第5話 side ハルカ
あの日から最初のカナタ君のライブは、今夜。
あいにくの雨。
「雨かあ、めんどくさいなー」
「そんなこと言っても行くんでしょ」
「行くよ、そりゃ」
「愛しのカナタ君のライブだもんね?」
「そんなんじゃないよ」
わたしはカナタ君の音楽が好きなだけ、カナタ君が愛しいとかじゃない。
何度も説明したと思うけど、わかってはもらえてないみたいだね…
溜息をつきながら答えたわたしに、友達が言った。
「カナタ君の音楽は、さあ」
「うん?」
「カナタ君自身とは違うの?」
「どういうこと?」
「ハルカにとって、って意味だけど」
「…ますますわかんない」
「ライブみて確かめてくれば?」
そう言って笑って、電話は切れた。
…そんなこと言われたら気になる。
シャワーを浴びて、髪を整えて、化粧をする。
誰のため?何のため?
お気に入りの服を着て、靴を選ぶ。
…カナタ君に見られたいとか思ってる?わたし?
「カナタ君の音楽が好き」
うん、間違ってない、わたしはカナタ君の音楽が好き。
友達の言うとおり、カナタ君の音楽がカナタ君自身であるのならば。
それはつまり
「カナタ君が好き…ってことになるわけ?」
なんでもかんでも恋愛に結び付けるのってどうなの。
あのクラブ傘立てあったっけ、なんて記憶をたどりつつドアを開ける。
「そんなに簡単に、好きになったりできないよ」
つぶやいたひとことは、思っていたより強く降る雨にかき消された。
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