エピ042「相田美咲親衛隊」

何処の高校にも大なり小なり「苛め」と言うモノは居るもので、うちの様な進学校でもそれは例外では無い。


B組の「鎌塚有人」から呼び出されて、スマホで見せられた「学園裏サイト」には、結構えげつない事が書かれてあった。


どうやら俺は、「相田美咲」の弱みを握っていて、時折空き教室に「相田」を呼び出しては、嫌がる「相田」にいかがわしい悪戯を繰り返していると、…オブラートに包むとそういう事が書かれてある。


まあ、半分は当たってる。 但し、加害者は俺ではなくて「相田」だという点は修正が必要だが、…



有人:「俺はお前らの関係知ってっからよ、こんなの出鱈目だってわかっけど、結構マジいぜ、「相田美咲親衛隊」が、お前にヤキを入れるべしって書き込みしてんだよ。」


俺は、お前が何を知っているのかを、まず知りたい。

それで「相田美咲親衛隊」って、一体何者達なんだ?



宗次朗:「サンキュ、教えてくれて、…気を付けるよ。」





そして、その日の内に、…


学校からの帰り道、見慣れない制服の見るからに頭悪そうな男三人が、道を塞いでウンコ座りしていた、


うちの生徒達は、皆気味悪がって道路の端っこを恐る恐る通っている。



不良A:「お、アイツじゃね、指名手配の奴、」

不良B:「だべ、きょうもとそうじろう君、」


俺と「早美都」は、行き成り名前を呼ばれてビクっとして、…


「不良ABC」はニヤニヤ笑いながら、俺達に近づいて来た。



不良A:「やっぱそうじゃん、きょうもとそうじろう君ジャン?」


行き成り馴れ馴れしく肩を組んで来る「不良A」、



宗次朗:「何ですか?」


不良A:「俺ら頼まれたんよ、きょうもとクンのチンコの写真撮ってネットに晒してくれって、」


「不良A」は囁く様に俺に耳打ちし、…

「早美都」はパニクって、今にも泣き出しそうになっている。



不良B:「そんで、成功報酬1万円、銀行振り込み、マジ安心会計って訳。」


不良A:「俺らも暴力は嫌な訳、解るっしょ、お互い痛いのはヤダカッヨ、大人しくチンポの写真撮らしてくれたら、はいそれでおしまい、さよなら、って訳。」


不良B:「つう事で、ちょっと其処まで行こっか、きょうもと君も、皆にチンコ見られんの嫌っしょ?」


てな感じで、どうやら俺を路地裏に連れて行ってズボンを脱がせて恥ずかしい写真を撮りたいらしい。



宗次朗:「勘弁してくださいよ、」


俺は取り合わないで、歩き去ろうとするが、…肩組んだ「不良A」君が圧し掛かってきて、俺を道端のフェンスに押し付ける。



不良A:「なあ、オメエ舐めてんのか?…」


それで、何かボスっぽい「不良C」君がいよいよ登場する。



不良C:「大人しくいう事聞いといた方が、身の為だぜ、」


不良A:「お坊ちゃん高校のボンボンが、あんま世間知らずな事言ってっと、マジムカつくんですけど。」


不良B:「何じゃこら、お前も写真撮られたインカ?」


「早美都」に詰め寄る「不良B」



早美都:「誰か、誰か助けて!」


「早美都」は脅えてしゃがみ込み、「不良B」は面白がって「早美都」を殴る振りをする。


当然、皆は自分とは関係ない事だから、困った顔をしながらも見て見ぬふり、



宗次朗:「いい加減にして下さいよ、何でこんな事してるのか知らないけど、本当に金が振り込まれてくると思ってんならマジお目出度い人達だな。」


不良C:「何やと、こら!」


で、行き成り俺の顔面に殴りかかる「不良C」、…見事パンチが頬骨にヒット!



宗次朗:「痛ってえな、…」


が、怖くは無い、もう一つ言えば、そんなに痛くもない。



不良A:「ざっけんなコラ!」


と、今度は「不良A」が俺の太腿に蹴りを入れる!



宗次朗:「痛てえな、…何すんだよ。」


不本意だが、叩かれるのには、慣れているって事か、…「相田」父ちゃん。


人間、叩かれる事に慣れていれば、多少殴られても蹴られても、そんなに怖くは無い。 そもそも、人間が人間を殴るのはそんなに簡単ではない。 それなりの覚悟がいるし、殴る方も痛いし、殴り方にもコツが要る、上手く殴れなければ反撃を喰らうかも知れないと言う恐怖もある。 勿論、空手とか真剣にやってる奴に殴られるのは悲惨だが、中途半端に喧嘩スタイルをかじっただけの奴に殴られても大してダメージは無い。


こういう輩は相手が怖がって怯む事前提でしかダメージを与えられないのだ。


そして、叩いても怯まない相手の取り扱いに困りだす、…「不良ABC」


そして、何処からともなく現れる体育教師「小寺」!



小寺:「貴様ら!何やっとる!」


「不良ABC」は、きっかけを与えてもらって、蜘蛛の子を散らす様に逃げ出した、



小寺:「大丈夫か? 何が有った?」


宗次朗:「大した事ありません、」


小寺:「血が出てるぞ、…アイツら何もんだ?」


殴られたほっぺたの皮が剥けて、血が滲んでいる。 結構太腿も地味に痛い。



宗次朗:「知らない連中です。」


小寺:「一応傷害事件だからな、警察に届けた方が良いな。」


時任:「連中の写真なら撮りましたよ、学校を特定するのも、そんなに難しく無いと思います。」


と、そこに現れる「時任マサト」



時任:「宗次朗って、喧嘩強いんだね、」


宗次朗:「別に強くは無い、偶々あいつらが弱かっただけだ。」


「小寺」が、携帯で警察に連絡を入れて、事情を説明している。



宗次朗:「…って言うかサンキュな、お前が先生を呼んでくれたんだろ。」


時任:「出来れば穏便な解決法の方が良いと思ってね、行き成り行方不明者が出る様なやり方は、後々厄介だからね。」


一番怖いのは、やっぱりコイツだな、、







相田:「それはしょうがないわね、私と関わっている以上、避けて通れない事項だわ。 寧ろ今までこういう事が無かったのが不思議な位ね、」


次の日、久々に「相田」が部活に登場で、話題は昨日の「チンコ事件」



宗次朗:「って、お前は何様だよ。 元はと言えばお前が原因なんだから、ちょっと位、同情とか詫びの言葉は出てこないのか?」


相田:「でも、…誰が「アンタの、チンコ、…ネットに晒す」とか、…考えたんだろうネ?」


って、てめえ!…必死に笑いを堪えてんじゃねえ!



宗次朗:「夜道とかで襲われて死んだら、ぜってー化けて出てやるからな。」


相田:「良いわよ、別にお化けなんか怖くないから、…捕まえて仏壇で飼ってあげるわ。」


宗次朗:「幽霊だから風呂場とか便所とか覗き放題だし、それでも良いんだナ、」


相田:「さいてー、この変態! …やり返すわよ!」



博美:「この夫婦漫才も久しぶりだねぇ、」


早美都:「先輩、笑いごとじゃ無かったんですよ!」


新入部員の「鐘森麗美」が、キョトン顔で、俺達の事を眺めている。


多少は、慣れて来たのだろうか?





博美:「ねえ、ところでさ、今年はGWの合宿どうする?」


相田:「私、家で用事が有って、…」


チラと、俺の顔を伺う「相田」、情けなさそうな困り顔で、…全く、しょうがねえな。



宗次朗:「俺も、ちょっと今回はパスです、」


上目づかいで一寸頬を染める「相田」、まあ、こういう正直に顔に出ちゃう所は、…好感が持てなくはない。



博美:「そうか、残念だなあ、」


6月の生徒会選挙が終われば、実質3年生は受験に専念するので部活も引退って事になる。…博美先輩にとっては最後の部活イベントなのだな。



宗次朗:「別の日程じゃ駄目ですか? 5月になると中間試験始まっちゃうんで、4月の真ん中あたりの土日とか、」


相田:「えー、行きたいけど、私やっぱ無理、…4月の土曜日は何だかクラス会で埋まってんのよね、三週目が1年の時の同窓会で、四週目が2年のクラス会、」


宗次朗:「1年の同窓会? こないだ進級したばっかだぞ?」


当然、俺には声が掛かっていない訳で、…



宗次朗:「まあ、相田は放っといて、合宿決行しましょう。」


相田:「ああー、そう言う言い方する? マジやな奴〜!」

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