第6話 不穏な空気
同刻、学校を出た武也は自分のバイクを停めている駐輪場にいた。アメリカンタイプのバイクに、火炎放射器みたいなものを担いでいたら、アクション映画の悪役のようだなぁと考えながら、彼はバイクのエンジンをかけた。
「事務作業なんて誰でもできるからね。たまには現場にもでないと。」
そうつぶやきながら武也は東武高校へと向かった。
付近に到着すると、異変を感じた。高校の周囲にある外壁の一部が破壊されているのだ。そこにはツタが絡みついている。武也はバイクから降りて駐車し、除草剤の散布機を構えて近づいて行った。そして除草剤を撒き始めるとツタの一部が迫ってきた。
「まるで意思を持ってるみたいだ」
そう言いながら迫ってきたツタに除草剤をかけた。ツタは力を失い、地面に落ちた。伸びているツタに除草剤をかけてもあまり意味がない。本体となる根をさがさないと。そう思い破壊されている量が多く被害の大きい方に歩いて行った。
進んでいけばいくほどツタの量は増えていく。それにしてもおかしい。避難勧告が出ているとはいえ、人の気配や声を感じない。ここは高校だ。避難勧告なんて聞かずに野次馬がそこらにいても普通おかしくないのだ。武也はなにか言葉にできない不安を感じていた。除草剤も残り少ない。応援はまだだろうか……と。
図書館から出た玲子は武也の応援へと向かっていた。東武高校へは大体徒歩5分くらいだ。しかし、図書館の外に出た時点で様子は少々おかしかった。きれいに舗装されていたはずの道路がひび割れているのだ。周りの建物にも穴が開いているものもいくつかあった。玲子もまた、武也と同じように嫌な予感を覚えた。
「先輩、無事でいてくださいね。」
そうつぶやき高校へと急いだ。
根元を追っているうちにツタは体育館から出ていることが解った。ますますおかしい。暴走した植物が人工物から生えるというのはあまりないからだ。しかもツタが出ているのは体育館の中からなのだ。とりあえず安全を確保するために流星やほかの部員に連絡を取ることにした。そのため、危険地帯にいるときに必要な集中力が散漫になってしまっていた。この時、背後からツタが迫っていた。
「しまった!」
武也が気付いた時にはもう、散布が間に合わないところまで近づいていた。もうダメだ!武也は身構えて目を瞑った……しかしツタが武也の体に到達することはなかった。
「たた、武也先輩!大丈夫ですか……?」
玲子の到着が間に合ったのだ。武也に迫っていたツタはすべて凍結し、活動を停止していた。
間一髪難を逃れた武也は
「玲子ちゃんが来てくれたんだね?ありがとう、助かったよ。」
と言いながら玲子の頭を撫でた。
「ふぇっ?ふわ、あ、あのその……」
玲子は突然のことにとても驚いた。
(どどどどうしよう?先輩に褒められた!撫でられてる!幸せだけど緊張するぅ……どうしようどうしよう)
「あっ、ごめんね突然頭触ったりして。女の子の頭を軽々しく触ったらいけないよね。」
武也は自分の軽率な行動を反省した。しかし玲子の内心としては
(もっと触ってくれてもいいのに……先輩はやっぱり優しいな)
と考えていた。
「そうそう、玲子ちゃん、どうやら発生源はこの体育館の中みたいなんだ。ちょっと嫌な予感がするから気を付けて行こうね。」
「は、はい……じゃあ私の能力でクリアリングをしますね……」
彼女は氷結能力を使い、体育館の入り口周辺のツタを凍結させて破壊した。
「よし、玲子ちゃんありがとう。1・2の3で行くからね!せーの!」
「「1・2の3!」」
二人は発生源と思しき体育館へと突入していった。
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