二百二十三話 白銀宝箱の中身
守護者級の極大魔石を回収。
それ以外は、すべて大きい魔石だった。
軍団規模で出現した巻き角と蒼炎の髪を持つ獅子獣人モンスターの、大きい魔石の数は大量だ。
回収した魔石を纏めてアイテムボックスの中へと放り込む。
アイテムボックスに魔石を納めて、宇宙文明からのご褒美を得るのは、いつか行おう。
さて、宝箱を調べる前に、沸騎士たちにも、
「沸騎士たち、前衛の仕事ご苦労さん。ありがとな」
「滅相もありません! 閣下に貢献できたと思うだけで、内なる煙が滾りますぞ!」
「我らの魂は閣下のモノ、閣下に貢献できたと思うと……」
沸騎士たちの意気が揚がる。
〝ぼあぼあ〟の煙も勢いがある。
気持ちが高まっている証拠か。
「それで、宝箱から出たアイテムとかは要るか?」
「……我らには必要ありませぬ」
「アドモス、不遜なる言葉だ。ですが、閣下……わたしたちの使用する愛剣は、魔界の上等戦士共を屠り続けた名剣・黒骨濁。そして、愛盾・黒骨塊魂があるのです。次に、鎧の……」
塊魂? あの不思議なテーマソングが……。
蘊蓄が長くなったから省略。
「で、ありますから他の武具など……要らないのです。そもそも魔界には運べませぬ故」
「そっか、よくわかった。魔界に帰っていいぞ」
「はい。逝ってまいります」
「閣下ァァ、逝ってまいります」
消えながら魔界へと旅立つ沸騎士たち。
今回は切腹はしなかった。
すると、
「にゃんおお」
頭部を数回震わせるように上下させて鳴く
両目を
「白銀の宝箱を開けよう」
「ん、楽しみ」
「ご主人様、鍵はお任せを」
レベッカ、エヴァ、ヴィーネは傍に来た。
「ンン、にゃっ」
白銀の宝箱の縁に頬を擦りつけていた。
相棒は自身の匂いを宝箱につけて縄張りを拡大中だ。
レベッカは目を輝かせて、
「ロロちゃん、可愛すぎ~。擦りすぎて頬の形が変わっているし?」
そう喋りつつ
「にゃんおぉ~」
怒ったらしい。
尻尾を握ったレベッカの足へ肉球パンチを放っている。
ユイは短い黒髪を揺らして、
「これが迷宮の宝箱なのね。初体験だからドキドキする」
宝箱の周囲を楽し気にスキップしている。
「うん、凄く、ワクワクする……手が止まらないわ。この感覚は何?」
精神を加速させろというヤツか?
ミスティはレベッカタイプだったのか。
宝箱を見る双眸には幾筋もの血の筋が……ヴァンパイア顔と化している。
羽根ペンを持つ手が震えたように動いて、メモ帳に何かを書いていた。
「ミスティ殿、凄まじい情熱ですな」
渋い表情のカルードだ。
ミスティの書く姿を見て興味を持ったらしい。
「うん、宝箱、初めてだから……」
ぎこちなく笑うミスティ。
ミスティが持つ羽根ペンを持つ手の動きは止まらない。
カルードは優しい表情を浮かべてミスティを見つめる。
そのカルードは、倒した守護者級の素材、白タイル風の甲羅の皮膚をミスティに渡していた。
その際に仲良くなったようだ。
白銀の宝箱の前に全員が集結。
四眼ルリゼゼも近寄ってくる。
『閣下、あの四眼ルリゼゼはタフで強者です。部下にしましょう』
小型ヘルメが腰に手を当てながら語る。
『確かに強いが……』
いきなり部下はない。
それに後回しだ、宝箱が先。
「ではヴィーネ、鍵と罠の解除を頼む」
「はいっ」
いつものヴィーネに頼む。
そのヴィーネは自信がある表情を見せる。
銀仮面を外して銀髪の上に仮面を乗せてから、宝箱の前で屈んだ。
鍵穴をじっくりと覗いていた。
そのヴィーネは、鍵穴の種類を把握したのか、
かちゃかちゃと鍵穴から音が響く。
少し鍵を開けることに苦戦しているのか、針金を折った。
もう一度、鍵穴に針金をさし込む。
綺麗な青白い指が持つ針金を丁寧に操作していった。
「わたしの出番?」
ミスティがそう言った瞬間、カチャッと鍵があいた音が響く。
「ご主人様、成功しました!」
「良くやった」
ヴィーネは、『やった~』と心から喜んでいると分かる表情を浮かべていた。
よほど嬉しかったらしく抱きついてきた。
美女のハグはたまらんな――。
ヴィーネの背中に手を回してハグを返す。
温もりとバニラの匂いを堪能。
胸ベルトの感触もあるが、おっぱいがいい!
柔らかいおっぱいさんは最高だ。
このまま、スタイル抜群なヴィーネの体を抱きしめ続けていたい。
が、両肩を持ちヴィーネを離した。
その直後、
「あー、わたしもー」
レベッカも抱きついてくると、シトラス系の香りが漂う。
風呂上がりの艶を感じさせる綺麗なデコルテをペロッと舐めたくなるが、我慢。
レベッカは目を瞑ってキスして来ようとしたが、
「こら、それは帰ってからでしょ」
ユイのツッコミが炸裂。
そのユイも目が熱っぽい輝きを示していた。
抱きついては来なかったが、気持ちは分かる。
キス顔を止めたレベッカは小鼻が可愛らしく拡がっている。
興奮しているらしい。
「……そう興奮するな」
小柄のレベッカの撫で肩に手を置き、強引に体を引き離した。
「えぇ~、喜んでるくせに~」
「ん、シュウヤもてもて――」
エヴァは、天使の微笑を見せてそう語る。
と、一瞬で足を踝に車輪が付いたversionにスモールチェンジさせながら、抱きついてきた。
エヴァの隠れ巨乳の感触が、革の服から直に伝わる。
大きく軟らかいマシュマロを押し付けられているような、とても良い感触だ。人を癒やすことが可能なおっぱいさんは偉大だ。
自然とくびれた腰へ手を回していた。
エヴァは
そんなエヴァの黒髪を見ると、その艶が増したように感じた。
「ん」
エヴァは、またも天使の微笑を浮かべてくれる。
俺も応えて笑顔を見せると、エヴァが離れた。
そのエヴァは足にある車輪を活かすように、その場でスピンしながら華麗に回転して離れていった。
宝箱の影響か、激戦を制した影響か、前と同様に皆、興奮しているらしい。
ミスティはこの一連の行動には加わらず。
彼女なりの癖、糞を連発しながら宝箱の絵を描いていた。
一方、カルードは
その視線に釣られて
くっ、可愛い。
カルードは皆がいる手前か、初めて
クールな態度だが、我慢せず、猫好きなオヤジ顔を見せればいいのに。
さて、肝心の宝箱だ。
「……可愛いが、今は宝箱だ――あけるぞ」
「あ、うんっ」
「はいっ」
「了解」
「ん」
「準備はできているわ。でも、羽根ペンのインクがなくなりそう」
皆の言葉を聞きながら白銀の宝箱の上げ蓋を開ける。
おおおぉぉぉ――。
凄まじい、光彩陸離の美しさを感じさせる宝。
お宝が満載だ!
武器類が……。
赤色の鱗の鞘が目立つ長剣、柄も雰囲気がある。
刃が太く、模様入りのアジアンな長剣。
白と闇の魔力が漂う鞘に納まった日本風の太刀。
象嵌が入った鞘に納まる小烏丸。
一対の緑色の金属の
その手斧の一対の柄頭は、赤い魔力を帯びた紐で繋がっている。
挟みの両刃がセットの鋼鉄武器。
穂先が方天画戟と似た柄が白銀色で渋い魔槍。
魔槍ってより、神々しいから、もしかして……。
ま、今は魔槍でいいか。
そして、穂先の根元の螻蛄首と口金には……。
何かを嵌められるような僅かな窪みがある。
更に、槍纓が備わっていた。
蒼色の髪の毛の房か。
俺の知る古代中国の槍や矛にある槍纓は、返り血で手先が滑るのを防ぐ役割を持つんだったかな。
白い
先端に炎を纏っているメイス。
握りに年季を感じさせる布が巻かれてあった。
グリップがしっかりとしてそう。
ダマスカス鋼と似た刃を持つジャマダハル系の格闘武器。
防具類が……。
「お宝ァ! 凄い、興奮しちゃう! 色んな宝物だらけ!」
「……お宝! あの白銀色の鉱石は
レベッカ、ミスティは大興奮。
俺も興奮しているし、両者の気持ちはよく分かる。
その思いで防具類を凝視。
気になったのは、暗緑色を基調としたコートのセット服。
それと硬そうな黒色の革靴。
その黒色の革靴もそうだが……。
暗緑色の厚い布か、厚い革を活用したコートの防護服は、すべての部位に魔力を内包している。
素晴らしい出来栄えの防護服だ。
襟と肩と背に繋がるケープとフード。
首の襟の一部には、枝と葉から花が咲いた金の装飾が施されてある。
肩のケープかポンチョ系の肩には金属甲が装着されてあった。
胸と腹には留め金と小さいベルトが均等に並び付く。
ベルトが伸縮して衣服を着る者の大きさに合わせて自動調整されるような機能でもあるんだろうか。
節々に金糸を用いた襟と同じデザインの刺繍がピンポイントに施されてあった。
肘は柔らかい素材が使われている?
籠手には胸にあるベルトの金具と同様に鋲のような金具があった。
一つ一つの金具と鋲も職人が入念に時間をかけて象嵌したようなデザインで、すこぶる格好いい。
このコートの防護服は体格的に俺と合いそうだ。
<鎖>の位置は塞がるが……穴をあければ使えるだろう。
他にも女性陣に似合いそうな防具と服は色々とあった。
紅色の羽と黒色の羽で作られた綺麗な上服とお洒落なスカート類が数着。
白色の甲殻のフード付き外套が数着。
バイザーがある白色の甲殻のアーメット。
白色の甲殻の小手、革手袋、白色の甲殻が目立つレザーアーマー。
白色の甲殻のブリガンダインは、甲殻の両脇が大きめの鋲でしっかりと留められている。
ガーターベルトの高級そうな黒色の革パンツ。
白色の甲殻の靴。
羽付きの小さい女性靴、黒色の革ブーツ。
そして、大きな凹型のシールド。
生きた複眼が中心で蠢く魔盾であり、古代ギリシャのスパルタの重装歩兵が持つようなポプロンの盾と似ている。
その他が……。
ポーション各種、血塗れた巻物、額縁、巨大冷蔵庫。
銀色の腕輪、黒い指輪。
黄色い宝石が目立つネックレスが三つ、黄緑色の宝石が目立つネックレスが二つ。
ダイヤモンド系の宝石がついたイヤリングが五つ。
金色や銀色の宝石、白銀色の鉱石、黒鋼インゴット、虹色の鋼インゴット。
金糸、茶色い布、黒ベルト数種類。
怪しい黒い人形、インクが入った瓶。
旗布、青白い釣り竿、鉛筆、野球帽子が二つ、腰に着けるポーチ。
ポーションとは違う液体が入った瓶。
ベージュを基調とした化粧品らしきパレットが数種類とセットのアイペンシルのような筆。
紅いインク瓶、ミステリーカラー色の液体瓶、眼鏡。
魔法印字が彫られた謎の石板。
魔宝地図が二枚。
真っ黒い鋼球が五つ納まった箱。
丸型の専用箱の中心に納まり蠢いている謎の心臓。
真ん中に小宇宙のような黒いモノが揺らめいて見える四角い水晶体。
真っ黒い超薄型鋼板。
『……閣下、全部の品から魔力を感じますが、特に、四角い小さい水晶体が一番ですね。あの中心にある暗闇、深淵の部分に膨大な魔力が内包されています。それ以外は、人形が禍々しい……。この人形だけは触らないほうがいいです』
たしかに怖いし、恐怖を感じる。
人形は、誰も触らないだろう。ハッキリと分かる呪いの品だ。
俺は野球帽子のアイテムを注目。
迷宮都市ペルネーテの迷宮、いや、邪界ヘルローネへと直に転生してきた野球好きの転生者でもいたのだろうか。本当にプロ野球選手が転生者にいたとか?
そんな転生者が
『そうだな、まぁ、鑑定を楽しみにするか』
『はい』
「ん、金属発見」
エヴァは興味のある金属だけに反応していた。
「ご主人様に似合う魔槍らしき物がありますね」
ヴィーネは自分のことより俺が装備するであろう槍が出て嬉しそうだ。
「わ、凄い!
ユイも興奮。
日本にあるような太刀が
カザネではないが、東方の島のどこかには、本当に米の稲が生えていて、栽培されているかもな。
鏡があるんだし、いつかは……。
神獣ロロディーヌで
もしくは、巨大船を買って……。
大航海時代のピーリー・レイースを目指すか?
なんちゃって海賊を行いながら大海原を航海とか?
「おぉ、素晴らしきかな、素晴らしきかな、珍しい両刃の刀と思われる物もありますぞ」
興奮した渋い声で、俺は妄想世界から呼び戻された。
そのカルードは
四眼ルリゼゼも眼帯を装着した頭部を斜めに傾けて、二つの眼で宝箱を覗く。
そして、
「これが宝箱の中身。本当に色々なモノが入っているのだな」
そう語る。俺は頷いて、
「レベル五の地図だからな、そりゃ豊富だろう」
と語り、皆に向けて、
「あ、その人形は触るなよ。見た目といい禍々しい魔力が放たれているからな」
「言われなくても分かってる。鑑定前に取るんだし」
「ん、当然、呪いの品らしきモノには触らない」
レベッカは両手を腰の端に当てながら胸を張る。
エヴァも『当たり前』という顔付き。呪いの品か。俺なら、触れても大丈夫とは思う。
闇属性的に、
だが、触れるのは止めとこう。
「はい、魔力からして分かりますからね、呪いの品は」
ヴィーネも頷きながら答えていた。
「不気味な人形ね、斬っとく?」
ユイは刀の鯉口に手を当てながら語る。
「いや、売れるだろうし、いいよ」
「呪いだけど興味深いわ……」
黙っていたミスティの発言だ。
スケッチブックに宝箱の様子を細かく書いている。
「各自、欲しい物を取っていい」
「了解っ、貴族が使いそうな化粧品も気になるけど、わたしはこれね」
レベッカが手に取ったのは銀色に輝く刃を持つジャマダハル系の格闘武器。
ついに接近戦をこなす魔術師になる気か。
動きは素人だが、武術を学ぶかも知れない。
ま、飽きっぽい印象を抱かせるレベッカだ。
その武術が長く続くかは分からないが、光魔ルシヴァルの<
俺のような宗主級の成長力はないと思うが。
「ん、金属」
「あ、エヴァはそれね、じゃあ虹色のインゴットを貰うわ」
エヴァは白銀色の金属を選び、ミスティは虹色の金属を取った。
「わたしは勿論、この刀――」
「では、わたしは――この両刃らしき刀を貰いまする。これでマイロードに貢献しよう」
ユイは青白い魔力を放つ日本刀、カルードは両刃の刀である小烏丸を選択し、取っている。
「では、赤色の鱗の鞘が目立つ長剣を」
ヴィーネは長剣を取った。黒蛇はまだ使うとして、銀鋼の剣は
「俺は白銀の金属の方天画戟と似た渋い槍をもらおうか」
その方天画戟と似た槍を宝箱から取り出した。
少し後退しつつ、新しい槍の演武を開始――。
柄の感触を確かめるように――手の内の中で柄を滑らせた。
穂先と螻蛄首と太刀打の部位は、いい重さだ――。
手首の上で、柄を撫でるように回しつつ槍を縦回転させた。
白銀に近い金属の柄の握り手を左手に移す――。
握る指先を若干緩めつつ方天画戟の穂先を真っすぐ伸ばす。
穂先の形と具合を確認。
バランスは悪くない。
そのまま矛先で宙に流線を描くように回しながら前進。
方天戟の柄の下にある魔力を内包する蒼い槍纓が揺れる――。
綺麗な蒼い軌跡が視界に残る。
方天戟を左から右へ動かしつつ――。
矛の両側に付く月の形をした月刃を活かすとしよう――。
真横へと薙ぎ払い――。
同時に、爪先を軸とした横回転を行う――。
足下からキュッとした音が響く。
と同時に回転しながら持ち手を右手に移し替えてから動きを止めた。
――動から静を意識。
一瞬の間を作り、目の前に架空の敵をイメージ。
「わぁ……」
レベッカの感心するような声が気持ちいい。
彼女の姿を見たくなったが見ない。
直ぐにイメージした相手の胸元を突き刺すように<刺突>を繰り出す。
またも動きを止めた。
一歩、左足を前に踏み出した状態の静止。
右手が握る方天戟が真っすぐ前方へ伸びた状態だ。
試しに白い金属棒へ魔力を浸透させる。
刹那――鋭そうな穂先が振動?
更に、蒼髪のような槍纓が意識を持つように蠢く。
繊維のような束が宙に浮くように動いた。
「……面白いな。この槍自体も奥が深そうで、悪くない」
「格好いいシュウヤやん! 訓練に夢中にならないで残りも分配しよう」
「あぁ、すまん」
テンションが高いレベッカに謝りつつ白い槍を回転させてから――。
白銀の宝箱の側に戻った。
残りの品物は……。
ヴィーネ、レベッカ、エヴァ、ユイ、ミスティが、紅色の羽と黒色の羽が綺麗な上服と、お洒落なスカート類を取る。
続いて――。
銀色の腕輪。
黄色い宝石が目立つネックレスが三つ。
黄緑色の宝石が目立つネックレスが二つ。
ダイヤモンド系の宝石のイヤリングが五つ。
黒鋼インゴット。
ベージュが基調な化粧品的なパレット数個とセットのアイペンシルだと思われる筆。
紅いインク瓶。
ミステリーカラー色の液体瓶。
金糸。
茶色い布。
黒い指輪。
黒ベルトが数種類。
は、鑑定後に分け合うか皆で使うか決めていた。
化粧品はどんな効果を齎すんだろう。
腰に着けるポーチはアイテムボックスだったから、ミスティへプレゼント。
「マスター、ありがとう」
「おう。これで<筆頭従者長>の全員がアイテムボックス持ちだな」
カルードの視線が気になるが……指摘はしなかった。
「うん、研究用の備品をこれに纏めちゃう」
「ん、ミスティの部屋が綺麗になる?」
「あの工房は色々と物が置いてあるから、アイテムボックスがあっても片付けられるか、自信はないわ……」
「そんなに散らかっているの?」
「ん、ユイはまだあの工房に入ったことがないの?」
「うん、時々バルミントがオシッコを隅っこの方にかけているのは知っているけど、闇ギルドの見回りで外に出かけているから」
「え、だから工房の端の方が臭かったのね……」
ミスティは目をぱちくりさせて反応していた。
何気にショックを受けていそうだ。
バルミント……。
そろそろ、
そんな話をしながらアイテムを分けていく。
「それじゃ、槍の次はこれかな」
さっき、最初に目を付けていた、
背にフード、肩に金属甲が付くケープと小さいベルトの留め金が胸元に複数付いた金色の模様がきれいな暗緑色の服とコートがセットの防護服と、黒革ブーツを貰っとく。
この暗緑色の防具服、見た目が渋すぎるだろ。
気に入った。
後は眼鏡だ。
「ミスティ、その眼鏡もあげるよ」
「貰っていいの?」
「あぁ、構わん、似合うと思うし」
「あ、ありがとう、マスター……」
ミスティは頬を赤らめると、恥ずかしそうに呟く。
少し遅れて宝箱から眼鏡を取ると、早速かけていた。
魔力が循環したのは分かるが、果たして……。
「どんな感じ?」
「似合う~」
レベッカがにっこり微笑んで素直に褒めていた。
「そう? ありがと。でも、あまり変わった感じはしないわ。少し視力が上がったような気がする?」
効果はあまり期待できないが、眼鏡は似合っている。
博士的な才女。ポーズを決めたらマッドサイエンティスト一直線だな。
「……そっか。詳しくはスロザの店での鑑定待ちだろう」
「うん」
「ん、あの謎の店主なら買い取りもしてくれる」
「謎の店主?」
ミスティはあの禿げた店主には会ったことがないらしい。
「そそ、第一の円卓通りの一等地に小さいが店を構えているスロザの
「へぇー」
「マジックアイテムに鑑定証を付けられる人材よ。裏では大商会とのコネクションを複数持つとか、陰の支配者とか、色々な噂を持つ店主でもある」
レベッカが補足していた。
スロザの店主は、ただ者ではないようだな。
残りの中身は、俺が全部預かる形となった。
白銀の宝箱に白い槍も戻す。
残りの物も鑑定次第だが、ドワーフ兄弟&ルビアへのお土産か、王子に売るか、高級戦闘奴隷たちの新しい装備に回すか。
重い白銀の宝箱を片手で持ち上げて、アイテムボックスに仕舞う。
「にゃおん」
擦りつける
不満気に俺の足へと猫パンチを当ててきた。
その可愛い肉球パンチにクロスカウンターは打たない。
「おぉ、素晴らしい筋力だ。シクルゼ族である我に膝をつかせただけはあるな」
四眼ルリゼゼが眼に魔力を溜めながら語る。
「シクルゼ族か、ルリゼゼと同じような一族が他にもいるのか?」
「そうだ。故郷にな……この邪神界には、我、独りのみ」
ルリゼゼは寂し気な表情を作る。
地上に帰る前に、聞いてみるか、彼女の物語を。
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