第6話
あの後ぼんやり電車に揺られてなんとなく帰ってきた。
沙里ちゃんと何を話したのかもうろ覚えで、大騒ぎするどころか二人とも何も喋れなかった。
多分「迷惑だったかなー」とか、「かっこよかったねー」ぐらい。
まだ明るい夜に水色とオレンジの心地よい空が広がっている。サイダーでも買って家で飲もうかな。
もし夢なら、覚めないで。
でもどうしても明日はくるのだ、明日も学校、週のど真ん中水曜日。
でも次の日も、次の日も、次の日も、私の中のサイダーの泡はぱちぱち涼しげな音を立てて今日も心臓を鳴らして体に血を巡らせる。
あれから三日経って金曜日、泡は弾けながらも特にいいことも悪いことも起こらず平々凡々いつも通り。
「かっこよかったよね、ほんと」
いつもの昼休み、お弁当を食べながら沙里ちゃんが口を開いた。
「びっくりしてお茶吹くとこだったよ」
あははは、ころころ笑って沙里ちゃんは真面目な顔になった。
「だってドラムの人話してて超かっこよかったよ?」
「ボーカルもかっこよかったよ?それにしても三日目にして発熱か、私たちにしては潜伏期間長いね」
「そうだねー、でも、ほんとにかっこよかったよね!もうヤバイわ」
私達はだいたい何か怒ったら次の日かその日の夜にはキャーキャー騒いで一週間たったら終わり、みたいな風邪のような症状があるのでこんな言い方をしている。
キャーキャー騒ぎだすのが発熱、潜伏期間は騒ぎだすまで、とかね。
そしてまたサイダーが弾けて発熱するまで、あと一日。
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