第17話 side ハルカ
後ろ手でドアをしめた。世界から分断されたような気分。
でも、嫌じゃない。
「・・・カナタさんの家?」
「ちげーよ」
靴を脱いでずかずかと中に進む、カナタ君の背中を追う。
「兄貴の」
「・・・いいんですか?上り込んじゃって?」
「あー、留守であずかってるっつーか」
「留守?」
「1年間の期限付きで海外赴任中」
そういえばなんとなく生活感が薄いと思う、
小奇麗に片付いた部屋。
振り返ったカナタ君が笑いながら言う。
「あいつはデキがいーんだよ、弟と違って」
「・・・いいなあ」
「何が?」
「わたし、兄弟いないからうらやましくて」
「ガキの頃は結構ぶん殴られたけどね」
「それも」
「あ?」
「お兄さんのほうは『ガキの頃はぶん殴ってやったけどね』とか
言うんでしょ?いいなあ」
「・・・ナニソレ」
座れば?と促されてソファの端っこに腰をおろす。
と、そのままカナタ君の体が圧し掛かってきて、あっという間に
視界が天井を向いていた。
肩のあたりでカナタ君の声がする。
「なあ、なんでついてきたの」
ぽつりとつぶやいたまま顔を上げないカナタ君の背中に
そっと腕を回してわたしもその理由を考える。
「・・・やめたいけどやめたくなくて」
腕の中でカナタ君の体に少しだけ力が入る。
「悲しそうだったから」
「悲しそうなら誰でもそうする?」
「・・・」
「なあ」
「カナタさんが、悲しそうだったから」
ようやく合格点の答えになって満足げな表情のカナタ君が
わたしの両側に手をついて半身を起こした。
「!」
至近距離で絡む視線、気まずくて目が泳ぐ。
「ハルカ、こっちみて」
「・・・」
「なあ、嫌?」
カナタ君の指がわたしの髪を弄る。
ずるいよ、そんなやさしい声。
「嫌、じゃないけど」
「けど、なに?」
「・・・おねがい」
「ん?」
泣きそう。
「・・・やさしくしないで」
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