二百十話 ぼあぼあ騎士の初恋?

 仲間の下に戻って地に降り立った。

 前髪が揺れる。草原の風か。


 その草原に吹く風で綺麗な金髪が揺れるのを、白魚のような手で押さえていたレベッカが近寄ってきた。


「――偵察お疲れ様。少し時間が掛かったようだけど、空の上で何かあったの?」


 眼球型のモンスターは別に省いていいか。


「あった。魔界出身の翼を生やした種族の方と、少し話をした」

「話を? 友好的な種族なのね」


 レベッカは多少興味を持ったようだ。

 金色の細い眉尻を少し下げている。


「うん、最初の怪物たちとは、まったく違う。友好的だった」

「ん、ということは、悪い存在と良い存在。人族と変わらないのかも?」


 背後にいたエヴァが聞いてくる。

 彼女は魔導車椅子をセグウェイモードへ変形させた。


「そうかもしれない」


 セグウェイモードのエヴァは、静かな電気自動車を超える軽やかな機動でヴィーネの横を追い抜く。


「ん、不思議――この二十階層は、魔族も住む魔界?」


 顔を斜めに傾けながら聞いてきた。

 紫色の瞳が綺麗なエヴァ。

 その傾いた顔が上向く感じの視線と細い顎ラインが魅力的だ。


「……魔界ではないだろう。邪神らしき名前もあったし」

「では、ここは邪界ヘルローネの一部、とてつもない大陸世界が広がる場所なのですね」


 聡いヴィーネが発言。

 銀仮面越しだが、その銀色の光彩がこの世界に対して興味を持っているのを感じる。

 反対側には、街もあった。

 マグルの世を見てきたように、ここの二十階層という世界に住まう、未知の文化を見て、体感したいのかもしれないな。


「……それが正解かな? 邪神シテアトップも広大、無限なる世界と繋がるとか何とか言っていたからな」

「……なら、エヴァが言っていたように、ここで出会う種族たちの全てが敵という訳じゃなさそうね」


 ユイが黒馬に近い神獣ロロディーヌを撫でながら語る。

 ロロディーヌはお返しのつもりなのか、首から伸びた、先端が平たい触手で、ユイの頬を撫でていく。

 

 もう一つの細い触手は、彼女の背中を摩っていた。

 白い肌が綺麗なユイは、頬を撫でていた平べったい触手の先端を細い手で掴むと、


「――カワイイ~、触手の裏側にもちゃんと肉球があるのね」


 指と指で、梱包材のプチプチを潰すように、触手の表と裏を入念にプッシュ。

 要するに肉球のモミモミだ。

 肉球を押すたびに、その押された触手の先端からは、僅かに、骨剣が出ていた。

 饅頭からアンコが出るような感じだろうか。

 

 ユイは、肉球のモミモミを繰り返している。

 しまいには、触手が押されるたびに、気持ちよさそうな表情のロロディーヌは、四肢からも、爪の出し入れを始めていく。

 

 感覚が同じなのか。


「ユイも虜かぁ。その触手裏にある肉球ちゃんも、足裏ちゃんと同じで破壊力が高いのよ。戦闘中でも柔らかいことを想像しちゃって、我慢できない時があるんだから!」


 気持ちはわかるが、レベッカが少し興奮しながら可愛い肉球を語る。


「ん、ロロちゃん、ぷにゅぷにゅして欲しいの?」


 黒馬か黒獅子か、立派なロロディーヌは、エヴァにも触手を伸ばしている。

 ロロめ、大人顔の癖に、ぷにゅぷにゅ、されたいらしい……。

 

 エヴァのピアノを弾いたら上手そうな指に触られて、平たい先端の裏側をマッサージされていく。


「ん、にゃおん、にゃあぁ」


 ロロディーヌは『気持ちいいニャァ~もっとぉ』的に鳴いていた。

 触手の先端を少し伸ばし縮ませたりを繰り返している。


 くぅぅ、姿が大きくてもカワイイ……。

 素晴らしい誘惑。


 けしからんな。

 おっぱい研究会が発動しかかる、俺もあのピンクな肉球をモミモミしたくなったきた……。


 と、神獣ロロディーヌの上で、微笑みながら和んだ光景を見ていると、


「マスター、この石、少し違うわ」


 ミスティが拾った鉱石を掲げてくる。

 彼女はまじめな表情だ。


「……ただの石にしか見えないが」


 正直、石より彼女の細指にある爪、綺麗な鳶色のマニキュアが気になった。

 瞳の色合いと合わせているんだな。


「うん。普通の石。けど、微妙に魔力効率が違うの」


 ミスティは一瞬で手を黒く変色させると、持っていた鉱石を砂に変化させてから、また形の違う塊に変貌させている。


 相変わらず、あんさんも凄い技術をお持ちで。

 感心しながら、ふと、思いつくが……。

 その金属を扱える技術ならば、武術と融合が可能?

 <筆頭従者長>として身体能力も増した今なら、俺が槍を学んだように、彼女も剣、槍を学べば……鋼鉄使いの強者として面白い将来が待っているかもしれない。

 ま、彼女は彼女のやりたいことがある。 

 学者肌の彼女に対して、無理に武術を学べ、某兄弟のように鋼を錬成しろ。とかは言わない。


 武術云々は、頭の隅に追いやり……別のことを聞く。


「……それが何に関係するんだ?」

「勿論、魔導人形ウォーガノフ作りよ、魔力効率が少し違うだけで、コアから続く細かな金属たちのコントロールが繊細になる。無数の命令文を刻める幅も変わってくるの」


 要するに振り幅が大きくなり、難しくなるのか。


「難しくなるのか。何か新しい発見があるかもしれないな」

「そそ、この小さい鉱石が偶然そうなのかもしれないんだけどね。でも、地上の世界でさえ解らないことが多いのに、この邪神界の理までは……さすがに手が回らないわ。勉強はするけど」


 綺麗な鳶色の瞳が輝いて見えた。

 研究家の顔だ。楽しいらしい。


「……無理しないでいいぞ。頭がいいと大変そうだが」

「戦いに支障がでない範囲で、書いていくわ……」


 と、いいながらも凄い勢いで羊皮紙に走り書きしているミスティ。

 そんな彼女へ助言になるか分からないが、


「……この世界にある未知なる鉱石と、地上にある鉱石を融合させたら特殊な鋼材が手に入るかもしれないな?」


 そう、人工ダイヤ的なものが作れるかもしれない。

 それを地上で天然ダイヤなんだぜぇ、グハハ、と、悪徳商人、悪代官に媚びを売る越後屋的な雰囲気で売り捌き、宝石商から成り上がりの異世界宝石商立身伝Ⅵを行う!


 そんな適当なアホなことを想像していると、


「……それはそうかも――」


 ミスティはその辺にある何気ない石を拾い出しては、確認を始めていく。


「……これも回収して、これも良さそう」

「おーい、あまり時間をかけるなよ」

「うん。でもさ、マスターは最初の時から変に魔導人形ウォーガノフに詳しかったりしたし、やっぱり、柔らかい思考の持ち主なのね」


 ミスティは笑みを浮かべてから雀躍り。

 回収した石を袋に仕舞うと、またメモ帳に何かを書いていく。

 そんな調子でだだっ広い草原を天下の大道のように新たな時代が始まった的な独特な気分を謳歌しながら進んでいると、魔素を探知。


「前方から魔素の反応だ」


 皆に向けて注意を促した。

 直ぐに蠅を巨大化したようなモンスターが姿を見せる。


 さっき空で視認した奴だ。

 巨大蠅だ。数は三匹、頭に複眼で嘴がストローのように細い。

 塑像そぞうめいて石っぽいが、表面に羽毛が生えている。

 背中には、透明な翅がハチドリのように忙しなく動いていた。

 ぶぅんぶぅんと不気味な音が聞こえてくる。


 そんな巨大蠅が襲い掛かってきた。


「巨大とはいえ、たかが蠅っ! 君子危うきに近寄らず! 偉大なる閣下に近付かせませぬ!」

「閣下、我らにお任せを! 赤沸騎士の妙技をご覧くだされっ」


 沸騎士たちが武士的な口上を述べて、巨大蠅と戦いだす。

 諺が聞こえたような気もするが、気にせず将軍的な気分で、たまには任せてみるか。


「たまには骨の騎士さんたちの活躍を見ているだけも、いいかもね」

「ん、ぼあぼあ騎士ー頑張って!」


 魔刀を肩に掛け、すっかり見学モードのユイの言葉に同意したエヴァが可愛い声で応援。

 エヴァが腕を斜めに上げた……。


 エヴァの胸元さんが、ぽよよん。と、ダイナミックに恋をするように、揺れたことは最重要課題としておっぱい国際連盟脳内議会に報告しなければならないだろう。


 おっぱい臨時委員としての務めだ。


 袖から覗く綺麗な細腕も素晴らしい。

 その腕には黒いトンファーの金具が巻き付く形で装着されているが、浮き出るような太い血管と奥に見えた綺麗な腋に、エヴァ特有の色気を感じた。


 そして、エヴァの可愛い声援が嬉しかったのか、黒沸騎士の鎧がトキメイタように煙を増した?


 エヴァが指摘した〝ぼあぼあ煙〟が一段階、増加したように見えた。


 ぼあぼあの黒沸騎士はフェンシングのフレッシュ。

 名前は忘れた骨の長剣の峰を真っすぐ伸ばし前進。

 そのまま骨の長剣は、巨大蠅の胴体を深く突き刺す。

 背中を突き抜け、透明な翅ごと串刺し状態。

 

 赤沸騎士は反対側から迫った巨大蠅の翅を斬り落としていた。

 ――やるねぇ。

 続いて、ぼあぼあ黒沸騎士が長剣を引きながら、硬そうな身体を横回転させる。

 反対の腕に持つ方盾を振るった。

 フックパンチの軌道の方盾は、赤沸騎士が翅を斬った巨大蠅の頭部に向かう。

 

 赤沸騎士が翅を斬った巨大蠅の複眼頭と衝突した。

 頭が潰れた巨大蠅。

 ぴゅーと気色悪い橙色の血を噴き出しながら地面に沈む。


 一匹残った巨大蠅。

 ストローのような細い嘴が震動すると、不自然な切れ目が走った。

 切れ目からパカッと音を立つ。

 と、細い嘴は、割れたバナナの皮が捲れるように三百六十度回転。

 螺旋しながら円形に開かれつつ捲れていくと、嘴は四角形に変貌する。


 その四角形の奥底には穴があるようなのか――。

 奥から毒めいた洗濯洗剤のような色合いの液体が噴き出る。

 間欠泉が噴出する勢いだ。

 んだが、ぼあぼあ黒沸騎士は、冷静だ。


 そんな気色悪い攻撃を観ても動揺しない。


 体格を生かすように方盾を翳す。

 その毒らしい広範囲の液体攻撃を、方盾のみで防ぐ。

 防ぐ盾の表面から、じゅあっと盾が溶けてしまう音が聞こえたが、上下左右に微妙に方盾を動かす技術は、見事な盾術だ……ビアの盾術より上かもな。


 その防ぐ黒沸騎士の背中から赤沸騎士がぬっと飛び出した。

 液体の攻撃を繰り出した巨大蠅の頭部へと長剣が振り下ろされる。

 

 黒い蠅の頭を一刀両断。


 蠅のモンスターをすべて倒した。

 カッコイイ。見事な沸騎士たちのコンビネーションだ。

 もう一体いたら、連邦の白い悪魔を苦しめたジェットストリームアタックができるだろう。


 彼らはちゃんと大魔石を回収していた。

 骨を響かせて走り戻ってくる。


「閣下――我らの妙技を見ていてくれましたか?」

「閣下ァーー、黒沸騎士たる剣技を見てくれましたか?」


 熱い沸騎士さんたちだ。

 頷いて、


「良くやった、ゼメタス、アドモス。剣と盾の技術は向上しているようだ」

「おぉぉ、ありがたき幸せ」

「おぉ、閣下、次も見ていてくださいっ」


 沸騎士たちが喜びながら、魔石をユイとエヴァに手渡していた。


 その際、エヴァに渡した黒沸騎士の眼窩の紅眼が大きくなった。

 そして、骨鎧に纏うぼあぼあの黒煙が点滅していく。


 面白い、ドキドキしているのか? 恋か?

 だが、そんなゼメタスの青春を崩すように、魔素の反応。


 違うモンスターが出現。

 大きい姿だ。角があるが牛か?

 頭に先が尖る四つの角があり、口にも鋭そうな歯があった。

 猛牛バイソンのような巨大牛のモンスター。


 色合いも茶色と青白い皮膚が混ざり凶悪そうなイメージを抱かせる。

 巨大牛は息を荒くして興奮しているようだ。突進してくる。


『ヘルメ、左目から出ておけ』

『はい』


 一応、ヘルメを放出させる。


「動きを鈍らせます――」


 出番がなかった常闇の水精霊ヘルメ。

 発奮しているのか、スパイラルした小さい水飛沫を全身から発生させて中空へ跳躍。


 左右の掌に蒼い魔力を集結させて纏い繭を作る。

 その蒼い繭でもある魔力の塊のような蒼い繭の掌から――。

 氷礫を突進してくる巨大猛牛に繰り出していく。


 無数の氷礫が巨大牛の頭部、胸、前足に突き刺さった。

 その度に生々しい鮮血が宙に舞う。


 が、猛牛の勢いは衰えず。

 巨大牛はタフだ。


 巨大牛の眼球は真っ赤っか。

 完全に興奮し、ヴァンパイアのように血筋が走っていた。


「ここは前衛たる仕事っ! 沸騎士の意地――」


 張り切る黒沸騎士ゼメタスだ。

 エヴァにいいところを見せようとしているらしい。

 相手は猪じゃないが……。


 どっちが猪突猛進なんだという感じに、巨大猛牛へ向かい走った。


「ぼあぼあー頑張れー」


 エヴァの可愛い声が響く。

 可愛い声だ。

 黒沸騎士は喜んだように、全身からぼあぼあを沸騰させた。

 うむ。俺も嬉しくなる。


 黒煙の軌跡を宙に残しながら猛牛の角攻撃を真正面から受け止める行動に出た。


 大丈夫か?


 と、疑問通り、衝撃により肩骨の一部が破損――。

 骨鎧が巨大な角に貫かれて、片方の骨足が地面に埋まってしまっていた。


 だが、巨大な猛牛バイソンの攻撃を〝しっかり〟と受け止めていた。


 体重差がありすぎて一瞬で吹き飛ぶと思ったが、やるじゃん。

 応援の効果か。


「ゼメタス、嫉妬するぞっ」


 そんな言葉を言い残しながら赤沸騎士が猛牛バイソンの左前足を長剣で薙ぐ。


「チャンス――」


 白い太腿が悩ましいユイが駆ける。

 鋭い踏み込みから一閃の如く薙がれた特殊刀がバイソンの太い右足を華麗に切り裂いた。


 巨大牛の右足から鮮血が迸る。


「疾く斬る――」


 黒装束を着込むカルードもいぶし銀の表情だ。

 皆に剣術の腕を披露するかのように腰を少し沈めた歩法から――。

 巨大牛の左下腹をかい潜る姿勢で――「花>――」と、聞こえなかったが、剣を振るう――。


 巨大牛の肉を上下に切り裂いた。

 滾々と迸った鮮血が、これまた、見事な、朱花を作りあげる。


 カルードはヴァンパイアとしての表情を見せながら、その朱花を崩すように、迸った血を口に含んでから距離を取っていた。


 続けてミスティが操る黒い金属ゴーレムの太い金属腕が、巨大牛の頭部を横殴る――。

 巨大牛は頭部の上に、ヒヨコがくるくる回るようなピヨリマークを出したように、揺らぐ。

 そして、重低音を響かせながら巨大な角の一つが破壊されていた。

 強烈なメガトンパンチだ。

 巨大牛は頭部を揺らしつつ、前足も斬られたせいか――。

 自身の巨大な重さを支えられない、前のめりに倒れていった。


 そのせいで正面から受け止めていた黒沸騎士が、


「閣下、魔界へ逝ってまいり――」


 最後まで喋れず、骨だが、小心と豪胆を綯い交ぜとした表情を浮かべながら潰れていた。

 さらば、黒沸騎士ゼメタス。


 あとで、また召喚してやろう。


「いきますっ」


 ヴィーネだ。

 翡翠の蛇弓バジュラを構えていた。

 末弭こと、上弭と、本弭こと、下弭の綺麗な蛇模様の翼飾りが目立つ。


 緑色に輝く光線の弦と光線の矢も生成されている。

 やはり、なんども思うが両腕にオーラを纏い、弓を構えるダークエルフの格好が異常にカッコイイ。


 青白い指で自動生成された矢を引くと、緑の弦が点滅。

 そして、緑の光線矢が放たれた。


 綺麗な軌跡を宙に残しながら真っ直ぐ、飛翔。


 前のめりに倒れた鉄の巨大檻車かんしゃのような猛牛の眉間に光線矢が突き刺さった。

 刺さった光線矢から出た小さい緑の蛇たちは、牛の頭へ浸透していく。


 刹那、巨大牛の頭部が不自然に点滅すると、閃光を伴い爆散した。

 頭の一部を破壊したところで、レベッカの蒼炎弾が巨大牛の胸元に直撃。

 大きな蒼炎トンネルを胴体に作り出したところで、巨大牛は完全に息絶えた。

 ヘルメは何も指摘しないが、お尻まで直通していると思われる。


 そして、牛だけに、焼き肉の匂いが漂ってきた。

 肉が捲れると、そこから大きい魔石が零れ落ちて、血溜まりに落ちる。


 エヴァと神獣ロロディーヌに騎乗している俺は見ているだけだった。


「ん、皆、いい動き! 精霊様の魔法で動きを鈍らせ、ぼあぼあの黒沸騎士が潰れて受け止めた。ユイとカルードが、しゅぱっと斬って、ミスティのゴーレムがぐんって殴ってヴィーネの光の矢がずばっと貫いて、最後にレベッカの弾がどかーんで、大きな怪物を倒した」


 エヴァは感心感心と頷いて、パチパチと拍手しながら戦闘の様子を語る。


「……そうだな。特に黒沸騎士は、正に、ザ・前衛としての役割を全うした」


 ゼメタスを褒めとこう。


「おぉ、閣下のお言葉を……なんと羨ましいことか……ゼメタスも魔界で喜びましょうぞ、嫉妬を覚えます。次は自ら盾となりましょう」


 赤沸騎士アドモスが片膝を地面に突きながら話す。

 嫉妬の感覚も持つのか。


「さすがは閣下の前衛たちです。特別に新ポーズの教授を致しましょう」


 ヘルメは小躍りするように沸騎士へ話しかける。

 と、新しい腰を捻った独特ポーズお尻立ちを繰り出している。


 綺麗なお尻からぷるるん。と効果音が鳴ったような気がした。

 ……けしからん。素晴らしいお尻である。


 赤沸騎士は感動したのか、


「おぉぉ、精霊様っ、勿体なきポーズであります。早速、試して――グアアァ」


 マジか、今、腰を回しすぎて、ゴギッと骨の折れる音が……。

 ……沸騎士だが、基本は硬い骨。柔らかくないからな。


「さすがに、お尻の新ポーズは高度過ぎましたか……所詮は骨ですね」

「次こそはァァァ、かっ、閣下ァァァ、魔界へ逝って参ります……」


 そう言い残し、魔界へ去っていく赤沸騎士君。

 粗忽な行動に笑ったらいけないと思うが、皆、大笑いしていた。


「ハハッ」


 俺も笑ってしまう。

 笑いながら、黒馬か黒獅子に近い姿の神獣ロロディーヌから降りた。

 大魔石の回収をしておこう。

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