第七楽章

浩太が青山康三郎との戦闘を終えた頃暮斗は浩太とは違う道筋でコンビナートを目指していた。ふと、開けた所に出た。そこには待ってましたと言わんばかりの雰囲気を纏う透き通るような肌の白い12、3歳の少年がいた。


「ようこそ、ボクの方がアタリみたいだね。青山サンには悪いことしたかもな〜。まぁいいかアタリはアタリだしねー。」


なんの話だ?アタリだとか、青山だとか俺には見当がつかんな。


「うん?こっちの話さ。何、ちょっとした遊びみたいなものさ。」


そうか、なら俺は先を急いでいるのでな。と少年に断りを入れ立ち去ろうとした時。不意に危険を感じ飛び退いた。そこには黒いまるで光を嫌悪しているようなものがあった。


なんだこれは?周りを見ると先ほどまでいた少年が笑いながら立っていた。


「あははは〜、これを直感と身体能力だけで躱すなんて化け物だね〜。ほんっとすごいよ〜。だから‥‥‥‥‥‥。精々ボクを愉しませてね。」


暮斗は理解した。この少年は転生者であり、この黒いものが彼の能力の一端であると。


君も転生者なのか?


「あはは、ゴメンゴメン言うの忘れてた〜。そうだよ。ボク転生者。名前は日塚誠よろしくね〜。」


そうかなら、仕方ないな、俺の名は白崎暮斗。


名乗りが終わると同時に凄まじい速度で闘いが始まった。


日塚は黒いものを様々な所から出現させたり消したりしており、暮斗が隙を見せる瞬間を今か今かと待ちわびている。


一方暮斗は其れを上手く躱し本体である日塚を探すことに集中する。幾ら特訓で漸く形に出来た技があるとはいえ安心出来ない。何故ならそれは、強力無比であるが1日に5回程しか調子が良くても使えない上に逆境でないと上手く発動しないことが多いのだ。そのチカラとは自らの念いがわからない以上考察の域を出ないが[無かった事にする]である。


永遠に続くと思われたこの拮抗は突如脆く崩れ去る。


「なんか飽きてきちゃったな〜。もういいや。」


「第一の術〈漆黒ブラックボックス〉」


術?一体なんなんだこれは?


術は暮斗に答えを出すことを待たずに完璧に作用した。


辺り一面が真っ黒に染まっていく。


っっ!!これは厄介なチカラだ。


辺りが真っ黒になるということはつまり、暮斗にあの黒いものを見つけることができなくなるということである。


くそっ!技を使うか?そう考えている間にも一撃二撃と直撃していく。


ガハッ。やはり一撃一撃が重いな。やはり使うしかない!


第一の技〈オールゼロ〉!


然し、現実とは無情である。


「ははは、何も起こらないじゃないか!」


くそっ”やっぱり”ダメだったか。


「もういいや、死んじゃえ。」


ガハッ‥‥。意識が‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。


どこだ、ここは?前にも来たことがある気がする。夢なのかこれは。イヤ。確信を持って言えるこれは!じゃあ何だこれは‥‥‥。わからないただ俺とつながっている気がする。


「漸くそこまでわかった様だな。」


誰だ?お前はまさか【世界】か?


「ご名答。そんなお前に一つアドバイスだここはお前の心の世界だ。ゆめゆめ忘れぬ様にな。」


心の世界?如何いうことだ?


如何いうことか聞こうとした時にはもう【世界】はいなかった。


もし仮に【世界】の言う通りここが俺の心の世界つまりは精神世界だとする。ならば何故、ここまでんだ?少なからずナニカあってもおかしくは無い。例えばこの世界での初めての友人浩太であったり、同盟相手であり浩太の命の恩人である三島なんかもいてもいいはずだ。にもかかわらずいったい如何いう‥‥‥。


分かってしまった。これしかない上に、何より自分がピンときている。多分俺は浩太たちのことをのだろう。そして多分俺の念いって奴は


『空虚なこの気持ちを埋めたい』


だろう。そこから推測するに、俺のチカラはやはり、[無かった事にする]ということか。皮肉な事だな。【世界】とやらはこんなにも人を絶望させたいか?くそっ‥‥‥。もうそろそろ目覚めるか。まだ戦いは


「なんか、呆気なかったな〜報告にあるほどでも無いし正直拍子抜けかな〜。」


「目覚めそうにも無いし、かーえろ。」


まぁ待てよ。未だ終わって無い。


「オカシイな、ボクは絶対仕留めたと思ったんだけどな〜。まぁいいやもう一回仕留めればいいだけだし。」


そうだな。まぁの話だがな?


その言葉と同時に日塚の術は拍子抜けなくらい簡単に”消えた”。


「何で!?!ボクの術が‥‥‥。あり得ない、あり得ない!術だぞ!技じゃ無いんだぞ!なのに何で?」


あゝ、言い忘れたが今からは単なる蹂躙ショーだからな?


「言ってろ!術を消したぐらいで調子に乗るなァァァァ!!」


「第一の技〈ブラック弾幕デスパレード〉!」


光を嫌悪する様な黒色の弾丸が雨の様に暮斗に降り注ぐ。


だがそんな中暮斗は不敵に嗤い。


第一の技〈オールゼロ


そう呟いた瞬間を黒い弾幕は全て”消えた”。


「嘘だ。嘘だ!嘘だ!!嘘だ!!!何でだよ!!何でボクのチカラだけっ!!」


第一の”術”〈絶対的アブソリュートゼロ


術が発動した瞬間、日塚も青山も”消えた”


終わったな‥‥‥‥。三島は浩太が助けるだろう。俺は赤羽のところにでも行くか。あいつなら【世界】を殺す方法を知っているだろう。


歯車は狂いだす。

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