第14話 side カナタ

「そんなもんなの?」

思わず零れた言葉にハルカがオレを見る。


「真面目にオレの曲聴いて、聴き続けてくれてたって

 それでもオレっていうものは、届かないもんなの?」

「・・・それは」

オレは怒ってるつもりも問い詰めてる気もなかったけど、

ハルカはちょっと身を竦めて言いよどんだ。

「そんなんならさ」


「オレ、迷わなくてよくね?」

「だめ」

あまりの即答にちょっとウケた、意味わかって言ってんのかよ?

さっき聞いたよな、と思いつつオレは繰り返した。

「オマエは知ってるの?」

なにを、とは聞き返されなかった、今度は。


「・・・今日のセットリスト」

「ん?」

「先々月のライブとおんなじだった」

「・・・そうだっけ」

「先月のライブはミワさんとの曲しかやんなくて」

「・・・」

「新曲もずっとなくて」

「・・・あー」

「どういうことかなって、考えるくらいは、わたしだって、でも」


「でも、なに?」

途切れた言葉の先を促す。

「この前、あの曲を歌ってるカナタさんがすごく楽しそうで」

「あの曲?」

「台風のライブ、違うトラック、同じリリック」

「あー」

オレが靴をなくしたあの朝に力説してたやつか。

「だから」


「カナタさんはやめたいけどやめたくないのかなって」


・・・わかってんじゃん、どころか見透かされてんじゃん。

情けなくね?オレ。

誰にも言ってなかったのになー、ほんとのとこは。


ふと、ハルカの指がオレの頬に触れた。

「ん?」

「ごめんなさい」

「なにが?」

「傷つけた」

そうか?


ハルカの首筋に指を滑らす。

「癒してくれる?」

うつむいたまま、黙りこんだ。


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