五百六十九話 ホームズンとの戦いと蒼い魔力道
魔闘術を体幹に宿しつつ触手手綱を離す。
首に触手の先端が付いているが構わず。
両手で太極図を描くように槍組手の構えを取ってから振り向いた。
「ユイ、先に穴に行こうか」
「うん」
神鬼・霊風を掲げるユイ。
柄巻を握る綺麗な指たちだ。
彼女に頷いてから、
「穴に向かうとして、穴の周囲の掃討が先だ。掃討後は、皆で、この地域の警戒を頼む。緊急時は血文字で連絡する」
『ヘルメは出なくていい』
『はい』
「主、任せろ!」
「承知」
「分かった」
「「はい」」
皆の返事を聞いた直後――。
右手に魔槍杖を召喚。
「相棒も行くぞ」
「ンン」
小さい喉声を発した相棒。
微かな喉を震わせ鳴らす音。
魔素や電子殻といったミクロから次元ごと大気を振動させたように感じた。
今は巨大な神獣ロロディーヌの姿だ。
触手が宙に揺れながら広がる光景。
片翼だけの方向を見ていても迫力があるからな……何も知らない一般人が見たら神様と勘違いしちゃうかもしれない。
驚愕すること請け合いだろう。
しかし、下のホームズンたちは蒼い魔力道が続く穴の先を向いている。
あの先に強い敵でも居るのか?
俺たちの存在に気付いていない。
<無影歩>は実行していないから気付いてもいいと思うが。
ま、好都合。
大部隊だろうと奇襲を仕掛ける。
<邪王の樹>で樹槍を生成。
その樹槍を<投擲>していく――。
ホームズンの頭部に樹槍が突き刺さっていくのを見ながらロロディーヌから下りた。
相棒も俺に続く。
皆を地面に下ろしながら真下のホームズンたちに襲い掛かった。
俺は<導想魔手>を足下に出す。
ヘルメがさっき足下に出した水の魔法陣ではないが――階段の代わりに<導想魔手>を利用していく。
――沸騎士を呼ぶとしよう。
――閃光のミレイヴァルはまだいいか。
<導想魔手>の上で
「来い、ゼメタス、アドモス!」
魔界セブドラから呼ぶ――。
髑髏の指環から糸のような魔線が宙に弧を描きつつ地面と繋がった。
「なんだ?」
「敵の襲来だ、穴の中の連中に知らせろ――」
「ぐぁぁ」
蒼炎弾と光線の矢を喰らい弾け飛ぶホームズン兵士。
その間にも、
いつもの沸々とした沸騰音も鳴った。
「新手だぁぁ」
「備えろぉぉ」
ホームズンたちの声が響く。
歪な魔力の手の<導想魔手>を蹴る。
飛翔しながら体幹と大腰筋から背中の筋肉を強く意識し、少し海老反り状態に移行。
視界に蒼炎弾と光の矢の光が行き交うのを見ながら――左手から<鎖>を繰り出す。
――<鎖>の狙いは左側のホームズン!
穴の様子を窺っていた奴だ。
更に、右側のホームズンの兵士に向けノールックで《
振るい落とす魔槍杖の狙いは手前の頭!
槍圏内に入った直後、視界がホームズンの頭部で埋まるを避けるように<豪閃>を発動――ホームズンの頭部に嵐雲の紅矛を沈ませる――頭部がグボッと音を立て陥没。
<豪閃>の威力が物語るようにホームズンの頭部が破裂した。
そのまま嵐雲の形をした穂先はホームズンの首を粉砕し、鎖骨と胸元を撓ませ破壊しながら――鉄鎧を粘土でも潰し裂くように胴体を荒々しく両断。
魔槍杖が唸り声をあげながら血を吸う。
俺もホームズンの血を全身に吸い寄せながら着地と同時に前傾姿勢で前進。
ユイも右後方から続く。
――歩法の感覚でユイの剣術機動を予測。
「背後から敵だ!」
「マグ――」
喋る暇を与えず<鎖>を発動――。
左側のホームズンの胸元を<鎖>の
俺は右側の大柄ホームズンを狙った。
魔闘脚で間合いを詰める踏み込みからホームズンの頭部を<刺突>でぶち抜く。
風槍流の基礎であると同時に、この槍使いの最大の弱点、槍の引き際を意識しているように、ホームズンが群がってくる。
片手が伸びきったところに右斜め前方から多脚ブレードの刃が迫った。
魔槍杖を右手から消去しつつ左足を下げ半身の姿勢で、その多脚ブレードの一つを躱す。
「「な!?」」
ホームズンたちは驚くが、攻撃を繰り出してくる。
更に敵のブレードが迫った――。
右足を下げ連続的にぶれる速度で俺の首を刎ねようとする多脚ブレードの刃を眼前で避ける――。
前髪が上がるぶあっとした突風を受けた。
続いてブレードの刃を耳元に感じながら頭部を傾け、そのブレードを避けた。
この穴を攻めようとしていたホームズンたちも優秀かもしれない。
数も多いが、果樹園に攻めてきた兵士たちより確実に速度が速い――。
驚きつつも迅速な攻撃を繰り出してくるし、装備も他と違う。
地底神ロルガのマークか不明だが、歪な人形のマーク備えた装備品がチラつく。
徽章らしき骸骨マークもある。
破刃武隊と同様に力を持つ武隊か。
視線を強めて、生活魔法の水を足下に展開しつつ左足を下げ『風読み』を行う。
「閣下ァァ、ゼメタスが見参!」
「アドモスですぞぉ! 敵はぁぁ! いずこか!」
「わらわらと回転した刃の敵か!」
「ぬぉ~! 団子魔王ルガセルル!」
「いや、違う! アドモス、レベッカ様のフォローに向かおう」
「おう」
アドモスの団子魔王の名が気になったが半身の姿勢を維持。
多脚ブレード攻撃を神槍で受けずタイミングよく避けて――右を歩く。
多脚ブレードの間合いを読んだ直後――。
ホームズンの間近で《
多脚ブレードを《
多脚ブレードの一つ一つを《
右足に魔力を強める。
魔闘術の配分を変えた。
その脚力を持って刃が少なくなったホームズンとの間合いを詰める。
右手を手前に引きながら左手一本の神槍ガンジスをホームズンの頭部へと突き出す。
方天戟に煌びやかな水が纏う<水穿>だ。
ホームズンの頭部を穿ち派手に破壊。
一体を潰した。が、まだまだ数は多い。
右から迫ったブレードは避けず。
左の掌を擦るように神槍ガンジスの柄を右斜め下に伸ばし、柄の中部でブレードを受けた。
多脚ブレードが神槍ガンジスの柄を削るように火花が散る。
が、散ったのは多脚ブレード。
その傷ついたブレードが指に当たるは嫌だ――と強引に神槍を捻って跳ね返そうと思ったが――違う方向から多脚ブレードが迫る。
神槍を押し受けていたブレードを弾く。
同時に足の爪先を生かす回転避けと<朧水月>を駆使――。
足の爪先を軸に体を駒のように回転させ方向を変えて後退。
歩法のタイミングを変えたステップワークを実行しながら俄かに<鎖>をぶちかます。
避けた多脚ブレードを<鎖>で破壊。
俺はそこで体勢を屈めた。
足下の水を意識しながら<牙衝>を繰り出す――。
多脚を破壊したホームズンの下腹を神槍ガンジスが穿つ。
その神槍ガンジスに魔力を送ると――。
神槍ガンジスの太刀打ちと螻蛄首の部位にある蒼い纓たちが刃物と化した。
纓の一つ一つはピアノ線のような髪の毛――それが放射状に無数の刃と化すのだからホームズンも対応できるわけがない。
ホームズンの下半身は細切れと化した。
その間にも、違うホームズンの多脚ブレードが俺の足を切断しようと迫る。
「シュウヤ様、まだ敵が側に!」
キサラの声を感じながら側転――。
視界が地面と周囲のホームズンが交差するように移り変わりつつ多脚ブレードたちを避けた。
そのまま片手で地面を突く。
宙に跳び上がる機動のまま横回転をしながら右手に魔槍杖バルドークを召喚。
イモリザの第三の腕に聖槍アロステを召喚。
宙空で三槍流に移行だ。
<双豪閃>を発動――。
イメージはユイの<舞斬>。
回転しながら二体、三体、四体とホームズンの頭部を削るように宙を移動しながらホームズンたちを上半身を吹き飛ばしつつ着地。
眼前に大柄のホームズンが迫るが――。
三つの槍でクロス受けもしない。
相手が人族の武術家ならクロス受けはしただろうな。
と――<
至近距離で衝突した多脚ブレードから閃光が迸る。
大量の多脚ブレードを削り破壊した。
大柄ホームズンはバランスを崩す。
前のめりになって倒れ掛かった。
チャンス――前傾姿勢で突貫。
第三の腕と魔槍杖を消去。
一の槍、風槍流で仕留めるイメージだ。
しかし、大柄ホームズンは体内の魔力を活性化させると、胸元から剣腕を出す。
想定外だ、剣刃を伸ばしてきた。
即座に<血道第三・開門>を開門――。
<
血の加速を得た俺は、首を微かに傾け、迅速な剣刃を避けた。
眼前を通りすぎる剣刃に頬が斬られたが、その痛みを、次に生かす――。
側転機動に入る。
水面のような血の面を片手で突く。
大柄ホームズンとの間合いを零とした。
姿勢を上げつつ背中を相手に晒しながら、その大柄ホームズンの膨らんだ脇腹の下腹部を破壊するイメージで
――ドゴッと鈍い音が響く。
蹴りの手応えは確かだ!
カウンター気味の蹴りを脇に喰らった大柄ホームズンは上空へ跳ね上がる。
「ぐぉおああ」
血反吐を吐く大柄ホームズン。
<水月暗穿>を繰り出した。
体を支えていた、掌で再び、地面を突く。
持ち手を変えた神槍ガンジスで半月を描く機動槍武術――。
俺は神槍ガンジスの方天戟の矛と一緒に天でも衝くように大柄ホームズの腹へと突っ込んだ。
「ギャァ――」
方天戟は大柄ホームズンの腹をぶち抜き、身体を四散させる。
大柄ホームズンの悲鳴が神槍ガンジスに収束。
よし――。
周囲のホームズンは退いた。
「さすがシュウヤ様! 素晴らしい戦闘技術!」
キサラが褒めてくれた。
フィラメント状に展開する似たような武器がダモアヌンの魔槍に備わっている。
そのキサラは壁際だ。
「おう」
と、ユイが<舞斬>系の技で敵を仕留めるのを把握しながらキサラに返事をした。
俺は右手に魔槍杖を召喚。
「マグルの槍使いが外に居るぞおおお」
「何だと前の――」
「げぇ、異獣がぁぁぁ」
「逃げ――」
穴の中から悲鳴が響いてくる。
ホームズンたちだろう。
俺は二槍流に移行。
穴の中に居たホームズンが、逃げてきた。
俺たちに近付いてくるのを視認。
カウンターで出迎えようか。
<鎖>を射出――多脚ブレードを<鎖>が破壊しながらホームズンの上半身に絡ませる。
その絡ませた<鎖>を収斂――。
ホームズンを<鎖>と共に引き寄せながら、その絡ませた<鎖>を消去。
刹那、前に出て<双豪閃>を実行――。
魔槍杖バルドークの嵐雲の矛がホームズンの胴体を捉え叩く――。
神槍ガンジスの方天戟の矛がホームズの首をぶった切る。
回転しながらアーゼンのブーツを壊さないように<血鎖の饗宴>を出す。
地面に血鎖を突き刺して動きを静止。
穴の中からホームズンは現れない。
声も消えた。
穴の奥で戦う存在にホームズンたちは倒されたようだ。
穴の手前に居た他のホームズンたちはユイが仕留めていた。
俺は背後を確認。
活躍するロロディーヌ。
相棒は黒豹として化してエヴァの近くで戦っていた。
左の壁際に居たキサラを見る。
目元の黒色アイマスクは変形。
鼻先がコンドルの嘴。
あれは高速戦闘タイプの姫魔鬼武装の兜。
しかし、壁際に居るように、今は後衛に徹していた。
柄の孔から放射状に出たフィラメントが
鬼模様の大盾となっている。
その
そのフォローの一環か、キサラは両手の掌を地面に突けていた。
兜からマスクに戻すと、煌めく白絹のような髪から小さい角を覗かせている。
「炯々なりや、雲雨鴉。ひゅうれいや――」
あの魔術か。
キサラは<魔嘔>を披露。
歌声と同時に腰の魔導書が宙に浮く。
魔導書は自動的に頁が捲られ紙片となって飛翔。
「百鬼道ノ六なりや、雲雨鴉。ひゅうれいや――」
紙片は、折り紙のごとく。
キサラの嘔の声に合わせて鴉の形に変形。
折り紙の鴉たちはキサラの周囲に漂う。
キサラの額から頬に蚯蚓が這った血管が拡張されたような腫れが出現。
前にも見た。
格闘の<白照拳>を使う時も時々あんな風になる。
両手首の黒数珠からも墨色の幾何学模様の魔印文字が無数に出現。
魔印文字群は彼女の手を覆いつつ地面に移る。
瞬く間に地面に墨色の魔法陣を形成。
魔法陣から戯画めいた立体的な水墨画の黒鴉たちが出現した。
水墨画の鴉たちは周囲の折り紙の鴉たちと重なり融合。
闇を纏った大鴉と化した魔法の折り紙たち。
それら大鴉たちが、元墓掘り人のソレグレン派に紛れる形で、皆をフォローしていく。
「メファーラとルロディスの魔女! さすがだ!」
「キュルハもだっけ!」
大蝙蝠に変身しながらキサラを褒めて、大鴉たちを利用していく皆。
フォローを受けたイセスは「四天魔女か! 眷属ではないのに凄い!」
と、そういうイセスもおっぱい、いや、土色の巨大な土剣が凄い。
ホームズンの新手たちを複数一度に真横からぶった切っていた。
ロゼバトフとは質が異なる豪快な斬り技だ。
腕輪のような小さいチャクラムと背中のチャクラムなしでも十分強い。
すると、
「アースウォールド!」
甲高いフーの壁魔法だ。
「我が出る!」
「出るぜ」
土壁の間から突進したビアとママニとモガ。
「ビア、ネームスさん、ハンカイさん、もっと前に出ていい」
ママニが指示をだす。
「承知」
「了解!」
ハンカイは金剛樹の斧をぶん投げる。
「俺が出る」
「わたしもだ」
ハンカイの隣に居たソロボとクエマは連携してホームズンを足止めた。
「わたしも!」
サザーがステップワークから前転。
ソロボとクエマの右斜めに出たサザーは、その足止めしたホームズンに袈裟斬りを喰らわせる。
そこに違うホームズンのブレードが迫るが、ハンカイが前に出て、そのブレードを弾いた。アキが蜘蛛糸を放ちハンカイのフォロー。
ハンカイはブレードを弾いて斧を構えた。
そのハンカイが受けたブレードを繰り出したホームズンにソロボの太刀が決まる。
モガはクエマの<刺突>が決まったホームズンの首を刎ねた。
ペンギンじゃないが、モガ族として機動力を見せる。
再び、軽やかに宙を跳ぶ。
飛翔するように小さい翼を広げて、回転斬りをホームズンに喰らわせて、下段回転斬りに移行し、反対側に迫ったホームズンの多脚ブレードを切断していく。
可愛いペンギンの姿。
だが。魔剣を振るう仕草は一流の剣師。
今の機動を見ていたレベッカとイセスが口笛を吹く。
「やるわねぇ! 飛んでいるようだった」
「ペンギン?」
「ふ、飛べねぇペンギンはただの剣師だ。って何を言わす! 俺はモガ族だっての!」
剣王モガの異名は伊達じゃない。
そして、視線が渋い。
そのモガは皆に向けて、
「後退するぞ――」
と喋りながら、また飛ぶ。
フーの作った壁を壊そうしていたホームズンの背中側に回る。
魔剣シャローを突き刺していた。
「<下丹柳>――」
スキルの下段斬りを用いたモガ。
そのまま近くに居たホームズンの多脚へと魔剣シャローを素早く振るい下げる。
ホームズンの多脚ブレードを一度に複数切断していた。
さすがに暴れ過ぎたか、息が荒くなって動き鈍くなったモガ。
アキが糸を出してホームズンたちの動きを遅くした。
すると、
「――わたしはネームス!」
ネームスが両腕を振るう。
動きが鈍ったホームズンたちを、かっ飛ばし、壁に激突させた。
「さすがのネームスだ! ありがとな! アキも助かった!」
「いえ~美味しそうな鳥さん!」
アキの言葉に喜んでいたモガは一気に不機嫌になったが、ビアのほうに向かう。
ビアは、シャドウストライクを振るい前進。
武器を豪快に振るうビアに続いてアシュラムを<投擲>したママニ。
フーも二つの杖を使い利用――。
巨大な礫と礫の群れをホームズンたちに浴びせて吹き飛ばしながら穴だらけにさせていた。
連携もスムーズ。
しかし、左側のホームズン隊たちは体勢を整える。
「ぐぅぅぅ」
「何だ、どこから現れたんだ!」
「セレデルの兵士ではないぞ」
「ダークエルフの軍隊か?」
「マグルも居る! はぐれの愚連隊か!」
「ドレッサ隊長、どうしますか!」
「潰せ、穴蔵のドミネーターの試練は後だ」
大柄のホームズンが左側の武隊を率いている隊長か?
側に魔術師風のホームズンがいる。
話の内容と人数的に中隊を超えているが……。
この軍団規模で穴蔵のドミネーターに挑戦していたのか。
「左に向け我の力を使う!!」
「承知」
「あい、分かった!」
そんな左側のホームズン隊に向けて、ビアが<麻痺蛇眼>を発動。
ママニがアシュラムを<投擲>。
多数のホームズン兵士の頭部を円盤が突き抜けて破壊していく。
ハンカイも金剛樹の斧を<投擲>。
ホームズンの魔術師が繰り出した髑髏紋様の魔法で<麻痺蛇眼>が解除された。
が、ビアは肉体と魔盾を生かす。
ハンカイとサザーとモガにクエマとソロボが前に出る代わりに、ママニが後退。
距離を互いに生かす。
ママニは「ヌォォォォ」と吠えるとアシュラムは再び<投擲>。
アシュラムがホームズンの胴体に刺さった直後、ハンカイと暗号めいた言葉を放ち合い前に出たモガとサザーが華麗にホームズンを斬る。
クエマとソロボも槍と太刀で小隊長らしきホームズンを倒していた。
皆の戦闘術は凄まじい。
血獣隊の右側では、バーレンティンとキースとロゼバトフにトーリがホームズンの一隊と戦っている。
ヴィーネは左側に飛び出た形となった血だらけの<従者長>オークコンビをフォロー。
光線の矢の援護を受けたクエマとソロボ。
ネームスとフーの作った壁に下がろうとするが、小隊長を討たれた部隊の多脚ブレードに囲まれる。
その多脚ブレードを喰らいながら、強引に突破するクエマとソロボ。
ルシヴァルとしての華麗さはないが洗練された剣術と槍術はさすがだ。
そして、皆に比べたら荒々しい。
ヴィーネの光線の矢がホームズンを捉え爆破させる。モガとサザーも前に出た。
楽になったソロボは体に刺さったブレードを折って抜いていた。
痛々しいが矢を受けて対処する豪快な武士に見える。
クエマも同様に体に刺さっていたブレードを破壊。
そのオークコンビはまだ回復していない体で再び前に出る
ブレードを払い打ち落とすが傷も喰らう。
傷が増えるたびに闘争本能が冴えていくのか<血魔力>を生かした戦いが進化していく。
クエマは<刺突>系の槍技を出す。
ホームズンの首を穿ち仕留めた。
陣笠が似合うソロボは、ゆっくりと前に出たネームスの動きに呼応しネームスの両腕を盾に利用しつつ下からの逆袈裟でホームズンの胴体を斜めに切断。
皆、強い。
「……皆、俺とユイはこのまま穴の中に入る。上下左右、何があるか予測はできない、気を付けろよ」
「了解」
「「はい!」」
「ん、大丈夫」
「お任せを!」
「ふふ」
「あ、そっちに」
と、俺たちに向かってくるホームズン。
「わたしが――」
「ぎゃ――」
サザーの剣術だ。
跳び、身を捻りながらの左右の腕を連続して交差させる剣術。
宙に十字のような軌跡を二度生み出す剣技によってホームズンの上半身が鎧ごと裂かれていた。
サザーの剣術も冴えている。
カルードが指揮した撤退戦の詳細はまだまだ知らないことが多いが樹海地域だ。
モンスターを含めた様々なアクシデントはあったと思うしな、奮闘したんだろう。
「シュウヤ様、わたしもお供を!」
壁際に居たキサラが走り寄ってくる。
アイマスクが似合う。
衣裳は肩を露出したノースリーブ系に変えていた。
おっぱいさん注意報が発令。
美しいキサラに魅了されながら、
「……おう、行こうか」
「よろしくキサラさん」
「はい、ユイさん」
白銀に近い色合いの髪キサラ。
漆黒に近い黒髪のユイ。
互いに自らの武器を合わせた。
カチンと武器が重なる音が格好よい。
微笑む美人さん同士。
俺も合わせようと魔槍杖を向けた。
ユイとキサラは武器をバルドークに合わせてくれた。
三つの武器が重なると魔槍杖バルドークが痺れるように奮える。神槍のほうがよかったかな。
よし――。
武器を離し合う俺たち。
キサラはダモアヌンの魔槍を宙に浮かせて……手首の数珠から匕首の武器を掌に召喚していた。
外に比べたら狭い。
武器を替えたキサラは冷静だ。
俺は魔槍杖を短く持った。
血魔剣か鋼の柄巻でもいいが……。
「ユイとキサラ、準備はいいか?」
「うん」
「はい」
俺は振り返り穴を凝視。
穴の幅は五メートルはある。
死骸が積み重なって固い層になっていた。
洞窟の内壁から青白い光が伝わってくる。
LEDの発光ダイオードでも仕込まれているような独特のイルミネーションを作り出していた。
その洞窟の光源は、紙片と繋がる魔力よりも明るい。
「敵の敵は味方となるか、まだ分からない」
「もし、ドミネーターが生きているのなら、古代から生き続けているということになるわね」
異獣玉とドミネーター。
スメラギ・フブキが授けていたドミネーター。
十二名家に関わるモノ。
サナさんとヒナさんも知っているかも。
サジハリ&バルミントの近くにあったダンジョンマスターのスズミヤ・アケミさんも知っているだろう。
ペルネーテのクラブアイスの面々とカザネはどうだろうか。
「あぁ……」
と胸元に違和感。
揺れ続けているホルカーの欠片ではない。
魔造虎が幻獣を出しているわけでもない。
キストリン爺の紙片からだ。
神槍を左手から消す。
そのキストリン爺の紙片を取った。
その紙片に……。
十字の紋様が浮かんでいた。
これはキストリン爺さんの力か?
「シュウヤ様、それは、光神ルロディスの聖者の力でしょうか」
「たぶん。この奥がキストリン最期の地だということだろう」
「やはり、聖者の……」
キサラは頷く。
進むと、ホームズンの死骸で構成した迷宮となる。
骨という骨が至るところに転がっている。
欠けた元多脚ブレード。
古びたブレードの刃が転がっていた。
奥から剣戟音。
ホームズンと分かる魔素と一際機敏に動く人の形をした魔素が感じられた。
いや、魔素の形がロロのような四肢のタイプに変化した?
「少し先の奥に反応だ。ホームズンの兵士たちが戦っている相手は変身が可能と思う」
「了解……」
「はい、先制攻撃はやはりナシですよね」
「そうなる。俺が最初に出るから、悪いが後ろで見ておいてくれ」
「ふふ、気にしないで、何気に頼りにされたことがすっごく嬉しかったんだから」
と、右手の二の腕を掴んできたユイ。
そのユイの手と腕から、ユイの表情を見ていく。
瞳は少し潤んでいた。
微笑みを意識しながら、
「当たり前だろう」
「ふふ、嫉妬を覚えます」
と、キサラが反対側から俺にキスでもするように顔を近づけてきた。
唇から吐息を感じる。
正直、唇を奪いたいが、今はだめだ。
「……さぁ、あの曲がり角の先だ」
「はい」
「うん」
キサラは少し残念そうだったが、すまんな。
俺は、魔槍杖を消し、掌握察を行いながら無手にした。
角を曲がり進む。
人の形に変わった魔素を確認しようと足を速めた。
骨が散乱した激闘があった奥の間に、それは居た。
黒々とした長髪……。
襲い掛かってこない。
胸元に膨らみがある。
流線を生かしたコスチューム?
頭部を揺らし長髪から覗かせるように俺たちを見てくる相手。
俺たちを凝視して、一歩、二歩、後ろに下がる。
動揺しているようだが……。
あの表情はレベッカが蒼炎で描いた女性の顔と似ている。
とりあえず、アイムフレンドリーだな。
にっこり顔を意識。
「あの~言葉は通じますか?」
「……久しぶりに聞く言語だ……キストリンと同じ言語を……幻ではないのか?」
「はい現実です。あ、初めまして。名はシュウヤといいます」
「シュウヤか……わたしは異獣ドミネーター」
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