第3話 これが特殊行為能力だ!
次の日、流星は暴走した動物の鎮圧に向かっていた。
「相手が動物のときは、可能な限り捕獲だからな。人工島だしネズミかペットくらいしか動物はいねぇけど、そうしないと愛護団体がうるさい。」
そう流星に促すのは後輩の本間栞だ。流星たちの一個下の一年生で白い髪をショートカットにした娘だ。愛らしい顔に似合わずクールでぶっきらぼうな性格の女の子である。
「わかってるよ。俺にはまだ能力がないし捕獲ネット使っておとなしくしてるっての!」
ホントかよと栞が呟きつつ、通報地点に向かっていると地響きとともに鳴き声が聞こえてきた。
「ヂュヂュウウウウウウウ!!」
大きさは10メートル前後、目が大きくギョロギョロしていて爪と牙の鋭く長い【ネズミ】であった。
「小さけりゃ可愛いもんだが、生態異常やらなんやらで体が変化しちまうと、気持ちわりぃなぁ」
「全くのんきな。私がまず牽制で突っ込んで、そっちにおびき出すんで、捕獲ネット構えて待機しといてください。」
そう言いながら栞はネズミに向かっていった。
目的地点到達に合わせて武也が地方自治体に申請を出しているため、周囲には人はいない。本来こういったことに対応するのは警察や消防である。だからこの地域防衛部は、暴走した生物の鎮圧を目的にしているものの、実際のところ警察などが到着するまでの足止めの役割をしているに過ぎない。普段は。
ネズミに向かっていった栞は自らの能力を発動した。その能力は加速及びそれに準ずる身体強化である。緩急をつけてネズミの前を左右に移動する。まずは目で追える程度の速さで、そして徐々に速度を上げネズミを混乱させる。そして流星が隠れて構えているところの手前で移動を止めた。その姿を見つけたネズミは興奮して突進してきた。
「今だ流星やれ!」
「よっしゃあバッチコーイ!!」
流星は電磁網のバズーカを構えた。しかし、ネズミは思いのほか速いスピードで突進してきた。近すぎると電磁網は人間にも電撃を与えてしまうので使うことはできない。栞は能力を使って避けたが流星は能力を持たないがゆえに避けることはできない。流星は使い物にならない電磁網バズーカをとっさに投げ捨て、構えた。
「こんのやろぉ!」
流星は突進してきたネズミの足元に入り込んだ。そして体をつかみ、突進するスピードを利用して地面に叩きつけた。
『こちら武也、あと二分ほどで消防が到着するけどそっちの状況は?』
デバイスから通信が入った。
『悪い、完全に鎮圧しちまった。』
流星が答えた。
『おいバカ捕獲って言ったでしょ。帰ったら報告書ちゃんと書いてね。またどうせとっさに投げたんでしょ?適当に書くと団体さんが来ちゃうから。』
『うげーめんどくせー』
そんな通信をしていると消防が来たので、ふたりはネズミを引渡して部室へと戻っていった。
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