エピ032「禁じられた遊び?」

駅前の繁華街を、およそこの場に似つかわしくない ちの美少女が一人、


ゴシックロリータなんて、実際のコスプレは「極度残念」なモノばかりだと高を括っていたのだが、本当に様になる美少女が実在するとは、思わなかった。


黒白を基調にした「ひらひらひだひだ」のドレスに、リボンの髪留め、ウイッグでかなり盛ったとはいえ、決して不自然ではない腰まで届くウェイブ、多少派手目の化粧の所為で、…


殆ど、お人形さん!



確かに、元の「円先輩」の面影はかなり薄くなっているモノの、…普通「変装」って、極力目立たなくするもんじゃないのか?!


すれ違う通行人の略100%が、「円先輩」の事をガン見していく。


やっぱりこの人は、人から愛でられる為に生まれて来たに違いないと、改めて確信する。

それにしても、…



宗次朗:「先輩、離れて歩いても良いですか?」

涼子:「駄目!一緒に歩いてくれるって、約束したでしょ!」


宗次朗:「流石に、だんだん、恥ずかしくなってきた。」

涼子:「そろそろ「先輩」は止めようよ、何か宗ちゃんから「先輩」って呼ばれるの、変な感じなんだよね。」




市民センターの周りには、会場設営の荷物搬入に駆り出された生徒達が右往左往していた。

突然出現したアンティークドールの様な美少女に、当然皆、ぎょっとして、立ち止まり、振り返る。



教師A:「おう、京本、…って、この人は?」


「円先輩」が、恥ずかしがって俺の背中に身を隠すふりをして、ギュッと俺の腕に、しがみつく。

正体がばれない様にする為の、演技らしいが、…



宗次朗:「はあ、一応、俺の従姉妹です。一応、うちの学校受験する予定なんで、…」


まあ、素がロリ顔で、背も150cmの「円先輩」だから、中学生と言い張っても誰も疑いそうに無い(本当は19歳)



教師A:「そうか、…か、わいい、御嬢さんだナ。」


明らかに顔が引きつっているが、…まあ、そうだよな。

普通、学校説明会に来る中学生なら、学校の制服とか、ちょっと大人し目の上品な服を選ぶだろう。 それでも、こんな仰々しい格好が不自然でなく似合ってしまうから、思わず目の保養になってしまうから、教師と言えども…文句のつけようも無い、らしい。


だんだん、何事かと関係者が集まってくる? 中には、何か「別のイベント」と間違えて、写メまで取り始める通行人まで発生、



相田:「あ!「京本くん」、待ってたのよ、…一寸打ち合わせしたいから、控室まで来てもらえるかな?」

宗次朗:「了解、…「相田、さん」、…?」


って、「相田」の表情は、明らかに、何か、…怖いんですけど。







俺と「円先輩」は、「相田」に女子更衣室に引っ張り込まれて、何故だか後ろ手に、鍵を掛けられる?



相田:「ごめんなさいは?」

宗次朗:「は?」


相田:「ごめんなさいは?」

宗次朗:「何で? 謝んなきゃいけないんだよ?」


相田:「私、3時に来いって言ったよね、」

宗次朗:「別に、俺の集合時間は5時だし、」


相田:「お蔭で、私はキモい先輩に付きまとわれて大変だったの!」

宗次朗:「それは、お前が可愛いからいけないんだ。…俺の所為じゃない。」


って、こいつ一応、赤くなるのな、…



相田:「それで、…この子は?」


少し俯いて、恥ずかしそうに俺の後ろに身を潜める「円先輩」、



相田:「って、円先輩? …何で?って、何してんですか?」

涼子:「へへー、ばれちゃったか。」


相田:「何で、アンタが先輩と一緒にいんの? って何で先輩にこんな格好させてんのよ?」

宗次朗:「いや、待て、何で俺が「首謀者」前提なの?」


涼子:「ゴメン、私が「宗ちゃん」にお願いして、連れて来てもらったんだ。」

相田:「「宗ちゃん」…?」


親戚のおばさんを除けば、俺の事を「宗ちゃん」と呼ぶのは、部活の「博美先輩」くらいだ。

「相田美咲」は、アカラサマに不審そうに、俺の顔を、…睨み付ける、



宗次朗:「いや、…実は俺と円先輩って、幼馴染だったらしい。」

相田:「何なの「らしい」って?…そんな事、この前言ってなかったじゃない。」


涼子:「ほんと、すっかり忘れてるんだから、失礼しちゃうわよね、」

宗次朗:「先輩、もう十分に「罰」は受けたかと思いますが、…」


涼子:「またぁ、…「先輩」って言わないでよ。」

宗次朗:「いや、先輩は先輩ですから、って、ワザと困らせようとしてるでしょう?」


だんだん、呆れ顔になる「相田美咲」、それから、…溜息を一つ、



相田:「なにソレ…」


ぼそりと、独り言のように囁いて、…



相田:「もう良い、出て行って、…私、着替える、」


「相田美咲」は、更衣室の鍵を開けて、俺達を追い出して、…



宗次朗:「なんか用が有ったんじゃないのか?」


相田:「もう良いって言ってんじゃん! 円先輩の面倒見てあげんでしょ、…皆の邪魔にならない様にしなさいよ。」


「相田美咲」は、強引にドアを閉めて、中から鍵を掛けた、…



宗次朗:「なんだよ、感じ悪い奴だな。」

涼子:「ちょっと悪い事しちゃったかな?」


宗次朗:「どうせ、自分よりも「美人」が登場して、一寸むくれてるだけですよ。」







その後も「相田美咲」は、終始、俺とは目を合わせようとはせず、一言も口を利かないまま、学校説明会は無事、幕を閉じる。



宗次朗:「退屈じゃ無かったですか?」


俺は、撮影機材をジュラルミンのトランクに片づけながら、ずっと会場の隅っこで待機していた「円先輩」に声を掛けた。



涼子:「楽しかったぁ。 カメラ撮ってる時の宗ちゃん、結構格好良かったよ。」


其処へ、生徒会の「副会長」が近づいてくる。



副会長:「京本君、この後打ち上げあるけど、行く?」

宗次朗:「俺は遠慮しときます。 この人送って行かなきゃだし。」


「円先輩」は、年下っぽくハニカンダ笑顔、…

「副会長」は、何だか急に照れて狼狽えて、…



副会長:「はじめ、まして、…今年、うちを受験するんですか?」

涼子:「はい、とても楽しみです。」


副会長:「生徒会副会長の向井高志です。 来年会えるの、楽しみにしてます。」


それで、何故か握手を求める「副会長」、、



涼子:「「京本すず子」です。」

副会長:「この後、ちょっとした食事会が有るんですけど、もしよかったら、一緒に来ませんか?」


涼子:「ええっとぉ、どうしようかなぁ、…」


「副会長」がゴスロリ美少女にゾッコン・フォーリンしている間、俺は上の空で「相田美咲」の姿を探していた。


あいつ、この手の二次会苦手な筈なんだが、…どうするつもりなんだろう。




いつの間にか「噂のゴスロリ美少女」目当てに、集まってくる実行委員会の面子達、

その中にも「相田美咲」の姿は見当たらない。 もう、っくに着替え終わってても良い筈なんだが、…



宗次朗:「先生、そう言えば「相田さん」はどうしました? 俺、ちょっと頼まれ事が有ったんですけど。」

教師A:「相田さんか、…さっき、体調が優れないとかで、帰ったぞ。」


体調が優れない?…




涼子:「お兄ちゃん、そろそろ帰らなきゃ、…だよね。」


「円先輩」は俺の袖を引っ張って、救いを求める眼差し、…



副会長:「えー、すず子ちゃん帰っちゃうの? 京本まだ良いよなぁ、ちょっと顔出すだけでもさ、ほら受験の心得とか、過去問とか、色々為になる情報教えてあげられるしさ、…」







俺達は、「副会長」の必死の勧誘を振り切って、這這ほうほうの体で夜の街へと逃げ出した。



涼子:「あー、面白かった! 最後の方超ヤバかった、…もう殆どバレテルかと思ったよ!」

宗次朗:「「すず姉ちゃん」無茶しすぎ! 自分から危険地帯に突っ込んでいくんだもん、…それに何なのさ「京本すず子」って、」


「円先輩」は髪留めの位置を直しながら、一寸、不機嫌そうに口をトンガらせる、



涼子:「あーあ、漸く「先輩」から進化したと思ったのに、結局「すず姉ちゃん」に逆戻りかぁ、」


夕闇に紛れれば、派手なゴスロリもそれ程目立たない。

車道を流れる車のヘッドライトの逆光を被って、天使の様に微笑んだ「円先輩」の仕草に、一瞬、俺は、…呼吸を奪われる。



涼子:「ねえ、一寸良い?」


耳打ちする様に「円先輩」は掌を口元に当てて、…

俺は誘われるままに、しゃがみ込んで、その口元に耳を近づけて行く、…


不意に、「円先輩」が、俺の頬を捕まえて、…





キスをした。



宗次朗:「…!?」


こじ開ける様に唇の隙間に侵入する、蜜の様な唾液と、優しく絡みつく粘膜、…



涼子:「ごちそうさまでした、」


それから「円先輩」は、蕩ける様な眼差しでウットリと、…微笑んだ、

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