第7話 音は響く4

「マスター!終わったよー!」

未咲がマスターに言う。店にはまた客がいなかった。

「お帰り、刻杜はまず着替えろ。店が汚れる。しかもそのままで帰っていたのか、よく通報されなかったな。」

刻杜は近接で戦っていた為、返り血で真っ赤に染まっていた。

刻杜が通報されなかったのは、未咲の能力だ。

「未咲さんの新しい能力みたいですよ。おかげで助かりましたけど。」

アルダはきっかけがあると新しい能力が使えるようになる。

「あ、パーカーどこ入れたっけ…?」

刻杜は体の至る所からものをだしている。遠距離、中距離、近距離さまざまな武器、食料など、軽く店でもやれるような量だ。

そのの量にマスターと未咲は口がふさがらないようだ。

「前も思ったけどよ、どこにそんなにしまってるんだよ…。」

「腕だけじゃなっかたのね。」

刻杜はすべてを出し切っても、パーカーは見つからなかったようだ。

「マスター、また服出してくれない?」

「え⁉マスター服も出せるの⁉」

未咲は知らなかったようだ。

「俺は得意じゃないんだよ、頼むんならあいつに頼め。呼ぶから。」

「ルコ嬢呼ぶのか…、仕方ないか。」

「ルコさんって誰ですか?」

この場にいる人で未咲だけ知らなかった。

「未咲さんあったことないんですか?結構店に来てますよ。ルコ嬢はマスターの娘さんですよ。」

未咲はマスターの顔を二度見した。

すぅぅぅと空気を吸う。そして叫ぶ。

「えええええええええ‼このマスターの娘さん⁉え、結婚してたの?」

耳がキィィンとなるほどの声量だ。

「うるさい!未咲!もう少し声量押さえろ!」

「ごめんなさい。まさかだったので。」

「地味にひどいな。電話かけるから静かにしろよ」


「なんで刻杜は知ってたの?」

「ルコ嬢には時々、僕たちの服を出してもらってるんですよ。」

浮凪達がいつも同じ服を着ていても清潔なのは、同じ服が何着もあるからだ。

そんな話をしているとドドドドと地響きのような音が聞こえてきた。

「あ、来た。」

バン!乱暴にドアが開いた。

「父さん!浮凪達がいるんでしょ⁉なんで教えてくれなかったの!」

ズカズカとマスターに詰め寄るルコ。

「久しぶりだね、ルコ嬢。また服、お願いできるかな?」

キラキラの王子スマイルをする。さすがいつも町の女な子たちを相手にしているだけのことはある。

「うん!いいよ!浮凪はどこにいるの?いつも刻杜の隣にいるのに。」

ルコは10歳の女の子だ。マスターの娘と言う事は、アルチアだ。でも父親がナキスチアともかかわる仕事のお陰で偏見などは一切ない。

「浮凪は今疲れて寝ているんだ。起こさないようにね。」

「ケガして寝てるわけじゃないんだよね?」

ここで寝てると言う事は、大抵ケガをしたときだ。それをルコも知っている。

「ケガはしてないけど、少し疲れっちゃたんだよ。」

「浮凪が疲れるなんて珍しいね。」

「ルコ、早く服作ってやれ。そろそろ刻杜が風邪引く。」

刻杜はさっきからずっと半裸なのだ。

「風邪引くのはダメだね!急いで作るね!」

未咲がマスターとルコの顔を見比べる。

「見れば見るほどマスターに似てないね。本当にマスターの娘なの?」


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