第3話 始まりの音が鳴る3
雪女の体が消え始めていた。
「え…嘘、なんで…?」
刹那が一歩後ろに退がる。
まさかさっきので、刹那の体が切られたのか…?
しかも、消え始めていると言うことは確実に真核を確実にそして正確に切ったと言うことだ。
「嘘でしょ…?」
一瞬の出来事に頭が追いついてないようだ。
「マジか、姉さん引いた方がいい気がするっす…」
何かを感じ取った愬眞はメルキアに提案する。
メルキアも同じように何かを感じ取ったようだ。
「ああ、愛逢、愬眞引くぞ。」
精霊を還した少女は悔しそうに黒狐を睨みながら、去っていった。
三人が去ると、一気に力が抜けた浮凪は地面に座り込み、刀をじっと見ている。刀を持っている手はかすかに震えている。そして呼吸は少し乱れている。
スタッ。
軽い音で降りてきた白狐。そして、浮凪にかけ寄る。
「浮凪、大丈夫?やっぱりアレ打ったほうがいいんじゃない?」
少し苦しそうな浮凪が静かに顔を上げる。
「アレは…、感覚が鈍る。俺が動けないと困るだろ?俺のことより、
浮凪のことも心配だが、今は多那ちゃんのことも重要だ。刻杜は多那を探す。が、どこにも多那の姿は無い。
まさか。あいつらと一緒に?
「多那ちゃんがアッチ側だって言うの?」
「ああ。じゃないとイロイロ説明がつかないだろう?多那は任務のときにナビゲーターだった。そして俺らの顔を見れるのはここに住んでるヤツだけだ。」
だが、ここに住んでるヤツと言ってもナキスチアがほぼこの場所で暮らしているのだ。多那が犯人だと言う確証はないはずだ。
「んー。僕が視た限りだと普通だったよ?アルダスタットも視えなかったし…」
アルダスタットは、アルダがある者に必ずある印のようなものだ。刻杜が言うには、太陽のような模様が腕にあるらしい。
「お前の眼も完全ではないから見落としていたんだよ。多那が近くにいると耳と鼻が痛くてしょうがなかった。」
刻杜は眼、浮凪は鼻と耳がいいのだ。
「白狐、念のために移動するぞ。」
すぅと二人の纏う空気が変わる。
「わかった。出発は…明日の明朝でいいか?」
「ああ。」
「あと黒狐、副作用に慣れなよ。これからが大変だよ?」
「いいんだ。まだこれで。」
再び空気が変わる。
「じゃぁ浮凪、みんなの所行って説明しよっか。」
二人は静かに戦いの余韻が残るこの場を離れた。
みんなが避難している場所に行った。
そして今日のことをできるだけわかりやすく説明をした。
―二人がこの町を離れる事も。
二人は一応この町の長だ。
出ていくと言うことは諸々の引継ぎをしらければならないのだが、実質的には浮凪たちではなく、
そして、二人は静かにこの町から消えた。
町のみんなが最後に聞いた言葉。
「「世界を変えてくる。」」
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