合わず――。
魔刃は魔槍使いの眉間を貫き頭蓋を破壊――。
魔槍使いの頭部は爆発するように散った。
鉄扇使いは、自身の魔鉄扇ハブソールを広げて血飛沫を防ぐ――。
返り血を防いだ魔鉄扇を振るいつつ、閉じる。
一つの鉄棒と化した魔鉄扇ハブソール。
鉄扇使いは、その魔鉄扇ハブソールを反対の掌に数回トントンと当てながら周囲を窺いつつ、下に続く階段を見やる。
下にも敵の数は多いが……。
と思考する鉄扇使いは、ガスマスク状の魔道具から魔の息を出しつつ、口を動かした。
「……カリィなら、そろそろか。ん?」
――また魔素か?
この形と質は、目当ての奴らとは違う……。
と、思考した魔道具系の防護マスクが似合う鉄扇使い。
動揺を示すように双眸を揺らす。
焦ったような表情を浮かべていた。
……過去。
ヘカトレイルの【天凜の月】の事務所で会っていた槍使いを思い出す。
まさか……な……。
◇◆◇◆
暗闇に硬質な金属音が響くと閃光が生まれた。
閃光は戦う者たちの姿を露わにしたが、一瞬で暗闇がその者たちを覆う。
しかし、その暗闇を『否』と否定するように連続した金属の不協和音と火花が生まれて血が舞った。
「ぐあぁ」
「げぇ」
「……」
悲鳴と人が床に倒れた音が木霊する。
暗闇と、冷たい呼吸音が、この場を支配した。
続けて、
「――先を急ぐから、そうなる!」
と、怒りを滲ませた女の声が響く。
暗闇をつんざく女の声に呼応するように、淡い光が、幾つも宙に生まれた。
それは、女が持っていた光のスクロールが元だ。
壁と衝突した、その淡い光は壁の中に吸い込まれていく。
刹那、壁の表面と内部に亀裂めいた火花が無数に走った。
続いて、壁の内外に電気が巡ったかのように明るさは急拡大する。
瞬く間に、辺り一面が光る壁へと変化を遂げた。
ここは長い階段を下った先。
あちこちで翡翠色の輝きを発している地下遺跡だ。
日本を知るシュウヤが見たら、これは未知のガラスか?
高度な知的文明が作った遺跡の装置か?
と、思考するかもしれないほど、翡翠色の輝きは、不可思議な明るさで明滅を繰り返している。
光る壁の前には儀式を行うかのような巨大な台座もある。
更に、左の翡翠色を基調とした壁には、巨大なミホザの騎士団に由来する壁画もあった。壁画から続く天井も翡翠色を基調として、明るい。
鋭利な道具で削ったような角が目立つ。
そして、その壁はこの場で戦う者たちも露わにした。
手前は、魔法の光源を右手から出した女の声を発した灰色のローブを着た者。
その灰色のローブを着た者は明るく変化した周囲を見て、驚くような仕草を取った。
「鬼蟲の巣の先に、こんな魔力を阻害し、吸収する壁か光源か分からないが……古代遺跡があるとはねぇ……ミホザの騎士団ってのはいったい……」
と、呟く。
灰色のローブの女は、左の半身を前に出しつつ左腕が握る魔剣を眼前に掲げた。
ラメ革が目立つ左足がジリッと前に出る。
魔剣から出た青白い光が、その革の表面を照らす。
青白い魔剣を握る指貫グローブ。
その細い腕は繊細そうな印象を抱かせる女性らしい左腕。
そして、独自の剣法の構えだ。
その一流の剣術家と分かる歩法を見せる灰色のローブの女は、
「……その手の変幻自在な魔力の箱は、なに?」
と、発言。
眼鏡の人物は、その問いを聞いて、
「お前に答える必要はない」
両手に生み出していた立方体を四角形に変化させる。
そして、瞬く間に、小さい立方体に変化させた。
「……答えろよ! セヴァとデルを殺した屑がっ」
眼鏡の人物は、その灰色のローブのうわずった声の質を聞いても、眉一つ動かさず……。
鋭い視線を灰色のローブの女に向けたまま……。
両手から真新しい魔力の立方体を生み出していた。
「……」
灰色のローブの女は、眼鏡の男の両手を注視。
その両の掌に浮かぶ立方体は、六面体、四角形、多角形へと次々に変化する。
各面の中央に小さい武器と防具の形の絵。
色違いで、浮くような盛りあがった魔力文字もある。
あの面は、武器や防具の意味か?
魔法はある程度自由に形を変えられる?
導魔術系の技術か? と、推測する灰色のローブの女。
そんな魔法の立方体を両手から出し続けている眼鏡の男。
対峙している灰色のローブの女に、
「……仲間が殺されて血が上った演出は無駄だ」
と、冷たいニュアンスで語った。
灰色のローブの女は、ふふっと笑ってから、
「正解♪ 冷静な男……最初の受けは、ここに誘い込む罠だった?」
「退いたほうが戦いやすいだけだ。で、お前の仲間は、ここに呼ばないのか?」
「ブラフ?」
「……」
「本当に、この深い地下遺跡の魔力を吸収し阻害する壁の中でも、上のことが察知できるのなら、優秀な索敵能力を持つのね――」
と、灰色のローブの女は前進――。
足下からヒール音が木霊する。
灰色のローブの女は、左手の魔剣の切っ先を、眼鏡の男に差し向けた。
眼鏡の男は右の半身を下げつつ、青白い魔剣を往なすと――。
左手を灰色のローブの女に差し向ける。
その左手の立方体の先端は、先が尖りつつ伸びる。
灰色のローブの女は、顔を上向かせた。
頭巾を開けて、カッと見開いた蒼い目と美しい顔を晒し、
「それは、もう通じない――」
そう喋りつつ、眼前に迫った魔の文字が目立つ立方体の切っ先を、戻していた、片手が握る青白い魔剣で器用に斜めへと叩くように弾く――同時に魔力を内包した水面蹴りを繰り出した。
眼鏡の男の足を、ラメ革のブーツを履く左足で刈ろうとする――。
眼鏡の男は素早く後退し、その水面蹴りを避けた。
蒼い目の女は眼鏡の男の動きを読む。
低い体勢からヒールで地面を蹴った。
足下からカッと火花を散らしつつ斜め前へと跳躍するように眼鏡の男と間合いを詰める。
前屈みのまま――魔剣を握る左腕を眼鏡の男の胸に伸ばし<風魔突>というスキルを繰り出した。
眼鏡の男は右手の四角形を盾状に変化させる。
その魔力の盾で<風魔突>の青白い魔剣を往なし、払うと――左手の槍状に変化を遂げた立方体を、蒼い目の女に繰り出した。
蒼い目の女は頭部を傾けて、
「――女の顔を狙うの?」
と、槍に変化した立方体の魔法攻撃を眼前で避けた。
眼鏡の男は、続けて、右手の盾の立方体を、盾剣に変化させる。
その右手の盾剣状の魔力多角形を振るう。
「怖いわね――」
蒼い目の女は、左腕の袖の中に自身の右腕を入れると、ダッキング――。
剣状の魔法攻撃を屈んで避けた。
切られた金色の髪がパラパラと舞う。
そんな切られた髪は気にせず、蒼い目の女は、袖の中から秘剣めいた魔剣を右腕で引き抜く――。
腕がぶれる――と、黄色の剣と蒼色の剣の軌跡が六つ同時に宙に生まれた。
水が流れたような細い線にも見えるが、必殺的な剣筋だ。
刹那――。
初めて苦悶の表情を浮かべた眼鏡の男。
「――くっ」
眼鏡の男の頬が二重にぱっくりと裂かれて、顎骨を晒す。
と、大量の血が迸る。
「ゲンザブロウ!」
女の声が響いた。
すぐさま眼鏡の男が頭部を傾けつつ「――アイ、俺は大丈夫だ」と背後に向けて発言する。
「でも……」
顔が切られた眼鏡の男を心配する声だと分かる。
確かに眼鏡の男こと、ゲンザブロウという名の男は、顔だけでなく軍服も切り裂かれていた。
胸と腹にかけて大量の血が滲んでいた。
だが、ゲンザブロウは気にしないというニュアンスで、笑う。
「この程度、戦場では当たり前」
その言葉が嘘ではないと語るように、全身の魔闘術が活性化していく。
顔の傷が熱を帯びたように、血の蒸発する音が響いていた。
「……ゲンザブロウが名か。しかし、わたしの<秘六・流剣陣>を受けて生きている奴を見るのは久しぶりだね」
蒼い目の女はそう語りつつ観察を強めて……。
蒼い剣身が目立つ魔剣を掌で回し逆手に移行。
蒼い切っ先を自身の脇から背中側に差し向けると、右手が握る魔剣の柄頭をゲンザブロウに向けた。
魔剣の周囲に空気の流れのようなモノが発生しているのか、灰色のローブがびゅうと風を孕んで揺れていく。その風を生み出しているだろう魔剣の柄頭が怪しく光る。
蒼い目の女は、独特の二剣流の構えだ。
じりじりと間合いを詰めていく。
ゲンザブロウは冷静に見極める。
今の間合いを詰める動きは、やや焦りからくるモノだと推測。
蒼い目の女は、魔闘術を含めた武術は極めて優秀だが、アイが自分の名を呼ぶまで、アイの存在に気付いていなかったと判断。
索敵の技術は低いと認識した。
そう思考したゲンザブロウは俄に口を動かす。
「……そういうお前の名は? 組織はどこだ」
「今更、自己紹介? ま、別にいいけど。組織は【魔塔アッセルバインド】。渾名は流剣、名はリズ・フラグマイヤー♪」
「……リズか。その組織も、この遺跡が目当てか?」
「さあ? 会長はどんなつもりか分からないけど、わたしたちは、金とアイテムに強そうな連中が、ミホザの騎士団の古代遺跡に集まりそうと聞いたからね」
「……会長にわたし
リズは訝しむ。
が、ゲンザブロウの視線から嘘はないと判断。
「そう? 自慢じゃないけど、セナアプアでは、それなりに名は聞くと思うけどね?」
「仲間は?」
「もうすぐ降りてくる、はず」
「……金なら、ここまで降りる間に魔白金王プレムの鉱脈層が無数にあったと思うが」
「うん。あったあった。けど、不思議な階段があるし、普通は降りるでしょ」
リズがそう語ると……。
そう語るリズの背後に魔素の反応が現れる。
「チッ、お前はしつこいな――」
「当たり前じゃナイか!」
明るい床に着地した耳が長いエルフのトンファー使い。
そのトンファー使いを追いかけてきたであろう短剣使いも遅れて着地した。
短剣使いは、短剣の怪士ノあやかしを右の掌の中でクルクルと回転させる。
そして、怪しく揺らぐ魔力を宿したボサボサの髪の毛を左手で掻きながら周囲を見た。
「……アレ? 急に明るくなった。不思議ナところだ♪」
リズが、そのボサボサ髪の男を睨む。
そして、チラッと近寄ってきたトンファー使いのエルフを見て、
「銀死金死! 相棒は?」
「あぁ、実は……」
エルフのトンファー使いは気まずそうな表情を浮かべて、短剣使いを見る。
表情を強ばらせたリズは、
「そいつはだれ……」
と、短剣使いを睨む。
ボサボサ髪の男は、トンファー使いのエルフ女を見て、
「めちゃくちゃ強いエルフは、変な渾名だネ?」
銀死金死と呼ばれたエルフのトンファー使いは……。
ボサボサ髪の男を注視しながら、仲間のリズに向け、
「……テツは死んだ」
「……え……」
「そいつに絡んだ奴は、皆死んださ……気をつけな。【スィドラ精霊の抜け殻】や【八指】といった有名な殺し屋かもしれない」
「ウン、仕事の邪魔をしてきた方々は、皆、死んだヨ♪」
「……」
リズは怒りの表情を出すと、片方の魔剣の切っ先を、そのボサボサ髪の男に向ける。
ボサボサ頭の男は、リズと黒き戦神に、その後方にある魔素を出してないアイを野生の勘で察知。
「……君たちもエルフのトンファー使いと同じく……強そうだネ♪」
と、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます