エピ015「間接キッス」
相田:「最悪〜、」
ナンか構って欲しそうな情けない声を発しながら、学園のアイドルが部室に登場した。
当然俺は、そんなモノ、敢えて無視をする。
相田:「何で話に乗って来ない?」
宗次朗:「最悪な話なんて聞いてもつまらんだろう。」
学園のアイドルは不服そうに、俺の態度を叱責する。
早美都:「どうしたの?」
相田:「聞いてよ早美都ぉ、今度のクラス会、鍋だってよ、鍋、」
「例の一件」以来、何気に「相田」と「早美都」は仲が良い。
宗次朗:「何が最悪なんだ、鍋は美味いぞ、…って言うか俺は聞いてないぞ、何だそのクラス会って?」
相田:「あ〜、有志って言ってたかなぁ?」
思わず、相田は不味い事言っちゃったかな、ミタイナ顔で目を逸らす。
どうせ、仲良い同士で集まって「仲良し確認」する社交辞令の会合なのだろう、嫌われ者の俺に声がかからなくても不思議では無い。
宗次朗:「まあ良い、そんなもの出たって「何して良いか解らなくて」疲れるだけだし、こっちからお断りだ、」
相田:「どうしよっかなぁ、私もなんかコジツケてばっくれようかな、」
宗次朗:「それは無理だな、」
宗次朗:「クラスのアイドルが不参加じゃ、ただじゃ収まらんだろう、きっとお前の都合に合わせてスケジュール変更されるだけだぜ、」
相田:「げげー、なんで鍋なのよ〜」
宗次朗:「何でそんなに鍋嫌う。」
相田:「決まってるでしょ、なんで他人と同じ汁つつかなきゃなんないのよ、気持ち悪い。唾入ってるかも知んないのよ〜、」
宗次朗:「汁ゆうな。」
博美:「鍋良いね、鍋パーティしよっか、うちの部も、」
さっき迄、本読んで転寝してた筈の2年の先輩が、突然むくりと起き上がった。
相田:「ああ、そっち良いなぁ、私そっち出たい。て言うか出る!」
宗次朗:「お前「鍋」嫌って言ったばっかじゃんか、」
相田:「良いのよ、この面子なら別に、」
相田:「良く知らない奴と一緒に汁つつくのが嫌だって話、」
宗次朗:「心配するな。唾液を舐めあうとお互いの好感度が上がるから直ぐに平気になる筈だ。」
相田:「やなもんはやなの、唾液ゆうな!」
相田:「大体、何なのよ、その変態性理論?」
宗次朗:「群れで生活する動物は自分が承認される事に快感を感じるように出来ている。社会で生活する人間は特にそうだ、…生まれたばかりの赤ん坊ですら、口唇期では母親に乳を与えさせる事に快感を覚え、肛門期には自分の排泄物を母親に処理させる事に快感を覚える。…要するに自分の我儘を通す事で、自分が生きる事を承認されている事を確認するのが嬉しい訳だ。」
宗次朗:「これがエスカレートすれば、普通はやらない様な無理無茶を他人に受け入れさせる事は、自分がそれだけ我儘を通せる、つまり社会から承認されていると実感できるから快感を感じる訳だ。…そして互いに自分の我儘を認めさせる間柄になると、それがたとえ最初は半強制的であったとしても、やがてはお互いの間に信頼が芽生える。…自分の唾液を受け入れた奴は自分を承認してくれていると動物的に考えるからな、そこから味方意識とか好意的な感情とか信頼が生まれる訳だ。」
宗次朗:「これは生物的な反応でどうしようもない。「恋愛至上主義者」がキスを愛の誓いとか言っているカラクリは、つまりそういう事だ。」
相田:「うぇー、キスが動物的とか、ホント、ロマンの欠片も無い奴。」
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