第11話 閑話
≪鉄の旅団≫と≪煉獄の騎士団≫によるギルドを賭けた戦いが終結した直後、カイリはいつものようにふらりと何処かへ行ってしまった。きっとまた何処かで自由奔放に戦闘を楽しんでいるんだろうと、ギルドメンバーのみんなは呆れ果てていた。
≪煉獄の騎士団≫を勝負で負かして傘下に置いた≪鉄の旅団≫は、他のギルドからは注目の的になっている。≪煉獄の騎士団≫は比較的規模の大きなギルドであり、アイ・ワールドにその名を轟かす銀狼がいるとはいえ、生産系ギルドが傘下に置いたなんて信じられなくても仕方ない。
ゲームクリアに挑む多くの者達は生産武器の性能によって成した偉業だと思ったようで、ゲーム内における生産武器の注目度が高まっている。
≪鉄の旅団≫のギルドホールにも、戦闘系ギルドのメンバーがよく訪ねるようになった。大枚をはたいて高性能な生産武器を手に入れようとする者も多い。実はカイリはいなくなる前に『保管用の装備以外は全て売っていいと思うが、その辺のことは上の奴らが決めてくれ』と言い残していた。
もしかしてカイリはこうなることすら予測して、あの勝負を行ったのではないか? ≪鉄の旅団≫の内部ではそんなことすら囁かれていた。
別に最初からこういう事態になると思っていたわけじゃない。ギルドを離れる前に≪鉄の旅団≫の名前と生産武器の注目度が高まっているのを知り、『武器欲しさに群がってくる奴もいるかもしれない』と思っただけだ。
そして同時に『武器を手放すならば今だ』とも思った。リザードラゴンの強さから考えて、次の段階に移る頃には現性能の生産武器は不要になる。手放すのなら今が一番だと思い、そう言い残した。
紗姫や生産を担うドワーフ達もカイリの言葉から同様の考えにたどり着き、ギルドマスターであるシアは武具を売り出すことに決めた。
そしてその意見にたどり着いた時、紗姫はカイリが何処で何をしているのかを理解した。紗姫はカイリらしいと心の中で笑いつつも、自分を連れて行ってくれなかったことを残念に思っていた。
カイリがギルドホールを離れる前に、勝ったときのご褒美として一緒に連れて行ってもらえばよかったと、そう思っていた。
(こうなったら帰ってきたときは、連れて行ってくれなかった分も含めた願い事をしてやるんだから)
そんな子どもみたいなことを考えながら、紗姫はカイリの帰還を待つ。飄々とした笑顔を浮かべ、インベントリいっぱいのお土産を持ち帰ってくるカイリを。
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