第4話2016年5月 出会い

新しい季節の話をしなければいけないと思う。

それは春のまんなか、本当は終わりに差し掛かる頃だったのかもしれないけれど、

とにかく暖かで風が少し懐かしい気配を

運んでくるようなそんな1日のおわりのことだった。

わたしは、まだ少し肌寒いくらいの涼しさの中を薄着で歩くのがたまらなく好きで、どんな鈍い悲しさの中にいてもやはり好きは私を動かすので、その日わたしはひさしぶりにたくさん外を歩いたのだった。

春とよく歩いた道を注意深く避けて歩くことにも疲れて、日が落ちる頃に私は私たちの部屋に帰った。


部屋のまえには背の高い細身の男の子がたっていてチャイムをならすかならすまいかまよっているみたいだった。


綺麗な色のシャツだなあ

と思った。

春が好きないろ。


男の子は、そばでじっと見ていた私に気がついたけれど、慌てる様子はまるでなくて私の方をしっかり向いて久しぶりにかなり仲が良かったものの特に意味もなく遠ざかっていた昔の友人に会ったときみたいな、とてもいいかんじのする笑いかたをした。



「はるに、あいにきた」

そのひとは、そう言った。


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