五百八十四話 束の間の天空デート

 キッシュの屋敷から外に出た。


「ヘルメ、左目に戻ってこい」

「はい!」


 液体になったヘルメ。

 瞬く間に俺の左目に収まった。

 左目から微かな爽快感を得る。


 そして、肩に乗った黒猫ロロの小鼻を人差し指で小突きつつ、


「――皆、助けたダークエルフが目を覚ました」

「うん」

「クナ。さっきの話は後回し、肩の相棒の魔法陣を見るのもあとで――」

「ンン、にゃ~」


 鼻を突かれた黒猫ロロは寄り目となりつつも前足で俺の指を叩いてくる。

 その肉球の感触を楽しみながら――。

 再び黒猫ロロの小鼻ちゃんをツンツンツイィーンと、突く。


「そんな遊びより、お腹を見たらいいのに」


 この遊びこそ黒猫ロロの油断を誘う動き。

 黒猫ロロの腹をチェックしようと手を伸ばす――。

 しかし、そんな俺の手をあざ笑うようにスルリと避けた黒猫ロロ


 俺の頬に背中を擦り当ててくる。

 俺の首をペロッと舐めた。

 ――くすぐったい。

 黒猫ロロは反対側の肩へと移った。

 すると、長い尻尾で、俺の首を撫で耳朶を擦り揉み上げを弄ってくる。


 悪戯猫め。

 そんな長い尻尾を、逆に掴んでやろう――。

 悪戯返しだ! と、意気込む。

 しかし、子猫の相棒は長い尻尾を、さっと、鞭のごとく揮い俺の手を払う。


「ンン、にゃ」


 更に、尻尾で俺の視界を塞ぎつつトコトコと肩を歩く黒猫ロロさんだ。


 可愛い姿に魅了される。

 狭い肩の上で、くるりと回り、外に向けた鼻先で、クンカクンカと匂いを嗅ぐ。

 そして、ピンと立てている尻尾を小刻みに震わせる。


 まさかオシッコか?

 ジョジョ立ちをするように踏ん張る仕草ではないが……。

 黒猫ロロは神獣としての、分泌吸の匂手フェロモンズタッチでもしているのか。


 小鼻を下げた黒猫ロロ

 サザーを見つめている。


「ロロ様?」


 黒猫ロロは触手をサザーに向かわせる。

 触手マッサージを全身に受けたサザー。


 もこもこの毛が逆立っている。

 顔を真っ赤に染めていた。


「毛繕いありがとうです」


 サザーの喜ぶ様子を見た相棒は、


「ンン」


 と鳴いて、俺に頭部を向けてきた。

 背中、胴体が湾曲しつつ俺を見る。


 俯瞰から見たらコの字か乙の字的な格好だろう。


 猫の体は柔らかい。


 そんな柔らかい黒猫ロロさん。

 すぐに自らのお尻を隠すように、背中を舐め始めていった。

 舐め舐めと、毛繕いかぁ……頭部を上下させる。


 ピンク色の舌で黒毛を整えていく、お掃除だ。


 今なら腹にできた魔法陣を見ることができるかな……。

 このまま黒猫ロロの観察をしながら遊び続けるのも一興か?


 いや、遊ぶのはあとだ。

 皆も黒猫ロロの仕草を見ていたが、


「ということで、皆、逸品居は俺抜きで楽しんでくれ」

「はい」

「ん、わたしもダークエルフのとこにいく」

「分かっている」


 エヴァはダークエルフの尋問を考えているんだろう。


「ダークエルフも混乱の極みだろうよ」


 ハンカイがそう発言。


「地上の言葉も覚えるのは苦労しそう」

「それはダークエルフが、ここに残ればの話だ」

「ゲート魔法でダウメザランに送ることもできる」

「そうだ。ダウメザランが故郷なら帰ることを望むはず」

「ん」

「ごしゅ様は、人材としてダークエルフをサイデイルに残すつもりかと思いましたが」

「はい、ダークエルフの兵士として雇うのかと」

「対樹怪王の軍勢が比較的多く出現する西の簡易砦のほうは、レネさんとソプラさんの二人の射手しかいないようですし」

「戦術的に、西が、今サイデイル最大の弱点ではあると思いますが……軍師兼料理人のトン爺は〝そこは敢えて、隙を残す形の放置ですじゃ〟〝人は石垣、人は城〟と語られて、よく理解できませんでしたが……」


 と、ママニが語る。


「要は人材が重要だってことだ。森としての環境とサイデイルの高台を活かすことも含めてな」

「ごちゃごちゃ言う前に、我らが西の戦力に加勢すればいい!」

 

 ビアの発言に、サルジンが吼えている。

 性格的に合うかもな。


「ビア、ご主人様に聞いてからだ。魔石収集ではなく、ここでの活動の許可が出てからとなる」


 血獣隊がそう語る。


「ママニ、ゼレナードの施設から回収した極大魔石もあるから魔石収集はなし。今は、好きなように活動して構わない」

「了解しました」


 ママニはアシュラムを掲げてお辞儀をしてくれる。

 俺も咄嗟にハンドマークを作って応えた。


 するとフーが、


「樹海王の軍勢。キュイズナーとはまた違う洗脳魔法を扱うとか」

「洗脳を受けて姿を変えられた古代狼族か」

「はい」

「ハイグリアもよく語っていたわね」

「だからこそ人材は必須か。ダークエルフさんの勧誘?」

「優秀な人材をサイデイルに引き留めたい思いはある。しかし、何事も本人次第」

「自由で不羈を愛するシュウヤらしい言葉だ。ダークエルフの自由意志に委ねるのだな」

「そういうこった」

「旅を望むか、サイデイルに残るか、または素直に地下へと帰りたがるか」


 ハンカイの言葉を聞くと、ルリゼゼの後ろ姿を思い出した。

 凄腕の魔界騎士の彼女はがんばっているだろうか。


 すると、モガが、


「さ、ここで立ち話をしても仕方ねぇだろ。俺たちは酒だ」

 

 ハンカイが同意するように、駆けながら、振り向き、


「――おうよ! 飲んで、飲んで、飲もうかァ!」


 演歌のような、ネームスばりの重低音のある声だ。

 地下世界の戦いで挑発スキルを連発していただけはある。


「おう~飲んでぇ! 俺も、飲むぅ、飲まれて~」


 と、モガも歌った。


「変な歌。だが、気合いの入ったハンカイさんは面白い」


 レベッカが指摘。

 ハンカイも親指を立てて、キリリといったような表情を浮かべて、


「おう。大仕事のあとの一杯は大事だ」


 酒のCMに使われそうな言葉だ。


「酒に自信ありのハンカイ」

「あるに決まっているだろうが! モガ殿はどうだ? そこのネームスは図体からして酒が強そうに見えるが」

「わ、たし……は、ねーむす……」


 ネームスのニュアンスが少し違う。

 酒に弱いのか、強いのか?


 分からない。

 モガが代わりに、


「ネームスは体から液体を垂れ流すことが多い」


 前に見た。


「だが、特別な酒を飲むと……不思議と体内に吸収される割合が増える。そして、周囲の魔力を回復させる効果のある綺麗な花を咲かせる特殊な枝を生やす。因みに、これは最近発見した」

「わたしはネームス!」

「体中に生えた枝から花か……その肩に咲く白い花のように?」

「そうだ。てやんでぇ……逸品居の酒で反応を起こした。……が、覚悟も必要だ」

「覚悟?」

「おう。臭いんだ。その枝が……」

「わ、たし……は、ねーむす……」


 ネームスはそれがいやなのか?


「がはは、ネームス! そのような特技を持つとは、たとえ臭かろうが、素晴らしいではないか」

「わたしはネームス!」


 面白いネームスの特技だ。

 そこで、酒とくれば……。


 と、アイテムボックスを素早く操作。


「花を添えるわけじゃないが、皆に預けよう」

「預けるだけか。くれるかと思ったが」

「わたしはネームス!」


 黒の甘露水を見て、ネームスが喜んだ。


「黒の甘露水は分かるけど、樽?」

「あ、戦馬谷の酒樽ね」

「そう。名は鳳凰亭珍酒の樽。貴重な酒だと思う。ネームスに変化を引き起こすかも知れない。最初はちょびっとずつ飲むように、亜神夫婦にも見せてあげてくれ」


 貴重な鳳凰亭珍酒の樽は、ハンカイに持たせた。


「おう! 貴重な酒ならば、デルハウトも呼び寄せるか。皆で武を語りつつ少しずつ酒を楽しむとしよう」

「我も飲む!」

「ふふ、わたしも酒なら自信があります。虎獣人ラゼールの諺にも、酒虎獣は俄の如くなり。がありますから」

「わたしは、魔力が回復する枝の臭いが気になります!」


 フーは匂いフェチ?

 皆、歩き出す。


「わたしは、ネームス!」


 少し遅れてネームスもハンカイの言葉に同意してから歩く。

 どしどしと足下から重低音が響いていった。


 すると、


「モガ&ハンカイ&ネームスに血獣隊か……」

「鳳凰亭珍酒の中身も気になるけど、デルハウトさんも加わったら、逸品居の酒場で模擬戦とかやり始める勢いよ?」

「ん、ママニも激しいところがあるから、逸品居の酒場が壊れちゃう?」

「ジョディがいるから大丈夫だとは思う。けど……シェイルだっているのに」

「絵に閉じ込められていた女性の治療&休養している診療所的な酒場でもある」

「あ、そうだった」


 クナは頷くと、


「改築した樹枝と茨の部屋は、酒場の喧噪音を防ぎますし、多少暴れても大丈夫かと」


 と補足した。

 逸品居の建物は補強して頑丈になったようだ。


「へぇ、銀色の花のような能力を片手に生み出していた亜神キゼレグだし、バング婆の茨を作る能力も理由にありそう」

「はい、ロターゼが落ちても、樹木にひび割れを起こして凹んだだけで済みましたから」


 かなり頑丈だな。

 俺の邪界ヘルローネの樹木とは少し違うようだ。


「でも、あの四人よ?」

「……確かに、でも、暴れそうになったら、皆で止めればいいじゃない」

「ユイの峰打ちを喰らえば……」

「魔刀を使った峰打ちは、さすがに、強烈すぎない?」

「うん、立ち合いの『静止』で十分でしょう。『理業は車輪の如し』の心得を生かす」

「ユイの言葉はフローグマン流の剣術用語?」

「そう。大本は介者剣術から続く言葉だけどね。剣は、常に進化し続けていくから……」

「……深いわね。そんなユイの所作を見れば、実際に切られた? と背筋が凍る思いをするだろうし、うん。ユイが側にいれば凄く安心」


 レベッカがユイを褒めている。


「<ベイカラの瞳>で睨まれたら、大概は静かになることでしょう。わたしとジュカも傍にいますから、大丈夫ですよ」


 キサラもそう指摘した。

 ジュカさんは、ここにはいない。

 ラファエルたちと遠征か?


 デルハウトとエブエのところか。

 ロターゼも一緒のようだから、たぶん、そこかな。


「おう、おう、俺は暴れるほうがいいぞ! 気合い十分、サルジン様の拳が吼える」

「俺が受け止めてやろうか」

「氷で突き刺すか?」

「サルジン、ロゼバトフ、トーリ……お前らは、大人しく、いや、無理か……」

「モッヒーなら、ガイガーで照射すれば、静かになるかも~」

「……イセス、酒場だぞ? モッヒーどころか、リング・オブ・ガイガーの恐怖を抱かせる幻影たちは指向性がない。周囲に恐怖の幻覚を引き起こすと、他の客が迷惑どころか、発狂してしまう。ここは素直にユイ殿の力に頼ったほうが確実」

「スゥンの言うとおりだぜぇ、イセス、ここは地上だ。地下とは違う」


 地下の酒場では、リング・オブ・ガイガーの効果を使ったことがあるのか。


「普段暴れる側のサルジンが語る言葉ではないが、正しい」

「我の<麻痺蛇眼>で皆止まる」

「ビア、酒場では禁止だからね、パル爺が食事をしていたら、喉を詰まらせて死んじゃうかもだし」


 と、フーが蛇人族ラミアの<従者長>に注意したところで、


「では、主……ダークエルフが起きたのなら、わたしもエヴァ殿と一緒に」


 バーレンティンが、そう話しかけてきた。


「了解、自宅に行こうか」

「ハッ、では先に――」


 バーレンティンは颯爽とした所作で、踵を返す。

 ルシヴァルの紋章樹のほうに向かった。ラシュウとして、気になるだろう。

 第三位魔導貴族エンパール家出身なんだから。


「シュウヤがいなくても、なんだかんだ言って~楽しそうな飲み会になりそう」

「ん、あとで合流する!」

「ごしゅ様は、あとで来られそうですか?」

「俺の合流は無理そうだ。魔法書にクナの転移魔法陣関係と、相棒の腹も見てもらう」

「わかりました~。わたしはお姉様方と一緒に」


 サザーはユイとレベッカと手を繋ぐ。

 フーとビアにママニも続く。クナは、


「シュウヤ様、朱雀ノ星宿と逆絵魔ノ霓は用意済みです」

「おう。先もチラッと話をしたが、フィナプルスの夜会は後だ」

「はい、では、下準備を……魔力増幅薬と魔鳶の羽と魔減恐液を混ぜつつ夾雑物を取り出して……ふふ、魔人の感覚をも鈍らせる特殊な〝蝗谺幻香〟を作ってお待ちしています」

「……ん、クナ、怪しい薬よりも、ロロちゃんのお腹も、ちゃんと調べて」

「エヴァちゃんの頼みなら、がんばるから任せてね♪」

「ん」


 クナは真面目だ。

 エヴァは変わらず天使の微笑。


「じゃ、エヴァ、ダークエルフを見に行こうか。皆、何かあったら、血文字で連絡を頼む」

「ん」

「うん」

「了解~」

「「はい」」


 俺は跳躍――。

 足下の皆は、正門に向かいつつ、シュヘリアの話題に移っていた。


 水晶池に向かったシュヘリア将軍。 

 ナナは、まだ子供だから、少し気になるが……。

 ま、ナナも強力なブリちゃんを使役しているし、連れの連中も、強力無比。

 エルザとアリスに、ラファエルとエマサッドもいる。


 モニュメント付近で遊ぶ中にムーと子供たちいた。


 その子供たちや水晶池のことよりも……。


 肩の相棒だ。

 腹の魔法陣が気になる。


 が――ま、今は家に戻るか。

 身に紫魔力を纏うエヴァは先に飛翔している。


 エヴァの背中を見ながら宙空に飛び石でもあるように<導想魔手>を足場に利用――。

 宙を点々と跳ねる機動で、前進だ――。


 一回転しながら蹴りの訓練を実行。

 目の前に出した<導想魔手>を蹴って方向転換。

 身を捻り宙を飛翔するような跳躍をくり返す。


 視界が移り変わる。

 楽しい移動だ――。


 城郭のようなサイデイルを見る。

 その中の大半の施設と家は俺が作った。


 今、眷属と仲間たちが潜ろうとしている、あの大きい正門も作った。

 門番長としてイモリザが守っていた大きい正門。


 当初は村を守る要の一つだったが、今では、サイデイル城の出入り口だ。

 ――高台に振り向く。


 ルシヴァルの紋章樹と訓練場を視認。

 そのルシヴァルの紋章樹の根元は凄く綺麗だ。


 花々と植物の祭壇。

 楽器模様が刻まれた障壁と柱が立ち並ぶ。

 天の門を彷彿させる非常に芸術性が高いルシヴァルの祭壇。


 その綺麗な紋章樹と繋がる広場の訓練場と自宅のほうに向かう。

 エヴァに追いついた。


 近くで浮遊していた血の妖精ルッシーが周囲に現れては消えている。


 白色と緑色の花弁の髪に虹色の髪飾り。

 小さいビー玉の虹彩にオッドアイ。

 蔓のイヤーカフと首のチョーカーも非常に可愛らしい。


 小さい葉っぱの洋服が似合う。


「ルッシーがいる」

「ん、遊んでほしいみたい」


 ルッシーは輝く血の放物線を寄越す――避けた。


「あるじ~はやい~」


 ルッシーは挨拶のつもりか。

 再び、血を寄越したから、動きを止めた。


 その輝く血を吸い寄せる。


「わーい、吸ってくれた~大好きなあるじ~」

「ルッシーありがとう。美味しい血のジュースは魔力も豊富だ」

「うん~。ドナガンのたねを、ふやして、やさいも、フルーツも、血も、どどーんとふやした~」


 ドナガンの種を増やして血のジュースに混ぜたのか?

 ルッシー効果は凄いな。


「そっか、ま、サイデイルの防衛を頼むぞ」

「うん~」


 ルッシーは笑顔。

 防衛と語ったが、ルッシーのがんばりは必要ないかもしれない。

 キッシュはヴェロニカ以外だれも獲得していない<血道第二・開門>を獲得して強くなった。


 そう考えていると、ルシヴァルの紋章樹から複数の枝が伸びてくる。

 細い枝はルッシーの小さい体に合う椅子を作った。


 血を纏う椅子か。

 血の環を頭に浮かせたデボンチッチたちもいた。


 一方、エヴァもルッシーの血を吸う。

 ワンピースの衣服に隠れた巨乳が、見事な双丘の模様を模る。

 あの芸術の中身は堪能しているが、他の男に見せたくない気分となった。

 俺なりの独占禁止法が炸裂。ムントミー装備といい素晴らしい。

 ルッシーは血を纏うと、血の霧となって消失。

 そのエヴァが近付いてくる。


「ん、フルーツの味の血だった」

「あぁ――」


 エヴァを抱き寄せて、宙を回転。「ん――」と、エヴァも俺の抱きしめを強めてきた。

 脇に抱えたエヴァの温もりを感じながら身を捻る。

 足下に展開した<導想魔手>を蹴って宙を走った。


 エヴァのおっぱいの感触で、気分が高揚したせいもある。

 が、高度を上げすぎた。まあ、いいか。

 ――サイデイルを俯瞰。


「ん、家は下?」

「上がり過ぎた」

「束の間の天空デート」

「だな……」

「ん、でも、サイデイルは凄い発展している」


 『あぁ』と、頷く……もう村じゃない。


 キッシュの一族たちの象徴『蜂たちの黄昏岩場』が嘗てあった小山。

 サイデイル自体が、山のような高い場所にある。

 小山と、たとえるのはまずいか。

 が、村と呼んでいた当時から山の認識だった。

 小山の坂道の回りには、ルシヴァルの紋章樹と訓練場と俺の自宅がある。

 訓練場を囲う柵と自宅のログハウスを確認。

 ログハウスは、増築を重ねているから、もうログハウスとは言えないか。

 天守閣的な、層塔型と似た作りの建物となっていた。

 皆が暮らす家も確認。

 外も把握。村だった頃にもあった対オークの濠が、丁度よく城郭と化している。

 再び自宅に視線を戻して、自宅を見る。二階の大きい窓。

 ダークエルフが寝ている部屋だ。


「よし、下りようか」

「ん」


 <導想魔手>から降りた。自宅に向けて、急降下。

 二階の窓の縁に、足を乗せて、部屋を見た。

 エヴァも縁に手を当てつつ部屋を覗く。

 そのエヴァの揺れた黒髪から……いい匂いが漂った。

 寝台から起き上がっていたダークエルフを確認。

 銀色の髪だ。大きめの革服は肩が露出。青白い肌は綺麗だ。

 そのダークエルフとヴィーネたちが相対している。

 バーレンティンが階段を上がってきた。その彼と、視線が合うと、頷く。

 部屋にいる皆とも、アイコンタクト。

 

 手前の起きたダークエルフは、


「わたしに近寄るな……ダークエルフたち。不思議な音楽を鳴らし半身が透けている桃色髪の女と骨の怪物め……」

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