第六楽章
浩太は三島の元に辿り着いていた。
三島の前に立ち塞がっていた者がいた。
その者は独特なそして剣呑な雰囲気を醸し出していた。
「よう、テメェが親玉か?」
「そうだが、何かね?櫻井浩太くん。私は今、とても不愉快だ。最も君に対してでは無いのだがね。アレだけのチカラを使ってここまで辿りついた君には素直に賞賛を送りたい。だが、死に給え。」
その瞬間時が凍りついた。
「やはり、術が使えるようになった程度では私を殺せそうに無いか。今決めつけるのは早計というものかな。」
「なに、黙って聞いてりゃ言いたい放題言ってくれんじゃねーか。」
「!!!。ククク。貴様、私の無詠唱の術〈凍りついた時〉を感じ取れるのかね?」
「ああ?今動いてんだからそうなんじゃねーのか?まぁそんなこたぁ如何でもいい、こっちは色々忙しい身でな。ちゃっちゃと終いにしたいんだよ。俺の名は櫻井浩太。名乗りは済ませた。お前もとっとと名乗りやがれ。」
「私の名は佐々木小次郎。かの剣豪と同姓同名さ。」
「そうかよ。じゃあ、行くぜ!第一の術〈炎舞
浩太の第一の術その真価は、先程の青山との戦いで使われた超高熱の熱線を周囲に放つ事では無くその真価は熱量全てを一点に集中させ自由自在に操るという事である。
「撃ち抜けぇぇ!」
だが、相手があまりに悪かった。佐々木のチカラは[凍結させる]である。
「見込み違いか?君ならば”法”に至れると思ったのだがな。」
「今度は、詠唱しよう。第一の術〈凍りついた時〉」
その瞬間、時が凍りついた。先程の無詠唱とは打って変わって、浩太の動きがかなりスローになっていた。
「素晴らしい!!詠唱有りでも動けるのか?やはり、見込み通りだ。だが、本命よりは幾分か劣る。」
「本命だとかゴチャゴチャ言ってんじゃねーよ。俺の術は未だ終わって無いぜ?」
浩太の術である
「確かに私のチカラだけならば、コレは止められんな。」
そう言い佐々木はおもむろに一振りの刀を取り出した。
「燕返し!!」
佐々木の刀身と身体が三つにブレだ。
「何だと‥‥‥‥。」
浩太の術は燕返しに斬り伏せられた。
「何故君は、転生者で剣豪と同姓同名の人物に対して本人では無いかと言う疑念を抱かないのだ?」
そう、佐々木は伝説の剣豪佐々木小次郎その人なのだ。
「けっ、そういう事か。面白くねーな。」
「そう言ってくれるな。君の術はかなり有効だと思うよ。」
「うるせえ、テメェを倒せなきゃ意味ねーんだよ。つか、テメェの狙いは何だ?」
「おや?君も知っての通り、珍しい回復型のチカラを持つ三島くんの奪取さ。」
「俺は嘘が嫌いでね。テメェに会うまでに色々考えてみたんだよ。そしたら、色々おかしいんだよ。」
「ほう?」
佐々木はタダでさえ剣呑な雰囲気をさらに強めた。
「先ず、三島のダッシュ?が目的なら見つからんように夜にやればいいじゃねーか。二つ目に、青山しかりテメェしかり、隠密性の高いチカラを持ってんだからわざわざ俺に見つかる様にやるこた無かっただろう?ちがうか?」
「クハハハハ、素晴らしい!君は頭はキレないと思ってなめてかかっていた様だね。青山に散々言ってきた事を私ができていないとはな。」
「わかった。君には真の目的を教えよう。私達は、【世界】を殺す。その為に仲間が必要だったのだよ。その見極めという事さ。【世界】と争う為には最低でも”法”に至れるほどの存在でなければならないからね。」
「それにしても何故、三島を攫った?直々に戦いを挑みに来ても良かったんじゃねーのか?」
「やはり、君は頭がキレる。それでは、念いの真価は測れない。もともと三島くんは私達の仲間だしね。」
「三島が仲間?どういう事だ?」
「なに、簡単な話、私のチカラを使って三島くんが私達との関わっていた記憶を”凍結”させただけだ。さぁ、真の目的は全て話した。私達の元に来てくれるよね?」
「あぁ、だが」
その瞬間、浩太の姿が掻き消えた。
「!?!」
次に浩太の姿が見えたのは、佐々木を全力で殴り飛ばしている姿だった。
「どういうつもりだい?櫻井くん」
佐々木は激しい痛みに耐えながらもなんとか訊ねる。
「簡単な事だ。【世界】をぶっ飛ばすって望みもわかる、その為に手段を選んでられないのもわかる。だが、テメェは俺の仲間に手を出した。その事への制裁だ。」
「ははは、食えない男だな君は。」
そう言い佐々木は倒れた。
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