第五楽章

今日は日曜日だ。家でゆっくりしていようかな。


午後2時浩太から電話があった。


おい、そんなに焦ってどうした。


「三島が謎の一団に攫われた。」


平穏は音を立てて崩れた行った。


っつ!!何処にいる?


「俺は今そいつらを追ってる。海沿いのコンビナートにあいつらは入っていった。相手は多分複数いるすぐ来てくれ。じゃあな。」


分かった。


何故三島”だけ”攫ったかは見当が付く。あいつのチカラは珍しい回復型だからだ。


だが、一つだけ分からないことがある。攫うにしても何故目立たない”夜”ではなくこんな”真昼間”を選んだのか?それがわからない。


考えても仕方ない。たとえ罠だとしてもそれがいかない理由にはならない。


そう自分に言い聞かせ大地を駆ける。


俺がコンビナートに着いた時、浩太は少し進んだところにいた。


そこで浩太は、初老で少し高圧的な雰囲気を纏う男性と対峙していた。


「お前は転生者か?」


「そうだが?何かね、櫻井浩太くん。」


「っ!ちっ、人の名前まで知ってるってことは、俺の能力もばれてるのか?」


「そう思った方が賢明では無いかね?」


「全く難儀なこって!」


「第一の技〈炎撃 焔 〉!」


浩太を中心に炎が巻き上がり、数十発の炎の弾丸が敵目掛けて飛んでいった。


「名乗りすらしていないのにいきなり技を使うかね。そう焦らずともよかろう。然し、戦場の礼儀を知らない餓鬼には少しばかり教育してやらねばな。」


「第一の術〈銀箔濃霧〉」


あたり一面を銀色の霧が包み込む。それだけではなく浩太の技の炎の弾丸が次々と霧散していく。


「術だとなんだそれは!」


「術も知らん。餓鬼か。話にならんな。」


「なんだと。」


「まぁよい。私たちは興味はあまり無いしな。だが、一応名乗っておくか我が名は青山康三郎である。」


青山は仰々しく術について語り始めた。


「知らぬなら教えよう。我々転生者が持つチカラと言うものには”2”種類ある。それが”技”と”術”だ。術は技の上位技法であるそのため技が術に勝ち得る事などあり得ないのだよ。よって貴様は私に勝てないのだよ。」


「そうかよ。なら俺は技でお前の術に勝つ。いや、勝たねばならない。三島を助け出すんだからな!」


「そうか、そうか。ここまで言っても分からない愚か者かなら仕方ない。今この場で死ね。」


「第”二”の技〈炎撃 不知火〉!」


「無駄だ。第一の術〈銀箔濃霧〉」


浩太から何色とも取れない炎が湧き上がってき た。そして、浩太の体を


「なにっ!!」


青山はここで初めて動揺した。


「やはりか、その銀箔濃霧とやらは、チカラと発現者の効果だろう?」


「まさか、一発で見抜かれるとはな。」


「だが、第一の技〈幻惑の霧〉」


術が使われた瞬間青山の体がブレた。


「ヒヤヒヤはしたな久々に、だが私にも技はあるぞ?。」


「ちっ。」


「だがな今のは惜しかったぞ。」


「安心して死ね。第二の技〈霧の刀剣〉」


「くそっがぁぁぁぁあ!諦められるかよ!俺の念いよ燃えろ!この野郎に届くまでぇぇぇ!」


「第一の”術”〈炎舞 灼熱業火プロミネンス〉!!」


浩太の第一の術は発動と同時に圧倒的熱量を放出しあたり一帯を溶かし燃やした。当然、青山も例外ではなかった。


「これ程とは‥‥。戦場の礼儀を忘れていたのは私の方だったか。櫻井浩太貴様のその覚悟に喝采を!」


そう言い残し、青山は文字通り燃え尽きた


「先を急がねーとな。くそ、体が思うように動かねぇ。」


歯車は加速し出す。

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