第2話 地域防衛部活動中!

「目覚めろおれの能力チカラ!!ぐおおおおおお」


彼ひとりの静かな教室には何も起こらない。


「なぜ・・・なぜなんだ~?」


地域防衛部部長の竜見流星たつみりゅうせいは悩んでいた。高校でこの地域防衛部を創部してから1年が過ぎた。しかし自分には一向に能力がうまれないのだ。アンゴルニウムによって暴走した動植物の鎮圧を目的として創部したこの部活は、1年でそこそこの実績を上げた。特殊行為能力を持つ部員たちにも負けないくらいに彼は実績を上げている。


「まあ半分くらい先天的なものっていう研究も出てたし、無理なんじゃないかな?」


そう言いながら大柄な少年が流星の座る机にコーヒーを置いた。


「あん?なんだよ武也タケヤ、あきらめたらそこで試合終了なんだぜ?俺はまだあきらめねぇよ」


この少年は蔵馬武也くらまたけや。流星の幼馴染で親友だ。彼もまた、能力を持たない。体が大きく太っているため暴走生物の鎮圧では役に立たないが、真面目な性格のため鎮圧の報告書や方々に許可を取りに行ったりと事務作業を行っている。また地域防衛部の副部長でもある。


「ただいまー!巨大化したネズミの駆除終わったわよ。……って、まーたあんたはそんなことやってんの?飽きないわねぇ」


2人のもとに少女が近づいてきた。鮮やかなオレンジの髪をポニーテールにしている彼女は春日晴奈かすがはるな、二人の同級生だ。彼女は二人と違い特殊行為能力者であり、部活動の前線で活躍している。


「うーすおつかれー」


「おつかれさま。何か飲む?」


と流星と武也が口々に言った。


「流星アンタはもう少しちゃんとしなさいよね。タケヤくん、麦茶ちょうだい。」


と答えた。続けて


「しっかし最近仕事多いわねぇ。暴走生物退治が主な活動とはいえキツイよ?」


「確かに、こうやってローテーションを組んで出動させないとみんな疲れちゃうくらいだもんねぇ」


「俺は毎回出動したっていいんだぜ!俺の正義の魂は熱く燃えているからな!!」




 アンゴルモアの出現から、10年の月日が流れて2017年、人々は特殊能力と共存していた。特殊行為能力者の多くは無闇に能力を使わず、一般の人と同じように生活している。アンゴルニウムの影響を受けた人の中には、知能が急上昇した人もいた。そのため、化学は正史よりもずっと進歩している。


 アンゴルモアの衝突により海抜が50Mほど上昇した。首都である東京の大半は海に沈んだ。しかし人々はそこから離れるのを拒んだ。急速に技術を進歩させ、海上都市「トーキョー・メガフロート」を建設しその上で生活している。政府関係省庁こそかろうじて沈まなかった立川市に移転したものの、経済の中心はメガフロート上に存在している。そしてそのトーキョー・メガフロート周囲には、居住のためのフロートや娯楽のためのフロートなどと、徐々に増えていった。


 流星たちの高校も、その中の一つ、カワゴエ・スクール・フロートという教育機関が集中しているメガフロート内にある。彼らが在籍している川越自由高校はその名の通り自由な校風が特徴で、生徒が各々独自の活動をしている。ふつうに考えて危険なのこの活動が認められているのは、この自由な校風によるものが大きい。


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