第八楽章
暮斗は赤羽の所を目指していた。だが、同時に赤羽も暮斗の元を目指していた。そして、両者は、この間の公園で相見えた。
「久しぶりですねぇ。白崎暮斗くぅん。」
久しぶりだな、赤羽。
両者共、睨み合ったまま動かない。
俺は、お前を探していた。あの時の俺は今の俺より数段も強いだろう。だが、お前は準備をしなければきつい、といった。つまり、勝算があるという事だな?
自らの推理を述べてみる。この返答次第では、暮斗のプランは崩れ去る。
「やはりぃ、あなたは面白いぃ。強いだけでなくぅ。あの様な極限状態のなかぁ、相手の言葉を事細かに覚えているとはぁ。素直に賞賛しましょうぅ。にも関わらずぅ、私を捜すとはどういう了見ですかぁ?」
赤羽、俺は、【世界】を殺したい、だから、俺にチカラの使い方を教えてくれ。
ダメ元で頼んでみる。でも、こうでもしなければ、多分、【世界】には勝てないだろう。と言う妙な確信があった。
「この間殺したいを演じた者にぃ、弟子にしてくれぇ?実にぃ、あなたは面白いですねぇ。いいでしょうぅ。弟子にして差し上げましょうぅ。」
本当か!
「然しぃ、私の弟子になるぅという事はぁ、生半可にはぁしませんよぉ。‥‥‥‥‥‥‥‥。一つ聞き忘れましたぁ。あなたはぁ、何故強くぅなりたいのですかぁ。」
死者を冒涜し、人の念いを踏み躙った【世界】とやらを殺すためだ。
「素晴らしいぃ、100点満点ですぅ。付いてきなさいぃ。私の家に案内しましょうぅ。」
暮斗は言われるがまま赤羽についていった。丁度日が沈もうかという黄昏時だった。
案内されたところはとある山中にある山小屋だった。
「さぁ、つきましたよぉ。ここが私の家ですぅ。ようこそ。地獄へぇ。」
地獄だと?
「えぇ、地獄ですぅ。あなたはこれから一週間程暗闇の中に囚われて貰います。勿論拒否権などありませんからねぇ?」
そう言い赤羽は、おもむろに何かで暮斗を切った。
うっ。
暮斗はそう呻き声を上げ倒れた。
暮斗が目を覚ました時、一切の光が無く歩いても歩いても端に辿り着けない場所にいた。
何なんだここは?赤羽は一週間ここにいろと言った。ここまで言って気づいた俺は今声を出したよな?にも関わらす耳に何も伝わってこない?どういう事だ?調べてみるか。
暮斗が感じた感覚では数時間後
やはり音が聞こえ無い。そして、チカラも発動しない。こんな事で本当に修行になるのか?俺には分からないだがでられないのも事実だ。
暮斗が感じた時間で1日後
変だなかなり時間が経ったはずなのに腹が一向に減らない。考える事も無くなってきた。
暮斗もどれだけ経ったかわからない頃
どれだけ経った?外的刺激が一切無いだけでここまで狂いそうになるのか。この修行かの目的は何だ考えても考えてもわからない。クソっ!何なんだよ!訳がわからない!
こうして暮斗は着々と赤羽の思い通りになっていった。
いつの間にか暮斗は眠っていた。そして、あの夢を見た。然し、そこには、何かが居た
「久しぶりだね〜。白崎クン。」
お前は?日塚か?どうして俺の心の世界にいる?
「どうしてって。ヒドイな〜自分で取り込んどいて、しらばっくれる気かい?」
自分で取り込む?そんな馬鹿な。あり得ない。そもそも、取り込み方が分からない。
「あの時、
あの時の術が?まさか、俺のチカラは[無かった事にする]では無いのか?じゃあ何だというんだ?
「簡単な話じゃん。無かった事にしたもの全部自分の中に取り込んだだけでしょ?」
ウソだろ。だとしたら、俺の心はお前以外のものも取り込んだはずだ!なのに何も無いじゃ無いか!どういう事だ!
「下に落ちてっただけじゃ無いの?」
ウソだろ。俺は、この世から何かを無かった事にしてまで自分の心を埋めたいのか?だとしたら、俺も【世界】と同じで様に、存在を冒涜してるじゃ無いか。こんな事って無いぜ。
「さぁ、チカラの本質に気づいたところで、そろそろお目覚めみたいだよ?頑張ってね〜白崎クン。」
歯車は狂った。
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