第13話 side ハルカ

背中から伸びてきた手が頬に触れて、向けられた先で

カナタ君と視線が重なった。

触れられてる部分が熱い。

こんなのなんでもない。聞かれた名前を答えただけ、ただそれだけ。

「・・・はなして」

「なんで?」

「手が・・・熱い、か・・・ら?」

ふと気づく、頬に添えられた手をひっぺがして確かめる、やっぱり。


「カナタさん、結構酔ってる?それとも具合悪い?」

「ん?」

「手、すごく熱」

熱い、と言いかけてる最中にその手のひらがまたわたしの頬を撫でる。


「介抱してくれんの?」

にへらーと笑って、指先を首筋へと滑らせる。

・・・酔ってんのか、これは。

「いる、くせに」

「ん?」

「してくれるひと、いるくせに」

「いないよ?」

予想外の返事に思わずふりむいたのだけれど。

「今日は」

つづけられた言葉を聞いて、鼓動が跳ねる。


「・・・なにブータレてんの」

「はっ?」

「オレを好きなんだ?」

「ち、違っ」

「違うの?」

至近距離で、これでもかってほど見つめられて、否応なしにあがる体温。

わたしはひとつ、息をつく。


「カナタさんの声が好き」

わたしに向かってのばされた指先が、一瞬躊躇する。

「カナタさんの音楽が好き、でも」


「カナタさんを知ってるわけじゃない」

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