二百七十九話 ビームライフルと乱戦に手根球(前足のみ)

 俺も周囲を見回してから進む。

 ここは【邪神ノ丘】の遺跡から東の地。

 前に邪騎士デグと一騎打ちを行った戦場の草原エリアとは正反対の場所だ。


 草原の地はすぐに終わる。

 坂を上がると右に草が生えて広い。

 左は高低差のある大小様々な岩と樹が点在する。


 そこに、右から多数の魔素の反応を感知。


『ご主人様、モンスターの臭いが右と正面から来ます。物凄い数ですが……』


 ママニの血文字だ。

 高台となった岩場の上からだ。

 ママニはハヴォークの弓にシシクの矢を番えた状態。


 宙に浮かぶ血文字で連絡を寄越してきた。

 俺はママニの血文字を見ながら、皆に向けて、


「モンスターが来たぞ」

「ルシヴァルの力を見せようぞ! 我が前に出る」

「フォローします」

「ボクだって、できる! もうルシヴァルの剣士なんだ!」

「にゃお」


 黒豹のロロディーヌはサザーに挨拶。

 素早く水双子剣を構えて剣士の宣言をしたサザーの隣に移動した。

 相棒は、サザーに対して悪戯をするのか? 


 と、思ったらしない。

 小動物を守るような行動だ。

 相棒的には、きっとサザーの母の気分だろう。

 黒豹ロロはサザーのことが好きだからな。


 相棒が珍しく俺ではなくサザーを優先したことに少しショックを受けたことは言わない。


「……それじゃ、俺は少し違った遠距離戦を楽しむとするか。ピュリンも高台にいくか?」

「はい、近距離より遠距離のほうが得意です」

「了解」


 小柄のピュリンから視線を外し周囲を見る。

 高台となる岩場を見つけた――。

 狙いは上部の岩だ。

 左手を翳し<鎖>を出す――。


 威力を調整した<鎖>の先端ティアドロップが岩場の上方に刺さる。

 岩場に刺さったアンカーの<鎖>を少し引っ張り強度を確認。<鎖>はびくともしない。

 よし――片手をピュリンの腰に回して強引に「きゃっ」と可愛い声ごとピュリンを抱き寄せる。


「使者様……」 


 彼女は勘違いした。

 可愛らしく目を瞑る。

 面白い奴だ。今はキスはしない。

 俺は左手首から伸びた<鎖>を<鎖の因子>マークへ引き込んだ――一ピュリンを片手に抱えた状態で高台へとスムーズに移動。


 高台の地に膝を当てるように着地した。

 ピュリンを降ろす。


「凄い、魔法のような移動方法です」

「まぁそう見えるよな」


 ここはママニが見張る高台とは、反対側の高台。

 体勢を低くした。

 ピュリンも体勢を低くしながら――。

 自身の手首から伸びた骨筒を構えた。


 その高台の上から血文字でメッセージを、


『各自、俺は左の岩の高台だ。黄土色の岩の天辺。ここから狙撃戦に移る』


 と、メッセージを送ったあと――。

 右頬のちょい上にある十字架風の金属アタッチメントを指で触る。


 いつものようにアタッチメントは卍に形が変わったはず。

 そして、右目に硝子素子のようなモノが流入。

 カレウドスコープを起動した。

 現実を映す視界にフレームが追加。

 右手首を胸元に運んで、腕輪型のアイテムボックスの丸い表面を見る。

 時計の風防のような表面のアイテムボックス。

 四つ眼の宇宙人とメニューが映るが素早くフリック操作。

 指の腹で表面をタッチして弄る。


 素早く、そのアイテムボックスの画面からビームライフルを取り出した。

 前にも見たが――カッコイイ銃だ。


 異質な金属と粘液のようなモノが螺旋状に水晶の中にある球体に巻き付いている。

 スケルトンの銃身被筒からは三日月マークの金属が銃の発射口へと細く伸びていた。


 この素晴らしい銃に合わせるとしよう。

 近未来風の流線を保った渋さを意識――。

 戦闘服のガトランスフォームに切り替えた。


 そこに、


『了解』

『承知』

『この血文字、便利です。あ、ご主人様のその鉄杖、ずっと前に中庭で実験していた物ですね』

『お、目がいいな、というか眷属だし、視力も上がってるか』

『そうみたいです』


 血文字で<従者長>たちから連絡が来る。


 ついでにエルフの彼女を調べてみるか。

 視界に映るフーの体を縁取る線の上にある▽のカーソルを意識。


 ――――――――――――――――

 ????ド???ヌス・ルシヴァル高>元ex88

 脳波:???

 身体:???

 性別:雌??

 総筋力値:12????

 エレニウム総合値:465111232?

 武器:あり

 ――――――――――――――――


 ロロと同じような感じだ。識別できないらしい。

 眷属化したらバグって読めなくなった。

 その表記を消す。


 そして、長口径のビームライフルを構えてスコープを確認した瞬間――。

 ビームライフルの後部から細い金属管がにゅるっと伸びて右頬の上に備わる卍型のアタッチメントに付着し合体した――。

 

 ビームライフルと一体化だ。


 昔と同様に視界が更に進化した。

 ヘッドマウントディスプレイ。

 視界の端に値が上下しているメーターがある。

 狙いのカーソルは俺の目の動きと完全にリンク。


 ――そのスコープを動かした。

 ママニの顔でも見よう。


 ズームアップしたフレームの視界でママニのリアルな虎顔を確認。

 髭の根元の白い斑点の毛穴がとてもカワイイ。


 家の門番をするアーレイの大虎を思い出す。


 虎獣人ラゼールの姿を縁取る線もリアルだ。


 次は左下にスコープを動かす。

 ビア、サザー、ロロ、少し下がってフーの姿を見た。


 フーは肌と密着した白甲殻のブリガンダインを装備。

 セーターニットが包む胸の膨らみって感じで、すこぶる魅力的なフーだ。

 んだが、ズームアップはしない。


 紳士だからな。

 脳内裁判の原因となるエロ悪魔の『生意気な思考ですな』というおっさん声が聞こえたような気がした。

 ダレダヨというツッコミは入れない。


『閣下、最近、フーがお気に入りなのですか?』

『そりゃ、愚問だ』


 気にせず、スコープの位置をモンスターの反応がある場所へ向ける。


 アイテムボックスの簡易地図ディメンションスキャンとカレウドスコープと連動した視界。

 このまま未来型戦闘スタイルで待ち構える。


『敵が現れました。まるで森が侵食してくるような……幹がある樹木、葉の集合体、見たことのない植物型のモンスターの群れ。こちら側の動きを感知しているらしく一直線に向かってきます。シシクの挟み戦術を提案します』


 戦術はシシクの矢のことか?

 分からないが、挟みという言葉から高台に居る俺&ピュリンとママニで挟み撃ちを行う戦術かな?


『……各自、ママニの報告通り、そのシシクの挟みを用いて戦闘開始だ。ルシヴァル第零八小隊としての力を発揮せよ』 


 そんな小隊名はないが、メッセージを伝えた。


「ピュリンも、モンスターを狙える距離にきたら攻撃していいからな」

「はい」

 

『承知』

『ボクたち、ゼロハチ小隊?』 

『気にするな』


 俺の視界にもモンスターの姿が見えた。

 スコープ越しにも、その植物型の姿を捉える。

 姿は大きい。にゅるにゅると枝触手が集まったような姿。

 触手から生えた緑色の葉っぱを周囲へ吐くように撒き散らしながら前進していた。


 毒系かもしれないが、俺たちに毒は効かないだろう。


『毒系かも。気を付けるように』


 一応、伝えておく。


『了解』


 ママニがシシクの矢を植物型の根元に直撃させていた。

 矢を喰らった植物型のモンスターは、根元から凍るように幹が硬直していく。


 その硬直した植物型モンスターの幹にビアが<投擲>した投げ槍が直撃。 

 投げたビアは、セボー・ガルドリの魔盾を掲げると、


「キショエエエエエエエエ!」


 ビアは挑発のように叫んでいた。

 ここまで届く音量なので相当な音だ。

 まだ植物型モンスターの数は多いが、一手に攻撃を引き受けるつもりらしい。


 サザーはそのビアの後方から遅れて前進。

 黒豹ロロも動く。


 俺も左手で支えるようにスケルトン銃身を壊れない程度に握り、引き金に右手の指を当てた。

 ビアに植物型モンスターが繰り出した無数の枝触手が向かう。

 その状況を把握しながら、引き金を押し込んだ。

 ――銃口から放たれる太い光条線と独特な射出音。

 太い光条線は植物型モンスターの幹と思われる部位の中心部を貫く。


 ――幹は太いが風穴が開く。

 

 そして、その大穴を縁取りながら自然と発火が進んでいった。

 瞬く間にサーカスでライオンが潜るような火の輪が形成されると、他の樹皮へと炎は伝わる。

 無数にあった触手の枝葉にも烈々とした勢いで燃え移るさまは激しい。断末魔的な声が響き渡ると、その火達磨と化した植物型モンスターは動かなくなった――いけると判断。


 次の植物型モンスターへ狙いをつける。

 引き金を押し込んで――。


 ――太い光条線を生み出す。

 心地いいビームの射出音だ。

 そのビームが直撃したモンスターは同じように燃えた。


 視界に表示されたエレニウムエネルギーを二つずつ消費した。


 が、構わない――。

 この独特の耳に木霊する射出音がたまらない――。


 次々と引き金を押し込む――。

 モンスターを仕留めていった――。


 ピュリンも両手首の骨筒から骨針の弾丸を無数に飛ばす。

 俺がプレゼントしたセレレの骨筒を装着した腕は長い……。


 先端が少し光っている?

 骨針の弾丸を喰らった植物型モンスターは根元に穴が多数空いて転倒して、動きを止めた植物型のモンスター。


 ピュリンもフォローが絶妙だが、まだまだ植物型の数は多い。

 前衛が囲まれた状態だ。


 そこに、ママニが高台から駆け下りる姿が見えた。

 彼女は黒鎖と繋がる大型円盤武器アシュラムを持つ。


 接近戦に加わる気だろう。

 エネルギー消費のこともあるし、俺も接近戦に乱入しようかな。


「ピュリン、ここで援護射撃をしていろ。俺は接近戦に移る」


 ビームライフルを持ちつつ地面へ向けて左手を翳す。

 

「はい」


 右頬の上にある卍の形のアタッチメントと細い金属製の管は繋がっていたが、その金属製の管が外れてビームライフルの後部へと自動的に吸い込まれる。

 


 俺は翳した左手首をガンスコープに見立て――。

 ガトランスフォームの<鎖>の穴から勢いよく<鎖>が飛び出る瞬間を凝視、いい具合に左手首から飛び出た<鎖>のティアドロップ型の先端が、地面に深く食い込むのを視認。


 伸びきった<鎖>を少しクイッと手前に引っ張り……。

 よし、固い感触だ――と、強度を確認。

 そのまま一直線に伸びた<鎖>を左手首の<鎖の因子>のマークに引き込みつつ――俺自身もターザンの如く――。

 

 その<鎖>の先端が刺さった地面へと移動した。 

 蜘蛛を手首に引き込むスパイダーマンの如く地面に着地すると同時に手首から地面に垂れていた<鎖>を消失させた。


 視線を上げて――フーの位置を把握。


 フーは土属性の魔法を植物型モンスターへと射出。

 その現場に向かった。

 魔法を放ったフーに枝の触手の群れが迫る。

 ビアが対応――刃が湾曲したシャムシールシャドウストライクを振るった。

 振り下げから――振り上げる速度が速い。

 シャドウストライクの刃が植物の枝の触手を切断。


 ――スキルか?

 ビアは前衛らしく後衛のフーを守る。


 フーに迫った植物の枝は散るように切断された。

 続いて、植物型モンスターに直進したビア。

 右からフックのパンチを行うように魔盾を振るう。


 植物の幹を折るように魔盾が直撃。

 植物型モンスターを見事に吹き飛ばした。

 そこに跳ぶように移動していたサザーが前に出る。

 身軽なサザーは水双子剣を真横の宙をなぞるように振り抜いた。

 ――植物型モンスターの根元をばっさりと斬る。

 植物型モンスターの根元の切断面は滑らかだ。

 サザーの剣術の腕は素晴らしい。

 が、そんな水双子剣を振り抜いたサザーの着地際を狙うように他の植物型モンスターたちの攻撃が集まった。


 しかし、黒豹ロロがサザーを守るように触手の枝たちの前に立ち塞がった。

 凜々しい黒豹ロロディーヌは体から出した黒触手の群れを宙空へ向けて放射状に展開――。


 相棒の黒触手から出た骨剣が枝の触手の群れを撃ち落とす。

 そんなサザーを守る相棒に対して、四方八方から植物の枝の触手が迫った。

 が、相棒の触手骨剣は強く、無双だ。


 すべての枝の触手は骨剣に、貫かれ、裂かれて、破壊、粉砕された。

 神獣の守りと攻撃は圧巻だな。

 俺的には、相棒の触手の裏にある肉球ちゃんが気になる。

 

 前足と同じように、掌球の下に、狼爪と手根球があった。

 ポツネンと一つだけある手根球の存在は、ナカナカの可愛さだ。

 その可愛い臭そうな肉球ちゃんを褒めるように、


「――さすがは相棒っ」


 と、叫んでいた。

 左手に神槍ガンジスを召喚。

 が、相棒の黒豹ロロに対して攻撃をしたことは許さん!

 そのサザーと相棒を攻撃した、触手を繰り出していた植物型モンスターたちを凝視。


 ――狙いを付けて――。

 魔脚で地面を強く蹴った。

 前傾姿勢での突貫――。

 植物型モンスターたちとの間合いを瞬時に潰すイメージ――。

 左方の植物型の根元へ飛び蹴りを噛ます――。

 ――太い幹をぶち折った!

 よっしゃッと――折ってからの三角蹴りの応用――。

 隣の植物型モンスターの側まで飛ぶように移動、槍圏内に入った直後――。

 地面を壊すイメージの踏み込みと連動する体の回転力を活かす――。

 体内の膨大な魔力を神槍ガンジスの一点に注ぐ。

 

 ――激烈な<刺突>を植物型モンスターの根元に喰らわせた。

 ――振動する月矛が植物型の根元を穿つ。


「ギョバァァ」


 不気味な悲鳴だ。 


 更に、ガンジスの柄に備わる蒼毛の槍纓が自動的に蠢く。

 今までは魔力を与えれば動く程度の認識だったが違う。

 瞬間的に、槍纓は鋭い蒼刃の群れに変質した。


 神槍ガンジスの月刃の穂先を中心に――。

 円錐の後部を描くような蒼刃の群れが――。

 ぐるりぐるりと凄まじい螺旋回転をしながら周囲に展開。


 蒼い螺旋模様を宙に描く槍纓の刃は――。

 ガンジスで貫いた植物型モンスターをバラバラに切断。

 大魔石ごと切断か?

 と、心配したが、ちゃんと大魔石は地面に落ちた。


「……威力が凄い。ロロに攻撃しやがってと、怒りと魔力をかなり込めたからかも……」

「――主に負けていられん!」

「ボクだって!」

「やりますよ」


 乱戦に発展。敵の植物型、数が増えたか?

 ピュリンの援護射撃で植物型モンスターが動きを止めたところに、サザーの斬撃と黒豹ロロの触手攻撃が決まったところが視界に映る。


 右手に持ったままだったビームライフルを地面に置く。

 その僅かな間にも、モンスターが放った触手の枝が迫ったが――。

 それらの触手枝を避ける。

 片手で地面を突く機動から側転を実行――。

 触手の枝の攻撃を連続的に避けつつ指輪を触る――。


 沸騎士を召喚。


『ヘルメも出ろ』

『はい!』


 側転後、左目から飛び出た液体ヘルメは空中で人型になると空中に浮遊しながら、氷の環を生成。

 環から氷礫を扇の方向へ乱射していく。


「――閣下、ゼメタスであります!」

「閣下ァ! アドモス、見参」

「よ、この状況だ、分かるな」

「お任せあれ!」

「お任せを――」


 鎧からぼあぼあを沸騰させる沸騎士たち。

 彼らは俺を守ってくれた。

 方盾を構えながら、俺の左右に仁王立ちになる。

 無数に迫る触手枝を方盾で、傷を負いながらも叩き落としてくれている。


 ……彼ら沸騎士の背中が大きく頼もしく見えた。

 馬鹿ヤロウが、凄くカッコイイじゃネェか!


「よくやった、沸騎士たち」


 と、褒めてから魔脚で地面を蹴り、渋い沸騎士たちを迂回。

 触手群が依然と、俺のことを追い掛けてくるが、その触手を避けて掻い潜り俺も乱戦に混ざった。


 そこに、


「きゃぁ」


 フーの叫び声だ。

 彼女の白甲殻のブリガンダインの防御が甘い箇所に鋭い触手枝が突き刺さって体に絡まれてしまっていた。

 おっぱいの形が丸分かりだ。

 触手枝は血を吸っているように蠢いている。


「こんなものっ」


 彼女はヴァンパイアらしい血管が目元に浮かばせた。

 怒りの表情っぽいが色っぽさもある。

 絡まった触手枝を、自身の口から伸びている鋭い犬歯で噛み切った。

 フーは体を悩ましく縛っていたケシカラン触手枝から自力で脱出していた。


 昔なら、あの貫かれ絡まれた時点で死んでいたかもしれない。

 肌が白いエルフのフー。

 双眸を赤く染めているルシヴァルのフーは、新体操のバトンでも扱うようにバストラルの頬をくるっと回して杖の先端を植物型モンスターに向けた。


 フーはルシヴァルで得た魔力を短杖に込めた。

 バストラルの頬から大量の礫を飛ばしていく。

 触手枝の攻撃を伸ばしていた植物型モンスターはフーの礫をもろに喰らう。


 礫の乱射によって緑の塵となって消失。


「――フー、ご主人様の力を分けられたからといって過信するな!」


 小隊長の雰囲気を感じさせるママニの言葉だ。

 彼女は特異体に変身を遂げていた。


 血色のオーラを巨大化した虎獣人ラゼールの体から、発生させながらの突貫。


 右腕の巨大化した拳で正拳突きを行う。

 植物の幹を拳が貫く――幹は破裂したように粉砕した。


 見事だし、すげぇ威力だ――。

 思わず敬礼したくなる。


 が、周りにいた植物型モンスターから一斉に存在感のあるママニに対して枝触手が向かう。

 体の防御が甘い箇所に枝触手群が大量に突き刺さった。


 ママニの体から血が迸る。

 背中に戻していた大型円盤武器アシュラムを使っていないから、ママニの油断だな。


「……くっ、痛みは普通にあるのだな……すまない、フー。わたしもご主人様に戦闘を見てほしくて調子に乗っていた。過信だろう。が、この<髭力>の切り札をご主人様に見てもらういい機会だ!」


 彼女は魔力を顎に集中させる。

 その瞬間、顎髭たちが巨大化――!? 

 髭と連なった大虎たちが出現。

 不思議な顎と繋がった大虎たちが蠢きながら、ママニの体に刺さり絡まった大量の触手群を噛み砕き喰らっていく。


 体の自由を取り戻したママニは吼える。

 同時に、彼女の髭から生えた大虎たちが、サンタを引っ張るトナカイのように前方に駆けていた。

 凄まじい勢いでママニの髭から伸びている大虎たちが暴れた。


 触手枝を引っ掻けるように噛み付き喰い散らかす。

 そして、枝から根元までをガリガリ鋼を壊すような音を立てながら、幹までも喰い破っていく。


 髭から大虎を放っているママニ本人も大型円盤武器アシュラムを<投擲>。

 他の植物型モンスターの枝を切断していた。


 凄まじい強さのママニは大丈夫だ。

 もう片方の前線へと視線を移す。


 ビアは魔盾を上手く用いているから傷を受けていない。

 数体の植物型モンスターを受け持ちながら奮闘していた。


 あそこに混ざるか。


 俺はそのビアの周りを衛星のように<鎖>を使って飛び回っていく。

 重戦車を彷彿とした蛇人族ラミアのビアをフォローする戦い方だ。


 だが、俺も出る時は出る――。

 間合いを詰めた俺は、近距離の位置から、短く持った神槍ガンジスと魔槍杖バルドークによる<刺突>と<闇穿>を喰らわせた。

 遠距離からは――。

 

 <夕闇の杭ダスク・オブ・ランサー>を用いる。

 光魔ルシヴァルだが、光を除去する勢いで、闇という闇の世界を<夕闇の杭ダスク・オブ・ランサー>だけで<始まりの夕闇ビギニング・ダスク>を構築する勢いで<夕闇の杭ダスク・オブ・ランサー>を連続射出。

 

 ドドドドドドドドッ――。

 と、鈍い音が響きまくるが、構わず、無数の植物型モンスターを蜂の巣にしてやった。


 続いて――。

 《氷矢フリーズアロー》を無数に放つ。


 が、調子に乗りすぎた。

 素早い植物型モンスターもいる――。

 そんな時は――「ビア――」「主、我を利用しろ!」「了解――」といったように――ビアの陰に隠れる――。

 一瞬|闇壁《ダークウォール》の魔法を想起。

 が、止めて<光条の鎖槍シャインチェーンランス>をビアの背後、もとい、横から射出した――光槍が植物型の動きを止める。

 ヘルメも水の保護膜の魔法をビアの片側に掛けてフォロー。

 そこにピュリンの骨針のフォローを受けた沸騎士も加わった――。

 

 ビアと盾使い同士のコンビネーションを見せて連携に加わる。 

 一方黒豹ロロはサザーを守る。

 時々、神獣としての黒馬か、黒獅子に近い姿に変身していた。

 優しい相棒だ、自らを盾にしてサザーを守る姿は、まさに小柄獣人ノイルランナーの母か! 相棒は腹にピンクのおっぱいがあるからな。

 小柄獣人ノイルランナーのサザーがミルクを飲むとは思えないが――。


 俺のアホな感想を否定するように――。

 巨大な相棒は、野獣感溢れる凄まじい形相で着実に一匹ずつ植物型を噛み砕いて喰っていた。


 こうして、森が蠢くような植物型モンスターたちを皆で協力して倒す。

 最終的にすべての植物型モンスターを倒しきった。


「やりましたー」

「にゃ」


 サザーが相棒に抱きついている。

 胸元の毛は柔らかいからな。

 皆も喜ぶ。


「「えいえいおー」」


 皆の鬨の声に耳をピクピクさせた相棒が――。


「にゃおおおお~」


 と、の声が轟く――。

 地面に無数の大魔石が転がっていた。

 数が数だけに、少し怪我を負っていたが、いい感じに殲滅できた。


 さて、回収だ。

 魔石の中に混じるように置いてあるビームライフルの場所へ戻り、そのライフルを拾いアイテムボックスの中に仕舞った。


 次は無数に落ちている……この魔石群だ。

 いいことを思いついた。そのまま、皆がいる方向へ顔を向けて、


「……競争だ。魔石を一番多く拾った者に、ロロから肉球パンチをプレゼントしてやろう!」

「――にゃお」


 黒豹ロロが一足先に触手で魔石を拾ってくれた。

 ロロディーヌがトップだった場合どうしよう。


「使者様ーー」


 あ、高台にいるピュリンを回収しにいかないと。

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