エピ011「早美都の気持ち」

とうとう、「早美都」が学校を休んだ。 俺は、「相田」と二人で家を見舞う事にする。

何かが有って、助けが必要なら、俺にだって一つや二つ、できる事が有る筈だ。


水臭いぞ、早美都


呼び鈴を押すと、30秒ほど経ってから、インターフォン越しに早美都の返事があった



早美都:「はい、どちら様、」

宗次朗:「俺だ、ちょっと、話がしたい。」

早美都:「宗次朗君、」


60秒ほど経ってから、ドアが開く、それから「早美都」は「相田」の姿を見て凝固し、

行き成りドアを閉めようとする!


俺は、すかさず足を突っ込んでドアが閉まらない様に、、



宗次朗:「いってぇ!」

早美都:「あっ、ゴメン!」


それで、怯んだ隙に、ドアをこじ開けて、玄関の中に侵入する!



宗次朗:「お前、一体どうしたんだ、変だぞ?」


急に落ち込む「早美都」、そのまま玄関に座り込んで、目を背ける、顔が真っ青だ、

普通でない事くらい、素人の俺にだってわかる



宗次朗:「何か、悩んでるんなら、俺を頼ってくれ、友達だろ?」


「早美都」は、一度上目づかいで俺を見て、それから「相田」を見て、また俯いて、黙り込む。



相田:「私、帰る。 きっと二人きりの方が、話しやすいでしょ、」


そういう事なのか?

一瞬躊躇した俺の肩を、「相田」が押した



相田:「私もそうだったから、宗次朗、ちゃんと、聞いてあげて。」


ドアが閉じて、暗い玄関に二人きりになって、

俺は覚悟を決めて、待つ、


何か、深刻な事が起きている事は分かる。いや、違う、知っている。

想いのままにならない状況と、自分の心に、どう折り合いを付ければいいのか分からない時、

人は、こんな風に、スネたふりをする。


だから、俺は「早美都」が必死に自らを助けようともがいているのを、じっと待つ、




そうして、一体、どれ位経ったんだろうか

おれは、流石に疲れて、しゃがみ込み、目を逸らしたままの「早美都」の顔をふと、覗き込んだ。



早美都:「僕、変なんだ。」

宗次朗:「そうか? 俺も変だけどな。」


早美都:「僕、宗じ、…君の傍に居ると、変になっちゃうんだ。」


何だか、知っている事と知らない世界が、交錯する。



宗次朗:「俺が、原因なのか?」

早美都:「違う、悪いのは僕、変なのは僕、そう、君は悪くない、」


宗次朗:「悪いって、何が悪いんだ?」


早美都:「こんなのまともじゃない、いけない事だって解ってる、」

早美都:「でも、自分では、どうにもできないんだ。無理なんだ、」


大体、察しはついたとしても、どうすれば、俺は「早美都」を救ってやれるんだ? それが、判らない。

兎に角、一度、吐き出させないと、次へ進めない。



宗次朗:何が、まともじゃない? 世の中、まともな事の方が少ない様な気もするぞ。」

早美都:「でも、駄目なんだ、君に、迷惑を掛けちゃう。」


宗次朗:「俺に、迷惑? 友達だろ、迷惑かけろよ、何で駄目なんだよ?」

早美都:「だって、絶対ダメなんだ、君を困らせたくない。」


宗次朗:「だからなんで?」

早美都:「だって、君が好きだから。」


そうして、二人とも固まった。



宗次朗:「そうか、俺も早美都の事好きだぜ、」

早美都:「それは、友達としてでしょ、僕のは、多分違う。」

早美都:「男同士なのに、こんなの絶対変だよ。」


宗次朗:「まあ、変だって、決めつけるのは早い。」


早美都:「だったら、ずっと僕と一緒にいてくれる?」

早美都:「ずっと、僕とくっついていてくれる?」

早美都:「ずっと、僕のこと、…好きって言ってくれる?」


ゴメン、それは無理、キモい、怖い、近づかないでくれますか


それは、「西野敦子」が俺に言った言葉だ。

片方だけ思いが突っ走ると、誰とだって、何時かはこうなってしまう。


人は信頼ラポールを形成するほどに、二字曲線的に心的距離を縮めていく

加速度的に思いは強くなる、それが更に一方通行の信頼ラポールを増長させる


そして信頼とは、自分の要望を相手に押し付ける行為以外の何物でもない。

信じている、その言葉は、裏切らない事を強制する呪文


もしも、相手が思いの通りにならなかったら

裏切ったら、


その強すぎる心のひずみは、時として人を壊す。

自分自身か、それとも相手か、その両方か。


早美都は、そんなキツイのを一人でしょい込んで、何とか自分ひとりで折り合いを付けようとしていたのだろうか、


だからと言って、俺に早美都の想いを受け止める事は、…やっぱり無理だ

だったら投げ出すのか、逃げ出すのか? 友達を見捨てるほど、俺は、人間嫌いでは無い。


「相田」の野郎、こうなる事、知ってやがったな、

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