エピ007「アンニュイな午後」

GW後半が空けて、…


相変わらず、ラブレターの量が減らない「相田」だが、何だか今日は元気がない?

勇気を振り絞って、真っ赤な顔をしながら廊下で恋文を渡しに来た別のクラスの男子に向かって、…



相田:「あ、良い、…いらない。」

宗次朗:「おい、素が出てんぞ、」


ついつい、いつもの調子で突っ込んでしまった。

男子は、廊下の真ん中で、暫し、石化している。



相田:「え、あ、いやだ、ごめんなさい、ちょっとボーっとしてて、五月病かな?」

宗次朗:「もしかして何かあったのかGW、彼氏と、まさか、…」


行き成り、何の前触れも無くポロポロ泣き出す「相田」、



女子:「ちょっと、アンタ「相田さん」に何したの? …大丈夫?」

相田:「うん、大丈夫、何でも無いから、うん、」


まさか、相思相愛を惚気ていたし、男と二人で泊まり掛けで出かけると言う事は本人だって覚悟はしていた筈だから、無理矢理酷い事をされて傷ついた、となんて事は無いと思うのだが、或いは親ばれして、相手が責められたとか? 実際「事」に至って、後悔する様な事になったとか? 俺自身未知の領域だから、どうにもフォローのしようも思い浮かばない。


相田は、そのまま保健室から、体調不良で早退する事になった。


早美都も何かの用事で早々に帰宅し、一人部活に行くと、何故だか先輩も休みだった。 合宿の時はあんなに元気だったのに。


一体、俺の周りで何が起こっているというんだ? もしかして新手のサプライズパーティーだったりするのか? 俺の誕生日は、誰にも言ってないが未だ半年以上先だ。



宗次朗:「しゃーない、帰るか、」


と、準備室から「醍醐アカリ先生」が現れた。



アカリ:「あら、今日は一人なの?」

宗次朗:「今日は、部活にならなさそうなんで、俺も帰ります。」


アカリ:「お茶でも飲んで行かない?」


美人の美術教師が、海外から取り寄せた秘蔵の紅茶を、ウエッヂウッドの茶器に入れて、

ミネラルウォーターを沸かしたお湯を、静かに注ぎ入れる。


俺の知らない事をきっと沢山知っている筈の大人の女性、

俺はどうしたって聞いてみたくなる。


本当に、誰かを好きになった事なんて、あるんですか?


でもそれは、可愛らしい遊園地のぬいぐるみに向かって、中に入ってんの「おっさん」ですよね、と確認する位、きっとルール違反な事なのだろう。


人は、誰だって本当の自分を曝け出したりはしない。

本当の自分の事を受け入れられるのは、自分以外に居ない事くらい知っている。


俺はアカリ先生に淹れてもらった口当たりの丸い紅茶を啜りながら、大人の女性に聞いてみたくなる。


「相田」は何故、涙を零したのだろう? どうして俺は、こんなにも「相田」の事が心配になっているのだろう?

俺は、「相田」の何を知っていると言うのだろう? 俺は、一体何がしたいんだろう?

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