動画のススメ ーiPhone一つで動画編集ー
おはようございます。という言葉と共に三木が入ってきた。朝の四時、外はまだ真っ暗だ。普段この時間に声を掛けられることがないので、かなりビックリした。
そういえば、今日の朝一番で来ると言っていたなあと思い出した。
「おはようさん、そういえば今日パンを作っているところを撮影したいって言ってたっけなあ」
「はい、よろしくお願いします。」
そういう三木のまわりを見渡したが、どう考えても大事な物がない。手にしているのは薄いビジネスバックだけだ。
「なあ、カメラがないんじゃない?」
と言うと、ありますよ。といって三木はポケットから取り出した。
「それiPhoneじゃん」
「はい、そうですよ。あれっ?iPhoneバカにしてます?」
「いや、だって、、」
「まあ、いいから撮りましょう。大丈夫です。」
本当に大丈夫かよ?と思いながらパンを作り始めると、三木はそれを意に介さない感じで意気揚々とiPhoneで撮影を始めた。
一通り撮り終えると、これを編集しますので見ていてください。と言ってiPhoneをごそごそいじり始めた。
「えっ、iPhoneだけで編集するの?」
「はい、【iMovie】というアプリを使います。iPhoneにタダで入っているんですよ。」
「タダ?タダで動画の編集が出来るの?」
「はい、最初に使いたい動画を選択すると、勝手に動画と動画をつなげてくれます。それで、それぞれ撮った映像の使いたい部分を指で範囲を決めて、、決定、次の映像も同じように、、、それを繰り返すだけです。」
「すげ、、、」
「はい、できました。30秒以内ぐらいにするといいですね。あんまり長いとみてもらえません。簡単ですよね。
本当は、ちゃんとしたカメラを持ってくることもできたのですよ。
でも、これを見てもらいたくて、、、簡単だと言う事をお伝えしたくて、、、、今日は敢えてiPhoneだけでやってみました。
いままで動画を制作するなんて大手しか出来なかったことです。でも、今は見ていただいた通りiPhone一つあれば出来る。しかも、これに関して言えば、どちらかというと小売店のほうが有利だと思います。
大手は店舗数も多いだろうから、沢山作らなければならないので、どうしてもちゃんとした手順をふまないといけないと思います。
ちゃんと撮影させて、手間をかけて編集して、DVDかなんかに焼いて配送するみたいに、動画一つ作るとすると凄い手間と時間がかかります。
売れ筋の商品、一つや二つだったら作るかもしれませんが、たぶん、たくさんは作りませんよ。でも、『情報』は『静止画』より『動画』の方が伝わる量が格段に多いのです。
例えばですけど今撮った、焼き上がりの湯気が立ち上るパンなんかは写真より、動画の方が伝わり易いというのが解りますよね。大手とは逆に小売店は思いついた時に、今みていただいた通りものの数十分あればできます。この『動画』をうまく使うことができれば、きっと小売店にチャンスがまわってくると思います。」
「なるほど、、、」
「さて、話を戻してじゃあ、この動画をまず、YouTubeに載せましょう。」
というと、さっさとYouTubeに載せてしまった。
「次は柳原ベーカリーの"フェイスブックページ"に投稿します。」
「個人の板じゃないの?」
「はい、なぜなら個人の板の場合は見えませんが、Facebookページに動画を投稿するとその動画が何秒見たれたかとか、年齢とか、いろいろ見ることができます。だから最初はフェイスブックページに投稿します。
個人のページにはあとでシェアしておいてください。」
なるほど、と言うと三木は続けた。
「フェイスブックに動画を投稿するとリーチ数、、、つまり投稿が表示される数が写真の投稿より高くなる傾向があります。
よくYoutubeに埋め込んでそのリンクを埋め込んだりする人がいるのですが、それはダメです。直接埋め込まないとリーチ数はあがりません。
直接埋め込むと、その人の設定によりますが基本的に自動で再生が始まります。
これが大きい。
Youtubeのリンクを埋め込んだものにはそれはありません。
YoutubeはYoutube、フェイスブックはフェイスブックであげる必要があります。
Facebookの動画は『3秒』以上再生されると1回とカウント。
表示されている再生数はその数です。
過去に私が投稿した動画があるので、その投稿をちょっと見てみましょう。」
そういうと、柳原ベーカリーの過去の動画投稿を表示し、『リーチした人数』と書かれたところをクリックした。
新たな画面が開いた後、何回かクリックし、最後に『オーディエンスリテンション』というところをクリックするとグラフが表示された。
「このグラフを見てみてください。なにか解りませんか?」
そのグラフは時間がたてばたつほど視聴者が減っているということを表しているグラフだった。5秒以上たったところから急に減っている。最後のほうなんて1%あるかないかだった。
「これからは動画が情報において大きなウェイトをしめると考えています。
見ていただいた通り、iPhone一つで動画編集ができるので、だんだんライバルも増えてくると思います。
これが正解とういのはないのですが、短いほうがいいと思います。
そして、最初の数秒にインパクトのある映像を持ってくる。カットを1秒とか1.5秒とかこまめに割り飽きさせないようにする工夫も必要になります。
このパンの動画もそれを考えて、最初に焼き上がりのパンを釜から取り出すシーンを持ってきました。その後は粉をこねるところから始まって、時間軸にそって流しています。
このグラフの通り、最後まで見てもらえるのは0.2%とかそんなこともざらです。
伝えたい事をなんでもかんでも詰め込んでも、見てもらえなければ意味がないので、その動画で伝えたいエッセンス、、つまり、本質的要素だけを載せるのがコツですね。」
「なるほどねえ、、、」
「まあ、編集を覚えると最初はあれもこれもとついつい入れたくなるんですよ。
だからそのけん制でもあります。迷ったら、さっきの『オーディエンスリテンション』のグラフを見ながらいろいろ考えて作ってみて下さい。」
と言った後、三木は柳原ベーカリーのホームページにアクセスして、ホームページの中に動画を埋め込んだ。それが終わると、
「あともう一丁!」
といって、フォトフレームを鞄の中から取り出した。
「これは動画も表示できるフォトフレームです。7インチですが、安いのだと7000円ぐらいからあります。」
「そんなに安いのかよ?」
「はい、安いものだと、だいたい6000円から9000円の間ぐらいですね。これをお店の外に向かって設置して、ここにその動画を流します。
これ、大事です。 なぜなら先ほど行ったことは全部デジタルの世界のことですよね。人は『デジタル』の世界でも時間を費やしますが、当然、通常の生活、アナログの世界でも時間を費やします。
ここのお店の前を通る人にアピールすることを忘れてはいけません。先ほど行ったことを整理すると、YouTube自体は検索しないと出てこないから【PULL情報】です。ホームページの中に埋め込んだものも【PULL情報】です。どちらも検索しないと出てきません。
YouTubeで[柳原ベーカリー]と検索する人はまずいないと思います。YouTubeにアップした一番の理由はホームページに埋め込む為です。では、ホームページ。ホームページに来ているということは。たぶん[柳原ベーカリー]と検索していると思います。なのでもう『存在』は知っているわけです。あとは『買うか買わないか?』になるわけですが、そこの背中を押すために、この動画は存在しているわけですね。
フェイスブックに動画を投稿してもらったのは【PUSH情報】になります。 相手の意思とは関係無くニュースフィードに表示されます。柳原ベーカリーのフェイスブックはツイッターと連動しているので、自動でツイッターにも情報が流れて、これも【PUSH情報】さらにもう一つ、このフォトフレーム。これも【PUSH情報】ですね。道を歩く人がみるわけですから、見られる率としては一番高いでしょうね。
と、考えると一番重要なのはこのフォトフレームということになります。こういう動画をつくると、だいたいYouTubeに埋め込んだ時点で安心してしまうケースが多いのですが、こうやって一つ一つをを系統立てて整理すると、いろいろ解ることがありませんか?」
なるほど、、こうやって三木の行動の一つ一つをみると、自分はいままで何をやってきたんだろうと思う。お客を呼ぶ前から、値引きの事ばかり考え、売れないのは値段のせいだとさえ思っていた。
値段は『魅力』であるというのは間違い無い。しかし、この言葉は裏を返せば、値段は『絶対』ではないという意味だし、もっと『魅力』を感じれば、そちらを手に入れるという意味になる。『値段』は例えるならば、容姿端麗のモデルさん見たいな人だ。『見るだけ』で解る。見るだけで解らない人の場合どうしたらいいかといえば、その『魅力』をアピールすることだと思う。
容姿がモデルにはかなわなくても、『魅力』ある人達は沢山いる。ポイントは『魅力』が伝わるかどうかだ。そして三木はその『魅力』の伝え方を教えてくれている。
頑張ろう、必ず勝てる道はあると思えてきた。
「あと、ついでなので話してしまいますが、iPhone一つあれば生放送できるんですよ。」
三木はiPhoneをこちらの方にむけながら、
「この『ツイキャス』というのがそうです。無料で使えます。使い方はとても簡単、起動したら録画ボタンを押すだけです。」
「それだけ?」
驚きを隠せない。
「はい、それだけで生放送ができます。まあwifi、、つまり回線の速度がある環境でないとちょっと難しいですけどね。」
時代はかなり変わってる。
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