ep6. 最終対決、文字使いVS大怪盗! 最後の地で究極料理を掴め!

 馬が走っているような大地を叩く音が響く。

 だがそれは馬ではなくライドピークというれっきとしたモンスターである。

そのライドピークが三体。横並びに三十キロほどのスピードで森の中を突き

進んでいる。

 外見でいえばダチョウを巨大化させたような生物。それぞれに背中には

座椅子ざいすが設置されてあり、人数で言えば合計四人―――プラス一匹が乗っている。

 上下に揺られながら丘村日色おかむらひいろは、趣味の読書を楽しんでいる。しかしその

姿はいつもの黒髪ではなく、銀髪ぎんぱつを宿していた。しかも頭の上には獣耳けものみみまで生えている。

 その理由として、日色たちが旅している場所が大きく関わっている。

 獣人界じゆうじんかい――――ようやく人間界から大きな橋を渡って辿り着くことができ

た。

 それまで旅仲間であるミュアが誘拐されたり、研究所を潰したり、国境で

は獣人排斥はいせき派である《けものおり》の妨害にあったりといろいろあったが、やっ

と念願の獣人たちが住む大陸へと足を踏み入れることができたのだ。

 だが人間界と違って、獣人界では人間の姿では何かと問題がある。それ

はひとえに、他種族同士がいがみ合っているからに他ならない。『人間族』、

  『獣人族』、『魔人まじん族』。この三種族が、いつ戦争に発展してもおかしくない状

況に陥っている。

 人間を救うために王族が勇者四人を召喚した結果、それに巻き込まれるよ

うにしてこの異世界【イデア】にやって来た日色だが、見た目はこちらの

『人間族』と同じなのだ。

 このままの姿で獣人界へ行くと、人間だからといって問題が生じる可能性

が非常に高い。故に日色はある方法を使って、自身の身体を変化させたのだ。

文字魔法ワード・マジツク》―――――それが日色の代名詞とも呼ぶべき魔法の力である。

この世界は普通に魔法が存在しているファンタジーな世界。日色にもその

恩恵おんけいが…………かなり強めに発現した。

 指先に魔力を宿して文字を書き、その文字が持つ意味を現象化げんしようかさせるとい

うユニークでチートな魔法。魔力を多大に消費するが威力が絶大な力であり、

日色はこの万能の能力を効果的に行使して、今まで異世界を渡り歩いてきた。

「うおっ!?」

 突然隣のライドピークに乗って走っている旅仲間の一人―――青髪を逆立

てたアノールド・オーシャンが奇妙なものを見たかのような声を上げた。

 彼の後ろの騎乗きじよう部分に乗っている銀髪少女が、頭に生えている可愛らしい

獣耳をピクピクと動かして首を傾げている。彼女はミュア・カストレイア

――獣人だ。

「どうしたのおじさん?」

「い、いやな……こ、これ……」

 鍛え上げられた太くてたくましい彼の腕が、自身が携帯している旅袋から抜き

出される。その手には発光する物体が握られてある。

 日色もまたその物体を横目で見つめながらまゆをひそめている。あんなもの

をアノールドが持っていたとは思えなかったからだ。

 とりあえず確認するためにもライドピークを立ち止まらせて光る物体を観

察することにした。

「ん……ピカピカだね」

「アウ~」

 スカイウルフというモンスターのハネマルを腕の中で抱きかかえながら、

一番最後に旅仲間となったウィンカァ・ジオが珍しげに目を輝かせている。

 黄色い頭の上に生えている髪束かみたばがアンテナのごとくフルフルと何かを受信

しているように回っている。あどけない表情をしている彼女だが、とても

十四歳とは思えないほどの巨乳と強さを備えている。小さい身体で、戦う時

は大きな槍を振り回すのだから驚きだ。

 そんな彼女に身体を撫でられてハネマルは気持ち良さそうに目を細めてい

る。今ではすっかり彼女の相棒と化している。

「一体どこでそんなもんを手に入れたんだオッサン?」

「知らねえって! 急に光り出したんだしよ! それにこれはあのレシピだ

ぜ!」

「は? あのレシピ? 何のことだ?」

「だ~か~ら、あの初代ワイルドキャットの遺産だよ!」

 人間界にいた時、ある街で魔法仕掛けの塔というものに出会った。それは

有名な建築家が建てたものらしく、その中に稀少きしような本があるという情報を聞

いて、本に目がない日色はすぐさま向かった。

 だがそこは普通の建物ではなく、迷路や氷に覆われた部屋など、様々な試

練が施されており、そこで出会った怪盗かいとうと名乗る二代目ワイルドキャットと

勝負することになった。

 二代目の企みのせいで一人になった日色は、塔の上にいた巨大なゴーレム

を、何とか魔法で打ち倒すことに成功する。

 部屋には宝箱があり、手に入れたのが初代ワイルドキャットが遺した日記

と料理レシピ。グルメである日色にとっては喜ばしいものだったが、レシピ

は不完全なものだった。

 また次に二代目と出会った時には、【石地蔵いしじぞうとりで】という場所に一緒に行

くことになった。そこも初代がのこした建物。

 そこではほぼ何でもありのスポーツ対決を経験することになる。また二代

目と共闘することになったが、ともに力を合わせて試練を突破してレシピを

手に入れることができた。

 しかし試練が終わった後、二代目は今まで自分が手に入れたのであろうレ

シピを日色たちに渡して、一人姿を消した。最後の地で待つという謎の言葉

を残して。

 手に入れたレシピを見れば、残り一枚足りなかった。つまり彼女の言葉を

真実と取るのであれば、最後のレシピが次の試練――初代ワイルドキャット

の最後の建造物にあると判断できるのだ。

「そのレシピが何で光って―――――っ!?」

 その時、レシピがひとりでにアノールドの手の中から浮き上がり、大きな

矢印上に重なり始める。指している場所は東の方。

「東に何か……いや、そうか。つまりはこの先に最後の地とやらがあるん

じゃないか?」

 日色の言葉に皆も首肯しゆこうする。今まで人間界でしか初代の建物がなかったた

め、獣人界にはないのかもと思ったが、よくよく考えれば二代目は獣人であ

り、必然的にその祖父である初代も獣人の可能性の方が高い。

 つまり初代が獣人界に建造物を生み出していても不思議なことは何一つな

いのだ。

「ようやくレシピが完成するってことだな」

 日色は自然と頬が緩む。初代が人生をけてまで追い求めた究極の料理と

やらには心底興味が湧く。どれほどの美味さか想像できない。

 この世界にきて、日色は自分の思う通り、好きなことをして過ごそうと決

めている。特に珍しい書籍しよせきや美味い食べ物を探求したいと思っているのだ。

 だからこそこの中途半端なレシピを完成させてその料理を堪能たんのうしたいとい

う欲求は強い。

「行くぞ!」

 料理人であるアノールドも、このレシピを完成させたいという思いは強い

ようで、日色の言葉にやる気を見せて頷く。他の者たちも黙ってついてきて

くれるようだ。

 まあ、たとえ一人でも日色は行くのだが。

 レシピが指す方向へライドピークを走らせると、森の中に意図的に作られ

たような円状の開けた空間が現れた。またその中心には背中を向けて空を見

上げている一人の獣人がいた。間違いなく二代目ワイルドキャットである。

「ウニャニャ~! 待ちに待っておったんじゃよ!」

「ふむ、ここには例の建造物は見当たらないが……」

「そうだな、でもレシピはここを指してるし」

「……? ワ、ワシは大怪盗! 二代目ワイルドキャットなんじゃよっ!」

 クルクルッとバク転をした後、バシィッと鳥がはばたくようなポーズを決

めるワイルドキャット。

「なあミュア、そっちに何か怪しいとこないか?」

「え、えっと……うん、ないよ」

「おいアンテナ女、ハネッコ、何か気づいたか?」

「ん……何もない」

「クゥ~ン……」

 それぞれがどこかにあるはずであろう初代ワイルドキャットが遺した建造

物を探す。

「あ、あのぉ……ひ、久しぶりなんじゃよヒイロたち?」

「レシピがここを指してる。ん? よく見れば地面を指してないか?」

「マジか? だったら今度は地下ってことか?」

「あのぉ……」

 段々と声が小さくなっていくワイルドキャットに対して、日色たちは腕を

組みながら地面に意識を集中させている。結果―――――

「……クスン」

 完全に無視されたワイルドキャットは膝を抱えて落ち込み出した。少しや

り過ぎたと思ったのか、アノールドは苦笑交じりに「冗談だって冗談」と彼

女の肩にポンと手を置く。

「オッサン、それセクハラだな」

「何でだよっ! つうかてめえも胸を隠しながら後ずさりすんなよっ!」

 ワイルドキャットがアノールドに恐怖を感じたように両腕で胸を隠しなが

らアノールドから距離を取る。

 これでまあ、久しぶりの挨拶は終了した。

「おいドロボー猫、ここが最後の地、なんだな?」

「ウニャニャ~、そうなんじゃよ」

 そう言いながら彼女は宙に浮いているレシピを全て束ねると、大地にそっ

と置く。するとレシピの光に呼応こおうするかのように魔法陣が浮き出てくる。日

色たちは全員魔法陣の上に立っている。

 魔法陣からまばゆい光がほとばしり、次の瞬間――――――その場から日色たちは消

えた。

 光によって眼を閉じていたが、日色はそっとまぶたを上げて視界に映った光景

にギョッとする。そこはどこぞの窪地くぼちの中であり、周囲は絶壁ぜつぺきに囲まれてい

る。

 目線の先にはやはりどこかで見たような建造物が建てられてあった。

(さっきいた場所とは全く違う。どこかに瞬間移動したのか?)

 日色の心の中の疑問に答えるようにワイルドキャットが口を開く。

「ここは【キングマウンテン】。つまりこの場所は山の頂上ってことなん

じゃよ」

「ほう、あの魔法陣は転移系の魔法が仕掛けられてたってわけか?」

「ご名答じゃよ~。それでアレが最後の地―――――【怪盗王かいとうおう

墓地ぼち】じゃよ」

 そう言う彼女の言葉にいつもの元気さが見当たらなかった。

(墓地……か)

 チェスのキングをかたどった建造物が建てられてある。その周囲には草花が生

えており、美しい清流せいりゆうも見える。また何故か分からないが、大きな円卓えんたくが建

造物の前にあり、椅子も周りに設置されてある。

「あの円卓は何だ?」

「いいや、分からないんじゃよ。今回はこの最後の地の場所のことしか書い

てなかったんじゃよ」

 彼女が毎回持って帰っていく小さな箱。その中には、次なる試練に関する

情報が遺されてあるという。そのおかげで彼女は、厳しいはずの試練を乗り越

え、こうして最後の地までやって来られている。

 だが今回、ほとんどの情報がなく、最後の試練に何を行うのかも知らない

という。彼女の横顔が不安気に逡巡しゆんじゆんしているのを初めて見た。

 それまで情報があったために自信満々だった彼女からは考えられない表情

だ。

「とにかくあの中にレシピがあるなら突き進むだけだ」

 日色の目的は最初から何も変わりはない。レシピを完成させて、究極料理

を堪能すること。日色のあとにアノールドたちもついていく。表情を引き締

めたワイルドキャットもまた、歩を進めるしかない。ライドピークたちは円

卓の傍で休ませる。

 チェスのキングを模った建物には大扉が存在し、近づいただけで自動ドア

のように開いた。中は少しひんやりしているが、今までの建造物よりも一際

小さく、大きな正方形の舞台があるだけで、変わったところはあまり見当た

らない。

 今までに比べるとかなりシンプルな印象を与える建造物である。

 中に足を踏み入れた瞬間、扉がガタンと音を立てて閉まる。重厚そうな扉。

まるで試練が終わるまでは出さないぞと意思表示しているみたいだ。

 石造りの舞台の背が高くて向こう側が見えないので、とりあえず舞台に備

え付けられてある階段を上がる。

 そこで向こう側をようやく確認できたが、ギョッとして皆が固まる。何故

なら玉座ぎよくざのような椅子の上に黒装束くろしようぞくを着込んだ骸骨がいこつが座っていたのだから。

「モ、モンスターか!?」

「おじさん!」

 アノールドが声を張り上げながら骸骨に向かって大剣を構え、ミュアを背

後へと押しやる。確かにアンデット系のモンスターだと思っても仕方がない

と思う。

 だがどうやらモンスターではなく、人が死んで白骨化したものらしく身動

き一つしない。

「おいドロボー猫、アレはまさか……」

 日色がワイルドキャットに確かめようと顔を振り向かせると、彼女の顔が

険しいものになり、ジッと骸骨を見つめていた。その様子でやはりというべ

きか、あの骸骨の正体が発覚する。

「どうやらアレが初代ワイルドキャット――――リュンクスとやらの亡骸なきがら

か」

 日色の言葉に声は出さなくとも眉をピクリと動かして反応を返す。日色は

確信を得つつ、骸骨に視線を戻す。その背後には大きな金庫のようなものが

あるのを発見した。

 あの中に最後のレシピが隠されていそうだ。そう思った時、前回の【石地

蔵の砦】で聞いた老人の声が建物内に響く。

『よくぞ最後の地へと辿り着いた』

 皆がハッとなり警戒度を高める。その声を聞いた時、ワイルドキャットは

最大に瞼を上げて「お、おじいちゃん……」と無意識に呟いていた。

『最後の試練。ここに集まった者たちに与える。さあ、お主が認めた者たち

の力、見せてもらうぞ―――二代目よ』

 その言葉にワイルドキャットが「え?」という表情を浮かべ、スーッと椅

子ごと骸骨がその場から消失する。

「うわぁぁぁっ!?」

「きゃあぁぁっ!?」

「んっ!?」

「アウッ!?」

 日色とワイルドキャット以外の者たちの悲鳴が聞こえる。背後にいた彼ら

を見てみると、彼らの足元が消失し、地下へと落ちていく。

 日色は咄嗟とつさに文字を書こうとするが、さすがに間に合わず再び床が元通り

に戻る。日色はキッと天井をにらみつけると、

「おい! 何のつもりだ! アイツらをどこへやった!」

 キョロキョロと答えを探すように怒鳴る。どこからともなく年齢を感じさ

せる低い声が聞こえる。

『さあ、ここで勝利者を示してみよ』

 すると舞台の周囲から、バチバチバチッと高圧電流が流れていそうな音を

立てて、魔力でできたおりが形成される。どうやら舞台の外へと逃がさないつ

もりのようだ。益々ますます何のつもりなのか分からず日色は再度怒鳴り声を上げる。

「説明しろ! お前は何をさせるつもりだ!」

 ワイルドキャットの顔を見るが、彼女も眉間にしわを寄せながら、青ざめ

た表情で囲まれた檻を観察している。

『この中で、お主たちは全力をもつて勝利者を決定せよ』

 日色はゴソゴソとふところから干し肉を取り出し、檻へと投げてみる。干し肉は

一瞬にして真っ黒焦げに変化してしまう。炭化……もし触れてしまえばと思

うとゾッとする。

「……戦えってことか?」

「ワ、ワシとヒイロがか?」

『時間が過ぎれば過ぎるだけ、地下に落ちた者たちは寿命を縮めることにな

る』

「何だとっ!?」

「ウニャ!? ど、どういうつもりなんじゃよ! おじいちゃんっ!」

 ワイルドキャットも、この状況には乗り気ではないようだ。それもそのは

ず。逃げ場のないこの場所で、しかも高圧電流が流れる檻に囲まれている。

そんな場所で戦えば、下手をすれば死んでしまう。

 そんなことはワイルドキャットも望むべくことではないのか、完全に焦り

を見せている。

『ルールは簡単じゃ。ただ勝利者を決定するまで戦え。長引けば長引くほ

ど――――』

 その瞬間、地の底からミュアたちの悲鳴が聞こえてきた。一体彼女たちの

身に何が起きているのか……この叫びを聞いた限りでは相当危険なことに

なっていることだけは分かる。

 日色はギリッと歯噛はがみしながら、勝手なことをする初代に対して怒りが湧く。

「何故こんなことをする! これが試練だと? ふざけるな!」

 今までの試練も確かに命の危険さえあったものの、こんな一方的に逃げ道

ふさいで命を懸けさせるようなものはなかった。その異質さに恐怖さえ覚え

る。

 だが日色の言葉には何も反応しない初代の声。

「とにかくまずはここから脱出するか」

 日色は檻に向かって魔法を使おうと文字を書くが、ゾクッと背後から寒気

を感じて、咄嗟にその場から左側へと身体をずらす。すると立っていた場所

に水の塊が通過する。

 身体をクルリと回転させて水の塊を放った人物を睨みつける。

「……戦うつもりかお前?」

「それしか試練をクリアできる方法がないんならやるだけなんじゃよ」

 強張った表情のままの彼女は、腰に携帯していたナイフを抜いてすでに臨

戦態勢に入っている。日色も彼女の表情を見てスーッと《刺刀しとう・ツラヌキ》

を抜く。

「お前がそのつもりなら、オレも負けるわけにはいかないしな。全力で潰す

ぞ」

「ウニャニャ、やれるもんならやってみるんじゃよ。こう見えても世界をまた

にかけた大怪盗じゃ。ワシをめちゃダメなんじゃよ!」

 互いに床を蹴り上げ舞台の中央で衝突する。



 地下に落とされたミュアたちは、闇が支配する中で、互いの存在を確認し

合っていた。

「大丈夫かミュア?」

「う、うん」

「良かったぜ。ウイとハネマルもいるか?」

「ん……無事だよ」

「アオッ!」

 どうやら三人と一匹は全員集結しているようだ。

「ここ、どこかな?」

 ミュアが不安気な声を出す。

「地下ってことは間違いねえだろうな。けど真っ暗で何も分からねえ」

 落下した衝撃はほとんどなかった。まるで転移してきたような感覚だけ皆

には伝わっていた。

「ヒイロさん、無事かな?」

「まあ、アイツなら心配ねえって。それよりも俺らがここから出ることが先

決だぜ」

 その時、ボッボッボッボッボッと周りに火が灯る。どうやらロウソクが周

囲の壁に設置されていたようで、火がいたお蔭で自分たちが立っている場

所が、洞窟のような場所であることが判明した。

「お、おじさん! アレッ!?」

 ミュアが指差したのはロウソクが向かう先。そこには上で見たような玉座

が置かれている。身構えながら見つめていると、スーッと椅子の上に骸骨が

出現した。

『さて、いいかな若人わこうどたちよ』

 骸骨が急にしやべり出したことで、ミュアは「ひっ!?」と小さく悲鳴を上げ、

アノールドもゾ~ッと顔を青ざめさせる。ウィンカァだけは平然とした様子

で立っているが。

『ホッホッホ、驚くのも無理はないのう。しかしお主たちにはお主たちで試

練を受けてもらうつもりなんじゃ』

「し、試練? な、何でヒイロたちとは別なんだよ?」

『それは……』

「それは?」

『それは…………秘密じゃよ!』

 ズゴーッとアノールドはこけてしまう。

「痛てて……つうか何だよそれぇ!」

『ホッホッホ、お主リアクションが良いのう。まあ、あやつらにはあやつら

で試練を受けてもらいたいということじゃ』

 やはり何か考えがあって日色と離れ離れにさせたようだ。

「ま、まあよぉ、ここまで来たのは試練受けに来たんだし別に良いんだけど

な」

『ならば、さっそく始めるぞ』

 ピカァーッと辺りがまばゆい光に包まれる。気づいた時には先程の円卓がある

場所へと戻ってきていた。ライドピークたちも突然のアノールドたちの出現

にキョトンとしている。

「……はい? 外?」

「えと……みたい……だね」

『うむ、外じゃ』

「のわぁっ!? い、いたのかよ!」

 円卓の席の一つにいつの間にか座っている骸骨。またその円卓の上には先

程はなかった数々の食材が置かれてあった。

「おいおい、ここにある食材ってまさか……?」

「おじさんどうしたの?」

 アノールドが目をパチクリしながら食材を見回しているので、不思議に

思ったミュアが尋ねる。

「あ、ああ、これってあのレシピに載ってた食材ばかりだ」

「そうなの?」

『その通りじゃ、お主たちにはここにある食材で料理を完成させてもらいた

い』

「は? もしかしてそれが試練か?」

『まったく関係ないとは言えんのう。あそこを見てみよ』

 骸骨が指を差した方向には大きな角ばった岩がある。表面がキラキラと光

を反射して、まるで水晶のようだが、見るからに硬そうだ。ここに来たとき

はそんなものはなかった。

「あ、あれって岩だよな?」

『岩じゃよ。ただしただの岩ではない。この【キングマウンテン】にだけ存

在する《ダイヤミート》じゃ』

「聞いたこともねえ名前だな。けどミートってことはあれって肉なのか?」

『そうじゃ。アレが最後のレシピに書かれてある食材じゃよ』

「へぇ、あれが…………ってそんな簡単に教えていいのかよっ!?」

『別に構わんよ。ほれ、十枚のレシピはここにある』

 そう言いながら骸骨は円卓の上に最後のレシピを含めた十枚のレシピを置

く。

「……え? もらっていいのか?」

『そのつもりで出したんじゃよ』

 彼の真意が全く見えない。まだ試練を何もクリアしていないというのに、

何故彼がここに眠っているであろう最後のレシピを渡してくるのか……。

 単純なアノールドもさすがに不気味に感じて警戒している。

「一体何考えてんだ? そもそもお前って一体……?」

『ホッホッホ、ワシは初代ワイルドキャット―――名をリュンクス・ウェイ

バーじゃ。今あの中におる二代目の祖父じゃよ』

「おいおい、家族なら何であの子に試練なんか課すんだよ?」

『ホッホッホ、それはあの子に真の意味でワイルドキャットになってもらい

たいからじゃ。そのために数々の試練を遺したんじゃからのう』

「……どういう意味だ? 第一、ヒイロたちはあん中で一体何してるってん

だよ?」

『む? 戦っておるよ』

「ふ~ん、そっかぁ、戦って…………ってはいィィィッ!? 何でっ!?」

 いちいち大きなリアクションを起こすアノールド。ミュアも彼ほどではな

いが言葉を失って固まる。

『言ったじゃろ。それが試練じゃからのう』

「何が試練だ! 孫を仲間と戦わせてアンタ、何考えてんだ!」

『ホッホッホ』

「何笑ってんだコラァァァッ!」

「ちょ! お、落ち着いておじさん!」

 リュンクスにつかみかかろうとするアノールドの前に立ち落ち着かせようと

するミュア。

「け、けどよミュア! コイツは仲間同士を戦わせて笑ってんだぞ!」

『ホッホッホ』

「だから笑うなコラァァァッ! ぶっ飛ばしてやるっ!」

 アノールドがミュアを振り切り、椅子に座っているリュンクスに向かって

拳を突きだすが、その場からスーッと相手が消え、別の椅子に現れる。

「くっ! 逃げんなクソ骸骨っ!」

『すまんのう。笑ったのはお主の言葉が嬉しくてのう』

「絶対ぶちのめして……って……はあ? う、嬉しい?」

 ミュアも彼の言葉にキョトンとして顔を向ける。

『……一つ聞いてもよいかのう?』

「……何だよ?」

『あの子が仲間というのは本当かい?』

「あ? んなもん当然だろ? 前の試練だって一緒に乗り越えたんだぜ? 

背中を預けた奴は、もうその時点で仲間だ。なあミュア?」

「う、うん。さ、最初はわたしも敵なのかなって思ったけど、あの人は何だ

か……すっごく楽しそうに笑うんです」

『…………』

「それにわたしたちが穴へ落ちそうになった時、咄嗟に手を伸ばしてもくれ

ました」

 そう、日色だけでなく、ワイルドキャットもまたミュアたちを助けようと

してくれたのだ。

「だからもう……仲間です!」

 しばらく沈黙が続き、また会話の再開はリュンクスの笑い声からだった。

『ホッホッホ、どうやらあの子は良い仲間を得られたようじゃのう! ホッ

ホッホ!』

 嬉しそうに笑う骸骨。まるでコメディホラーとでも呼ぶべき光景だが、ひ

としきり笑った彼は静かに口を開く。

『では試練を言い渡そうかのう』

「いきなりだなオイ……」

『ホッホッホ、まあ簡単じゃ。このレシピに従って料理を作ることじゃ』

「な~んだ、そんなもん料理人の俺にかかれば簡単だぜ!」

『ただしあの《ダイヤミート》がさばけたらのう』

「はあ? どういうことだ?」

『《ダイヤミート》はこの獣人界で最も硬い硬度を持つ食材。生半可な力で

は――――』

 シャキンという音とともに、ズズズズズズと斜めにずれていく《ダイヤ

ミート》。

『……ほへ?』

 リュンクスは間の抜けた声を出す。無理もないだろう。彼にとっては《ダ

イヤミート》を斬ることなど容易くできるとは考えていなかったはず。そし

てそれが試練でもあったのかもしれない。

 それなのにいとも簡単に真っ二つに斬られた。それを成した人物。いつの

間にかアノールドたちから離れて《ダイヤミート》へと向かっていた―――

―ウィンカァだった。

「アオアオッ!」

「ん……そこだね」

 ハネマルがクンクンと鼻を動かしてウィンカァに何かを指示している。

ウィンカァは、ハネマルが促した方向から愛槍あいそう――《万勝骨姫ばんしようこつき》を一閃。す

るとまたも呆気なく切断した。

 ガーンといった感じであごを外しているリュンクスの肩にポンと手を置き、

アノールドが気の毒そうに言う。

「ま、まああの子はその……最強なんだわ」

 少なくとも純粋な戦闘力ではという意味だ。

「はは、さすがウイさんだぁ」

 ミュアも彼女の呆気なく空気を一変させてしまう行動に肩をすくめる思いだ

ろう。

 ウィンカァが小さくした《ダイヤミート》を持って帰ってくる。

「あ、あのよウイ、よくあんな硬そうな岩を斬れたな」

「ん……ハネマルがニオイで教えてくれたから」

「へ? ニオイ?」

「何ですかそれ?」

 ミュアも気になり問いかける。

「何かね、この岩にはニオイが違う部分があって、そこは少し軟らかい……

よ?」

「へぇ、よくハネマルが分かったな!」

「アオッ!」

『……スカイウルフという種族は実に鼻が良い』

 突然会話の中に入り込んできたリュンクス。全員が視線を彼に向ける。

『《ダイヤミート》は六つの切断点せつだんてんというものを持っておる。それをどう

やって見つけるかが試練の一つじゃったんじゃが……まさかあっさりと乗り

越えられるとはのう。いやはや、脱帽だつぼうじゃわい。その子はスカイウルフの中

でも特別鼻が良いみたいじゃな』

「えっへん!」

「アッオンッ!」

 ウィンカァにならって自慢げに胸を張るハネマル。何だか微笑ましい姿であ

る。

『ホッホッホ、ならもう本格的な試練はあと一つじゃ』

「まだあんのか? あ、料理を作ること?」

『いやいや、それはレシピを見ればできるじゃろ。あくまでも《ダイヤミー

ト》を捌けるかどうかというところに重きを置いておったからのう。それを

クリアすれば調理は簡単じゃ。じゃから試練はあと一つ』

「…………何だ?」

 リュンクスはジッとアノールドたちを見回してから言う。

『中の二人を信じることじゃ』

「信じるだって?」

『そうじゃ。あやつらには厳しい試練を課しておる。それこそ失敗すれば命

にも危険が及ぶようなものをのう』

「……俺らはヒイロたちを信じて料理を作って待ってろってことか?」

『そういうことじゃ。もしお主らが我慢できず中に入ろうとした時点で失格

とする』

 緊張した空気が流れて静寂せいじやくがその場を支配する。最初に口火くちびを切ったのは

ミュアだ。

「なら、大丈夫です」

『……?』

「ヒイロさんなら、たとえどんな逆境ぎやつきようでもきっと試練を乗り越えてくれま

す」

「ハハ、だよな」

「ん……ヒイロは負けない」

「アオッ!」

『…………なるほどのう。では結果を待つかのう』

 リュンクスはそれだけ言うと、その場から消失した。同時に地面からゴゴ

ゴゴゴとかまどやら調理器具を載せた台が突き出てきた。それで調理をしろ

ということだ。

「よっしゃ! ミュア、ウイ、ハネマル! 俺らはやるべきことをやるぜ!」

 アノールドの言葉に全員が頷き仕事に取り掛かっていく。



「はあはあはあ……」

 日色は額から汗を流して乱れている息を整えようと必死だった。しかしな

がらそれは目の前にいる相手も同様で、同じように疲労感を見せている。

 幾度いくどとなく武器同士を衝突させて攻防を繰り返したが、決定的なダメージ

は互いに与えられていなかった。

 それはひとえに日色が魔法を使おうとすると――――。

「させないのじゃ!」

 日色が指に魔力を宿した瞬間、ワイルドキャットが持っているナイフに

まとっている水がむち状に伸びてきて邪魔をしてくるのだ。

 今までの試練で、日色が文字を書いて魔法を発動させるということを理解

しているようで、日色の動きよりも、その意識は日色の指へと向かっている。

 少しでも魔力を宿そうものなら、即座に水の《化装術けそうじゆつ》を使い魔法発動を

阻止してくる。しかもだ―――――。

 ズズズズとワイルドキャットのナイフを覆っている水が次第に形を変えて、

今度はまるで大きなハエ叩きのように、持ち手が長くなり、先が平べったく

大きくなっていく。

(これだ……この形態変化のバリエーションが鬱陶うつとうしい)

 近づいてきてブンブンと振り回してくる。直撃すれば一気に吹き飛ばされ

て大ダメージを受けてしまう。

 日色は回避して距離をとって再び文字を書こうとするが、再度鞭状に変化

させた水をぶつけてくる。

「ちっ!?」

 近づけば今のように巨大な攻撃力を感じさせる形状を作り襲ってきて、離

れれば中距離型の鞭状を作り攻撃をしてくる。

 またかなりの距離をとってみても、今度は水の塊を放ってくるので、その

汎用はんようさに驚愕きようがくを覚える。

 それでも日色は隙を見つけて何とか発動できた『速』の文字を使ってス

ピードを上げてヒットアンドアウェイを繰り返すのだが、あまりダメージを

与え切れずにいる。

「はあはあはあ……そろそろ決めるんじゃよヒイロ」

 今まで片手で持っていたナイフを両手で持ち、ワイルドキャットがジリジ

リと間を詰めてくる。彼女は即座にナイフを横薙ぎに一閃いつせんすると、そのまま

身体を回転させて独楽こまのように加速していく。

「《水刃独楽すいじんごま》っ!」

 彼女を中心にしてナイフから生まれた水が噴出し、巨大な竜巻を生んでい

く。

 日色は今が好機だと判断して文字を書こうとする―――が、竜巻から水の

塊が飛んでくる。

「何っ!?」

 舌打ちをしながら横に大きく跳び前転したあと、すぐさま立ち上がって刀

を構える。すると立ち上がったところへ竜巻が物凄いスピードで突っ込んで

くる。

 日色は仕方なく全力で刀を振りかぶり竜巻に対して斬撃を放つが、まるで

刃物同士がこすれ合っているかのような音が響き、回転の圧力に負けて後ろへ

飛ばされてしまう。

 危うく舞台の周囲を覆っている高圧電流の壁に触れるところだ。

(くっ……近づけない上に魔法も封じられるとはな……!)

 打つ手なし……そう思われた瞬間、スーッと舞台の外側に玉座とともに骸

骨が現れる。初代ワイルドキャット――――リュンクスだ。

『ふむ、そろそろ勝負がつきそうだな』

 その言葉が放たれた瞬間に、何故か竜巻の回転力が落ちる。水の中にいる

ワイルドキャットの視線が日色からリュンクスへと向けられている。

(今だ!)

 彼女がよそ見をした瞬間を見て、日色はササッと文字を書いていく。しか

しすぐにワイルドキャットの意識も日色に向かい水の塊が放たれる。

 日色はすでに文字を書き終えていた。右手の指先に文字を維持しながら水

の塊を避けていく。相手も文字を完成させたと思っているようで、迂闊うかつに近

づいてはこない。

 しばらく睨み合っている時間が過ぎていくと、

『ほれほれ、どうしたのじゃ? このままじゃ、お主らの仲間が大変なこと

になるかもしれんのう』

 リュンクスが苛立いらだつことを言ってきた。どういう原理か分からないが、ど

うやら時間が経てば経つほど、アノールドたちが苦しむような状況になって

いるという。

(どうにもこの状況……違和感だらけだな。それにあの骸骨も……)

 日色は戦いながら最初から違和感を感じていた。そして一番不可解なのは

リュンクスだった。

(確かめる必要が……あるな)

 だがそこで真っ先にしびれを切らして動いたのはワイルドキャットの方だっ

た。水の塊を放ちながら突っ込んでくる。今度こそ日色を吹き飛ばそうとい

う考えかもしれない。

 日色は左手に持った刀で、飛んでくる水の塊を斬りながらその場にジッと

構えている。そのまま刀で竜巻を受け止めるが、やはりバチンッと身体ごと

弾かれてしまう。

 しかも今度はこのまま真っ直ぐ突っ込めば壁に激突する勢いだ。

「あっ!?」

 ワイルドキャットから声が漏れる。すると竜巻から鞭のようにうねりなが

ら水が伸びてきて日色の身体をつかみ、間一髪かんいつぱつのところで激突を防ぐ。そのま

ま日色を床へと叩きつけるワイルドキャット。それは一見したらダメージを

与えるための攻撃に見えるが―――。

(コイツ……やはりな……)

 日色は彼女の今の行動でハッキリと分かった。ワイルドキャットが日色を

必要以上に傷つけないようにしていることが。

 だが時間をかければアノールドたちが苦しむことになる。でも日色を殺し

て勝利者になることなどできない。そのどちらも選択できない選択肢の間で

彼女は揺れている。

 日色はゆっくりと立ち上がると静かに口を開く。

「……終わりだ、ドロボー猫」

「……え?」

 刹那せつな―――バチィィィンッと竜巻が霧散むさんして、瞬時に手のような形に変化

し、彼女の身体を掴み上げ締め付けることに成功。

「ぐ……何で……っ!?」

 彼女の視線が日色の身体に巻き付いている水を見てギョッとする。その水

には『操』の文字が貼りついていた。

 この文字の効果は発動させた対象のコントロールを得ることができる。つ

まり彼女が今まで操作していた水の権利を奪ったのだ。

 今、日色は自由に水を操作できる立場にいる。右腕にめている《化装

術》を使うかなめである腕輪を、水を操作して器用に外し床に投げ捨てる。これ

でもう《化装術》は使えないはず。

 日色が刀を構えて近づくと、リュンクスが玉座をガタッと動かして明らか

に動揺した。それを横目で確認する日色。

(……やはりな)

 日色は一踏ひとふみでワイルドキャットを斬りつける位置に立つ。

「…………さっさと殺すのじゃ」

「何を言ってる?」

「早く決着をつけなきゃアノールドたちがどうなるか分からんのじゃよ?」

「かもしれないな」

「だ、だったらさっさと勝利者を決めて彼らを救えばいいじゃろ! それと

もこのままなぶるつもりかのう!」

 その問いには答えずに日色は身体の向きを変えてリュンクスと対面する。

「おい骸骨、お前――――――大事なことを言い忘れているよな?」

『…………何のことかのう?』

とぼけるのもいいが、お前はやり方を間違ってる」

 日色の言葉にワイルドキャットも「え?」という感じで眉を寄せている。

「もしオレが考察するタイプじゃなくて、疑問を持たずに勝つことだけを考

えて行動してたら、今頃コイツは死んでたかもな」

『……これは試練じゃ』

「ふん、よく言う。さっきオレがコイツに殺気を向けた時、明らかにお前は

動揺した。それもそのはずだよな。何てったってコイツはお前の孫だ」

『…………』

「まったく……どういう計画を立ててるか知らんが、オレを利用しようとし

てるのが気に喰わん。そもそもお前は勝利者を出せ―――としか言ってない。

相手を殺す、倒す、傷つける。その上で勝利者を決めろとは言ってない」

「……っ!?」

 ワイルドキャットもリュンクスが試練を始める前に言っていたことを思い

出したのかハッとなっている。

『……何が言いたいのかのう?』

「つまり、明確なルールはないってことだ。勝利者を決定するのもこの舞台

に立っているオレとコイツにゆだねられているということ。そう、勝利者を一

人選ぶのも――――――二人選ぶのもな」

 日色の見解けんかいにリュンクスは何も言わずもくしているが、ワイルドキャットは

唖然あぜんとしてキョロキョロと答えを確かめるように日色とリュンクスを交互に

見つめている。

「何のことはない。この場に立っていただけで、すでにオレらは勝利者だっ

たってことだ。あとはこのシステムに気づき、互いにほこを収めることができ

るかどうか……それが試練だった。そうだろ、骸骨?」

 しばらくの沈黙が場を支配する。不意に骸骨がカタカタと身体を揺らす。

『ホッホッホ、いやはや…………いつ気がついたんじゃ?』

「今までの試練、それを振り返れば簡単だ。確かに死を感じさせるような危

険な試練もあった。だが必ず引き返すすべが挑戦者には与えられていた。つま

り好き好んで一方的に命を奪うようなものじゃなかった。今回の試練も同じ

だ。確かに一見すると逃げ道などなく、死を感じさせるが、よくよく考えれ

ばお前の言動もおかしかった」

『……ほう』

「オッサンたちをオレらのもとから離して不安をき立て、ここでコイツと

戦わせる。時間をかければオッサンたちの寿命が削られるというようなフワ

フワした、いかにもな理由を突きつけてな。もし本当にオッサンたちに危険

が及んでいるなら、実際に目の届くところで傷つけた方が確実に効率が良い。

だがそれはできない。何故か……嘘だからだ」

「う、嘘!? ちょ、ちょっとおじいちゃん! どういうことなんじゃよ!?」

 さすがに黙っていられなくなったのかワイルドキャットが声を張り上げる。

また魔法の効果が切れて、彼女は日色の水から解放されて床に落ちる。そし

てすぐさま床に落ちている腕輪をめながら起き上がってリュンクスの方へ

詰め寄る。

「答えるんじゃよおじいちゃん!」

「簡単だ。そいつはお前の成長を確かめるために、この試練を仕組んだに過

ぎない。最初から誰かを殺す気などないってことだ」

「……そ、そうなのかのう、おじいちゃん?」

 またも沈黙。だが諦めたようにリュンクスが溜め息をく。同時に舞台の

周囲を覆っていた壁が消失する。

「お、おじいちゃん……?」

『……二代目よ、一つ聞こう』

「な、何じゃよ?」

『……何故、一思いにその少年を殺さなかったんじゃ?』

 確かに彼女が日色を殺そうとすれば、その機会はいくらでもあった。だが

日色は気づいていた。彼女から殺気が全く感じられなかったということに。

「……ヒイロたちを勝手に巻き込んだのはワシじゃから」

 ワイルドキャットが静かに語り出す。

「ワシは魔法仕掛けの塔で、ずっと待ってたんじゃよ。おじいちゃんが遺し

たノートに書かれてあったように、利用できる仲間が現れるのを」

 どうやら彼女が手にしていた試練のクリア後に手に入れられる報酬ほうしゆうの中に、

そのような事柄が書かれたものがあったらしい。そこには次の試練では一人

ではクリアできないことが書かれてあったようで、彼女は腕っぷしが強い人

物を探していたという。

 そこで出会ったのが日色たちであり、日色たちならばその強さを信用でき

ると考え今まで利用してきたとのこと。

「けど……前の試練の時、ちょっと……楽しかったんじゃよ」

『そうか……』

「それに何だかんだ言って、ヒイロたちはワシを信用してくれたしのう」

『だからお前は、今回の試練で少年を殺すことができなかったんじゃな?』

「……ホントの意味でワイルドキャットになるためにも、試練を絶対クリア

しようと思ってヒイロを倒そうとしたんじゃよ。でも……」

 心を殺して、日色をあやめることができなかったのだ。

 口ごもるワイルドキャットを尻目にリュンクスが突如として大笑いし始め

る。

『ホッホッホッホッホ! それで良いんじゃよ二代目よ!』

「……え?」

『すべてはそこの少年が言った通りじゃよ。ワシはお主に…………至高の宝

の本当の意味を知ってほしかったのじゃ』

「え……それってこの最後の地に隠されてるんじゃろ?」

『うむ、外へ出てみなさい』

「ん? おい骸骨、そこの金庫は開かないのか?」

『ホッホッホ、これは金庫のように見えているただの壁じゃよ』

「何?」

 日色は舞台から跳び下り金庫の傍まで近づく。近くで見ても取っ手がつい

ていて、重厚そうな扉が備え付けられている金庫に見える。だがよくよく観

察してみれば、壁と一体化していることが分かる。

 壁をまるで彫刻のように削り取り金庫の扉のように見せているだけだ。さ

すがは建築家だと思わされた。

「つまりここの金庫は、常に視界に入れてやる気を上げさせる仕組みの一

つってことか」

『ほっほっほ、相変わらずさとい少年じゃわい。では先に外で待っておるぞ』

 そう言いながらリュンクスはスーッと消えた。

 外へ出てみると急激に腹の虫が警告音を鳴らす。何故なら一気に鼻腔びこうをく

すぐるこの美味そうなニオイ。それに円卓の上に置かれている様々な料理に

目が奪われる。

 日色はよだれが自然とあふれ出てくるのを感じながら円卓へと向かう。その後に

困惑気味にワイルドキャットもついてくる。

「あ、ヒイロさん!?」

「え? ヒイロ?」

 ミュアとウィンカァが日色の存在に気づきチョコチョコとやってきた。

「ぶ、無事ですかヒイロさん!」

「ヒイロ……無事?」

 二人の幼女が目を潤ませて心配そうに小首を傾げている。その光景

を見てアノールドが手に持ったフライパンを悔しげに噛んで、「アッ

チィィィッ!?」とバカみたいなことをしているが……。

「一体これはどういうことだ?」

『説明しよう。さあ、席に着きなさい』

 誰よりも先に席に着いているリュンクスが説明をしてくれるようだ。皆が

席に着くと、何故リュンクスがこのような試練を与えたのか話してくれた。

『全ては、二代目を引き継いだ我が孫のためなんじゃよ』

「おじいちゃん……」

『ワシがまだ生きておった時、この子を拾った』

「拾った? おいおいジイサン、拾ったって、この子と血はつながってねえの

か?」

 アノールドが驚くのも無理はない。日色もまさかそんな事実があるとは

思っていなかった。

『そうじゃ。ワシは生涯しようがい独り身じゃったしのう。じゃが、捨てられていたこ

の子を見捨てることができんでのう。ワシが育てることになったのじゃ』

 月日が経つにつれ、次第にリュンクスはワイルドキャットのことを本当の

孫のように思えてきたという。世界各地を彼女と回り、彼が作った魔法仕掛

けの塔や【石地蔵の砦】などの日色たちがクリアした建造物もその時見て

回ったらしい。

 そこでリュンクスは、自分が義賊ぎぞくで怪盗だということを彼女に教えると、

彼女は目を輝かせて自分もなりたいと言った。

 だがその頃、リュンクスは病を抱えていた。寿命が近いのだと悟った。そ

れから彼女にあるものを託すと、信頼のできる人物に彼女を預けて、自分は

試練作りにいそしむために世界を回った。

「おじいちゃんがワシに遺したのは、これじゃよ」

 ワイルドキャットが懐から出したのは一冊の本。そこには二代目ワイルド

キャットを継ぐために必要なこと。つまり試練について書かれてあった。丁

寧にクリアする順番まで書かれてあった。

 ワイルドキャットは尊敬していたリュンクスの跡を引き継ぎたいと思い、

試練をクリアする旅に出かけたということだ。

 そして日色たちと出会い、今ここでこうして顔を突き合わせている。

「ここに眠る至高の宝を手に入れれば、おじいちゃんみたいな立派な怪盗に

なれるって書かれてあった。だからワシは……」

『二代目よ、お主はもう立派に二代目を引き継いでおるよ』

「え?」

『ワシが確かめたかったのは、お主が仲間を大切に思えるかどうかなんじゃ

よ』

「な、仲間?」

『そうじゃ。この最後の試練、前の試練もそうじゃが、もし仲間を信じるこ

とができなかったら、きっとクリアなどできんかったはずじゃ』

 確かに以前も今回も、利害が一致して行動しているとはいえ、仲間という

くくりに入ることも否めない事実である。

『ワシはお主に金銀財宝よりも素晴らしき宝があることを知ってほしかった。

至高の宝、それは―――――――――――大切に思える仲間じゃよ』

「おじいちゃん……」

『ワシにもの、ずっと昔におったんじゃ。面白い連中じゃったよ。いろんな

ことを教わった。中でもチェスというゲームが一番気に入ってのう。じゃか

らワシの自慢の建造物はチェスの駒をしておる』

 聞けば、以前ミュアから聞いた『チェスの上手くなる秘訣』という本を書

いたのはリュンクスらしい。

『奴らはワシを、まるで家族のように接してくれおった。しかし長生きはす

るもんじゃないのう。もうあやつらはおらん。だがあやつらと過ごした日々

は、太陽のような輝きに満ちておったわい』

「だからジイサンは、この子に仲間を作ってもらうために試練を?」

 アノールドの問いにリュンクスはハッキリと頷く。

『そうじゃ。この子に、家族とも呼べるような仲間の素晴らしさを知っても

らいたかったのじゃよ。ワシが死ぬ前にどうしても、この試練を作り、最後

の贈り物としてのう』

「おじいちゃん……勝手なんじゃよ。いきなりどこか行って、やっと会えた

と思ったら骸骨だし、ヒイロと戦えなんていうし……無茶苦茶なんじゃよ!」

『すまんかったのう。じゃがお前は、見つけることができたはずじゃ。至高

の宝をのう』

 ワイルドキャットは日色たちを見回し、それぞれの目を見つめてボフッと

照れたように真っ赤になって顔を逸らす。

「か、かかかか怪盗にはと、友達なんていらないんじゃよっ!」

 慌てて席から立ち上がるが、明らかに照れ隠しで言っていることは明らか。

だがそこへ空気を読まない男―――日色が口を開く。

「どうでもいいが、究極の料理とは何だ?」

『ほ? じゃからこうして仲間とともに苦労して集めた食材で料理を作り、

食卓を囲うことそのものじゃよ』

「…………はぁ、ここに来て多分そんなことだろうと思っていたが」

 目の前にある料理を日色は口に運び、

「はむ…………まあ、料理は悪くない。だが究極というのにはまだ遠いな。

精進しろよオッサン」

「うっせえよコラ! 大体いっつもいっつも偉そうに! たまには黙って感

謝しながら食えよなホントまったくよぉ!」 

「ヒ、ヒイロさん! これも食べてみて下さい!」

「ミュア~! こんな無礼な奴にミュアが心を込めて作った料理なんてもっ

たいねえよ~」

「もうおじさん! 仲良くして!」

「あ~も~怒った顔も可愛いなぁ、ミュアは~」

 アノールドは持ち前の度し難いほどの親バカぶりを発揮してトリップした。

その間にミュアが皿を日色の前に差し出してくる。

「これは?」

「あのですね、《ダイヤミートバーガー》です!」

 見た目はハンバーガーのようだ。中の具もトマトとレタスと変わり映えの

しないものが挟まっているが、一つだけ異彩いさいを放っているものがある。

(この肉は……何だ?)

 まるでダイヤモンドのような輝きを放つ物体。だがカチカチに硬いわけで

はなく、どちらかというとプルンプルンと軟らかそうだ。また美味そうな肉

汁がしたたり落ちている。香ばしいニオイが涎を誘う。

 一口ガブッと噛んでみる。口の中で溢れ出る旨味うまみ。コリコリとした食感と

ともに隠されていた肉汁がブワッと染み出てくる。

 それが野菜に包まれて絶妙なバランスを整えている。しかもパンに良く合

うみたいで両拳を合わせたほどの大きさがあるがすぐにペロリと平らげてし

まった。

「うん、美味いぞチビ、これをお前が作ったのか?」

「あ、はい! おじさんに調理法を教えてもらって作りました!」

「ウイも、手伝ったよ?」

「はい! ウイさんも野菜を切ったりパンに挟んだり手伝ってくれまし

た!」

「二人の合作?」

「その通りですよウイさん!」

 ミュアとウィンカァは互いに両手をパンとタッチした。ハネマルも嬉

ききとして吠えまくっている。

「ん? 何してんだワイルドキャット? さっさと食べねえとみ~んなヒイ

ロに食われちまうぜ?」

 アノールドがぼ~っと突っ立っているワイルドキャットに言うと、

「……ワシも食べてもよいのかのう?」

「はあ? あったりまえだろ? そのために作ったんだしよ。なあミュア、

ウイ?」

「「うん!」」

 二人は彼の言葉に首肯する。ワイルドキャットはジッと料理を眺めている。

そこへリュンクスが諭すように言葉を出す。

『頂きなさい。仲間が心を込めて作ってくれた料理じゃよ』

「おじいちゃん…………うん」

 ミュアから皿の上に載っている《ダイヤミートバーガー》を受け取り彼女

かじった。

「………………美味いのじゃ」

 彼女の表情には幸せを噛み締めるような笑みが浮かんでいた。それを見て

リュンクスも小さく何度も頷いている。

「ああ! おいヒイロ、それは俺の分だぞ!」

「知るか。早い者勝ちだ」

 日色が残り一つの《ダイヤミートバーガー》を取り口に運ぼうとした瞬間、

横から長い尻尾がササッと向かってきて、瞬く間にバーガーを奪われてしま

う。

「なっ!?」

「ウニャニャ~! 早い者勝ちなんじゃよ~、はむっ! 美味いのじゃよ

~!」

「お、お前、このドロボー猫! 何しやがる!」

「ワシは怪盗じゃ。盗まれる隙を見せる方が悪いんじゃよ?」

「コ、コイツ……!」

 フルフルと拳を震わせると、日色はキッと円卓の上に載っている料理を凝

視して、勢いよく自分の前に皿を集めて次々と料理を口に入れ込んでいく。

「ああ!? ずるいのじゃ! 絶対負けないんじゃよ!」

 ワイルドキャットも同じように皿をかき集めて料理を頬張ほおばっていく。また

日色たちだけでなく、ウィンカァも持ち前の大食漢ぶりを発揮して同様に料

理を胃へ流していく。

『ホッホッホ! これは愉快ゆかいじゃ! ホッホッホッホッホ!』

「あわわ! ま、まだありますからそんなに慌てて食べないでもいいですよ

皆さ~んっ!」

「ミュア、ダメだ! コイツらにそんな常識が通じるわけがねえ! こう

なったら俺も負けてらんねえ! どうせならコイツらが食べきれねえくらい

作ってやらぁ! おいミュア、手伝ってくれ!」

「わ、分かったよおじさんっ!」

 アノールドとミュアも食べ尽くそうとする日色たちに負けじと料理を作っ

ていく。額からは汗を大量に流しながらも、二人は自然と楽しさで笑みを浮

かべている。

 また料理を日色と取り合いしながら食べるワイルドキャットもまた、スッ

キリした笑顔を見せている。

 ウィンカァとハネマルも同じ料理を食べながら、ライドピークたちにも食

べさせている。

『ホッホッホ。そうじゃよ…………これが究極の料理。仲間との一食じゃ』

 その呟きは誰にも聞こえていない。リュンクスは満足気に一つ頷くと、そ

のままスーッと消えていく。

 それに気づいたワイルドキャットがハッとなり「おじいちゃんっ!?」と叫

んで近づいて手を掴もうとするがまるで雲を掴むが如く擦り抜けてしまう。

『……二代目……いや―――――我が孫、ネネリスよ。聞かせてくれ。今

…………幸せかのう?』

「おじいちゃん…………うん、ありがと……すっごい楽しいんじゃよ!」

『ホッホッホ! そりゃ良かったわい! これで思い残すことなくけると

いうもんじゃ』

「……もう会えないの?」

 ワイルドキャット―――いや、ネネリスから涙がこぼれる。彼女もまた死ん

だはずのリュンクスに会えて嬉しかったはずだ。

『きっといつか、また会えるはずじゃ。じゃがのう、その時は、後悔のない

よう自分の人生を歩み終わった時じゃ。大丈夫、お主は一人じゃない。こん

な素晴らしい仲間が作れるんじゃ。じゃから、その輪を広げ、人生を大いに

楽しむんじゃよ。そして、その意志を、今度は三代目に託すんじゃ。それが

二代目ワイルドキャットとしての務め。分かったかの?』

「…………うん。初代、二代目を超える立派な三代目を育ててみせるのじゃ。

だから安心してほしいんじゃよ」

『…………うむ!』

 確かに見た。彼が―――満面の笑みで笑ったのを。それは幻影だったのか

もしれない。骸骨である彼の表情が分かるわけがない。だがその時だけは全

員が理解できた。彼は大満足の笑みを浮かべていたのだということを。

「人間界に戻るんですか?」

 料理を食べ終わった後、ここに来た時のように魔法陣を発動させて元の森

の中へと戻った。

 腹も満たして皆が満足気な気分でいる時に、ネネリスが日色たちに向かっ

て人間界へと戻ると言ってきた。ミュアは獣人である彼女が再び人間界に戻

ることを不安気に思っているようだ。

「大丈夫じゃよ。こう見えても今まではずっと人間界にいたんじゃしのう。

それにじゃ、おじいちゃんは人間なんじゃよ」

 それは誰もが気づいていた。彼には尻尾が生えていなかった。たとえ白骨

化しても尻尾の骨は残っていたはず。だが見当たらなかった。だから彼が人

間かもしれないと考えていた。

「ワシはおじいちゃんが遺した試練を、今度はワシが三代目のために守って

いくんじゃよ」

「そっか、一緒に旅ができれば良かったけどな。お前がそう決断したなら、

俺らは応援するぜ」

「ありがとなのじゃアノールド」

「あ、でもよ、三代目ってことはお前さんの子供ってことだろ? むふ~そ

ういう相手っているのか?」

 下卑げびた質問をするアノールドに、ミュアは顔を真っ赤にするが、ネネリス

は意地悪そうにニヤリと笑みを作ると日色に近づく。

「ウニャニャ、ヒイロ? どうかのう、ワシは結構お買い得だと思うんじゃ

がのう?」

「あわわっ!?」

 ミュアが何故か一番驚いている。

「はあ? お買い得? 誰が金を出してお前みたいな胡散臭うさんくさい奴を買うか」

「ウニャッ!? ひ、ひどいんじゃよっ!?」

 日色にとっては、何故金を出してまで怪盗を雇わなければならないんだと

いう思いからだが、周りの日色パーティから何故か白い目で見られている。

「おいおいヒイロ、振るにしても言い方があるだろうがよぉ……」

「い、今のは確かにかわいそうですよヒイロさん……」

「ヒイロ、言い方きつい……よ?」

「アウゥ~……」

「…………何故だ?」

 日色は全く理解できていない。するとそんな日色に対してビシッと指を突

きつけるネネリス。

「こ、これは宣戦布告なんじゃよヒイロ!」

「…………?」

「い、いつかお主をその……あれじゃ! お主の心を盗んでやるのじゃっ! 

か、必ず覚悟しておくのじゃよぉぉぉぉ~っ!」

 顔をでダコのように真っ赤にしながらその場を物凄い勢いで走り去って

いくネネリス。

「はうわ~、大胆ですよぉ~。で、でもでもわたしも負けちゃダメだよね!」

「ん……ヒイロは渡さない。ウイも負けない」

 ミュアとウィンカァは何の覚悟を示しているのか、そしてネネリスの言っ

た言葉の真意が分からず、日色はただただ眉間にしわを寄せて首を傾げてい

るだけだった。

 そんな日色をジト目で見つめて、アノールドは呆れたように呟く。

「ネネリスよぉ……残念ながら届いてねえよお前の想い。だって…………ヒ

イロだしな」

「アウゥ……」

 ハネマルもアノールドと一緒に、日色の鈍感さを嘆き溜め息を漏らしてい

た。

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