第2話 始まりの音が鳴る2
~B35地区~
「姉さーん、
「それは私じゃなくて、さっきの奴に言いなさい。」
メルキアは武器を調整しながら答える。
「愬眞、こいつ無線持ってた。これ黒狐と白狐につながるんじゃない?」
「マジか!ナイス
メルキアが答えるより先に愬眞は無線を使った。
~B34地区~
浮凪の無線が鳴った。
「
無線から聞こえたのは、多那の声ではなく聞き覚えのない男の声だった。
「あ、この子タナちゃんって言うんだぁー。君ってさ、黒狐と白狐のどっち?」
「多那は無事何だろうな。」
素直に浮凪が答える。
「流石に答えてくれないか…。まぁいいや、じゃあ、早く来てよ。タナちゃん以外の子たちもどうなるかわからないよ?アルダのない子たちってすぐ死んじゃうしね。待ってるよー。」
無線が切れると、浮凪は走るスピードを上げた。
「ちょっと、浮凪!どうしたの。多那ちゃんに何かあったの?」
少し遅れながら
「多那たちが人質に取られた。襲撃してきた奴はやっぱりアルチアだ。」
「やっぱりか…。そろそろ切り替えますか。」
刻杜は面をつけた。しかし浮凪は面をつけない。
「ちょっと!浮凪⁉つけないと顔見られるよ⁉」
慌てる刻杜をよそに浮凪はしれっと言い放つ。
「俺たちの顔はもうバレてる。あいつらの前ではつける必要はない。」
「はぁ⁉」
刻社を置いて角曲がると、目の前に見える孤児院は、窓がほぼ割れており見るも無残な姿になっていた。
刻杜を置いて浮凪が孤児院に足を踏み入れようとしていた。
孤児院に足を踏み入れると空気を切り裂く音が聞こえた。
とっさに一歩前に踏み出して避ける。
「随分な歓迎だな。」
「さすがにこれでは仕留められんか。」
「メルキア、まず私がやるよ。いいでしょ?」
「えー!愛逢が一番、いいなー。オレがやりたかったー!ん…?あ!黒狐と白狐が面つけてないっすよ⁉」
奥から三人現れた。男の口ぶりから二人の顔がバレていることが分かった。
さっき浮凪が言っていたのは本当だった。じゃあ、どこから顔がバレた?仕事の時も二人はきちんと面をつけたいた。本当にわからない。それと、メア…?知っている名前だ。でももうあいつは…。
すでに相手は臨戦態勢だ。
「黒狐、どっちが行く?」
戦闘の場面では浮凪たちはお互いのことを通り名で呼ぶ。通り名を本名のように呼ぶ。
「俺が行く。」
黒狐が前に出る。相手も一人前に出た。出てきたのは浮凪と同じ白銀の髪を腰まで伸ばした髪。綺麗と言うよりもかわいいと言う言葉が似合う容姿をしている少女。心なしか目元が浮凪に似ている。
「ナキスチアのあなたは私に勝つことなんてできません。今の内に降伏してください。」
明らかな挑発だ。こんな挑発に浮凪が乗るわけない。
「ナキスチアだからって甘く見てると、殺すぞ?」
浮凪は静かに刀を構える。浮凪が使う刀は〘妖刀 村正〙
「降伏する気はないようですね。では、この子にやってもらいましょう。おいで…刹那。」
そう言うと、彼女の周りが輝きだした。そして一人の女性…雪女が現れた。
「愛逢さま!やっとワタシを呼んでくれたぁ!」
ガバッ!
ミシミシと音が鳴りそうなほど主を抱きしめている精霊を見て黒狐の力が少し抜けた。
「うっ…、刹那、今はあいつを倒してください…。」
よろよろしながら黒狐を指さした。
「わかりました!この雪女・刹那が相手になります!」
パッと愛逢を離すと、黒狐と向かいあった。
「精霊…、しかも雪女か。あはははは!」
黒狐は狂ったように笑った。次の瞬間、隙を突くように氷の剣が黒狐を襲った。
しかし、黒狐は何事もなかったかのように避ける。
「あ、避けっちゃった。まぁいいか。まだまだ手はあるしね」
その後も雪女の猛攻が続く。だが黒狐は避け続ける。
黒狐から攻撃を仕掛ける様子はない。
「黒狐ー、そろそろ殺して《かたづけて》よー。」
白狐が暇そうにむき出しになった鉄骨にぶら下がりながら言った。
「姉さん、ほんとにこいつら強いんすか?ずっと避けて攻撃してこないし、消耗戦に持ち込もうとしても、精霊にそれは無駄だし」
疑問に思うのは当然だ。呼び出された精霊には体力と言うものが無い。しいて言うなら主のアルダを少し消耗するくらいだ。
「じゃぁ、そろそろ終わりにしますか。」
黒狐が呟き、再び刀を構える。次の瞬間空気を切り裂く音だけが聞こえた。実際はそんなことはない、黒狐が横に刀を振ったのだ。振るのが早すぎて見えなかっただけなのだ。
「空気を切ったくらいで何です?」
雪女は怪訝そうに眉を寄せた。
何が起きたのがわかっている白狐が言う。
「ねぇねぇ、雪女さん。自分の体見てみなよ。」
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