第二楽章

「おい!暮斗!惚けてないでさっさと逃げろ!」


分かっている‥‥だが、頭ではわかっていても行動出来ない事なんてざらだ。


くそっ、何でこういう時だけ足が竦んで動けないんだっ。


「ちっ、足が竦んでいやがるのか。今回の奴は一対一でもかなりきつそうなのによ!」


「お話はぁ、終わりましたかぁ?私の初撃をうけとめるとはぁ。かなり期待させてくれますからねぇ。」


そう言い赤羽は赤黒い光を放ち無数の刃物を創り出す。


「第一の技〈鮮血ブラッドリー序曲プロローグ〉」


その掛け声の元無数の刃物達が浩太に襲いかかる。


「ちっ、流石にきついかもな。俺も使うか。」


「第一の技 炎撃〈焔〉!」


浩太を中心に炎が巻き上がり、数十発の炎の弾丸が赤羽目掛けて飛んでいった。

然し、全ての刃物を溶かし切ることは出来なかった。だが、その分、赤羽に炎での攻撃を当てていた。


「うーむぅ、期待ハズレですねぇ‥‥。なら生かす必要は無いですねぇ。」


「何だと?」


確かに浩太は刃物を溶かし切ることは出来なかったが、攻撃は当てた。即ち赤羽の身体を傷つけた”筈”なのだが。

然し、炎を解いて見たものは火傷一つ負っていない赤羽の姿であった。


どういう事だ?赤羽の身体にはちゃんと浩太の炎が当たっていた。だが、赤羽は、火傷すら負っていない。


「なにぃ、簡単な話ですよぉ、私の第一の技〈鮮血ブラッドリー序曲プロローグ〉の効果のひとつですよぉ。つまり、その効果を突破できていない時点で貴方はぁ、期待ハズレということですぅ。」


「おいおいマジかよ‥。冗談きついぜ。」


「もう、終らせに掛かりましょうかねぇ。」


「第二の技〈鮮血ブラッドリー舞踊曲ワルツ〉」


無数の刃物達を創り出す迄は同じだが、”そこから”が決定的に違った。無数の刃物達が意思を持った様に浩太を的確に攻撃していく、その攻撃を受けた浩太はまるで、舞踊曲ワルツを踊っている様だった。


「ガハッ‥‥‥。」


浩太はそこからは動かなくなった。


其処で漸く俺は気を持ち直した。


嘘だろ‥‥。おい、浩太‥‥。俺は”また”失うのか?厭だ、嫌だ、いやだ、イヤだ、イヤダ。

漸く”手に入りそう”だったのに‥‥‥。


「次は貴方ですよぉ。覚悟は出来ましたかぁ?まぁ、あなたは、巻き込まれただけでしょうがねぇ。見られたからにはぁ、ヤルしか無いでしょう。」


何もせずに、ヤられるのはイヤダ。なら、俺もヤルしかない。


「第一の技〈鮮血ブラッドリー序曲プロローグ〉」


ここで失うのはイヤダ!!なら、使うしかない、【世界】とやら!チカラをよこせ!!俺に、ありったけの!!


無数の刃物達が暮斗に迫る時遂にチカラは解放された。


「死にましたかぁ、やはりぃ。巻き込まれただけの様ですねぇ。」


赤羽がそう言いきろうとした時。


「第一の”法”〈愚者の烙印〉」


「!?!」


即座にその場を飛び退いだ。先程まで赤羽がいた所には全身が謎のマグマの様な入れ墨で覆われた暮斗らしき人物が立っていた。


ちっ、躱されたか。まぁいい次はない。


「ハハッ、どうもすみませんねぇ。私も鈍っていた様ですねぇ。ここまでの”強者”を見落とすとはぁ流石に準備なしに、勝てる相手ではないですねぇ。”今回は”逃げさせていただきますぅ。」


逃げられると思うのか?


「えぇ、闘えば負けるでしょうがぁ、逃げ切るぐらいはぁ、できるつもりですぅ。」


赤羽がそう言い終わる前に、”暮斗の様なもの”は動いた。


そうか、”やってみろ”


「ぐぅぅぅっ!!??」


赤羽は文字通り”吹き飛んだ”すぐに”暮斗の様なもの”は追いかけたが。


ちっ、本当に逃げ切りやがった。速すぎだろ。

誰かが走ってきているのか?ぐっ、意識が朦朧と‥‥。


なれないチカラの行使の所為かその場に倒れこんだ。

歯車は噛み合い始める。


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