第18話 side カナタ
「へっ?」
思わず変な声が出た、下からハルカが
怪訝な顔でオレを見てる。
「つまりそーゆー趣味なわけ?オレあんま、苛めるようなことは・・・イデッ」
さらに変な声が出たっつーか、脛を思いっきり蹴られた。
目の前のハルカが真っ赤な顔でオレをにらんでる。
「なに・・・」
「違う」
「なにが」
「・・・から」
それは消え入りそうな声で、よく聞こえなかった。
「聞こえねーよ?」
問い返すオレに溜息をひとつ、
そしてオレからゆっくり目を逸らしてこう言った。
「忘れられなくなっちゃう、から」
その言葉の意味と、ハルカの決意を理解するまでの数秒
オレは固まって何も言えなくなっていた。
マヌケ面をしたオレに組み敷かれたハルカは
瞳に涙をたたえたまま、なんとか零すまいと瞬きを堪えていた。
「ごめん」
やっとのことで言うべきことを口にした途端、
その眦にオレが指を伸ばすより先に透明な滴があふれた。
「ごめん、泣かないで」
まぶたにそっとくちびるをふれると、ハルカが息をのむのが聞こえた。
「嫌だった?」
「・・・ううん、えっと」
「ん?」
「びっくりしただけ」
「そっか」
起き上がってソファからおりるとハルカも慌てて座りなおす。
「なんか飲む?」
オレの問いには答えずに、じっと見上げているその視線。
「なによ?」
物言いたげなのが気になって腰を屈めると
伸びてきた両腕がオレの頭を抱え込み
紅い舌がオレの下くちびるをなぞってそのまま離れた。
呆然とするオレに
「嫌だった?」
ハルカがちょっと笑う
「あ、いや」
「ふふ」
「びっくりしただけ」
perspective ARATA @ARATA
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