day9:Ray
2/11
彼女と別れるまで後49日
九日目
弱い僕はあなたのいない世界を生きる自信はないの
だからせめて先に死なせて
別れ話があってから、初めてのちゃんとした現場仕事。
正直、始まるまで十分にこなせるか少しドキドキしていた。
思ったよりもピリピリせずにできたと思う。
呼んだお笑い芸人の持ちネタである「冷やし中華~」と言う絶叫もさほど苦じゃなかった。
仕事で気持ちを誤魔化しながら、視覚的にも気持ちを誤魔化そうと必死な日だった。
若い女子のバイトの子がいる。
彼女より、もっと若い女の子。
高校生でまだ十代だ。
ガサツでぶっきら棒なこの子が、正直好きではない。
蓮っ葉で感情の起伏が激しく、色んなことをすぐ「嫌だ」という。
だからかもしれないが、言うことを聞く時、すごく愛らしく思ってしまう。
俗にいうツンデレだ。
日頃から、無意識に可愛げと棘を振りまくこの子に、色々と気持ちを右往左往されてはいた。
今日がたまたまデレが日だったのかもしれない。
長い間、二人きりなのもイケなかったのかもしれないが、抱きしめたくなった。
気持ちの真意は自分でもわからない。
多分、ただの性欲な気もする。
下半身はピクリとも反応してなかったけれど。
今のメンタルだから、この子にもこんな気持ちなのかも知れない。
だから、ダメだ。
抱きしめたりなんかしちゃ。
そんな他のことを考えるだけで、随分と気は紛れた。
そして、夜はなんと合コンだった。
まだちゃんと、ちゃんと別れてなはずなのに・・・
気付けば合コンだった。
いや、正直な話、合コンだと聞かされてなかった。
別れに戸惑っていることを伝えた女性が、セッティングしてくれた場だった。
その女性と、そのパートナー。
そして、同世代くらいの女性が二人そこに居た。
正直、しんみりと人生相談でもするのかと思ったら・・・賑やかなノリで焼き肉だった。
両脇に座ってくれた女性に、不思議とほとんど気持ちが動くことはなかったが、色んな気持ちが嬉しかった。
その女性と、そのパートナーの話をしっかり聞けたのが初めてだったことも嬉しかった。
でも、気を使った。
色んな人に会うことで紛らわせてきただけに、帰る時辛かった。
この後、一人の瞬間が訪れるのが、怖かった。
帰る場所になる人が、居て欲しい。
賑やかだったからこそ、コントラストがくっきり出てしまった。
だから、当てつけのように送ったラインの後、あの子が来た時は心がヤバかった。
仕事場に忘れ物をしたその子は、12時過ぎにもかかわらず、忘れ物があることを自分からの連絡で確認すると、取りに飛んできたからだ。
どうしよう、可愛い。
行為だけを捉えるなら、とてつもなく可愛い。
でもこの子、天然なのもあるせいか、きっと私への気持ちなど一切なく、本当に忘れものだけを取りに来ている。
抱きしめたいけれど、きっとその意味は伝わらない。
つくづく可愛くない子である。
でも良かった。
そんなどうでも良いことを考えることで、今日も一日が無事に終わった。
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