day9:Ray

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彼女と別れるまで後49日


九日目


弱い僕はあなたのいない世界を生きる自信はないの

だからせめて先に死なせて



別れ話があってから、初めてのちゃんとした現場仕事。

正直、始まるまで十分にこなせるか少しドキドキしていた。


思ったよりもピリピリせずにできたと思う。


呼んだお笑い芸人の持ちネタである「冷やし中華~」と言う絶叫もさほど苦じゃなかった。


仕事で気持ちを誤魔化しながら、視覚的にも気持ちを誤魔化そうと必死な日だった。


若い女子のバイトの子がいる。

彼女より、もっと若い女の子。

高校生でまだ十代だ。


ガサツでぶっきら棒なこの子が、正直好きではない。

蓮っ葉で感情の起伏が激しく、色んなことをすぐ「嫌だ」という。

だからかもしれないが、言うことを聞く時、すごく愛らしく思ってしまう。

俗にいうツンデレだ。

日頃から、無意識に可愛げと棘を振りまくこの子に、色々と気持ちを右往左往されてはいた。

今日がたまたまデレが日だったのかもしれない。


長い間、二人きりなのもイケなかったのかもしれないが、抱きしめたくなった。


気持ちの真意は自分でもわからない。

多分、ただの性欲な気もする。

下半身はピクリとも反応してなかったけれど。


今のメンタルだから、この子にもこんな気持ちなのかも知れない。


だから、ダメだ。

抱きしめたりなんかしちゃ。


そんな他のことを考えるだけで、随分と気は紛れた。



そして、夜はなんと合コンだった。

まだちゃんと、ちゃんと別れてなはずなのに・・・

気付けば合コンだった。


いや、正直な話、合コンだと聞かされてなかった。

別れに戸惑っていることを伝えた女性が、セッティングしてくれた場だった。


その女性と、そのパートナー。

そして、同世代くらいの女性が二人そこに居た。


正直、しんみりと人生相談でもするのかと思ったら・・・賑やかなノリで焼き肉だった。


両脇に座ってくれた女性に、不思議とほとんど気持ちが動くことはなかったが、色んな気持ちが嬉しかった。


その女性と、そのパートナーの話をしっかり聞けたのが初めてだったことも嬉しかった。


でも、気を使った。


色んな人に会うことで紛らわせてきただけに、帰る時辛かった。

この後、一人の瞬間が訪れるのが、怖かった。


帰る場所になる人が、居て欲しい。

賑やかだったからこそ、コントラストがくっきり出てしまった。



だから、当てつけのように送ったラインの後、あの子が来た時は心がヤバかった。


仕事場に忘れ物をしたその子は、12時過ぎにもかかわらず、忘れ物があることを自分からの連絡で確認すると、取りに飛んできたからだ。


どうしよう、可愛い。


行為だけを捉えるなら、とてつもなく可愛い。

でもこの子、天然なのもあるせいか、きっと私への気持ちなど一切なく、本当に忘れものだけを取りに来ている。


抱きしめたいけれど、きっとその意味は伝わらない。


つくづく可愛くない子である。



でも良かった。


そんなどうでも良いことを考えることで、今日も一日が無事に終わった。

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