エピ016「鍋と酒」
そう言う訳で、写真部で鍋パーティを開催する事になった。
アカリ先生参加で部室使用の許可を取り、
銘々で持ち寄った材料を、闇鍋的にぶち込んでみると言う企画である。
宗次朗:「言っておくが俺は料理は出来ん、まるっきりな、」
相田:「じゃあ、喰うな、…解ったか、」
早美都:「大丈夫だよ、僕が作るから、材料もいっぱい持って来たから、いっぱい食べてね、」
何だか妙に張り切ってる早美都、…
手際良い下ごしらえの段取りに、思わず見蕩れて感心してしまう。
宗次朗:「それで、結局クラス会には参加する事にしたのか。」
相田:「しょうが無いじゃない、付き合いの悪い奴とか言われて、ハブられたくないもん。」
相田:「だから、ファースト間接キッスはこの面子で済ませておくのよ。」
博美:「そっかぁ、ファースト間接キッスか、私もそうかも、そう考えると一寸緊張するね、」
宗次朗:「一回目と二回目以降で何が違うんだ?」
相田:「五月蠅い、気分の問題よ、」
此のタイミングで、学校一の美人教師「醍醐アカリ」先生が、紙袋から焼酎?を取り出した。…何故?
相田:「わ、お酒って美味しんですか?」
宗次朗:「って言う以前に、学校で酒飲んでも良いんですか!」
アカリ:「鍋には凄く合うのよ。」
宗次朗:「いや、そういう問題じゃ無くて!」
相田:「一寸、もらっても良いですか?」
宗次朗:「駄目に決まってるだろう、お前は法律知らないのか?」
と、あれよあれよと言う間に、湯のみ茶碗にトクトクと注がれる、薄い琥珀色の液体。
相田:「…、ナンか良い匂い。」
博美:「本当だねぇ、何だか、甘い匂い。」
アカリ:「知ってる? エタノールって、甘いの。」
「相田」は恐る恐る、唇を湯のみに近づけて、…ほんの少し、口を、湿らせる。
相田:「あ、あっ、すご、だんだん、じわーってなる。」
それから「相田」はジト目で俺の事を睨んで、…
相田:「欲しいの?」/宗次郎:「要らねえよ。」
相田:「なに、私の口付けた後は嫌だって言う訳?」
宗次朗:「別に、そうは言ってない。未成年が酒を飲むのは不味いって言ってるんだ。」
相田:「真面目か!」/宗次朗:「当たり前だ!」
「アカリ先生」は、少しニヤニヤしながら、俺達の掛け合いを眺めている。
其れで、湯のみに半分くらいの焼酎を、一気に、すーっと飲み干した。
その格好いい所作に、思わず俺は見蕩れてしまう。
文句の一つも言うつもりだった筈なのに、それでもう、何も言い返せなくなってしまう。
別に「臆病者」と思われるのが怖かった訳ではない。
別に「相田美咲」の入った飲み物で、自分がどうかなってしまうとか考えたりはしない。
多分、純粋に「醍醐アカリ」に憧れて、一寸背伸びしてみたくなっただけだ。
きっと、そうに決まっている。
宗次朗:「貸してみろ、飲んでやる。」
相田:「えっ、飲むの?」
その途端「相田美咲」の顔は、真っ赤に完熟する。
何時もは生意気な口を利いている毒舌腹黒女が、何を考えているんだか幼女のミタイに、シオラシクなる。
相田:「無理しなくても良いし、…」
宗次朗:「別に無理はしてない、酒くらい、どうって言う事は無い。」
俺は、「相田」から湯のみを引ったくって、躊躇無く、一口、…吸い込んだ。
宗次朗:「う、」
喉が焼ける?様な、舌が痺れる?様な、…「相田美咲」の入った液体を、飲み下す。
宗次朗:「えほっ、ゲホっ!」
相田:「やだぁ、なに咽せてんのよ、格好わるぅ。」
透かさず、早美都が、水の入ったコップを持って来る。
早美都:「大丈夫?」
宗次朗:「ああ、ありがとう。」
相田:「あ〜あ、鼻水入れてないでしょうね?」
宗次朗:「えほっ、…入れてねえよ。」
「相田」は、俺から奪い返した湯のみをしげしげと観察して、
それから、残っていた「液体」を一気に、飲み干した。
相田:「ナンか、コレ、好きかも。」
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