第5話2016年6月 あーちゃん

あーちゃんは突然私たちの世界に現れた。

すうっと背が高くて綺麗なうすみどりいろの

シャツを着たあーちゃんの、栗色の髪に太陽が透けていたのを覚えてる。


はるに会いにきた、と

初めて会ったあの時あーちゃんは言ったけれどそれが、どちらのはるだったのか私には今も分からない。

もういなくなってしまった春なのか、

春に置いていかれた波瑠、私のもとを訪れたのか。


あーちゃんが向かいの部屋に越してきて、

2ヶ月が過ぎたけれど、たくさんのなぜを

集めるためだけに生きているみたいに

疑問と不思議がたまっていく。


ひとつだけ、わかることは、

あーちゃんが発音する「はる」という2文字の心地よさ、それだけ。

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