五百八十三話 サイデイルの女王誕生
相棒――ロロディーヌの声だ。
樹の窓枠の狭い縁に乗っていた。
それにしても、背中から尻尾までの黒毛が滑らかだ。
艶のある黒曜石を思わせる。
天才的な美人画家が生命力に溢れる黒猫の絵を描いたような印象だ。
その
耳の中の産毛から覗かせる地肌の色はピンク色、そのすべてが可愛い。
鼻呼吸でもするように部屋の匂いを嗅ぐ。
と、その
「にゃ~?」
疑問風に鳴いた
代わりに宙に漂う蜂式ノ具を見る。やや遅れて蜂と天道虫たちを注目。
「ンン」
喉声を発した相棒は興奮したようだ。黒色の瞳孔が散大。
後脚の甲に両前足を乗せた前屈みとなる。
飛び箱を跳ぶような、猫まっしぐら、とでも言うような体勢だ。
そのまま窓の縁を蹴り跳躍――。
背中に受けていた光条は、勿論、その跳んだ
光条の道に、相棒は四肢でも乗せるつもりらしいが、天道虫は半透明だ。
特別な光の道も物質属性はないだろう。
案の定、
「ンン」
微かな喉声だ。
そのまま
その漂う天道虫と蜂は分かれる。
天道虫は小さい光の魔法陣を周囲のいたるところに生み出していく。
光の精霊たちだと思うが……。
独自に儀式でも行う?
一方、蜂たちは、ひらひらと宙を舞いつつ光の軌跡を描く。
その光の軌跡は……俺たちを導いた魂の黄金道を彷彿とさせる。
純粋に美しい。
すると、魔導車椅子状態のエヴァが光の軌跡に向けて腕を出して、
「――これは魂の黄金道?」
と、発言。
「うん、似ている。でも、前より綺麗かも?」
「不思議な光精霊ちゃんたち」
「やっぱり精霊様なの? でも、不思議とわたしの心が温まるのは何故? 自然と涙が出てくるんだけど、皆も?」
「ん」
ユイの言葉にエヴァは頷く。
「……はい、この温かい感情は……」
キサラも同意。
自らの両手で巨乳を押しつけるようなポーズを取った。
続いて、イセスが、
「普通の吸血鬼なら蒸発してしまいそう」
「ソレグレン派は大丈夫ですぞ」
「わたしは、ネームス!」
「ふふ、ルシヴァルの妖精も下に居る」
「ルッシーちゃんも見ているのね」
皆、感想を述べ合う間も……。
天道虫はゆっくりと飛翔を続けた。
その飛び方というか……。
天道虫の姿を見ていると、どことなく……。
俺たちに、お礼をするような所作にも見えた。
天道虫と蜂はひらりひらり――。
と、ゆっくりと舞いつつキッシュの頭上に向かった。
非常にいい雰囲気だ。
目を細めたキッシュは天道虫と蜂を見る。
家族を想う郷愁か。
キッシュは涙を流し、細い右手を……。
光の魔力を纏う蜂たちへと向けた。
その瞬間――。
蜂たちが泡のようなモノとなって宙に集結。
この世の物とは思われない、ラシュさんとシュミさんの姿らしきモノに変化した……。
蜃気楼のように揺らめくキッシュの家族たち。
「あぁ……ラシュなのか? お母さんも……」
……よかった。
キッシュは家族たちと再会できたんだな……。
ラシュさんとシュミさん以外は、居ないようだが……。
それ以外の蜂と天道虫は……。
キッシュを包んでいるようにしか見えない。
俺にはそう見えているだけで、キッシュには違うかもしれないが。
とにかく、よかった……。
光神ルロディス様か、その眷属か不明だが、粋なことをする。
キッシュ……。
「ん、天道虫?」
「キッシュは見えている」
皆はラシュさんとシュミさんも含めて見えていないようだ。
「キッシュの母と妹の姿が見えます。キストリン爺は見えません」
常闇の水精霊ヘルメが発言。
すると、キッシュの家族たちが消える。
キッシュの近くを舞っていた蜂と天道虫の群れがキッシュの頬の中に、蜂のマークに引き込まれていく。
キッシュは魔宝石を胸に抱く。
すると、神界からの光が強まったように、屈折していた光がキッシュに集積。
一点に光を受けたキッシュの全身から光のオーラが生まれた。
その光のオーラは、再び、ラシュさんとシュミさんを模ると、
「……ラシュとお母さん。うん、わかった。元気で、来世があれば、はは、うん、わたしは、幸せよ」
キッシュは刹那の間に、家族と会話をしたようだ。
眩いキッシュの家族たちは、天を昇るように外に消えていく。
キッシュは悲しげだが、幸せそうでもある。
「……家族たちの下にセウロスの至る道を……」
どう表現したら分からないが、キッシュ……の言葉は胸を打つ。
そのキッシュは、大事そうに蜂式ノ具を抱く。
その瞬間――。
抱いていた魔宝石の蜂式ノ具が煌めきながら、キッシュの眼前に独りでに持ち上がる。
キッシュは苦悶の表情を浮かべて、体が揺れて倒れそうになった。
蜂式ノ具がキッシュの魔力を吸い取ったか。
「キッシュ」
と言いながら寄ったが、キッシュは笑顔を見せ、
「だ、大丈夫だ」
と発言。皆も「「キッシュ!」」と発言し、心配そうな表情を浮かべた。
キッシュは皆に向け片手を上げて、駆け寄ろうとする行動を制止させた。
刹那、キッシュの魔力を吸い取った蜂式ノ具の魔宝石が砕け散る。
容量オーバーか?
否、砕けた破片は、俺の血が混じる黄金色の粘液に変化した。
粘液は蜂蜜のような印象を受けた直後――。
キッシュの頬の蜂マークから閃光が迸った。
その眩い蜂マークの中へと、血と黄金色が混じる液体の一部が入り込んだ。
刹那、キッシュの頬の蜂マークが増えた。
更に、離れた黄金色の液体は蠢きながら小さい黄色の冠を形成。
キッシュの頭部に、その小さい黄金の冠が収まった。
「ん、びっくり!」
「あぁ」
「まさか、このようなことが……」
「ハーデルレンデの奇跡」
「わ~」
「「うおぉ~」」
「凄い!」
その小さい冠には、蜂たちが意匠が施されている。
花の髪飾りと合う……。
花の髪飾りの名は、エールワイスだったかな。
俺の知るエーデルワイスと似た名前。
デートした時に教えてもらった。
「……家族との再会に、ハーデルレンデの奇跡か。わたしの、お父さんの時の……奇跡とは、また少し違うのね……」
レベッカは感動しながら泣いていた。
同感だ、鳥肌が立った。レベッカはなおさらだろう。
レベッカも、天道虫と
お父さんとの繋がりがあるんだからな。
「ん、その冠に名前はあるの?」
「蜂式光魔ノ具冠が名だと思う。鑑定はないが、不思議と分かるんだ」
キッシュの言葉は力強い。
キッシュ・バクノーダという名前だったが。
キッシュ・バクノーダ・ハーデルレンデってことだな。
そのキッシュの祖先たちハーデルレンデたちの祖先の力と俺の光魔ルシヴァルの力が融合した証しが、秘宝の冠でもあるわけか。
ハーデルレンデはエルフ系統。
横にいるドココさんの頬には熊マーク。
紅虎の嵐のベリーズ・マフォンの頬にあるマークの氏族も気になる。
そして、エルフ氏族と言えば……。
蒼炎神の血筋のハイエルフのレベッカだ。
レベッカの頬には氏族のマークがないが……。
そんなエルフの彼女たちを俺は眷属にした。
だから、古いエルフの血筋から文句を言われるかもしれない。
キッシュは冠を外して、その冠を見ると、
「これは〝蜂たちの黄昏岩場〟にそっくりだ。魔竜王に破壊された一族の象徴が新しく復活した証明か。これで……わたしは本当に……故郷を再建したことになる」
キッシュは膝から崩れた。
大事な冠も落としたから咄嗟に詰め寄る――。
キッシュを支えて冠を拾った。
小さい冠から強烈なプレッシャーを感じた。
魔力の質も高いし……まさに
キッシュは泣きつつ耳元で、
「……シュウヤには、返しきれない恩がある……」
キッシュの気持ちは痛いほど理解できる。
自ら故郷を再建するつもりが、頼るしかない状況だからな。
だが、それが愛ってもんだろう。
「……いいんだ。やるべきことをやったまで、友のキッシュが自由に心のまま生きられるのなら、それでいい」
キッシュは「うぅ……」と泣しながら俺の肩に顔を当てる。
「今は泣け……」
「……うん」
暫し、キッシュを抱く。
肩を撫でながら、泣き止むのを待つ。
皆もすすり泣く音が聞こえた。
泣き止んだキッシュ。
その肩を持ち、少し体を離しながら、キッシュを見て、
「……これを返す。もう名実ともに女王だ。サイデイルを導くんだぞ……」
「分かった。だが、友である眷属の宗主に改めて、忠誠を誓おう――」
キッシュは片膝の頭で床を突く、頭を下げてきた。
女王が忠誠とか、どうなんだろう。
んだが――。
俺の<
キッシュの頭部に蜂式光魔ノ具冠を載せた。
その刹那――黄金色の血を纏った大きな烏が再出現。
俺とキッシュの間で、翼をゆっくりと拡げた。
飛翔しているとは思うが動かない。
黄金色の血を纏った大きな烏だけが時間の流れがゆっくり?
スローモーション状態の黄金色の血を纏った大きな烏は、威風堂々としている。
その不思議な威圧感を与えている黄金色の血を纏った大きな烏は、ゆっくりと、小さい冠へと重なると消えた。
すると、小さい冠の縁に炎が点く。
炎は紅焔だ。
光魔ルシヴァルの血の炎でもある?
周囲を屈折させていた光も消えた。
普段通りの司令長官の部屋となる。
女王として……。
光神ルロディスか光の精霊がキッシュを認めた?
神々が認めたか分からないが、輝きを発している新衣裳のキッシュに似合う女王としての冠だ。
「「おぉ……」」
俺と相棒とヘルメ以外の皆が、歓声を発した。
「こ、これはライヴァンの世とはまた違う……神界……」
「……しかし、オーク八大神の御心は感じられる」
「ルシヴァルとしての力は偉大だ……」
ソロボとクエマがオーク語を興奮しながら話をしていた。
『細い光の筋が消えました。烏も鳩もすべてが無かったように』
『分かった』
ヴィーネから報告がくる。
「ぷゆ?」
と、窓から覗いている
キッシュは立ち上がった。
感覚が変わったのか、自らの両手を見る。
魔力といい立ち姿も威厳がある。
そのキッシュは俺を見て……。
「――ありがとう、愛しき友」
透明感のある肌の笑顔だ。
少し安心した。
「おう」
と、応えると、やや、緊張気味のサザーとフーが前に出て、
「サイデイルの女王様!」
「素敵な冠です!」
と発言。
ユイも、神鬼・霊風を持ち、
「おめでとう、キッシュ」
と発言。
すると、ヘルメが足下から水飛沫を発しながら、
「まさにサイデイルの女王!」
「あ、そっか、精霊様の予言が的中ね!」
蒼炎を灯し、ルッシーに悪戯をするレベッカ。
相棒がその蒼炎を追い掛けていく。
「おお」
「緑の蜂女王!」
「ん、サイデイル国の誕生?」
「そうなりますな、我々は伝説の場に立ち会えたことになる」
「緑の剣帝?」
「精霊様はこうなることを……」
水飛沫を発生させている常闇の水精霊ヘルメは、その言葉を聞いて静かに頷いていた。
宙空の位置で皆を見据えている。
真面目モードのヘルメだ。
恐怖を周囲に与えるほどの威厳ある表情を浮かべている。
……お尻ちゃんとか、普段ふざけているヘルメとの、この落差はいったい、なんなんだろうか……。
「……精霊様のお力は神の如くして、端倪にすべからず」
トン爺が難しい言葉で表現する。
影響を受けて蒼炎を身に宿したレベッカが、キッシュの紅焔で揺らめく冠を見て、
「血炎の冠と頬の蜂マークといい、要は、蜂式ノ具を取り込んだってことよね」
キッシュは頷く。
ユイも、
「ハーデルレンデとしての力を得たということかな? エルフ氏族の失われていた力を……」
と、話をした。
俺も頷きながら、
「……筆頭従者長としての女帝か。キッシュ様と呼ぶべきか?」
と、眷属に対して言うことではないが、冗談を飛ばす。
「ふ、笑わせるなシュウヤ! わたしは
だが、それだけではないだろう。
俺の血魔力にキッシュの血魔力……。
そして、神々……。
神聖な雰囲気だったし……。
絶対に、ほかにもなにかある。
その思いで、
「……分かってるさ。しかし、威厳さというか……
と、力を込めて聞く。
キッシュは深く頷いた。
「そうだ。皆も感じているように、わたしは力を、ルシヴァル一門として大いなる力<血道第二・開門>を獲得した」
マジか。
「「おぉ」」
<
「スキルもだよな?」
「うむ。<光魔ノ血蜂>を……」
と、頬から光を帯びた血の蜂たちを出現させた。
大きさといい、スズメバチと似た血の蜂。
「その<光魔ノ血蜂>は、ルシヴァルとしての力と、ハーデルレンデとしての力か」
「そのようだ……剣術だけではない。他にも生かせる。この力でサイデイルを守れというメッセージを家族たち、いや祖先たちと、光神ルロディス様とその眷属たちから、受けたような気がした」
キッシュはそう喋った。
偉容さといい、不思議な貫禄がある。
「……ふむ。素晴らしい
トン爺が短く語る。
「ん、キッシュ女王様」
「エヴァ、わたしに様をつける必要はない。同じ<
「分かった。普段は変わらない。でも、公の場では、ちゃんと、様とつける」
「そうねぇ、サイデイルを治める立場なんだし」
「わたしはネームス!」
俺は暫し、沈黙を続けながら、和気藹々と喋る眷属と仲間たちの会話に耳を傾けた。
そして……キッシュに向けて、
「キッシュ、成長おめでとうの前に、警告をしとくがいいか?」
「うん」
「……ま、トン爺が居るから大丈夫とは思うが、一応な……」
「分かった。友の警告だ、聞こう」
俺は頷く。
サイデイルが発展した先のことを想像しながら、
「……人がいるところでは必ず争いが起きる。〝大声は俚耳に入らず〟という言葉もある。オセべリアもサーマリアもラドフォードもレフテンも古代狼族も魔族も、そのすべてが……キッシュたちを心待ちにしていると思うなよ。手練手管の〝夷を以て夷を制す〟を用いるような軍師たちが相手になると思え」
「肝に銘じよう。ただ、シュウヤのように、わたしは迅速に行動できるだろうか」
キッシュの不安気な表情を見て、俺はアキレス師匠とトン爺の言葉を思い出す。
「〝迷わんよりは問え〟だ」
「トン爺のような言葉だ」
「そうだよ。意味は、あれこれ迷わずに、トン爺や俺、いや、皆に聞けばいいってことだ」
「分かった」
「ふぉふぉ。〝大功を成す者は衆に謀らず〟もあるのじゃが?」
トン爺。
さすがにキッシュはワンマン社長って感じではないだろう。
「周囲の意見に惑わされず、自分の考えで決断せよ。か、〝迷わんよりは問え〟の逆か。トン爺、あまりキッシュを混乱させるなよ」
「ふぉふぉ」
しかし、頓知の、一休さんではないが……。
トン爺の諺返しは「戦国策」の言葉か。
矢継ぎ早に出る質の言葉じゃねぇ。
脳に作用する<脳魔脊髄革命>のようなエクストラスキルとか<翻訳即是>を獲得しているとか?
……それか、樹海の奥地に叡智を学べる秘境でもあったとか。
転生者のスメラギ・フブキと関係があるのかも、と予想するが。
そのことは告げずに、キッシュを見て、
「……キッシュはキッシュなりの治め方を実行すればいい」
そのタイミングで、トン爺とクナにドココさんを見て、
「……キッシュの下には、学ぶべき人材の宝庫。多士済済なんだからな」
視線を鋭くさせていたトン爺が、
「……英雄殿の言葉通りじゃ。そして、英雄殿は、師から兵法に戦術を深く学んだようじゃな。まさに軍法者の物言いですじゃ」
指弾と料理が得意なだけではない知識人トン爺から褒められると、照れるが、それは事実だ。
アキレス師匠から色々と学んだからな。
「……師匠は偉大ですから」
すると、クナは、
「素晴らしい眷属の力です。うふ、わたしもその一員……うふふふ」
怖さのある笑顔を出すクナ。
「……クナ、で、体のほうはどんな感じだ? 治療に用いた<白炎仙手>は効いているのかな」
「はい! おかげさまで」
「それはよかった。それと、ルッシーがお仕置きとか、話をしていたが、何をしたんだ?」
「光魔の血の力を宿す〝光魔の実〟を、シュウヤ様にも用意しろ。と、きつく言ったのですが、ルッシーちゃんは、キッシュ様のことが気に入っただけなのか、渡してくれず。その代わりに、枝触手で、わたしを攻撃してきました」
「きつく言ったとは、どのくらいきつく言ったんだ?」
「朱雀ノ星宿を用いた実験を味わってみる? と……」
「脅迫かよ。そりゃ、ルッシーから攻撃を受けるのも当然だ」
「わたしは止めたぞ? しかし、クナの魔法技術は凄まじい」
キッシュがそう発言すると、クナが俺に視線を寄越しつつ、
「幾つか魔法能力を示しました」
「その朱雀ノ星宿の魔法書を使ったのか?」
「いえ、あ、絵画に閉じ込められていた女性なら助けました」
「おぉ~」
「で、その女性はどこに?」
「足がなく、内臓の一部も破損している不自由な状況でしたので、逸品居の新しい二階の寝室で、休んでいます。亜神夫婦の特別な料理でシェイルと同様に癒やし中です」
足がない……か。
「そっか」
「なら逸品居で酒を飲むついでに会おうか……それから、セーフハウスに向かうとする」
「ヘカトレイル行きの転移陣ですね」
「そうなる。魔法陣がどうなっているか気になるし……」
と、キッシュをチラッと見た。
すると、キッシュが、
「シュウヤ、前に話をしていた貴族のことか」
と、発言。
俺は笑いながら、
「ま、ついでってことだから期待はするな。ヘカトレイル領主のシャルドネとは知り合いってだけだからな」
「了解した。たとえ失敗しても世話になったシュウヤだ。どんなことになっても受け入れる」
どんなことか。ま、深くは聞くまい。
女王としての表情で分かる。俺はクナに視線を向け、
「相棒の腹にできた魔法陣を見てほしい。あと、興味を持っていた
「は、はい」
と、不満気な声を出すクナ。
俺がジッと視線を強めると、クナは、巨乳さんに手を当てポージング。
敬礼か。
「分かりました!」
と、発言するクナ。
唇の下にあるホクロがチャーミングだ。
そのキッシュからサイデイルに関する報告を聞く。
ソプラ&レネ。
彼女たちは弓隊として左の森で活躍していると聞いた。
樹を利用した射手台を作り、簡易的な砦を森の中に幾つも作り、その射手台を利用して、樹怪王軍勢と樹海のモンスターを狩っていると。
シュヘリアとデルハウトは将軍と皆に呼ばれているようだ。
そして、そのシュヘリアは、少し前に聞いたように、結構な人数を引き連れて水晶池に向かっている。
ラファエル、エマサッド、ダブルフェイスに、エルザ&アリスにナナ。
ナナは狩りに向かう際……。
キッシュが「ダメだ」と、命令をしたが、アリスは『離れたくない』と泣きわめいたようだ。しかし、ナナの扱う〝ブリちゃん〟こと、闇の狛犬は強力だからと許可を出したらしい。当然、キッシュは、ナナがどんな存在か知っている。
恐王ブリトラと悪夢の女神ヴァーミナの力を宿す特別な個性ある子供だ。
ナナの過去の経緯はあまり聞いていないが、凄惨すぎる内容は少し聞いているだけに……キッシュは、ナナの気持ちを優先させたようだ。
一方、デルハウトとエブエ。
サイデイル城にある俺が作った正門ではなく、下の城下街にできたばかりの門の近辺で警邏中とのこと。ロターゼもそれ関係で動いている。
キサラも満足気の表情を浮かべてキッシュと話をしていた。
その報告の返しという感じに……。
俺たちはキッシュに蜂式ノ具と独立都市フェーンとの激しい戦いの詳細を伝えていく。
助けたダークエルフの存在と異獣ドミネーターの件に地下冒険の諸々を説明。
その本人も、
「我は異獣ドミネーター。前世では、悪鬼の妖魔と呼ばれたが、シュウヤの友になった」
異獣ドミネーターも自己紹介。
異獣ドミネーターから話が続いた。
キストリン爺の墓代わりだった王牌十字槍ヴェクサード。
その墓を守る、いや、囚われていた異獣ドミネーターも、無数の屍の洞窟を造り上げることとなった経緯を語る。
そのドミネーターの話を聞いたキッシュはホームズンの種族と敵対し続けていたことを興味深く聞いていた。しかし、延々とした戦いの連続は凄まじい経験だ。
ローゼスの戦いの話を思い起こさせるし悲惨な戦の話……。
次第にキッシュは顔色を悪くしていく。
ドミネーターが話を終えると、ユイとキサラがフェーンの内部で戦った経験を語る。
俺も王牌十字槍ヴェクサードを用いた戦いと地底神ロルガの戦いを告げた。
ユイは、回収した腕を出す。そう、キュイズナーの大きい手だ。
歪な怪物の頭部と生きている眼球が嵌まっている。
そして、魔法陣が密集した魔宝石という。
「それか、その大きな手に嵌まっている〝モノ〟は触れても平気と分かるが……」
「それよりクナさんの沈黙が怖いんだけど」
と、俺が指摘するように……。
「腕はアドゥムブラリのように、喋りそうだけど」
「喋らないな……」
「シュヘリアの魔剣のようなアイテム?」
「どうだろう、片腕だからな」
すると、頭の禿げたスゥンさんが、
「鑑定を弾くとか、詳細は分かりませんが、呪い系でもないから有効活用はできるかもしれません」
「そっか。ユイ。そのアイテムは要る?」
「遠慮するわ。いつか鑑定して誰かに合いそうなら、その人にあげればいい。それに、魔刀を扱うわたしが使えるか不明だけど、異端者ガルモデウスの書も持つからね」
「了解」
「うん」
と、魅力的な笑みを浮かべながら語る。
「了解、ま、アイテムボックス行きだ」
そのキュイズナーの怪しい片腕をアイテムボックスに入れた。
「よーし、ロルガ討伐ってより、キッシュのサイデイルの女王記念として、逸品居で一杯といこうか! ついでに、助けた女性も見よう」
「「はい」」
「「おう!」」
さて、ヴェロニカ&メル&ミスティと黒猫海賊団についても連絡だ。
その直後、
『ご主人様、ダークエルフが目を覚ましました!』
なら、先にダークエルフのほうに行くか?
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