day11:五月の蠅
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彼女と別れるまで後47日
十一日目
バレンタイン前日。
朝起きて、仕事場に停めっぱなしだった車に、今の事務所を借りて三年経つのだが、三年目で初めて目にするものがあった。
駐禁切符の張り紙。
ああ、今、最悪な星周りにいるんだな。
予感はあった。
確かに、流れは悪い方向に物事は進んだ。
今日、彼女と会うことはできなかった。
夕方、一方的に、明日の予定だけが送られてきた。
ガッカリだった。
でも嬉しかった。
複雑なまま、心が壊れていくのがわかった。
今、この隣にいる子を抱きしめれたら、どんなに楽だろう。
可愛くないこの子。
夜帰り際、雨が止まないので車で家まで送った。
去り際、同情する先輩女子スタッフには「バイバイ」と言いドアを閉めた。
「やっぱり可愛くないな」と思った瞬間、運転席側を覗き込み、こちらに向かって手を振る。
その瞬間、「ああ、この子でもいいか・・・」と沁みてしまう。
逃げたくなる。
それくらい色々なものが怖い。
ちょっと似ている、この感覚。
君にあげた僕の言葉たちよ
成仏せよ
その体に解き放った愛しの僕の精液よ
お願いよ、取り返したいよ
かわいそう、かわいそうで泣きそう
あの頃ほど負に満ち溢れていないけれど、ちょっと似ている。
前の人に全く希望が見えなくなった時、ずっと考えていた。
こっちから別れるのは嫌だった。
だから、何かアクシデントでひょっこり死んでくれないかな、と真剣に思っていた。
そうすれば、目の前の幸せをつかむことに集中できる。
そして、その思いは実際の事故を引き起こした。
以前の自殺未遂を上回る決定的な事故である。
ある秋の昼下がり。
ケータイが鳴る。
発信元は近所の警察署から。
仕事柄、警察と調整することもあるので、何か書類や申請のトラブルなのか、とうんざりした気持ちで電話に出る。
しかし、結果はうんざりを超えるものだった。
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