day8:embrace

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彼女と別れるまで後50日


八日目



心の時が止まり、感情が凍りつく。


楽しいも、悲しいも、今はない。



思い出す、あの頃。



私の心が今よりも廃れ、壊れていたあの夏。


彼女の初ロマンスは私の思いがけない誘いから産まれていた。



私は、市内の遊園地で、東日本大震災の被災者の子供たち向けのイベントを行った。


うちのスタッフたちと、被災者である福島の子どもたちに、ボランティアでキャンプファイヤーとアトラクションを行うもてなしをしたのだ。


彼女は、その頃からちょいちょいとうちの仕事にアルバイトとして来ていた。


そして、先輩スタッフの中で、彼女のことが気に入った男がいたのだという。


ギターを弾き、自分で曲を作って歌うシンガーソングライター男子。

頭は悪いが、気持ちが優しい子だった。

ユニークでいつも一生懸命な彼はグループの華だった。


そのボランティア後、彼女は、その彼から猛烈アピールされ、初めて男性と付き合うことになる。


でも、この時はわからなかった。


そのことを知ったのは、とある秋の日。

彼女の涙とともにその苦しみと葛藤を打ち明けられる。



何となくの冷やかしだった。

彼のことは比較的可愛がっていたスタッフだったし、彼女のことも比較的気にかけていた。


だから訊いた。

どんな惚気話が出てくるか興味があったので。


しかし、そのことを訊いた時に彼女は泣いた。


違ったらしい。


恋じゃなかったらしい。


そして、彼の猛アプローチに、彼女は疲弊しきっていた。


彼女の家の近くのファミリーマート。

車の助手席で、声をあげて泣く彼女を抱きしめながら・・・どうしたらこの子が泣かないで済むんだろう、それだけを考えていた。


好きだったんだろうか?


わからない。


その時もわからなかったが、今でも正直、その当時の自分の気持ちがわからない。


この子を守ってあげたい。

そう思ったのは確かだ。


腕の中へおいで

抱えた孤独のその輪郭を撫でてやるよ

明かりのない部屋で言葉もくたびれて

確かなものは温もりだけ


この子を救ってあげたい。


その思いで空っぽだった心は埋め尽くされた。


男の子も大事な子だった。

可愛がってた。


でも、彼女とは合わないとわかった。


この二人は、別れた方がイイ。


彼女の明るい未来のために何とかしてあげよう。


そう決心した。



そして事件が起きる。

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